廃棄物処理法(※)に基づく産業廃棄物処理業の許可は、都道府県知事の権限とされているが、それに関する行政手続についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。ただし、廃棄物処理法には、行政手続に関する特別の定めはない。
- 申請に対する処分の手続に関し、当該都道府県の行政手続条例に行政手続法と異なる定めがあったとしても、この処理業許可の申請の知事による処理については、行政手続法が適用される。
- 国の法律である廃棄物処理法の適用は、全国一律になされるべきであるから、同法に基づく知事による処理業許可に関する審査基準は、当該都道府県の知事ではなく、主務大臣が設定することとなる。
- 申請に対する処分の審査基準は、行政手続法によって設定が義務付けられた法規命令であるから、廃棄物処理法に基づき知事がする処理業の許可についても、その申請を審査基準に違反して拒否すれば、その拒否処分は違法となる。
- 一度なされた処理業の許可を知事が取り消す場合には、相手方に対して聴聞を実施しなければならないが、処理業の許可申請を拒否する処分をする場合には、申請者に弁明の機会を付与すべきこととされる。
- 提出された処理業の許可申請書の記載に形式上の不備があった場合については、知事は、期限を定めて申請者に補正を求めなければならず、直ちに申請を拒否する処分をすることは許されない。
(注)※廃棄物の処理及び清掃に関する法律
【答え】:1【解説】
1.申請に対する処分の手続に関し、当該都道府県の行政手続条例に行政手続法と異なる定めがあったとしても、この処理業許可の申請の知事による処理については、行政手続法が適用される。
1・・・正しい
地方公共団体については、下記行為は、行政手続法の次章(申請に対する処分)から第六章(意見公募手続等)までの規定は、適用しません(行政手続法3条3項)。
地方公共団体については、下記行為は、行政手続法の次章(申請に対する処分)から第六章(意見公募手続等)までの規定は、適用しません(行政手続法3条3項)。
- 地方公共団体の機関がする処分(根拠規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
- 行政指導
- 地方公共団体の機関に対する届出(根拠規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
- 地方公共団体の機関が命令等を定める行為
本肢は、地方公共団体の機関(都道府県知事)が法律(廃棄物処理法)に基づいてする処分(許可)の手続きなので、行政手続法の適用がある
ちなみに、1には該当しません。なぜなら、根拠が条例又は規則ではないからです。
2.国の法律である廃棄物処理法の適用は、全国一律になされるべきであるから、同法に基づく知事による処理業許可に関する審査基準は、当該都道府県の知事ではなく、主務大臣が設定することとなる。
3.申請に対する処分の審査基準は、行政手続法によって設定が義務付けられた法規命令であるから、廃棄物処理法に基づき知事がする処理業の許可についても、その申請を審査基準に違反して拒否すれば、その拒否処分は違法となる。
3・・・誤り
申請に対する処分の審査基準は、行政規則であって、法規命令ではありません。
行政規則については、行政機関内部のルールであり、行政規則に従わなかったとしても、「不当」の問題にはなるが、「違法」にはなりません。※法規命令の場合、従わないと「違法」となります。
申請に対する処分の審査基準は、行政規則であって、法規命令ではありません。
行政規則については、行政機関内部のルールであり、行政規則に従わなかったとしても、「不当」の問題にはなるが、「違法」にはなりません。※法規命令の場合、従わないと「違法」となります。
4.一度なされた処理業の許可を知事が取り消す場合には、相手方に対して聴聞を実施しなければならないが、処理業の許可申請を拒否する処分をする場合には、申請者に弁明の機会を付与すべきこととされる。
4・・・誤り
行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、意見陳述のための手続(聴聞もしくは弁明の機会の付与)を執らなければなりません(行政手続法13条1項)。
そして、申請拒否の処分は不利益処分に含まれません(行政手続法2条4号ロ)。
したがって、申請を拒否する場合、「弁明の機会を付与」も「聴聞」も不要です。
行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、意見陳述のための手続(聴聞もしくは弁明の機会の付与)を執らなければなりません(行政手続法13条1項)。
そして、申請拒否の処分は不利益処分に含まれません(行政手続法2条4号ロ)。
したがって、申請を拒否する場合、「弁明の機会を付与」も「聴聞」も不要です。
5.提出された処理業の許可申請書の記載に形式上の不備があった場合については、知事は、期限を定めて申請者に補正を求めなければならず、直ちに申請を拒否する処分をすることは許されない。
5・・・誤り
行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請者に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければなりません(行政手続法7条)。
よって、必ずしも「期限を定めて申請者に補正を求めなければならない」わけではありません。「補正を求める」もしくは「拒否」いずれかを行います。
行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請者に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければなりません(行政手続法7条)。
よって、必ずしも「期限を定めて申請者に補正を求めなければならない」わけではありません。「補正を求める」もしくは「拒否」いずれかを行います。
平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 内閣 | 問33 | 民法・債権 |
問4 | 内閣 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 財政 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 法の下の平等 | 問36 | 商法 |
問7 | 社会権 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 行政法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・情報通信 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・個人情報保護 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |