行政計画に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 土地利用を制限する用途地域などの都市計画の決定についても、侵害留保説によれば法律の根拠が必要である。
- 広範な計画裁量については裁判所による十分な統制を期待することができないため、計画の策定は、行政手続法に基づく意見公募手続の対象となっている。
- 計画策定権者に広範な裁量が認められるのが行政計画の特徴であるので、裁判所による計画裁量の統制は、重大な事実誤認の有無の審査に限られる。
- 都市計画法上の土地利用制限は、当然に受忍すべきとはいえない特別の犠牲であるから、損失補償が一般的に認められている。
- 多数の利害関係者に不利益をもたらしうる拘束的な計画については、行政事件訴訟法において、それを争うための特別の訴訟類型が法定されている。
【答え】:1
【解説】
1.土地利用を制限する用途地域などの都市計画の決定についても、侵害留保説によれば法律の根拠が必要である。
1・・・妥当
「侵害留保説」とは、「国民の自由」や「財産」を侵害する行政活動のみ、法律の根拠が必要ということ考え方です。本肢のように、つまり、侵害留保説によると「土地利用を制限する用途地域などの都市計画の決定」については、土地利用する権利を侵害するので、法律の根拠が必要です。
「侵害留保説」とは、「国民の自由」や「財産」を侵害する行政活動のみ、法律の根拠が必要ということ考え方です。本肢のように、つまり、侵害留保説によると「土地利用を制限する用途地域などの都市計画の決定」については、土地利用する権利を侵害するので、法律の根拠が必要です。
2.広範な計画裁量については裁判所による十分な統制を期待することができないため、計画の策定は、行政手続法に基づく意見公募手続の対象となっている。
2・・・妥当ではない
命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見の提出先及び意見の提出のための期間(以下「意見提出期間」という。)を定めて広く一般の意見を求めなければなりません(行政手続法39条:意見公募手続)。そして、行政計画については、命令等に含まれないので、上記意見公募手続は不要です(行政手続法2条8号)。
命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見の提出先及び意見の提出のための期間(以下「意見提出期間」という。)を定めて広く一般の意見を求めなければなりません(行政手続法39条:意見公募手続)。そして、行政計画については、命令等に含まれないので、上記意見公募手続は不要です(行政手続法2条8号)。
よって、妥当ではないです。
3.計画策定権者に広範な裁量が認められるのが行政計画の特徴であるので、裁判所による計画裁量の統制は、重大な事実誤認の有無の審査に限られる。
3・・・妥当ではない
判例によると「都市施設の設置に関する決定については、決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられており、
判例によると「都市施設の設置に関する決定については、決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられており、
裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては、当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として、
その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により①重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、
又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等により②その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、
裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である。」
と判示しています。
つまり、「事実」の誤認だけでなく、「判断の過程」も審査の対象です。
よって、本肢は妥当ではないです。
4.都市計画法上の土地利用制限は、当然に受忍すべきとはいえない特別の犠牲であるから、損失補償が一般的に認められている。
4・・・妥当ではない
判例によると「原審の適法に確定した事実関係の下においては、Xらが受けた上記の損失は、一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということがいまだ困難である。
判例によると「原審の適法に確定した事実関係の下においては、Xらが受けた上記の損失は、一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということがいまだ困難である。
したがって、原告らは、直接憲法29条3項を根拠として上記の損失につき補償請求をすることはできないものというべきである。」
と判示しています。
つまり、都市計画法上の土地利用制限は、「当然に受忍すべき特別の犠牲であるとはいえない」から、「損失補償が一般的に認められません」
よって、妥当ではないです。
5.多数の利害関係者に不利益をもたらしうる拘束的な計画については、行政事件訴訟法において、それを争うための特別の訴訟類型が法定されている。
5・・・妥当ではない
行政事件訴訟法では行政計画を争うための特別な訴訟類型は法定されていません。
よって、誤りです。判例によると
「行政計画は、法的拘束力を持つ場合に取消訴訟の対象となる」
としています。
行政事件訴訟法では行政計画を争うための特別な訴訟類型は法定されていません。
よって、誤りです。判例によると
「行政計画は、法的拘束力を持つ場合に取消訴訟の対象となる」
としています。
平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法・債権 |
問4 | 職業選択の自由 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 精神的自由 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 学問の自由 | 問36 | 商法 |
問7 | 国会 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・社会 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・情報通信 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・情報通信 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |