民法の過去問

平成24年・2012|問27|民法総則

権利能力、制限行為能力および意思能力に関する次の記述のうち、民法および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 胎児に対する不法行為に基づく当該胎児の損害賠償請求権については、胎児は既に生まれたものとみなされるので、胎児の母は、胎児の出生前に胎児を代理して不法行為の加害者に対し損害賠償請求をすることができる。
  2. 失踪の宣告を受けた者は、死亡したものとみなされ、権利能力を喪失するため、生存することの証明がなされ失踪の宣告が取り消された場合でも、失踪の宣告後その取消し前になされた行為はすべて効力を生じない。
  3. 成年後見人は、正当な事由があるときは、成年被後見人の許諾を得て、その任務を辞することができるが、正当な事由がないときでも、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
  4. 成年被後見人の法律行為について、成年後見人は、これを取り消し、または追認することができるが、成年被後見人は、事理弁識能力を欠く常況にあるため、後見開始の審判が取り消されない限り、これを取り消し、または追認することはできない。
  5. 後見開始の審判を受ける前の法律行為については、制限行為能力を理由として当該法律行為を取り消すことはできないが、その者が当該法律行為の時に意思能力を有しないときは、意思能力の不存在を立証して当該法律行為の無効を主張することができる。

>解答と解説はこちら

【答え】:5

【解説】

1.胎児に対する不法行為に基づく当該胎児の損害賠償請求権については、胎児は既に生まれたものとみなされるので、胎児の母は、胎児の出生前に胎児を代理して不法行為の加害者に対し損害賠償請求をすることができる。

1・・・妥当ではない

判例によると、
「胎児の間は権利能力はないが、無事に生まれると相続の開始や不法行為の時に遡って権利能力を取得する」としています(大判昭7.10.6)。

つまり、出生までは権利能力がないので、胎児に法定代理人は付けられません

よって、「胎児の母は、胎児の出生前に胎児を代理して・・・」が妥当ではありません。

2.失踪の宣告を受けた者は、死亡したものとみなされ、権利能力を喪失するため、生存することの証明がなされ失踪の宣告が取り消された場合でも、失踪の宣告後その取消し前になされた行為はすべて効力を生じない。

2・・・妥当ではない

失踪の宣告を受けた者は、死亡したものとみなします(民法31条)。

つまり、失踪宣告者の所有する不動産等について相続が発生するということです。

一方、失踪宣告を受けた者の「権利能力」や「行為能力」がなくなりません
したがって、失踪の宣告後その取消し前になされた「失踪者の行為」についても原則有効です。

よって、妥当ではありません。

具体例を入れた方が分かりやすいので、個別指導で具体例もいれて解説します!

3.成年後見人は、正当な事由があるときは、成年被後見人の許諾を得て、その任務を辞することができるが、正当な事由がないときでも、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。

3・・・妥当ではない

後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞めるができます民法844条)。

本肢は「成年被後見人の許諾を得て」が妥当ではありません。

また「正当な事由がないときでも、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる」も妥当でありません。

正当な事由がなければ、後見人をやめることができないです。

4.成年被後見人の法律行為について、成年後見人は、これを取り消し、または追認することができるが、成年被後見人は、事理弁識能力を欠く常況にあるため、後見開始の審判が取り消されない限り、これを取り消し、または追認することはできない。

4・・・妥当ではない

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができます(民法120条)。

つまり、成年後見人だけでなく、成年被後見人も取消しが可能です。

よって、妥当ではありません。

「追認」については、個別指導で解説します!

5.後見開始の審判を受ける前の法律行為については、制限行為能力を理由として当該法律行為を取り消すことはできないが、その者が当該法律行為の時に意思能力を有しないときは、意思能力の不存在を立証して当該法律行為の無効を主張することができる。

5・・・妥当

「後見開始の審判を受ける前」成年被後見人ではないため、制限行為能力を理由として当該法律行為を取り消すことはできません。

また、
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効です(民法3条の2)。

よって、法律行為の時に意思能力を有しないときは、意思能力の不存在を立証して当該法律行為の無効を主張することができます。

したがって、妥当です。

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平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問46|民法・記述式

Aの指輪が、Bによって盗まれ、Bから、事情を知らない宝石店Cに売却された。Dは、宝石店Cからその指輪を50万円で購入してその引渡しを受けたが、Dもまたそのような事情について善意であり、かつ無過失であった。盗難の時から1年6か月後、Aは、盗まれた指輪がDのもとにあることを知り、同指輪をDから取り戻したいと思っている。この場合、Aは、Dに対し指輪の返還を請求することができるか否かについて、必要な、または関係する要件に言及して、40字程度で記述しなさい。

>解答と解説はこちら

【答え】:Aは、盗難の時から2年以内に、Dに50万円を弁償すれば、Dに指輪の返還請求ができる。(42字)

【解説】

問題文の状況は、

  • Aの指輪が、Bによって盗まれた
  • Bが、盗んだ指輪を、事情を知らない宝石店Cに売却した
  • Dは、宝石店Cからその指輪を50万円で購入してその引渡しを受けた(Dは善意無過失)

上記状況で、

盗難の時から1年6か月後、Aは、盗まれた指輪がDのもとにあることを知り、同指輪をDから取り戻したいと思っている。

この場合、Aは、Dに対し指輪の返還を請求することができるか否かについて、必要な、または関係する要件を考えます。

盗まれたAがDから指輪を取り戻そうとしているので、下記条文を考えます。

占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間占有者に対してその物の回復を請求することができる民法193条)。

占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない民法194条)。

要件を考える

Aは、Dに対し指輪の返還を請求することができる要件を考えると、

  1. 盗難又は遺失の時から2年以内に、返還請求をすること
  2. 占有者Dが支払った代価を弁償すること

この2つが要件です。

問題文では、「盗難の時から1年6か月後」となっているので、返還請求が可能です。

そのため、上記2つの要件をまとめると

Aは、盗難の時から2年以内に、Dに50万円を弁償すれば、Dに指輪の返還請求ができる。(42字)

※条文では「回復」という文言が使われているので「回復請求」を使うことも可能ですが、問題文に「Aは、Dに対し指輪の返還を請求することができるか否かについて、必要な、または関係する要件に言及して、40字程度で記述しなさい」と書かれているので、「返還請求」という文言を使った方が良いでしょう。

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平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・政治
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問35|民法・親族

婚姻および離婚に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか(改)。

1 未成年者が婚姻をするには、父母のいずれかの同意があれば足り、父母ともにいない未成年者の場合には、家庭裁判所の許可をもってこれに代えることができる。

2 未成年者が婚姻をしたときは、成年に達したものとみなされる。したがって当該未成年者は、法定代理人の同意がなくても単独で法律行為をすることができ、これは当該未成年者が離婚をした後であっても同様である。

3 養親子関係にあった者どうしが婚姻をしようとする場合、離縁により養子縁組を解消することによって、婚姻をすることができる。

4 離婚をした場合には、配偶者の親族との間にあった親族関係は当然に終了するが、夫婦の一方が死亡した場合には、生存配偶者と死亡した配偶者の親族との間にあった親族関係は、当然には終了しない。

5 協議離婚をしようとする夫婦に未成年の子がある場合においては、協議の上、家庭裁判所の許可を得て、第三者を親権者とすることを定めることができる。

 

>解答と解説はこちら

【答え】:4

【解説】

1 未成年者が婚姻をするには、父母のいずれかの同意があれば足り、父母ともにいない未成年者の場合には、家庭裁判所の許可をもってこれに代えることができる。

1・・・誤り

未成年者(18歳未満の者)は、父母のどちらか一方の同意があったとしても、婚姻をすることはできません。よって、問題文全体が誤りです。婚姻は、成年者(18歳以上の者)しかできません。(2022年4月1日施行)

2 未成年者が婚姻をしたときは、成年に達したものとみなされる。したがって当該未成年者は、法定代理人の同意がなくても単独で法律行為をすることができ、これは当該未成年者が離婚をした後であっても同様である。

2・・・誤り

未成年者は、そもそも婚姻することができません。よって、本問の内容は誤りです。

3 養親子関係にあった者どうしが婚姻をしようとする場合、離縁により養子縁組を解消することによって、婚姻をすることができる。

3・・・誤り

養子と養親は、離縁した後でも、婚姻をすることができません民法736条)。

よって、養親子関係にあった者どうしは、離縁により養子縁組を解消した後も婚姻できないので誤りです。

4 離婚をした場合には、配偶者の親族との間にあった親族関係は当然に終了するが、夫婦の一方が死亡した場合には、生存配偶者と死亡した配偶者の親族との間にあった親族関係は、当然には終了しない。

4・・・正しい

姻族関係は、離婚によって終了します(民法728条1項)

そのため、離婚をした場合には、配偶者の親族との間にあった親族関係は当然に終了します。

夫婦の一方が死亡した場合においては、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときに、姻族関係が終了します(民法728条2項)。

したがって、夫婦の一方が死亡した場合からといって、生存配偶者と死亡した配偶者の親族との間にあった親族関係は当然には終了しません。

5 協議離婚をしようとする夫婦に未成年の子がある場合においては、協議の上、家庭裁判所の許可を得て、第三者を親権者とすることを定めることができる。

5・・・誤り

未成年者の子がいる父母協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければなりません民法819条1項)。

本肢のように、家庭裁判所の許可を得て、第三者を親権者とすることを定めることはできません。

よって、誤りです。

細かい知識については個別指導で解説します!

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平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・政治
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問34|民法

Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。
  1. 甲建物がAからBに引き渡されていない場合に、A・B間の贈与が書面によってなされたときには、Aは、Bからの引渡請求を拒むことはできない。
  2. 甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。
  3. 甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡した後に同建物についてA名義の保存登記をしたときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することができる。
  4. A名義の登記がなされた甲建物がBに引き渡されたときには、Aは、Bからの甲建物についての移転登記請求を拒むことはできない。
  5. 贈与契約のいきさつにおいて、Aの不法性がBの不法性に比してきわめて微弱なものであっても、Aが未登記建物である甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。
>解答と解説はこちら
【答え】:2 【解説】
Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。 1.甲建物がAからBに引き渡されていない場合に、A・B間の贈与が書面によってなされたときには、Aは、Bからの引渡請求を拒むことはできない。
1・・・誤り 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効です(民法90条:公序良俗)。 本問は、不倫関係の維持が目的で贈与契約をしているので、公序良俗に反して無効となります。
Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。 2.甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。
2・・・正しい 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができません民法708条:不法原因給付)。 そして、判例によると、 「不法の原因により未登記建物を贈与した場合、その引渡は、民法708条にいう給付にあたる。 建物の贈与に基づく引渡が不法原因給付にあたる場合に、贈与者は、目的物の所有権が自己にあることを理由として、右建物の返還を請求することはできない」としています(最判昭45.10.21)。 不倫関係の維持が目的の贈与により建物を贈与した場合、不法原因給付に当たります。 よって、AがBに対して甲建物の返還を請求することはできません。 理由など細かい解説については、個別指導で解説します!
Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。 3.甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡した後に同建物についてA名義の保存登記をしたときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することができる。
3・・・誤り 不倫関係を維持する目的で、AがA所有の甲建物をBに贈与した場合、不法原因給付に当たります。 そして、当該建物が未登記であっても、引渡しが完了することで、「給付」したことになるので、それ以降、Aが保存登記をしたとしても、給付した建物の返還を請求することができません。 よって、誤りです。 この辺りはしっかり理解する必要があるので、個別指導で解説します!
Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。 4.A名義の登記がなされた甲建物がBに引き渡されたときには、Aは、Bからの甲建物についての移転登記請求を拒むことはできない。
4・・・誤り 判例によると、 「不法の原因により既登記建物を贈与した場合、その引渡をしただけでは、民法708条にいう給付があったとはいえない」としています(最判昭46.10.28)。 つまり、登記済の建物は、「引渡し」と「登記の移転」の2つを行うことで「給付」したことになり、引渡しをしただでは給付にはならないということです。 よって、本肢の場合、まだ移転登記をしていないので、「給付」したことにならないので 移転登記請求を拒むことができます。 本肢も理解する必要があるので、個別指導で解説します!
Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。 5.贈与契約のいきさつにおいて、Aの不法性がBの不法性に比してきわめて微弱なものであっても、Aが未登記建物である甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。
5・・・誤り 判例によると、 「消費貸借成立のいきさつにおいて、貸主の側に多少の不法があったとしても、借主の側にも不法の点があり、前者の不法性が後者のそれに比しきわめて微弱なものに過ぎない場合には、民法第90条(公序良俗)および第708条(不法原因給付)は適用がなく、貸主は貸金の返還を請求することができる」としています(最判昭29.8.31)。 本肢の場合、Aの不法性がBの不法性に比してきわめて微弱なものなので、不法原因給付のルールは適用されず、Aは、Bに対して返還請求ができます。 よって、誤りです。

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平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・政治
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問33|民法・組合

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。

  1. Aは、組合の常務について単独で行うことはできず、総組合員の過半数の賛成が必要であるから、Aのほか2人以上の組合員の賛成を得た上で行わなければならない。
  2. 組合契約でA、B、Cの3人を業務執行者とした場合には、組合の業務の執行は、A、B、C全員の合意で決しなければならず、AとBだけの合意では決することはできない。
  3. 組合契約で組合の存続期間を定めない場合に、Aは、やむを得ない事由があっても、組合に不利な時期に脱退することはできない。
  4. やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約がある場合に、Aは、適任者を推薦しない限り当該組合を脱退することはできない。
  5. 組合財産に属する特定の不動産について、第三者が不法な保存登記をした場合に、Aは、単独で当該第三者に対して抹消登記請求をすることができる。

>解答と解説はこちら

【答え】:5

【解説】

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した

1.Aは、組合の常務について単独で行うことはできず、総組合員の過半数の賛成が必要であるから、Aのほか2人以上の組合員の賛成を得た上で行わなければならない。

1・・・誤り

組合の常務は、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができます(民法670条5項)。

つまり、組合の常務(日常業務)は、組合全員の過半数の賛成は不要です。

単独で行えるので本肢は誤りです。

「組合の常務」や「組合の業務」については、個別指導で解説します!

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した

2.組合契約でA、B、Cの3人を業務執行者とした場合には、組合の業務の執行は、A、B、C全員の合意で決しなければならず、AとBだけの合意では決することはできない。

2・・・誤り

業務執行者は、組合の業務を決定し、これを執行します。

そして、この場合、業務執行者が数人あるときは、組合の業務は、業務執行者の過半数をもって決定し、各業務執行者がこれを執行します(民法670条3項)

つまり、「全員の合意」は誤りです。

組合の業務の執行は、A、B、Cの過半数の合意で決します。

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した

3.組合契約で組合の存続期間を定めない場合に、Aは、やむを得ない事由があっても、組合に不利な時期に脱退することはできない。

3・・・誤り

組合契約で組合の存続期間を定めなかったときは、各組合員は、いつでも脱退することができます。

そして、やむを得ない事由がある場合も同様にいつでも脱退できます(民法678条)。

したがって、「Aは、やむを得ない事由があっても、組合に不利な時期に脱退することはできない」は誤りです。

本肢は理解が必要なので、個別指導で解説します!

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した

4.やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約がある場合に、Aは、適任者を推薦しない限り当該組合を脱退することはできない。

4・・・誤り

判例によると、
やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約における約定は、無効である」としています(最判平11.2.23)。

よって、「やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない」旨の組合契約がある場合、当該契約(特約)は無効なので、組合を脱退することはできます。

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した

5.組合財産に属する特定の不動産について、第三者が不法な保存登記をした場合に、Aは、単独で当該第三者に対して抹消登記請求をすることができる。

5・・・正しい

組合財産に属する特定の不動産について、第三者が不法な保存登記をした場合
判例によると、
組合員の一人は、単独で、組合財産である不動産につき登記簿上の所有名義者たる者に対して登記の抹消を求めることができる」としています(最判昭33.7.22)。

つまり、Aは、単独で当該第三者に対して抹消登記請求をすることができるので、正しいです。

理由については、個別指導で解説します!

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平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・政治
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問30|民法・詐害行為取消請求

詐害行為取消権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 遺産分割協議は、共同相続人の間で相続財産の帰属を確定させる行為であるが、相続人の意思を尊重すべき身分行為であり、詐害行為取消権の対象となる財産権を目的とする法律行為にはあたらない。
  2. 相続放棄は、責任財産を積極的に減少させる行為ではなく、消極的にその増加を妨げる行為にすぎず、また、相続放棄は、身分行為であるから、他人の意思によって強制されるべきではないので、詐害行為取消権行使の対象とならない。
  3. 離婚における財産分与は、身分行為にともなうものではあるが、財産権を目的とする法律行為であるから、財産分与が配偶者の生活維持のためやむをえないと認められるなど特段の事情がない限り、詐害行為取消権の対象となる。
  4. 詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、債権者が複数存在するときは、取消債権者は、総債権者の総債権額のうち自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ取り消すことができる。
  5. 詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、取消しに基づいて返還すべき財産が金銭である場合に、取消債権者は受益者に対して直接自己への引渡しを求めることはできない。

>解答と解説はこちら

【答え】:2

【解説】

1.遺産分割協議は、共同相続人の間で相続財産の帰属を確定させる行為であるが、相続人の意思を尊重すべき身分行為であり、詐害行為取消権の対象となる財産権を目的とする法律行為にはあたらない。

1・・・妥当ではない

判例によると、
「共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となる」としています(最判平11.6.11)。

よって、本肢、「遺産分割協議は、詐害行為取消権の対象となる財産権を目的とする法律行為にはあたらない」というのは妥当ではありません。

具体例については個別指導で解説します!

2.相続放棄は、責任財産を積極的に減少させる行為ではなく、消極的にその増加を妨げる行為にすぎず、また、相続放棄は、身分行為であるから、他人の意思によって強制されるべきではないので、詐害行為取消権行使の対象とならない。

2・・妥当

判例によると、
相続の放棄は、民法424条詐害行為取消権行使の対象とならない

その理由は、詐害行為取消権行使の対象となる行為は、積極的に債務者の財産を減少させる行為であることを要し、

消極的にその増加を妨げるにすぎないものを包含しないものと解する。

そして、相続の放棄は、相続人の意思からいっても、また法律上の効果からいっても、これを既得財産を積極的に減少させる行為というよりはむしろ消極的にその増加を妨げる行為にすぎないとみるのが、妥当である」としています(最判昭49.9.20)。

よって、本肢は妥当です。

3.離婚における財産分与は、身分行為にともなうものではあるが、財産権を目的とする法律行為であるから、財産分与が配偶者の生活維持のためやむをえないと認められるなど特段の事情がない限り、詐害行為取消権の対象となる。

3・・・妥当ではない

財産分与について、
家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定めます(民法768条3項)。

そして、判例によると、
離婚に伴う財産分与は、民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為とはならない」としています(最判昭58.12.19)。

よって、本肢は、妥当ではありません。

4.詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、債権者が複数存在するときは、取消債権者は、総債権者の総債権額のうち自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ取り消すことができる。

4・・・妥当ではない

債権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができます民法424条の8)。

よって、本肢は「自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ取り消すことができる」は誤りです。

「自己の債権の額の限度として取り消すことができる」が正しいです。

具体例については個別指導で解説します!

5.詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、取消しに基づいて返還すべき財産が金銭である場合に、取消債権者は受益者に対して直接自己への引渡しを求めることはできない。

5・・・妥当ではない

債権者は、詐害行為取消権に基づいて、受益者又は転得者に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が金銭の支払又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができます民法424条の9の1項)。

よって、本肢は妥当ではありません。

具体例については個別指導で解説します!

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平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・政治
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問31|民法・契約解除

契約の解除に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡しまでの間にAの火の不始末により当該建物が焼失した。Bは、引渡し期日が到来した後でなければ、当該売買契約を解除することができない。

イ Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡し期日が到来してもAはBに建物を引き渡していない。Bが、期間を定めずに催告した場合、Bは改めて相当の期間を定めて催告をしなければ、当該売買契約を解除することはできない。

ウ AとBが、その共有する建物をCに売却する契約を締結したが、その後、AとBは、引渡し期日が到来してもCに建物を引き渡していない。Cが、当該売買契約を解除するためには、Aに対してのみ解除の意思表示をするのでは足りない。

エ Aが、その所有する土地をBに売却する契約を締結し、その後、Bが、この土地をCに転売した。Bが、代金を支払わないため、Aが、A・B間の売買契約を解除した場合、C名義への移転登記が完了しているか否かに関わらず、Cは、この土地の所有権を主張することができる。

オ Aが、B所有の自動車をCに売却する契約を締結し、Cが、使用していたが、その後、Bが、所有権に基づいてこの自動車をCから回収したため、Cは、A・C間の売買契約を解除した。この場合、Cは、Aに対しこの自動車の使用利益(相当額)を返還する義務を負う。

  1. ア・エ
  2. イ・ウ
  3. イ・オ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

>解答と解説はこちら

【答え】:5

【解説】

ア Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡しまでの間にAの火の不始末により当該建物が焼失した。Bは、引渡し期日が到来した後でなければ、当該売買契約を解除することができない。

ア・・・妥当ではない

債務の全部の履行が不能であるとき、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができます(民法542条1項1号)。

よって、「引渡し期日が到来した後でなければ、当該売買契約を解除することができない」は妥当ではありません。

イ Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡し期日が到来してもAはBに建物を引き渡していない。Bが、期間を定めずに催告した場合、Bは改めて相当の期間を定めて催告をしなければ、当該売買契約を解除することはできない。

イ・・妥当ではない

判例によると、
期間を定めずに催告した場合、相当期間が経過すれば、債権者は改めて催告することなく、解除することができる」としています(大判昭2.2.2)。

よって、「Bは改めて相当の期間を定めて催告をしなければ、当該売買契約を解除することはできない」は妥当ではありません。

ウ AとBが、その共有する建物をCに売却する契約を締結したが、その後、AとBは、引渡し期日が到来してもCに建物を引き渡していない。Cが、当該売買契約を解除するためには、Aに対してのみ解除の意思表示をするのでは足りない。

ウ・・・妥当

当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してしなければなりません(民法544条1項)。

よって、本肢は妥当です。

エ Aが、その所有する土地をBに売却する契約を締結し、その後、Bが、この土地をCに転売した。Bが、代金を支払わないため、Aが、A・B間の売買契約を解除した場合、C名義への移転登記が完了しているか否かに関わらず、Cは、この土地の所有権を主張することができる。

エ・・・妥当ではない

判例によると、
「甲乙間になされた甲所有不動産の売買が契約の時に遡って(さかのぼって)合意解除された場合、すでに乙からこれを買い受けていたが、未だ所有権移転登記を得ていなかった丙は、右合意解除が信義則に反する等特段の事情がないかぎり、乙に代位して、甲に対し所有権移転登記を請求することはできない」としています(最判昭33.6.14)。

つまり、Aが、A・B間の売買契約を解除した場合、C名義への移転登記が完了していなかったとき、Cは、この土地の所有権を主張することができないです。

よって、本肢は妥当ではありません。

オ Aが、B所有の自動車をCに売却する契約を締結し、Cが、使用していたが、その後、Bが、所有権に基づいてこの自動車をCから回収したため、Cは、A・C間の売買契約を解除した。この場合、Cは、Aに対しこの自動車の使用利益(相当額)を返還する義務を負う。

オ・・・妥当

判例によると、
「売買契約に基づき目的物の引渡を受けていた買主Cは、売主Aがその売却した権利をBから取得して買主Cに移転することができず、右契約を解除した場合でも、原状回復義務の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主Aに返還しなければならない」としています(最判昭51.2.13)。

したがって、Cは解除に伴う、原状回復義務があります。

よって、Cは、使用利益(Bの車に乗って得た利益)に相当する金額も、返還義務を負います。

上記から、本肢は妥当です。

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平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・政治
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問32|民法

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。この場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはいくつあるか。

ア Aが、甲土地についての正当な権原に基づかないで乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物をCに使用させている場合に、乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。

イ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、乙建物の所有権をAから譲り受けたBは、乙建物についての移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。

ウ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。

エ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている場合、Aが、Cに対して乙建物を売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBの承諾を得る必要がある。

オ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

>解答と解説はこちら

【答え】:2

【解説】

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。

ア Aが、甲土地についての正当な権原に基づかないで乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物をCに使用させている場合に、乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。

ア・・・誤り

判例によると、「建物賃借人は、建物賃貸人による敷地所有権の取得時効を援用することはできない」としています(最判昭44.7.15)。

よって、Cは、甲土地にかかるAの取得時効を援用することができません。

本肢は誤りです。

理由については。個別指導で解説します!

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。

イ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、乙建物の所有権をAから譲り受けたBは、乙建物についての移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。

イ・・正しい

賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない(民法605条の2の3項)。

新賃貸人Bが、賃借人Cに家賃を請求するには、登記が必要です。

よって、「Bは、乙建物についての移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない」ので正しいです。

「問題文の理解」や「地位の移転」について、個別指導で解説します!

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。

ウ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。

ウ・・・誤り

判例によると、
借地上の建物の賃借人は、地代の弁済について法律上の利害関係を有する」としています(最判昭63.7.1)。

つまり、Cは、建物賃貸人Aに無断で、地主Bに対して地代を支払うことができます。

よって、本肢は誤りです。

理由については、個別指導で解説します!

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。

エ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている場合、Aが、Cに対して乙建物を売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBの承諾を得る必要がある。

エ・・・正しい

判例によると、
「賃借地上にある建物の売買契約が締結された場合においては、特別の事情のないかぎり、売主は、買主に対し、その建物の敷地の賃借権をも譲渡したものであって、それに伴い、その賃借権譲渡につき賃貸人の承諾を得る義務を負う」としています(最判昭47.3.9)。

甲土地の賃借人Aが、甲土上に乙建物を建築し、この乙建物をCに売る場合、
甲土地の賃借権をCに譲ることについて、地主Bの承諾が必要です。

よって、本肢は正しいです。

理由については、個別指導で解説します!

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。

オ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。

オ・・・正しい

判例によると、
「土地賃借人と賃借人との間において土地賃貸借契約を合意解除しても、土地賃貸人は、特別の事情がないかぎり、その効果を地上建物の賃借人に対抗できない」としています(最判昭38.2.21)。

よって、甲土地の貸し借りをしているAとBの間で契約が合意解除されても、地主Bは、建物賃借人Cに対して、建物の明け渡しを請求できません。

したがって、正しいです。

理由については、個別指導で解説します!

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平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・政治
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問29|民法

Aが自己所有の事務機器甲(以下、「甲」という。)をBに売却する旨の売買契約(以下、「本件売買契約」という。)が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Aが甲をすでにBに引き渡しており、さらにBがこれをCに引き渡した場合であっても、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、甲につき先取特権を行使することができる。
  2. Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、同時履行の抗弁権を行使してこれを拒むことができる。
  3. 本件売買契約において所有権留保特約が存在し、AがBから売買代金の支払いを受けていない場合であったとしても、それらのことは、Cが甲の所有権を承継取得することを何ら妨げるものではない。
  4. Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、留置権を行使してこれを拒むことができる。
  5. Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、Bが売買代金を支払わないことを理由にAが本件売買契約を解除(債務不履行解除)したとしても、Aは、Cからの所有権に基づく甲の引渡請求を拒むことはできない。

>解答と解説はこちら

【答え】:4

【解説】

Aが自己所有の事務機器甲をBに売却する旨の売買契約が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。

1.Aが甲をすでにBに引き渡しており、さらにBがこれをCに引き渡した場合であっても、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、甲につき先取特権を行使することができる。

1・・・妥当ではない

先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができません民法333条)。

よって、BがこれをCに引き渡した場合、先取特権を行使できないので、妥当ではありません。

本肢は理解すべきなので、個別指導で「具体例」や「理由」を入れて解説します!

Aが自己所有の事務機器甲をBに売却する旨の売買契約が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。

2.Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、同時履行の抗弁権を行使してこれを拒むことができる。

2・・妥当ではない

Aが甲をまだBに引き渡していない場合、Bに対して、同時履行の抗弁権を主張できます(民法533条)。

この同時履行の抗弁権については、契約相手以外の者には主張できません

そのため、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは同時履行の抗弁権を行使することができないので、当該引渡請求を拒むことができません。

Aが自己所有の事務機器甲をBに売却する旨の売買契約が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。

3.本件売買契約において所有権留保特約が存在し、AがBから売買代金の支払いを受けていない場合であったとしても、それらのことは、Cが甲の所有権を承継取得することを何ら妨げるものではない。

3・・・妥当ではない

売買契約において所有権留保特約が存在している場合、AがBから売買代金の支払いを受けていないとき、所有権は売主Aにあるため、Cが甲の所有権を承継取得することを妨げます

よって、本肢は妥当ではありません。

所有権留保については、個別指導で解説します!

Aが自己所有の事務機器甲をBに売却する旨の売買契約が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。

4.Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、留置権を行使してこれを拒むことができる。

4・・・妥当

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができます(民法295条1項本文1項)。

そして、留置権は物権なので、第三者にも主張できます

よって、AはCに甲を渡すことを拒否できるので、本肢は、妥当です。

Aが自己所有の事務機器甲をBに売却する旨の売買契約が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。

5.Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、Bが売買代金を支払わないことを理由にAが本件売買契約を解除(債務不履行解除)したとしても、Aは、Cからの所有権に基づく甲の引渡請求を拒むことはできない。

5・・・妥当ではない

判例によると、
「甲乙間になされた甲所有不動産の売買が契約の時に遡って(さかのぼって)合意解除された場合、すでに乙からこれを買い受けていたが、未だ所有権移転登記を得ていなかった丙は、右合意解除が信義則に反する等特段の事情がないかぎり、乙に代位して、甲に対し所有権移転登記を請求することはできない」としています(最判昭33.6.14)。

つまり、本肢の場合、「Aは、Cからの所有権に基づく甲の引渡請求を拒むことができる」ので本肢は妥当ではありません。

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平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・政治
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成25年・2013|問28|民法・時効

不動産の取得時効と登記に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 不動産の取得時効の完成後、占有者が登記をしないうちに、その不動産につき第三者のために抵当権設定登記がなされた場合であっても、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したときは、特段の事情がない限り、占有者はその不動産を時効により取得し、その結果、抵当権は消滅する。
  2. 不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができない。
  3. 不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができず、このことは、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したとしても、特段の事情がない限り、異ならない。
  4. 不動産の取得時効の完成後、占有者が、その時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して時効を主張するにあたり、起算点を自由に選択して取得時効を援用することは妨げられない。
  5. 不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後にその不動産を譲り受けて登記をした者に対して、その譲受人が背信的悪意者であるときには、登記がなくても時効取得をもって対抗することができるが、その譲受人が背信的悪意者であると認められるためには、同人が当該不動産を譲り受けた時点において、少なくとも、その占有者が取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していたことを要する。

>解答と解説はこちら

【答え】:1

【解説】

1.不動産の取得時効の完成後、占有者が登記をしないうちに、その不動産につき第三者のために抵当権設定登記がなされた場合であっても、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したときは、特段の事情がない限り、占有者はその不動産を時効により取得し、その結果、抵当権は消滅する。

1・・・妥当

判例によると、
「不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を完了した場合において,

上記不動産の時効取得者である占有者が,その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し,その期間の経過後に取得時効を授用したときは,・・・特段の事情がない限り,
上記占有者が,上記不動産を時効取得する結果,上記抵当権は消滅する。」としています(最判平24.3.16)。

よって、本肢は妥当です。

具体例については、個別指導で解説します!

2.不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができない。

2・・妥当ではない

判例によると、
不動産の時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から当該不動産の譲渡を受けその旨の移転登記を経由した者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができる」としています(最判昭41.11.22)。

つまり、不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者に対して、「登記がなくても」時効取得をもって対抗することができます。

よって、本肢は妥当ではありません。

本肢の理解の仕方は、個別指導で解説します!

3.不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができず、このことは、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したとしても、特段の事情がない限り、異ならない。

3・・・妥当ではない

判例によると、
「不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが、第三者の右登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、その第三者に対し、登記を経由しなくとも時効取得をもって対抗することができる」としています(最判昭36.7.20)。

つまり、
「不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができず」という記述は正しいです。

一方、
「その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したとしても、特段の事情がない限り、異ならない」は妥当ではありません。

その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続した場合、
不動産を時効により取得した占有者は、登記失くして第三者に対抗できます。

本肢も理解すべき問題なので、理解の仕方は、個別指導で解説します!

4.不動産の取得時効の完成後、占有者が、その時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して時効を主張するにあたり、起算点を自由に選択して取得時効を援用することは妨げられない。

4・・・妥当ではない

判例によると、
「時効期間は、時効の基礎たる事実の開始された時を起算点として計算すべきもので、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない」としています(最判昭35.7.27)。

よって、起算点を自由に選択して取得時効を援用することはできないので、本肢は妥当ではありません。

本肢の「妨げられない」という用語については、
個別指導で解説します!

5.不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後にその不動産を譲り受けて登記をした者に対して、その譲受人が背信的悪意者であるときには、登記がなくても時効取得をもって対抗することができるが、その譲受人が背信的悪意者であると認められるためには、同人が当該不動産を譲り受けた時点において、少なくとも、その占有者が取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していたことを要する。

5・・・妥当ではない

判例によると、
「甲が時効取得した不動産について,その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において,乙が,当該不動産の譲渡を受けた時に,甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており,甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは,乙は背信的悪意者に当たる。

そして、甲が取得時効の成立要件を充足していることをすべて具体的に認識していなくても,背信的悪意者と認められる場合があるというべきであるが,その場合であっても,少なくとも,乙が甲による多年にわたる占有継続の事実を認識している必要がある
」としています(最判平18.1.17)。

よって、本肢は「少なくとも、その占有者が取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していたことを要する」が妥当ではありません。

本肢の理解の仕方は、個別指導で解説します!

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平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 法の下の平等 問33 民法
問4 憲法と私法上の行為 問34 民法:債権
問5 権力分立 問35 民法:親族
問6 国会 問36 商法
問7 憲法・精神的自由 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 法改正のより削除 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・経済
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・社会
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・政治
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・情報通信
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略