A県内のB市立中学校に在籍する生徒Xは、A県が給与を負担する同校の教師Yによる監督が十分でなかったため、体育の授業中に負傷した。この事例につき、法令および最高裁判所の判例に照らし、妥当な記述はどれか。
- Yの給与をA県が負担していても、Xは、A県に国家賠償を求めることはできず、B市に求めるべきこととなる。
- Xが外国籍である場合には、その国が当該国の国民に対して国家賠償を認めている場合にのみ、Xは、B市に国家賠償を求めることができる。
- B市がXに対して国家賠償をした場合には、B市は、Yに故意が認められなければ、Yに求償することはできない。
- B市がYの選任および監督について相当の注意をしていたとしても、Yの不法行為が認められれば、B市はXへの国家賠償責任を免れない。
- Xは、Yに過失が認められれば、B市に国家賠償を求めるのと並んで、Yに対して民法上の損害賠償を求めることができる。
【解説】
1.A県内のB市立中学校に在籍する生徒Xは、A県が給与を負担する同校の教師Yによる監督が十分でなかったため、体育の授業中に負傷した。
Yの給与をA県が負担していても、Xは、A県に国家賠償を求めることはできず、B市に求めるべきこととなる。
Yの給与をA県が負担していても、Xは、A県に国家賠償を求めることはできず、B市に求めるべきこととなる。
1・・・妥当ではない
国又は公共団体が損害を賠償する責任がある場合において、「公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者」と「公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者」とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責任を負います(国家賠償法3条)。
したがって、Yの給与をA県が負担している場合、Xは、A県にも、B市にも国家賠償を求めることはできます。
よって、本肢は妥当ではありません。
国又は公共団体が損害を賠償する責任がある場合において、「公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者」と「公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者」とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責任を負います(国家賠償法3条)。
したがって、Yの給与をA県が負担している場合、Xは、A県にも、B市にも国家賠償を求めることはできます。
よって、本肢は妥当ではありません。
2.A県内のB市立中学校に在籍する生徒Xは、A県が給与を負担する同校の教師Yによる監督が十分でなかったため、体育の授業中に負傷した。
Xが外国籍である場合には、その国が当該国の国民に対して国家賠償を認めている場合にのみ、Xは、B市に国家賠償を求めることができる。
Xが外国籍である場合には、その国が当該国の国民に対して国家賠償を認めている場合にのみ、Xは、B市に国家賠償を求めることができる。
2・・・妥当ではない
国家賠償法は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、当該国家賠償法を適用します(国家賠償法6条)。
相互保証とは、例えば、Xがアメリカ国籍だった場合、アメリカにおいて、日本国民がアメリカに対して賠償できる旨の規定があるとき、Xも日本に対して国家賠償を求めることができる、というものです。
本肢を見ると、「その国が当該国の国民に対して国家賠償を認めている場合」となっているので妥当ではありません。
正しくは「その国が『日本国民』に対して国家賠償を認めている場合」です。
国家賠償法は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、当該国家賠償法を適用します(国家賠償法6条)。
相互保証とは、例えば、Xがアメリカ国籍だった場合、アメリカにおいて、日本国民がアメリカに対して賠償できる旨の規定があるとき、Xも日本に対して国家賠償を求めることができる、というものです。
本肢を見ると、「その国が当該国の国民に対して国家賠償を認めている場合」となっているので妥当ではありません。
正しくは「その国が『日本国民』に対して国家賠償を認めている場合」です。
3.A県内のB市立中学校に在籍する生徒Xは、A県が給与を負担する同校の教師Yによる監督が十分でなかったため、体育の授業中に負傷した。
B市がXに対して国家賠償をした場合には、B市は、Yに故意が認められなければ、Yに求償することはできない。
B市がXに対して国家賠償をした場合には、B市は、Yに故意が認められなければ、Yに求償することはできない。
3・・・妥当ではない
国又は公共団体が国家賠償した場合において、公務員に故意又は重大な過失があったときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有します(国家賠償法1条2項)。
したがって、Yに故意が認められなくても、重大な過失があった時は求償できるので、本肢は妥当ではありません。
国又は公共団体が国家賠償した場合において、公務員に故意又は重大な過失があったときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有します(国家賠償法1条2項)。
したがって、Yに故意が認められなくても、重大な過失があった時は求償できるので、本肢は妥当ではありません。
4.A県内のB市立中学校に在籍する生徒Xは、A県が給与を負担する同校の教師Yによる監督が十分でなかったため、体育の授業中に負傷した。
B市がYの選任および監督について相当の注意をしていたとしても、Yの不法行為が認められれば、B市はXへの国家賠償責任を免れない。
B市がYの選任および監督について相当の注意をしていたとしても、Yの不法行為が認められれば、B市はXへの国家賠償責任を免れない。
4・・・妥当
民法(715条)では、「使用者が選任及び監督について相当の注意をしていた場合、責任を免れる」というルールがありますが、
国家賠償法では、上記ルールはありません。
したがって、国や公共団体が選任および監督について相当の注意をしていたとしても、国家賠償責任を免れることはできません。
民法(715条)では、「使用者が選任及び監督について相当の注意をしていた場合、責任を免れる」というルールがありますが、
国家賠償法では、上記ルールはありません。
したがって、国や公共団体が選任および監督について相当の注意をしていたとしても、国家賠償責任を免れることはできません。
5.A県内のB市立中学校に在籍する生徒Xは、A県が給与を負担する同校の教師Yによる監督が十分でなかったため、体育の授業中に負傷した。
Xは、Yに過失が認められれば、B市に国家賠償を求めるのと並んで、Yに対して民法上の損害賠償を求めることができる。
Xは、Yに過失が認められれば、B市に国家賠償を求めるのと並んで、Yに対して民法上の損害賠償を求めることができる。
5・・・妥当ではない
判例によると
「公務員に過失が認められる場合、国または公共団体が賠償責任を負うのであって、公務員個人は賠償責任を負わない。」
と判示しています。
したがって、本肢は妥当ではありません。
判例によると
「公務員に過失が認められる場合、国または公共団体が賠償責任を負うのであって、公務員個人は賠償責任を負わない。」
と判示しています。
したがって、本肢は妥当ではありません。
平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:物権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 国民審査 | 問33 | 民法:債権 |
問4 | プライバシー権 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 国会 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 信教の自由 | 問36 | 商法 |
問7 | 法の下の平等 | 問37 | 会社法 |
問8 | 取消しと撤回 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政裁量 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政事件訴訟法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識・政治 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識・経済 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・情報通信 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・情報通信 |
問26 | 行政事件訴訟法 | 問56 | 基礎知識・情報通信 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・公文書管理法 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |