日本の選挙制度に関する次のア~オの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
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ア.一般に小選挙区制は、政治が安定しやすいという長所がある反面、小政党の議席獲得が難しく、死票が多いという問題点が指摘されている。
イ.一般に比例代表制は、有権者の意思を公正に反映できるという長所がある反面、小党分立になり、政治が不安定になりやすいという問題点が指摘されている。
ウ.衆議院議員選挙では、小選挙区比例代表並立制がとられ、重複立候補が認められているが、小選挙区での得票順位と当落が逆転するなどの問題点があったため、重複立候補の場合の比例区での当選の要件を厳しくした。
エ.参議院議員選挙では、都道府県を単位とする選挙区選挙と比例代表制選挙がとられており、比例代表制選挙では各政党の得票数によって議席数を決め、各政党が作成した名簿上の順位によって当選者を決めることとされている。
オ.最高裁判所は、一票の価値について最大4倍以上の格差があった衆議院議員選挙について、憲法の法の下の平等に反して憲法違反であるとし、一部選挙区の選挙を無効とした。
- ア・ウ
- イ・エ
- ウ・エ
- ウ・オ
- エ・オ
【答え】:5
【解説】
ア.一般に小選挙区制は、政治が安定しやすいという長所がある反面、小政党の議席獲得が難しく、死票が多いという問題点が指摘されている。
ア・・・正しい
小選挙区制は一選挙区から一人の議員を選出する制度です。
- 小選挙区制のメリットとしては、小さな政党の分立を防止、二大政党制が形成されやすく政局が安定します。
- 小選挙区制のデメリットとしては、死票が多くなったり、小さい政党が議席を確保しにくいことがあげられます。
イ.一般に比例代表制は、有権者の意思を公正に反映できるという長所がある反面、小党分立になり、政治が不安定になりやすいという問題点が指摘されている。
イ・・・正しい
比例代表制は、各政党の得票率に比例して議席配分を行う制度です。
- 比例代表制のメリットとしては、死票が少なくなり、小さい政党からも当選しやすくなります。
- 比例代表制のデメリットとしては、小さい政党が乱立し、政治が不安定になりやすいです。
ウ.衆議院議員選挙では、小選挙区比例代表並立制がとられ、重複立候補が認められているが、小選挙区での得票順位と当落が逆転するなどの問題点があったため、重複立候補の場合の比例区での当選の要件を厳しくした。
ウ・・・正しい
日本の衆議院議員選挙では、小選挙区制と比例代表制を組み合わせた小選挙区比例代表並立制を導入しています。衆議院議員の小選挙区の立候補者者を政党の比例代表名簿にも登載することを「重複立候補」と言います。これにより小選挙区で落選しても、比例代表で復活当選することもあります。ただし、2000年(平成12年)の公職選挙法の改正により、小選挙区において、有効投票数の10分の1未満で落選した場合(供託金没収となる場合)、比例代表での復活当選は認められません(公職選挙法95条の2の6項)。
よって、本肢は正しいです。
供託金とは、立候補の際、国・地方公共団体に預けなければいけない金銭のことを言います。
エ.参議院議員選挙では、都道府県を単位とする選挙区選挙と比例代表制選挙がとられており、比例代表制選挙では各政党の得票数によって議席数を決め、各政党が作成した名簿上の順位によって当選者を決めることとされている。
エ・・・誤り
参議院議員選挙では、都道府県を単位とする選挙区選挙と比例代表制選挙がとられています。そして、比例代表制選挙では各政党の得票数によって議席数を決め、各候補者の個人名での得票数により、当選者を決定します。
これを「非拘束名簿式・比例代表制」と言います。(言い換えれば、政党が作成した名簿に順位は付かない)「拘束名簿式・比例代表制」は、衆議院の比例代表で採用されており、各政党の得票数によって議席数を決め、各政党が作成した名簿上の順位によって当選者を決めることとされている。
オ.最高裁判所は、一票の価値について最大4倍以上の格差があった衆議院議員選挙について、憲法の法の下の平等に反して憲法違反であるとし、一部選挙区の選挙を無効とした。
オ・・・誤り
一票の価値について最大4倍以上の格差があった衆議院議員選挙について、判例によると、
「衆議院議員選挙か憲法14条1項(法律の下の平等)に違反する議員定数配分規定に基づいて行われたことにより違法な場合であっても、選挙を無効とする結果余儀なくされる不都合を回避することを相当とする判示のような事情があるときは、いわゆる事情判決の制度の基礎に存するものと註すべき一般的な法の基本原則に従い、選挙無効の請求を棄却するとともに主文において当該選挙が違法である旨を宣言すべきである。」
としています。つまり、「憲法の法の下の平等に反して憲法違反である」は正しいですが、「一部選挙区の選挙を無効とした」が誤りです。正しくは、「事情判決の法理により選挙自体は無効ではない」です。
平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法・債権 |
問4 | 職業選択の自由 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 精神的自由 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 学問の自由 | 問36 | 商法 |
問7 | 国会 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・社会 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・情報通信 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・情報通信 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |