平成28年度(2016年度)過去問

平成28年・2016|問7|憲法・法の下の平等

法の下の平等に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。
  1. 憲法が条例制定権を認める以上、条例の内容をめぐり地域間で差異が生じることは当然に予期されることであるから、一定の行為の規制につき、ある地域でのみ罰則規定が置かれている場合でも、地域差のゆえに違憲ということはできない。
  2. 選挙制度を政党本位のものにすることも国会の裁量に含まれるので、衆議院選挙において小選挙区選挙と比例代表選挙に重複立候補できる者を、一定要件を満たした政党等に所属するものに限ることは、憲法に違反しない。
  3. 法定相続分について嫡出性の有無により差異を設ける規定は、相続時の補充的な規定であることを考慮しても、もはや合理性を有するとはいえず、憲法に違反する。
  4. 尊属に対する殺人を、高度の社会的非難に当たるものとして一般殺人とは区別して類型化し、法律上刑の加重要件とする規定を設けることは、それ自体が不合理な差別として憲法に違反する。
  5. 父性の推定の重複を回避し父子関係をめぐる紛争を未然に防止するために、女性にのみ100日を超える再婚禁止期間を設けることは、立法目的との関係で合理性を欠き、憲法に違反する。
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【答え】:4
【解説】
1.憲法が条例制定権を認める以上、条例の内容をめぐり地域間で差異が生じることは当然に予期されることであるから、一定の行為の規制につき、ある地域でのみ罰則規定が置かれている場合でも、地域差のゆえに違憲ということはできない。
1・・・妥当 判例によると、 「憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されることである。したがって、このような差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。それ故、地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあっても、所論のように地域差の故をもって違憲ということはできない。」よって、本肢の内容は妥当です。
2.選挙制度を政党本位のものにすることも国会の裁量に含まれるので、衆議院選挙において小選挙区選挙と比例代表選挙に重複立候補できる者を、一定要件を満たした政党等に所属するものに限ることは、憲法に違反しない。
2・・・妥当 判例では、 「候補者届出政党の要件は、国民の政治的意思を集約するための組織を有し、継続的に相当な活動を行い、国民の支持を受けていると認められる政党等が、小選挙区選挙において政策を掲げて争うにふさわしいものであるとの認識の下に、政策本位、政党本位の選挙制度をより実効あらしめるために設けられたと解されるのであり、そのような立法政策を採ることには相応の合理性が認められ、これが国会の裁量権の限界を超えるとは解されない。」 と判示しています。衆議院の選挙制度は、政党本位の選挙制度を目指しているため、候補者の届出については、政党が行うことが原則と考えられています。この候補者の届出を行える政党については一定の要件があり、要件を満たさない場合、候補者届出政党として、候補者を届け出ることはできません。この要件を定めることは、国会の裁量の範囲内ということで、憲法に違反しないと判示しているわけです。
3.法定相続分について嫡出性の有無により差異を設ける規定は、相続時の補充的な規定であることを考慮しても、もはや合理性を有するとはいえず、憲法に違反する。
3・・・妥当 判例によると 「…遅くとも被相続人の相続が開始した当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。」 と判示しています。つまり、相続において「嫡出子(婚姻した男女の間の子)」と「非嫡出子(婚姻していない男女間の子)」を差別することは憲法違反だということです。この判決を受けて、民法は改正され、 「嫡出子」も「非嫡出子」も同等の法定相続分を有することとなりました。
4.尊属に対する殺人を、高度の社会的非難に当たるものとして一般殺人とは区別して類型化し、法律上刑の加重要件とする規定を設けることは、それ自体が不合理な差別として憲法に違反する。
4・・・妥当ではない 判例によると 『刑法200条では、「自己または配偶者」の直系尊属を殺した者について、無期懲役または死刑の刑に処されるとし、通常の殺人罪の刑罰規定よりも重いものになっていた。この刑法200条の立法目的は、 尊属殺は通常殺と比べて、一般に高度の社会的道徳的非難に値するものとして、これを厳重に処罰して、特に強く禁圧しようとすることにあり、不合理とは言えない。』 と判示しています。 つまり、通常殺と比べて重罰にすること自体は違憲ではないとしています。
5.父性の推定の重複を回避し父子関係をめぐる紛争を未然に防止するために、女性にのみ100日を超える再婚禁止期間を設けることは、立法目的との関係で合理性を欠き、憲法に違反する。
5・・・妥当 判例によると 「本件規定(民法第733条)のうち100日を超えて女性の再婚禁止期間を設ける部分は憲法第24条第2項にいう両性の本質的平等に立脚したものでなくなっていたことも明らかである。そして、上記当時において、同部分は、憲法第14条第1項に違反するとともに、憲法第24条第2項にも違反するに至っていたというべきである。」と判示しています。よって、女性にのみ100日を超える再婚禁止期間を設けることは、立法目的との関係で合理性を欠き、憲法に違反です。ただし、国家賠償の観点では、 「本件立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない」として 国家賠償は否定しています。

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平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問6|憲法・信教の自由・政教分離

信教の自由・政教分離に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、最も妥当なものはどれか。
  1. 憲法が国およびその機関に対し禁ずる宗教的活動とは、その目的・効果が宗教に対する援助、助長、圧迫、干渉に当たるような行為、あるいは宗教と過度のかかわり合いをもつ行為のいずれかをいう。
  2. 憲法は、宗教と何らかのかかわり合いのある行為を行っている組織ないし団体であれば、これに対する公金の支出を禁じていると解されるが、宗教活動を本来の目的としない組織はこれに該当しない。
  3. 神社が主催する行事に際し、県が公費から比較的低額の玉串料等を奉納することは、慣習化した社会的儀礼であると見ることができるので、当然に憲法に違反するとはいえない。
  4. 信仰の自由の保障は私人間にも間接的に及ぶので、自己の信仰上の静謐を他者の宗教上の行為によって害された場合、原則として、かかる宗教上の感情を被侵害利益として損害賠償や差止めを請求するなど、法的救済を求めることができる。
  5. 解散命令などの宗教法人に関する法的規制が、信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしてもそこに何らかの支障を生じさせるならば、信教の自由の重要性に配慮し、規制が憲法上許容されるか慎重に吟味しなければならない。
>解答と解説はこちら
【答え】:5
【解説】
1.憲法が国およびその機関に対し禁ずる宗教的活動とは、その目的・効果が宗教に対する援助、助長、圧迫、干渉に当たるような行為、あるいは宗教と過度のかかわり合いをもつ行為のいずれかをいう。
1・・・妥当ではない 判例によると、 「憲法20条3項にいう「宗教活動」とは、 当該(1)行為の目的が宗教的意義をもち、 (2)その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になるような行為をいうべきである。」 としています。 つまり、(1)と(2)を同時に満たす行為が「宗教的活動」であり 問題文のように(1)あるいは(2)の行為、つまり、どちらか一方だけ満たす行為は「宗教的活動行為」には当たりません。
2.憲法は、宗教と何らかのかかわり合いのある行為を行っている組織ないし団体であれば、これに対する公金の支出を禁じていると解されるが、宗教活動を本来の目的としない組織はこれに該当しない。
2・・・妥当ではない 判例では、 『憲法20条1項の後段の「宗教団体」、89条の「宗教上の組織若しくは団体」とは、特定の宗教の信仰、礼拝または普及等の宗教活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体を指す。』 としています。 本問は「宗教と何らかのかかわり合いのある行為を行っている組織ないし団体」となっているので誤りです。 正しくは「特定の宗教の信仰、礼拝または普及等の宗教活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体」です。上記2つがどのように異なるのかは、個別指導で解説します!
3.神社が主催する行事に際し、県が公費から比較的低額の玉串料等を奉納することは、慣習化した社会的儀礼であると見ることができるので、当然に憲法に違反するとはいえない。
3・・・妥当ではない 判例によると 「玉串料等を奉納することは、社会的礼儀にすぎないものとまではいえず、奉納者としてもそれが宗教的意義を有するという意識を持たざるをえない。よって、当該玉串料等の奉納は、 (1)その目的が宗教的意義をもち、 (2)その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になるような行為にあたると認められる。したがって、本件公金の支出は憲法20条3項、89条に違反する。」 としています。
4.信仰の自由の保障は私人間にも間接的に及ぶので、自己の信仰上の静謐を他者の宗教上の行為によって害された場合、原則として、かかる宗教上の感情を被侵害利益として損害賠償や差止めを請求するなど、法的救済を求めることができる。
4・・・妥当ではない 判例によると 「人が自己の信仰生活の静謐を他者の宗教上の行為によって害されたとし、そのことに不快の感情を持ち、そのようなことがないよう望むことのあるのは、その心情として当然である。しかし、このような宗教上の感情を被侵害利益として、直ちに損害賠償を請求し、又は差止めを請求するなどの法的救済を求めることができるとするならば、かえって相手方の信教の自由を妨げる結果となるに至ることは、見易いところである。信教の自由の保障は、何人も自己の信仰と相容れない信仰をもつ者の信仰に基づく行為に対して、それが強制や不利益の付与を伴うことにより自己の信教の自由を妨害するものでない限り寛容であることを要請しているものというべきである。このことは死去した配偶者の追慕、慰霊等に関する場合においても同様である。何人かをその信仰の対象とし、あるいは自己の信仰する宗教により何人かを追慕し、その魂の安らぎを求めるなどの宗教的行為をする自由は、誰にでも保障されているからである。 よって、原審が宗教上の人格権であるとする静謐な宗教的環境の下で信仰生活を送るべき利益なるものは、これを直ちに法的利益として認めることができない性質のものである。」 と判示しています。 つまり、信仰の自由の保障は私人間にも間接的に及ぶので、自己の信仰上の静謐を他者の宗教上の行為によって害された場合、原則として、法的救済を求めることができません。
5.解散命令などの宗教法人に関する法的規制が、信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしてもそこに何らかの支障を生じさせるならば、信教の自由の重要性に配慮し、規制が憲法上許容されるか慎重に吟味しなければならない。
5・・・妥当 判例によると 「解散命令によって宗教団体であるオウム真理教やその信者らが行う宗教上の行為に何らかの支障を生ずることが避けられない。しかし、その支障は、解散命令に伴う間接的で事実上のものであるにとどまる。したがって、本件解散命令は、宗教団体であるオウム真理教やその信者らの精神的・宗教的側面に及ぼす影響を考慮しても、抗告人の行為に対処するのに必要でやむを得ない法的規制であるということができる。」 として、「信教の自由の重要性に配慮(信者らの精神的・宗教的側面に及ぼす影響を考慮)し、規制が憲法上許容されるか慎重に吟味しなければならない」と言えるので妥当です。

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平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問5|憲法・国会

立法に関する次の記述のうち、必ずしも憲法上明文では規定されていないものはどれか。
  1. 出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
  2. 内閣は、法律案を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
  3. 両議院の議員は、議院で行った演説、討論または表決について、院外で責任を問われない。
  4. 両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
  5. 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
>解答と解説はこちら
【答え】:2
【解説】
1.出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
1・・・明文で規定されている 出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければなりません(憲法57条3項)。 よって、憲法57条3項に規定されています。
2.内閣は、法律案を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
2・・・明文で規定されていない 憲法に、「内閣が法律案を作成して、国会に提出する」権利があるとは規定していません。似たようなルールとして、 内閣法5条で、「内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する」ことを定めています。 よって、内閣は、法律案を作成することはできます
3.両議院の議員は、議院で行った演説、討論または表決について、院外で責任を問われない。
3・・・明文で規定されている 両議院の議員(衆議院議員・参議院議員)は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われません憲法51条:免責特権)。 よって、憲法51条に規定されています。
4.両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
4・・・明文で規定されている 両議院(衆議院および参議院)は、各々(それぞれ)その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができません憲法56条1項)。 よって、憲法56条に規定されています。
5.衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
5・・・明文で規定されている 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となります(憲法59条)。 よって、憲法59条に規定されています。 これは、「法律案の議決」に関するルールで、「予算、条約の承認の議決」は別のルールなので注意しましょう!

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平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問3|憲法・国民審査

次の文章は、最高裁判所判決の一節である。これを読んで空欄[ ア ]~[ ウ ]に正しい語を入れ、その上で、[ ア ]~[ ウ ]を含む文章として正しいものを、選びなさい。
最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度はその実質において所謂[ ア ]の制度と見ることが出来る。それ故本来ならば[ イ ]を可とする投票が有権者の総数の過半数に達した場合に[ イ ]されるものとしてもよかったのである。それを憲法は投票数の過半数とした処が他の[ ア ]の制度と異るけれどもそのため[ ア ]の制度でないものとする趣旨と解することは出来ない。只[ イ ]を可とする投票数との比較の標準を投票の総数に採っただけのことであって、根本の性質はどこ迄も[ ア ]の制度である。このことは憲法第七九条三項の規定にあらわれている。同条第二項の字句だけを見ると一見そうでない様にも見えるけれども、これを第三項の字句と照し会せて見ると、国民が[ イ ]すべきか否かを決定する趣旨であって、所論の様に[ ウ ]そのものを完成させるか否かを審査するものでないこと明瞭である。 (最大判昭和27年2月20日民集6巻2号122頁)
  1. [ ア ]は、レファレンダムと呼ばれ、地方公共団体の首長などに対しても認められる。
  2. [ ア ]に入る語は罷免、[ ウ ]に入る語は任命である。
  3. 憲法によれば、公務員を[ ア ]し、およびこれを[ イ ]することは、国民固有の権利である。
  4. 憲法によれば、内閣総理大臣は、任意に国務大臣を[ ア ]することができる。
  5. 憲法によれば、国務大臣を[ ウ ]するのは、内閣総理大臣である。
>解答と解説はこちら
【答え】:5
【解説】 まず、「国民審査の制度」については、憲法79条の下記のように規定されています。
憲法79条
  1. 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
  2. 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
  3. 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
そして、上記国民審査の内容について、 ①国民投票は解職制度(リコール)なのか? ②国民投票は任命行為の完了行為なのか? という議論がされ、判例では、①解職制度を採用しています。 最高裁判所において、長官以外の裁判官は、内閣が任命します。 その後、国民審査にかけられて、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免されます。

「国民審査は解職制度」という見解

この見解では、まず、内閣による任命後、国民投票による審査を受けるまでの間も、裁判官としての職務を果たしているのであるから、任命行為によって任命は完了していると考えます。 そして、国民投票は任命行為の完了後に、「罷免(ひめん):やめさせること」させるかどうか決定する行為であり、「罷免すべきことを可(罷免した方がよい!)」というときは、裁判官は罷免される、という見解です。 この見解だと、国民審査は、解職制度(=リコール)ととらえることができます。 よって、下記のようになります。
最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度はその実質において所謂[ ア:解職 ]の制度と見ることが出来る。 それ故本来ならば[ イ:罷免 ]を可とする投票が有権者の総数の過半数に達した場合に[ イ:罷免 ]されるものとしてもよかったのである。 それを憲法は投票数の過半数とした処が他の[ ア:解職 ]の制度と異るけれども そのため[ ア:解職 ]の制度でないものとする趣旨と解することは出来ない。 只[ イ:罷免 ]を可とする投票数との比較の標準を投票の総数に採っただけのことであって、根本の性質はどこ迄も[ ア:解職 ]の制度である。 このことは憲法第七九条三項の規定にあらわれている。 同条第二項の字句だけを見ると一見そうでない様にも見えるけれども、 これを第三項の字句と照し会せて見ると、国民が[ イ:罷免 ]すべきか否かを決定する趣旨であって、所論の様に[ ウ:任命 ]そのものを完成させるか否かを審査するものでないこと明瞭である。 (最大判昭和27年2月20日民集6巻2号122頁)
1.[ ア ]は、レファレンダムと呼ばれ、地方公共団体の首長などに対しても認められる。
1・・・誤り アに入るのは、「解職」です。 したがって、誤りです。「レファレンダム」とは、国民投票・住民投票のことです。 地方公共団体の住民が、特定の事項について、投票により直接に意思表示すること言います。 「地方自治体の議会の解散要求や議員・首長の解職要求」などの直接請求を受けて賛否を問う住民投票等があります。
2.[ ア ]に入る語は罷免、[ ウ ]に入る語は任命である。
2・・・誤り アに入るのは、「解職」です。 ウに入るのは、「任命」です。 アが誤りです。
3.憲法によれば、公務員を[ ア ]し、およびこれを[ イ ]することは、国民固有の権利である。
3・・・誤り 憲法15条1項には、 『公務員を「選定」し、およびこれを「罷免」することは、国民固有の権利である。』と規定しています。よって、アの部分が誤りです。「イは罷免」です。
4.憲法によれば、内閣総理大臣は、任意に国務大臣を[ ア ]することができる。
4・・・誤り 憲法68条2項には 『内閣総理大臣は、任意に国務大臣を「罷免」することができる』と規定しています。よって、アの部分は「解職」なので誤りです。
5.憲法によれば、国務大臣を[ ウ ]するのは、内閣総理大臣である。
5・・・正しい 憲法68条1項には 『内閣総理大臣は、国務大臣を「任命」する』と規定しています。 そして、上記の解説とおり、「ウには任命」が入るから、正しいです。

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平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問4|憲法・住基ネット訴訟

最高裁判所は、平成11年に導入された住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネット」という。)について、これが憲法13条の保障する自由を侵害するものではない旨を判示している(最一小判平成20年3月6日民集62巻3号665頁)。次の記述のうち、判決の論旨に含まれていないものはどれか。

  1. 憲法13条は、国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しており、何人も個人に関する情報をみだりに第三者に開示または公表されない自由を有する。
  2. 自己に関する情報をコントロールする個人の憲法上の権利は、私生活の平穏を侵害されないという消極的な自由に加えて、自己の情報について閲覧・訂正ないし抹消を公権力に対して積極的に請求する権利をも包含している。
  3. 氏名・生年月日・性別・住所という4情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。
  4. 住基ネットによる本人確認情報の管理、利用等は、法令等の根拠に基づき、住民サービスの向上および行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われているものということができる。
  5. 住基ネットにおけるシステム技術上・法制度上の不備のために、本人確認情報が法令等の根拠に基づかずにまたは正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示・公表される具体的な危険が生じているということはできない。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

1.憲法13条は、国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しており、何人も個人に関する情報をみだりに第三者に開示または公表されない自由を有する。
1・・・判決の論旨に含まれる
判旨には
憲法13条は,国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものであり,個人の私生活上の自由の一つとして,何人も,個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有するものと解される
と判示しています。
2.自己に関する情報をコントロールする個人の憲法上の権利は、私生活の平穏を侵害されないという消極的な自由に加えて、自己の情報について閲覧・訂正ないし抹消を公権力に対して積極的に請求する権利をも包含している。
2・・・判決の論旨に含まれない
判決文には、
住民票コード削除請求を認容した原審の判断には,憲法解釈の誤り及び結論に影響を及ぼすことが明らかな法令解釈の誤りがある。」として、
問題文の「自己の情報について閲覧・訂正ないし抹消を公権力に対して積極的に請求する権利をも包含している」は判決の論旨に含まれません。
3.氏名・生年月日・性別・住所という4情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。
3・・・判決の論旨に含まれる
判決文には
住基ネットが被上告人らの上記の自由を侵害するものであるか否かについて検討すると住基ネットによって管理,利用等される本人確認情報は,
氏名,生年月日,性別及び住所から成る4情報に,住民票コード及び変更情報を加えたものにすぎない。このうち上記4情報は,人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報である。また、変更情報も,転入,転出等の異動事由,異動年月日及び異動前の本人確認情報にとどまるものである。

よって、これらはいずれも,個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。
と判示しています。

4.住基ネットによる本人確認情報の管理、利用等は、法令等の根拠に基づき、住民サービスの向上および行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われているものということができる。
4・・・判決の論旨に含まれる
判決文では、
住民票コードは,住基ネットによる本人確認情報の管理,利用等を目的として,都道府県知事が無作為に指定した数列の中から市町村長が一を選んで各人に割り当てたものである。そのため,上記目的に利用される限りにおいては,その秘匿性の程度は本人確認情報と異なるものではない。また,住基ネットによる本人確認情報の管理,利用等は,法令等の根拠に基づき,住民サービスの向上及び行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われているものということができる。
と判示しています。
5.住基ネットにおけるシステム技術上・法制度上の不備のために、本人確認情報が法令等の根拠に基づかずにまたは正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示・公表される具体的な危険が生じているということはできない。
5・・・判決の論旨に含まれる
判決文では
住基法は,都道府県に本人確認情報の保護に関する審議会を,指定情報処理機関に本人確認情報保護委員会を設置することとして,本人確認情報の適切な取扱いを担保するための制度的措置を講じている。これに照らせば,住基ネットにシステム技術上又は法制度上の不備があり,そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じているということもできない。
と判示している。

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平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問2|基礎法学・条文

法律の形式に関する次のア~オの記述のうち、現在の立法実務の慣行に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア 法律は、「条」を基本的単位として構成され、漢数字により番号を付けて条名とするが、「条」には見出しを付けないこととされている。

イ 「条」の規定の中の文章は、行を改めることがあり、そのひとつひとつを「項」という。

ウ ひとつの「条」およびひとつの「項」の中で用語等を列挙する場合には、漢数字により番号を付けて「号」と呼ぶが、「号」の中で用語等を列挙する場合には、片仮名のイロハ順で示される。

エ 法律の一部改正により特定の「条」の規定をなくす場合において、その「条」の番号を維持し、その後の「条」の番号の繰り上げを避けるときは、改正によってなくす規定の「条」の番号を示した上で「削除」と定めることとされている。

オ 法律の一部改正により新たに「条」の規定を設ける場合には、その新しい「条」の規定の内容が直前の「条」の規定の内容に従属しているときに限り、その新しい「条」には直前の「条」の番号の枝番号が付けられる。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

ア 法律は、「」を基本的単位として構成され、漢数字により番号を付けて条名とするが、「条」には見出しを付けないこととされている。
ア・・・妥当でない
「条」には、それぞれ、見出しがついています。よって、妥当ではありません。
また、漢数字により番号をつけて条名としています。例えば、行政手続法第1条を見ると、1条の「1」は漢数字の「一」が使われています。
そして、(目的等)と見出しがついています。

(目的等)
第一条 この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第四十六条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。
 処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関しこの法律に規定する事項について、他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる。

イ 「条」の規定の中の文章は、行を改めることがあり、そのひとつひとつを「項」という。
イ・・・妥当
第〇条の中の文章を改行することで、第〇条の中を、1項2項と分けることができます。
選択肢アも、1項と2項があります。ただし、1項について「1」を付けません。
ウ ひとつの「条」およびひとつの「項」の中で用語等を列挙する場合には、漢数字により番号を付けて「号」と呼ぶが、「号」の中で用語等を列挙する場合には、片仮名のイロハ順で示される。
ウ・・・妥当
「条」や「項」の中で列挙するときは、漢数字の「」になります。
例えば「行政手続法第2条(定義)」です。今回下に示したものは「四号」までしか記載しませんでしたが、五号以降もあります。さらに、「」の中で用語等を列挙する場合には、片仮名のイロハ順で示されます。
下記「四号」の中には「イ、ロ、ハ、ニ」の4つが列挙されています。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 法令 法律、法律に基づく命令(告示を含む。)、条例及び地方公共団体の執行機関の規則(規程を含む。以下「規則」という。)をいう。
 処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。
 申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
 不利益処分 行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。
 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分
 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分
 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの

エ 法律の一部改正により特定の「条」の規定をなくす場合において、その「条」の番号を維持し、その後の「条」の番号の繰り上げを避けるときは、改正によってなくす規定の「条」の番号を示した上で「削除」と定めることとされている。
エ・・・妥当
既存の条を廃止する方式には、
①「第〇条を削る。」とする方式と、
②「第〇条を次のように改める。」とした上で「第〇条 削除」とする方式(単に削除するだけの場合もある)との二つの方式があります。
前者①の方式を採った場合、削り取られた条は、欠番となるわけではなく、ちょうどスポーツで前の順位の人が失格すれば後ろの人の順位が繰り上げられるのと同様に、後ろに続く条について、その繰上げが行われることになります。一方、後者②の方式を採った場合、第〇条はあくまでも「削除」としてその抜け殻が残るわけですから、後ろに続く条の繰上げは、必要ないことになります。本肢は②の内容を示しているので妥当です。
オ 法律の一部改正により新たに「条」の規定を設ける場合には、その新しい「条」の規定の内容が直前の「条」の規定の内容に従属しているときに限り、その新しい「条」には直前の「条」の番号の枝番号が付けられる。
オ・・・妥当ではない
本肢は「従属しているときに限り」が妥当ではありません。例えば、「行政手続法三十六条」と「三十六条の二」です。
「36条の2」が新しく追加された条文です。
「〇条の二」という条名で新しい条の追加がなされています。
この二つは、一定の関連性はありますが「従属している」わけではありません。

(複数の者を対象とする行政指導)
第三十六条 同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。
(行政指導の中止等の求め)
第三十六条の二 法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。ただし、当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、この限りでない。

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平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年・2016|問1|基礎法学・裁判制度

次の文章は、裁判員制度に関する最高裁判所判決の一節(一部を省略)である。
空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

裁判は、証拠に基づいて事実を明らかにし、これに法を適用することによって、人の権利義務を最終的に確定する国の作用であり、取り分け、刑事裁判は、人の生命すら奪うことのある強大な国権の行使である。そのため、多くの近代[ ア ]国家において、それぞれの歴史を通じて、刑事裁判権の行使が適切に行われるよう種々の原則が確立されてきた。基本的人権の保障を重視した憲法では、特に31条から39条において、・・・適正な刑事裁判を実現するための諸原則を定めており、そのほとんどは、各国の刑事裁判の歴史を通じて確立されてきた普遍的な原理ともいうべきものである。刑事裁判を行うに当たっては、これらの諸原則が厳格に遵守されなければならず、それには高度の[ イ ]が要求される。憲法は、これらの諸原則を規定し、かつ、[ ウ ]の原則の下に、「第6章 司法」において、裁判官の職権行使の独立と身分保障について周到な規定を設けている。こうした点を総合考慮すると、憲法は、刑事裁判の基本的な担い手として裁判官を想定していると考えられる。
他方、歴史的、国際的な視点から見ると、欧米諸国においては、上記のような手続の保障とともに、18世紀から20世紀前半にかけて、[ ア ]の発展に伴い、[ エ ]が直接司法に参加することにより裁判の[ エ ]的基盤を強化し、その正統性を確保しようとする流れが広がり、憲法制定当時の20世紀半ばには、欧米の[ ア ]国家の多くにおいて陪審制か参審制が採用されていた。
(最大判平成23年11月16日刑集65巻8号1285頁)

  1. ア:民主主義 イ:法的専門性 ウ:三権分立 エ:国民
  2. ア:立憲主義 イ:政治性 ウ:法的安定性 エ:法曹
  3. ア:自由主義 イ:法的専門性 ウ:三権分立 エ:国民
  4. ア:民主主義 イ:政治性 ウ:法的安定性 エ:法曹
  5. ア:立憲主義 イ:法的専門性 ウ:三権分立 エ:国民

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】

裁判は、証拠に基づいて事実を明らかにし、これに法を適用することによって、人の権利義務を最終的に確定する国の作用であり、取り分け、刑事裁判は、人の生命すら奪うことのある強大な国権の行使である。そのため、多くの近代[ ア:民主主義 ]国家において、それぞれの歴史を通じて、刑事裁判権の行使が適切に行われるよう種々の原則が確立されてきた。基本的人権の保障を重視した憲法では、特に31条から39条において、・・・適正な刑事裁判を実現するための諸原則を定めており、そのほとんどは、各国の刑事裁判の歴史を通じて確立されてきた普遍的な原理ともいうべきものである。刑事裁判を行うに当たっては、これらの諸原則が厳格に遵守されなければならず、それには高度の[ イ:法的専門性 ]が要求される。憲法は、これらの諸原則を規定し、かつ、[ ウ:三権分立 ]の原則の下に、「第6章 司法」において、裁判官の職権行使の独立と身分保障について周到な規定を設けている。こうした点を総合考慮すると、憲法は、刑事裁判の基本的な担い手として裁判官を想定していると考えられる。
他方、歴史的、国際的な視点から見ると、欧米諸国においては、上記のような手続の保障とともに、18世紀から20世紀前半にかけて、[ ア:民主主義 ]の発展に伴い、[ エ:国民  ]が直接司法に参加することにより裁判の[ エ:国民  ]的基盤を強化し、その正統性を確保しようとする流れが広がり、憲法制定当時の20世紀半ばには、欧米の[ ア:民主主義 ]国家の多くにおいて陪審制か参審制が採用されていた。
(最大判平成23年11月16日刑集65巻8号1285頁)

ア.
裁判は、証拠に基づいて事実を明らかにし、これに法を適用することによって、人の権利義務を最終的に確定する国の作用であり、取り分け、刑事裁判は、人の生命すら奪うことのある強大な国権の行使である。そのため、多くの近代[ ア ]国家において、それぞれの歴史を通じて、刑事裁判権の行使が適切に行われるよう種々の原則が確立されてきた。基本的人権の保障を重視した憲法では、特に31条から39条において、・・・適正な刑事裁判を実現するための諸原則を定めており、そのほとんどは、各国の刑事裁判の歴史を通じて確立されてきた普遍的な原理ともいうべきものである。
ア・・・民主主義
選択肢の3つの言葉を入れると
「近代民主主義国家」「近代立憲主義国家」「近代自由主義国家」となります。
  • 民主主義」とは「国のことは、国民が自分たちの力で決めよう!」という考え方です。
  • 立憲主義」とは「憲法によって国家権力(政治家や公務員)を制限しよう!」という考え方です。
  • 自由主義」とは「個人の自由は尊重しよう!」という考え方です。

上記問題文では、どれを入れるかは、判断しづらいです。
ただ、エの選択肢の内容から、「民主主義」と判断できます。

イ.
刑事裁判を行うに当たっては、これらの諸原則が厳格に遵守されなければならず、それには高度の[ イ: ]が要求される。
イ・・・法的専門性
選択肢は「法的専門性」と「政治性」
刑事裁判を行うのは、裁判所(裁判官)であって、内閣(政治家)ではありません。
その点から考えると、司法試験に合格する必要がある裁判官は、政治性が要求されるのではなく、法的専門性が要求されることが分かります。
ウ.
憲法は、これらの諸原則を規定し、かつ、[ ウ ]の原則の下に、「第6章 司法」において、裁判官の職権行使の独立と身分保障について周到な規定を設けている。こうした点を総合考慮すると、憲法は、刑事裁判の基本的な担い手として裁判官を想定していると考えられる。
ウ・・・三権分立
選択肢は、「法的安定性」と「三権分立」の2つです。「法的安定性の原則」とは、法の運用や解釈をころころ変えると社会的安定が失われるため、それは避けましょう、という考え方。
法の恣意的な運用や主観的な解釈などは避けなければならないということです。「三権分立の原則」とは、国会(立法)、内閣(行政)、裁判所(司法)の三つの独立した機関が相互に抑制し合い、バランスを保つことにより、権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する考え方です。

問題文を見ると、
『「第6章 司法」において、裁判官の職権行使の独立と身分保障について周到な規定を設けている』
と書いてあります。
この身分保障は、司法が他の国家権力から独立して、機能すべきことを示しています。
したがって、「ウには、三権分立」が入ります。

エ.
歴史的、国際的な視点から見ると、欧米諸国においては、上記のような手続の保障とともに、18世紀から20世紀前半にかけて、[ ア ]の発展に伴い、[ エ ]が直接司法に参加することにより裁判の[ エ  ]的基盤を強化し、その正統性を確保しようとする流れが広がり、憲法制定当時の20世紀半ばには、欧米の[ ア ]国家の多くにおいて陪審制か参審制が採用されていた。
エ・・・国民
欧米諸国(ドイツ・フランス)では、「参審制」という裁判制度を採り入れ、「事実認定・法解釈・量刑」すべてを、一般市民から選出された参審員と裁判官が一緒に行います
国民が司法に参加する制度を取っているので、「エには、国民」が入ります。ここから、「アが、民主主義」が妥当ではないかと判断できます。

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平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・経済
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

平成28年度(2016年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 国民審査 問33 民法:債権
問4 プライバシー権 問34 民法:債権
問5 国会 問35 民法:親族
問6 信教の自由 問36 商法
問7 法の下の平等 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 行政裁量 問39 会社法
問10 行政事件訴訟法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 行政事件訴訟法 問49 一般知識・政治
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 国家賠償法 問51 一般知識・経済
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 地方自治法 問54 一般知識・情報通信
問25 行政法 問55 一般知識・情報通信
問26 行政事件訴訟法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・公文書管理法
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略