国家賠償法2条にいう公の営造物に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 公の営造物とは、国や公共団体が所有するすべての物的施設をいうわけではなく、公の用に供しているものに限られる。
- 公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいうが、賠償責任が成立するのは、当該安全性の欠如について過失があった場合に限られる。
- 河川・海浜等の自然公物は公の営造物に当たらないが、これに付随する堤防や防波堤は人工公物であり公の営造物に当たるので、賠償責任が成立するのは、堤防等に起因する損害の場合に限られる。
- 公の営造物の管理者と費用負担者とが異なる場合、被害者に対して損害賠償責任を負うのは、費用負担者に限られる。
- 公の営造物の設置または管理に起因する損害について賠償を請求することができるのは、その利用者に限られる。
【答え】:1
【解説】
1.公の営造物とは、国や公共団体が所有するすべての物的施設をいうわけではなく、公の用に供しているものに限られる。
1・・・正しい
道路、河川その他の「公の営造物」の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償責する責任があります(国家賠償法2条1項)。そして、上記「公の営造物」とは、①国または公共団体により②公の目的に供される有体物ないしは物的施設をいいます。
道路、河川その他の「公の営造物」の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償責する責任があります(国家賠償法2条1項)。そして、上記「公の営造物」とは、①国または公共団体により②公の目的に供される有体物ないしは物的施設をいいます。
つまり、国や公共団体が所有するすべての物的施設をいうわけではなく、公の用に供しているものに限られます。
2.公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいうが、賠償責任が成立するのは、当該安全性の欠如について過失があった場合に限られる。
2・・・誤り
判例によると「国家賠償法2条1項による営造物の設置または管理の瑕疵に基づく国および公共団体の損害賠償責任については、過失の存在を必要としない。」
判例によると「国家賠償法2条1項による営造物の設置または管理の瑕疵に基づく国および公共団体の損害賠償責任については、過失の存在を必要としない。」
と判示しています。
つまり、公の営造物の設置又は管理の瑕疵は無過失責任です。
よって、「賠償責任が成立するのは、・・過失があった場合に限られる」は誤りです。
3.河川・海浜等の自然公物は公の営造物に当たらないが、これに付随する堤防や防波堤は人工公物であり公の営造物に当たるので、賠償責任が成立するのは、堤防等に起因する損害の場合に限られる。
3・・・誤り
公の営造物(公物)には、「自然公物」と「人工公物」に分けることができます。
公の営造物(公物)には、「自然公物」と「人工公物」に分けることができます。
- 自然公物:河川、湖、沼、海、砂浜等
- 人工公物:道路、上下水道、庁舎、庁舎内の机・椅子、校舎、公用車、けん銃等
よって、「河川・海浜等の自然公物は公の営造物に当たらない」は誤りです。
河川については、国賠法2条の条文にも記載されています。(選択肢1の解説参照)
4.公の営造物の管理者と費用負担者とが異なる場合、被害者に対して損害賠償責任を負うのは、費用負担者に限られる。
4・・・誤り
国賠法2条の「公の営造物の設置・管理の瑕疵に基づく賠償責任」
について、「公の営造物の設置若しくは管理に当る者」と「公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者」とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責任があります(国家賠償法3条)。よって、「費用負担者に限られる」は誤りです。
国賠法2条の「公の営造物の設置・管理の瑕疵に基づく賠償責任」
について、「公の営造物の設置若しくは管理に当る者」と「公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者」とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責任があります(国家賠償法3条)。よって、「費用負担者に限られる」は誤りです。
「公の営造物の設置・管理に当たる者」と「費用負担者」の両方が賠償責任を負います。
5.公の営造物の設置または管理に起因する損害について賠償を請求することができるのは、その利用者に限られる。
5・・・誤り
判例によると、
「国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が有すべき安全性を欠いている状態をいう。そこにいう安全性の欠如、すなわち、他人に危害を及ぼす危険性のある状態とは、ひとり当該営造物を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によって一般的に右のような危害を生じさせる危険性がある場合のみならず、その営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含む。
判例によると、
「国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が有すべき安全性を欠いている状態をいう。そこにいう安全性の欠如、すなわち、他人に危害を及ぼす危険性のある状態とは、ひとり当該営造物を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によって一般的に右のような危害を生じさせる危険性がある場合のみならず、その営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含む。
また、その危害は、営造物の利用者に対してのみならず、利用者以外の第三者(に対するそれをも含むものと解すべきである。」
と判示しています。
つまり、第三者も国家賠償請求ができます。
平成21年度(2009年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法・債権 |
問4 | 職業選択の自由 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 精神的自由 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 学問の自由 | 問36 | 商法 |
問7 | 国会 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・社会 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・情報通信 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・情報通信 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |