基礎法学の過去問

平成28年・2016|問2|基礎法学・条文

法律の形式に関する次のア~オの記述のうち、現在の立法実務の慣行に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア 法律は、「条」を基本的単位として構成され、漢数字により番号を付けて条名とするが、「条」には見出しを付けないこととされている。

イ 「条」の規定の中の文章は、行を改めることがあり、そのひとつひとつを「項」という。

ウ ひとつの「条」およびひとつの「項」の中で用語等を列挙する場合には、漢数字により番号を付けて「号」と呼ぶが、「号」の中で用語等を列挙する場合には、片仮名のイロハ順で示される。

エ 法律の一部改正により特定の「条」の規定をなくす場合において、その「条」の番号を維持し、その後の「条」の番号の繰り上げを避けるときは、改正によってなくす規定の「条」の番号を示した上で「削除」と定めることとされている。

オ 法律の一部改正により新たに「条」の規定を設ける場合には、その新しい「条」の規定の内容が直前の「条」の規定の内容に従属しているときに限り、その新しい「条」には直前の「条」の番号の枝番号が付けられる。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:2

【解説】

ア 法律は、「」を基本的単位として構成され、漢数字により番号を付けて条名とするが、「条」には見出しを付けないこととされている。
ア・・・妥当でない
「条」には、それぞれ、見出しがついています。よって、妥当ではありません。
また、漢数字により番号をつけて条名としています。例えば、行政手続法第1条を見ると、1条の「1」は漢数字の「一」が使われています。
そして、(目的等)と見出しがついています。

(目的等)
第一条 この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第四十六条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。
 処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関しこの法律に規定する事項について、他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる。

イ 「条」の規定の中の文章は、行を改めることがあり、そのひとつひとつを「項」という。
イ・・・妥当
第〇条の中の文章を改行することで、第〇条の中を、1項2項と分けることができます。
選択肢アも、1項と2項があります。ただし、1項について「1」を付けません。
ウ ひとつの「条」およびひとつの「項」の中で用語等を列挙する場合には、漢数字により番号を付けて「号」と呼ぶが、「号」の中で用語等を列挙する場合には、片仮名のイロハ順で示される。
ウ・・・妥当
「条」や「項」の中で列挙するときは、漢数字の「」になります。
例えば「行政手続法第2条(定義)」です。今回下に示したものは「四号」までしか記載しませんでしたが、五号以降もあります。さらに、「」の中で用語等を列挙する場合には、片仮名のイロハ順で示されます。
下記「四号」の中には「イ、ロ、ハ、ニ」の4つが列挙されています。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 法令 法律、法律に基づく命令(告示を含む。)、条例及び地方公共団体の執行機関の規則(規程を含む。以下「規則」という。)をいう。
 処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。
 申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
 不利益処分 行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。
 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分
 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分
 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの

エ 法律の一部改正により特定の「条」の規定をなくす場合において、その「条」の番号を維持し、その後の「条」の番号の繰り上げを避けるときは、改正によってなくす規定の「条」の番号を示した上で「削除」と定めることとされている。
エ・・・妥当
既存の条を廃止する方式には、
①「第〇条を削る。」とする方式と、
②「第〇条を次のように改める。」とした上で「第〇条 削除」とする方式(単に削除するだけの場合もある)との二つの方式があります。
前者①の方式を採った場合、削り取られた条は、欠番となるわけではなく、ちょうどスポーツで前の順位の人が失格すれば後ろの人の順位が繰り上げられるのと同様に、後ろに続く条について、その繰上げが行われることになります。一方、後者②の方式を採った場合、第〇条はあくまでも「削除」としてその抜け殻が残るわけですから、後ろに続く条の繰上げは、必要ないことになります。本肢は②の内容を示しているので妥当です。
オ 法律の一部改正により新たに「条」の規定を設ける場合には、その新しい「条」の規定の内容が直前の「条」の規定の内容に従属しているときに限り、その新しい「条」には直前の「条」の番号の枝番号が付けられる。
オ・・・妥当ではない
本肢は「従属しているときに限り」が妥当ではありません。例えば、「行政手続法三十六条」と「三十六条の二」です。
「36条の2」が新しく追加された条文です。
「〇条の二」という条名で新しい条の追加がなされています。
この二つは、一定の関連性はありますが「従属している」わけではありません。

(複数の者を対象とする行政指導)
第三十六条 同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。
(行政指導の中止等の求め)
第三十六条の二 法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。ただし、当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、この限りでない。

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平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問1|基礎法学・裁判制度

次の文章は、裁判員制度に関する最高裁判所判決の一節(一部を省略)である。
空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

裁判は、証拠に基づいて事実を明らかにし、これに法を適用することによって、人の権利義務を最終的に確定する国の作用であり、取り分け、刑事裁判は、人の生命すら奪うことのある強大な国権の行使である。そのため、多くの近代[ ア ]国家において、それぞれの歴史を通じて、刑事裁判権の行使が適切に行われるよう種々の原則が確立されてきた。基本的人権の保障を重視した憲法では、特に31条から39条において、・・・適正な刑事裁判を実現するための諸原則を定めており、そのほとんどは、各国の刑事裁判の歴史を通じて確立されてきた普遍的な原理ともいうべきものである。刑事裁判を行うに当たっては、これらの諸原則が厳格に遵守されなければならず、それには高度の[ イ ]が要求される。憲法は、これらの諸原則を規定し、かつ、[ ウ ]の原則の下に、「第6章 司法」において、裁判官の職権行使の独立と身分保障について周到な規定を設けている。こうした点を総合考慮すると、憲法は、刑事裁判の基本的な担い手として裁判官を想定していると考えられる。
他方、歴史的、国際的な視点から見ると、欧米諸国においては、上記のような手続の保障とともに、18世紀から20世紀前半にかけて、[ ア ]の発展に伴い、[ エ ]が直接司法に参加することにより裁判の[ エ ]的基盤を強化し、その正統性を確保しようとする流れが広がり、憲法制定当時の20世紀半ばには、欧米の[ ア ]国家の多くにおいて陪審制か参審制が採用されていた。
(最大判平成23年11月16日刑集65巻8号1285頁)

  1. ア:民主主義 イ:法的専門性 ウ:三権分立 エ:国民
  2. ア:立憲主義 イ:政治性 ウ:法的安定性 エ:法曹
  3. ア:自由主義 イ:法的専門性 ウ:三権分立 エ:国民
  4. ア:民主主義 イ:政治性 ウ:法的安定性 エ:法曹
  5. ア:立憲主義 イ:法的専門性 ウ:三権分立 エ:国民

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【答え】:1

【解説】

裁判は、証拠に基づいて事実を明らかにし、これに法を適用することによって、人の権利義務を最終的に確定する国の作用であり、取り分け、刑事裁判は、人の生命すら奪うことのある強大な国権の行使である。そのため、多くの近代[ ア:民主主義 ]国家において、それぞれの歴史を通じて、刑事裁判権の行使が適切に行われるよう種々の原則が確立されてきた。基本的人権の保障を重視した憲法では、特に31条から39条において、・・・適正な刑事裁判を実現するための諸原則を定めており、そのほとんどは、各国の刑事裁判の歴史を通じて確立されてきた普遍的な原理ともいうべきものである。刑事裁判を行うに当たっては、これらの諸原則が厳格に遵守されなければならず、それには高度の[ イ:法的専門性 ]が要求される。憲法は、これらの諸原則を規定し、かつ、[ ウ:三権分立 ]の原則の下に、「第6章 司法」において、裁判官の職権行使の独立と身分保障について周到な規定を設けている。こうした点を総合考慮すると、憲法は、刑事裁判の基本的な担い手として裁判官を想定していると考えられる。
他方、歴史的、国際的な視点から見ると、欧米諸国においては、上記のような手続の保障とともに、18世紀から20世紀前半にかけて、[ ア:民主主義 ]の発展に伴い、[ エ:国民  ]が直接司法に参加することにより裁判の[ エ:国民  ]的基盤を強化し、その正統性を確保しようとする流れが広がり、憲法制定当時の20世紀半ばには、欧米の[ ア:民主主義 ]国家の多くにおいて陪審制か参審制が採用されていた。
(最大判平成23年11月16日刑集65巻8号1285頁)

ア.
裁判は、証拠に基づいて事実を明らかにし、これに法を適用することによって、人の権利義務を最終的に確定する国の作用であり、取り分け、刑事裁判は、人の生命すら奪うことのある強大な国権の行使である。そのため、多くの近代[ ア ]国家において、それぞれの歴史を通じて、刑事裁判権の行使が適切に行われるよう種々の原則が確立されてきた。基本的人権の保障を重視した憲法では、特に31条から39条において、・・・適正な刑事裁判を実現するための諸原則を定めており、そのほとんどは、各国の刑事裁判の歴史を通じて確立されてきた普遍的な原理ともいうべきものである。
ア・・・民主主義
選択肢の3つの言葉を入れると
「近代民主主義国家」「近代立憲主義国家」「近代自由主義国家」となります。
  • 民主主義」とは「国のことは、国民が自分たちの力で決めよう!」という考え方です。
  • 立憲主義」とは「憲法によって国家権力(政治家や公務員)を制限しよう!」という考え方です。
  • 自由主義」とは「個人の自由は尊重しよう!」という考え方です。

上記問題文では、どれを入れるかは、判断しづらいです。
ただ、エの選択肢の内容から、「民主主義」と判断できます。

イ.
刑事裁判を行うに当たっては、これらの諸原則が厳格に遵守されなければならず、それには高度の[ イ: ]が要求される。
イ・・・法的専門性
選択肢は「法的専門性」と「政治性」
刑事裁判を行うのは、裁判所(裁判官)であって、内閣(政治家)ではありません。
その点から考えると、司法試験に合格する必要がある裁判官は、政治性が要求されるのではなく、法的専門性が要求されることが分かります。
ウ.
憲法は、これらの諸原則を規定し、かつ、[ ウ ]の原則の下に、「第6章 司法」において、裁判官の職権行使の独立と身分保障について周到な規定を設けている。こうした点を総合考慮すると、憲法は、刑事裁判の基本的な担い手として裁判官を想定していると考えられる。
ウ・・・三権分立
選択肢は、「法的安定性」と「三権分立」の2つです。「法的安定性の原則」とは、法の運用や解釈をころころ変えると社会的安定が失われるため、それは避けましょう、という考え方。
法の恣意的な運用や主観的な解釈などは避けなければならないということです。「三権分立の原則」とは、国会(立法)、内閣(行政)、裁判所(司法)の三つの独立した機関が相互に抑制し合い、バランスを保つことにより、権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する考え方です。

問題文を見ると、
『「第6章 司法」において、裁判官の職権行使の独立と身分保障について周到な規定を設けている』
と書いてあります。
この身分保障は、司法が他の国家権力から独立して、機能すべきことを示しています。
したがって、「ウには、三権分立」が入ります。

エ.
歴史的、国際的な視点から見ると、欧米諸国においては、上記のような手続の保障とともに、18世紀から20世紀前半にかけて、[ ア ]の発展に伴い、[ エ ]が直接司法に参加することにより裁判の[ エ  ]的基盤を強化し、その正統性を確保しようとする流れが広がり、憲法制定当時の20世紀半ばには、欧米の[ ア ]国家の多くにおいて陪審制か参審制が採用されていた。
エ・・・国民
欧米諸国(ドイツ・フランス)では、「参審制」という裁判制度を採り入れ、「事実認定・法解釈・量刑」すべてを、一般市民から選出された参審員と裁判官が一緒に行います
国民が司法に参加する制度を取っているので、「エには、国民」が入ります。ここから、「アが、民主主義」が妥当ではないかと判断できます。

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平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問2|基礎法学

次のア~オの記述と、それらの記述が示す法思想等との組合せとして、最も適切なものはどれか。

ア.法を現実に通用している制定法および慣習法等の実定法とする考え方
イ.人身の自由および思想の自由等の人格的自由とともに経済的自由を最大限に尊重し、経済活動に対する法規制を最小限にとどめるべきであるとする考え方
ウ.事物の本性や人間の尊厳に基づいて普遍的に妥当する法があるとする考え方
エ.法制度の内容は、その基礎にある生産諸要素および経済的構造によって決定されるとし、私有財産制度も普遍的なものではなく、資本主義経済によって生み出されたとする考え方
オ.法制度を経済学の手法を用いて分析し、特に効率性の観点から立法および法解釈のあり方を検討する考え方

  1. ア:パンデクテン法学 イ:リベラリズム ウ:自然法 エ:社会主義法学 オ:利益法学
  2. ア:概念法学 イ:リバタリアニズ ウ:パターナリズム エ:コミュニタリアニズム オ:法と経済学
  3. ア:法実証主義 イ:リベラリズム ウ:善きサマリア人の法 エ:マルクス主義法学 オ:利益法学
  4. ア:概念法学 イ:レッセ・フェール ウ:善きサマリア人の法 エ:コミュニタリアニズム オ:ネオリベラリズム
  5. ア:法実証主義 イ:リバタリアニズム ウ:自然法 エ:マルクス主義法学 オ:法と経済学

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【答え】: 5

【解説】

ア.法を現実に通用している制定法および慣習法等の実定法とする考え方
ア・・・法実証主義
法実証主義とは、実定法だけを法と認め、実定法の上位に自然法の存在は認めないという考え方です。
つまり、法実証主義は、実定法の上位に自然法の存在を認める自然法論と対立した考え方です。
「実定法」とは、
立法府の制定行為,および慣習,判例などの経験的事実に基づいて成立し,その存立を経験的,歴史的に実証される法を言い、「制定法」および「慣習法」等が実定法です。実証法とも言います。
「自然法」とは、
人間の自然の本性あるいは理性に基づいて、あらゆる時代を通じて普遍的に守られるべき不変の法として、実定法を超越しているものと考えられる法です。
分かりやすい具体例でいうと、「公序良俗(社会秩序といったイメージ)」です。「公序良俗」とは何か、という具体的な定義はなく、概念的な内容です。しかし、判例でもよくあるように、「公序良俗(社会秩序)」を基準に判断して、裁判官の裁量により、判決を下すこともあります。
「概念法学」とは
法規の解釈をする際、法典に欠陥はなく、論理的に完結しているという前提に立って、条文の解釈や運用を論理的に行うことを第一とする考え方です。
そしてこの概念法学は、現実を無視した形式論的な考察態度、いわゆる「机上の空論」を批判していう場合で用いられます。
現実の裁判における基準として機能しない、または機能させることをそもそも考えていないような法的理論に対して向けられることが多いです。
イ.人身の自由および思想の自由等の人格的自由とともに経済的自由を最大限に尊重し、経済活動に対する法規制を最小限にとどめるべきであるとする考え方
イ・・・リバタニアリズム
「リバタニアリズム」とは、
「個人の自由権」と「経済的な自由」を絶対的に重視し、それに制約を加える国家の役割(法規制)を最小限度にとどめようとする考え方です。
言い方を変えると、他者の自由を侵害しない限りにおける、各人の「個人の自由権」と「経済的な自由」を尊重しようとする思想的立場です。
「リベラリズム」とは
人間は理性を持ち、従来の権威から自由であり「自己決定権を持つ」との立場から、
政治的には「政府からの自由」である自由権や個人主義、「政府への自由」である国民主権などの民主主義、
経済的には私的所有権と自由市場による資本主義などの思想や体制の基礎となるものです。
「レッセ・フェール(自由放任主義)」とは
国家による国民経済への統制と干渉を排除して、個人や企業の自由競争にまかせて経済を営むべきであるとする主義で、アダム=スミスの「国富論」でも主張しています。
ウ.事物の本性や人間の尊厳に基づいて普遍的に妥当する法があるとする考え方
ウ・・・自然法
「自然法」とは、
人間の自然の本性あるいは理性に基づいて、あらゆる時代を通じて普遍的に守られるべき不変の法として、実定法を超越しているものと考えられる法です。
分かりやすい具体例でいうと、「公序良俗(社会秩序といったイメージ)」です。「公序良俗」とは何か、という具体的な定義はなく、概念的な内容です。しかし、判例でもよくあるように、「公序良俗(社会秩序)」を基準に判断して、裁判官の裁量により、判決を下すこともあります。
「パターナリズム」とは
強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためを思って、弱い立場にある者の意志は問わずに介入・干渉・支援することをいいます。
親が子供のためによかれと思ってすることから来ています。
「善きサマリア人の法」とは、
災難に遭った人や急病人等の「窮地の人」を救うために「無償で善意の行動」をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、たとえ「失敗してもその結果につき責任を問われない」という趣旨の法である。
誤った対応をして訴えられたり、処罰を受けたりする恐れをなくして、その場に居合わせた人による傷病者の救護を促進しよう、との意図があります。
※「善きサマリア人」は聖書に出てくる内容です。
エ.法制度の内容は、その基礎にある生産諸要素および経済的構造によって決定されるとし、私有財産制度も普遍的なものではなく、資本主義経済によって生み出されたとする考え方
エ・・・マルクス主義法学
「マルクス主義法学」とは、簡単に言えば、
経済状況(生産諸要素および経済的構造)である「下部構造」と、
思想や政治、法律などの「上部構造」に分けて
上部構造は下部構造によって決まってくる
つまり、法制度の内容は、その基礎にある生産諸要素および経済的構造によって決定される
という考え方です。
「社会主義法」とは、社会主義体制の国で採られる法制度の総称である。
大陸法圏に属するソビエト連邦法及びこれを参考とした他の社会主義国の法です。
「コミュニタリアニズム」とは
共同体(コミュニティ)の価値を重んじる政治思想で、歴史的に形成されてきた共同体の伝統の中でこそ個人は人間として完成され、生きていけるという考え方です。
「リベラリズムやリバタリアニズム」が個人を優先するのに対し、
「コミュニタリアニズム」は共同体が優先する考え方です。
オ.法制度を経済学の手法を用いて分析し、特に効率性の観点から立法および法解釈のあり方を検討する考え方
オ・・・法と経済学
「法と経済学」とは、
経済学の観点および手法を利用して、法的理論を分析・再解釈する学問を言います。
「利益法学」とは
法の解釈を利益整序の観点から行う法学で
法は、「社会における諸利益に対してどれをいかに保護するかの価値判断を行うもの」という考え方をします。
「ネオリベラリズム(新自由主義)」とは、
政府の規制を緩和・撤廃して民間の自由な活力に任せ成長を促そうとする考え方を言います。
政府の積極的な民間介入に反対し、資本主義下の自由競争秩序を重んじる立場および考え方です。

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略

平成29年・2017|問1|基礎法学

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

「『犯罪論序説』は[ ア ]の鉄則を守って犯罪理論を叙述したものである。それは当然に犯罪を[ イ ]に該当する[ ウ ]・有責の行為と解する概念構成に帰着する。近頃、犯罪としての行為を[ イ ]と[ ウ ]性と責任性とに分けて説明することは、犯罪の抽象的意義を叙述したまでで、生き生きとして躍動する生の具体性を捉えて居ないという非難を受けて居るが、…(中略)…[ イ ]と[ ウ ]性と責任性を区別せずして犯人の刑事責任を論ずることは、いわば空中に楼閣を描くの類である。私はかように解するから伝統的犯罪理論に従い、犯罪を[ イ ]に該当する[ ウ ]・有責の行為と見、これを基礎として犯罪の概念構成を試みた。
本稿は、京都帝国大学法学部における昭和7-8年度の刑法講義の犯罪論の部分に多少の修正を加えたものである。既に『公法雑誌』に連載せられたが、このたび一冊の書物にこれをまとめた。」

以上の文章は、昭和8年に起きたいわゆる[ エ ]事件の前年に行われた講義をもとにした[ エ ]の著作『犯罪論序説』の一部である(旧漢字・旧仮名遣い等は適宜修正した。)。

  1. ア:罪刑法定主義 イ:構成要件 ウ:違法 エ:瀧川
  2. ア:自由主義 イ:形成要 ウ:相当 エ:矢内原
  3. ア:罪刑専断主義 イ:侵害要件 ウ:違法 エ:澤柳
  4. ア:責任主義 イ:構成要件 ウ:違法エ:矢内原
  5. ア:罪刑法定主義 イ:侵害要件 ウ:必要 エ:瀧川

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【答え】: 1

【解説】

「『犯罪論序説』は[ ア:罪刑法定主義 ]の鉄則を守って犯罪理論を叙述したものである。それは当然に犯罪を[ イ:構成要件 ]に該当する[ ウ:違法 ]・有責の行為と解する概念構成に帰着する。近頃、犯罪としての行為を[ イ:構成要件 ]と[ ウ:違法 ]性と責任性とに分けて説明することは、犯罪の抽象的意義を叙述したまでで、生き生きとして躍動する生の具体性を捉えて居ないという非難を受けて居るが、…(中略)…[ イ:構成要件 ]と[ ウ:違法 ]性と責任性を区別せずして犯人の刑事責任を論ずることは、いわば空中に楼閣を描くの類である。私はかように解するから伝統的犯罪理論に従い、犯罪を[ イ:構成要件 ]に該当する[ ウ:違法 ]・有責の行為と見、これを基礎として犯罪の概念構成を試みた。
本稿は、京都帝国大学法学部における昭和7-8年度の刑法講義の犯罪論の部分に多少の修正を加えたものである。既に『公法雑誌』に連載せられたが、このたび一冊の書物にこれをまとめた。」

以上の文章は、昭和8年に起きたいわゆる[ エ:瀧川 ]事件の前年に行われた講義をもとにした[ エ:瀧川 ]の著作『犯罪論序説』の一部である(旧漢字・旧仮名遣い等は適宜修正した。)。

ア.
『犯罪論序説』は[ ア ]の鉄則を守って犯罪理論を叙述したものである。
ア・・・罪刑法定主義
「伝統的犯罪理論」や「犯罪の概念構成」から、アには「罪刑法定主義」が入ることは想像できます。『犯罪論序説』とは、瀧川幸辰(京都大学教授)著の刑法の教科書です。そして、
罪刑法定主義とは、ある行為を犯罪として処罰するためには、事前に法令によって「犯罪とされる行為の内容」、及び「それに対して科される刑罰」を、明確に規定しておかなければならないとする原則を言います。
イ.ウ.
『犯罪論序説』は[ ア:罪刑法定主義 ]の鉄則を守って犯罪理論を叙述したものである。それは当然に犯罪を[ イ]に該当する[ ウ ]・有責の行為と解する概念構成に帰着する。
近頃、犯罪としての行為を[ イ ]と[ ウ ]性と責任性とに分けて説明することは、犯罪の抽象的意義を叙述したまでで、生き生きとして躍動する生の具体性を捉えて居ないという非難を受けて居る
イ・・・構成要件
ウ・・・違法
刑法学における犯罪は、ドイツの刑法理論を継受する日本においては、
犯罪の成立要件を①構成要件、②違法、③有責の三つの要素に体系化し、
犯罪を「構成要件に該当し違法かつ有責な行為」と定義することが多い。
しかし、他の体系を用いて犯罪を定義する刑法学者もある。
エ.
「・・・本稿は、京都帝国大学法学部における昭和7-8年度の刑法講義の犯罪論の部分に多少の修正を加えたものである。既に『公法雑誌』に連載せられたが、このたび一冊の書物にこれをまとめた。」
以上の文章は、昭和8年に起きたいわゆる[ エ ]事件の前年に行われた講義をもとにした[ エ ]の著作『犯罪論序説』の一部である(旧漢字・旧仮名遣い等は適宜修正した。)。
エ・・・瀧川
1933年、京都大学教授で刑法学者の滝川は、中央大学での講演やその著『刑法読本』の内容が危険思想であるとの理由で問題とされました。
当時の文部大臣鳩山一郎は、京大総長に対し滝川に辞職勧告を行うよう命じ、一方的に滝川を休職処分にしました。
これに対し、京大法学部教授団や学生らが抗議運動を起こしたが、当局の弾圧により、数名の教授はやめさせることなり、また、滝川の『刑法読本』は発売禁止となりました。
これが瀧川事件です。

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平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略