次の文章は、最高裁判所判決の一節である。これを読んで空欄[ ア ]~[ ウ ]に正しい語を入れ、その上で、[ ア ]~[ ウ ]を含む文章として正しいものを、選びなさい。
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【解説】
まず、「国民審査の制度」については、憲法79条の下記のように規定されています。
最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度はその実質において所謂[ ア ]の制度と見ることが出来る。それ故本来ならば[ イ ]を可とする投票が有権者の総数の過半数に達した場合に[ イ ]されるものとしてもよかったのである。それを憲法は投票数の過半数とした処が他の[ ア ]の制度と異るけれどもそのため[ ア ]の制度でないものとする趣旨と解することは出来ない。只[ イ ]を可とする投票数との比較の標準を投票の総数に採っただけのことであって、根本の性質はどこ迄も[ ア ]の制度である。このことは憲法第七九条三項の規定にあらわれている。同条第二項の字句だけを見ると一見そうでない様にも見えるけれども、これを第三項の字句と照し会せて見ると、国民が[ イ ]すべきか否かを決定する趣旨であって、所論の様に[ ウ ]そのものを完成させるか否かを審査するものでないこと明瞭である。
(最大判昭和27年2月20日民集6巻2号122頁)
- [ ア ]は、レファレンダムと呼ばれ、地方公共団体の首長などに対しても認められる。
- [ ア ]に入る語は罷免、[ ウ ]に入る語は任命である。
- 憲法によれば、公務員を[ ア ]し、およびこれを[ イ ]することは、国民固有の権利である。
- 憲法によれば、内閣総理大臣は、任意に国務大臣を[ ア ]することができる。
- 憲法によれば、国務大臣を[ ウ ]するのは、内閣総理大臣である。
憲法79条そして、上記国民審査の内容について、 ①国民投票は解職制度(リコール)なのか? ②国民投票は任命行為の完了行為なのか? という議論がされ、判例では、①解職制度を採用しています。 最高裁判所において、長官以外の裁判官は、内閣が任命します。 その後、国民審査にかけられて、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免されます。
- 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
- 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
- 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
「国民審査は解職制度」という見解
この見解では、まず、内閣による任命後、国民投票による審査を受けるまでの間も、裁判官としての職務を果たしているのであるから、任命行為によって任命は完了していると考えます。 そして、国民投票は任命行為の完了後に、「罷免(ひめん):やめさせること」させるかどうか決定する行為であり、「罷免すべきことを可(罷免した方がよい!)」というときは、裁判官は罷免される、という見解です。 この見解だと、国民審査は、解職制度(=リコール)ととらえることができます。 よって、下記のようになります。
最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度はその実質において所謂[ ア:解職 ]の制度と見ることが出来る。
それ故本来ならば[ イ:罷免 ]を可とする投票が有権者の総数の過半数に達した場合に[ イ:罷免 ]されるものとしてもよかったのである。
それを憲法は投票数の過半数とした処が他の[ ア:解職 ]の制度と異るけれども
そのため[ ア:解職 ]の制度でないものとする趣旨と解することは出来ない。
只[ イ:罷免 ]を可とする投票数との比較の標準を投票の総数に採っただけのことであって、根本の性質はどこ迄も[ ア:解職 ]の制度である。
このことは憲法第七九条三項の規定にあらわれている。
同条第二項の字句だけを見ると一見そうでない様にも見えるけれども、
これを第三項の字句と照し会せて見ると、国民が[ イ:罷免 ]すべきか否かを決定する趣旨であって、所論の様に[ ウ:任命 ]そのものを完成させるか否かを審査するものでないこと明瞭である。
(最大判昭和27年2月20日民集6巻2号122頁)
1.[ ア ]は、レファレンダムと呼ばれ、地方公共団体の首長などに対しても認められる。
1・・・誤り
アに入るのは、「解職」です。
したがって、誤りです。「レファレンダム」とは、国民投票・住民投票のことです。
地方公共団体の住民が、特定の事項について、投票により直接に意思表示すること言います。
「地方自治体の議会の解散要求や議員・首長の解職要求」などの直接請求を受けて賛否を問う住民投票等があります。
2.[ ア ]に入る語は罷免、[ ウ ]に入る語は任命である。
2・・・誤り
アに入るのは、「解職」です。
ウに入るのは、「任命」です。
アが誤りです。
3.憲法によれば、公務員を[ ア ]し、およびこれを[ イ ]することは、国民固有の権利である。
3・・・誤り
憲法15条1項には、
『公務員を「選定」し、およびこれを「罷免」することは、国民固有の権利である。』と規定しています。よって、アの部分が誤りです。「イは罷免」です。
4.憲法によれば、内閣総理大臣は、任意に国務大臣を[ ア ]することができる。
4・・・誤り
憲法68条2項には
『内閣総理大臣は、任意に国務大臣を「罷免」することができる』と規定しています。よって、アの部分は「解職」なので誤りです。
5.憲法によれば、国務大臣を[ ウ ]するのは、内閣総理大臣である。
5・・・正しい
憲法68条1項には
『内閣総理大臣は、国務大臣を「任命」する』と規定しています。
そして、上記の解説とおり、「ウには任命」が入るから、正しいです。
平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:物権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 国民審査 | 問33 | 民法:債権 |
問4 | プライバシー権 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 国会 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 信教の自由 | 問36 | 商法 |
問7 | 法の下の平等 | 問37 | 会社法 |
問8 | 取消しと撤回 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政裁量 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政事件訴訟法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識・政治 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識・経済 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・情報通信 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・情報通信 |
問26 | 行政事件訴訟法 | 問56 | 基礎知識・情報通信 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・公文書管理法 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |