令和6年度(2024年度)過去問

令和7年・2025|問25|行政法

建築に関わる紛争に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 東京都建築安全条例に基づく安全認定を先行処分とする建築確認の取消訴訟において、当該安全認定について裁判所が審査できるのは、重大かつ明白な瑕疵があり無効か否かに限定される。
  2. 建築主事は、建築確認の申請書を受理してから一定期間内に申請者に確認済証を交付しなければならないところ、この期間経過後も交付をしないことが適法とされるのは、当該申請者がそれにつき任意に同意をしているものと明確に認められる場合に限られる。
  3. 建築確認は、建築工事の開始前に、当該建築物の計画が建築関係規定に適合することを公権的に判断する行為にすぎないため、建築確認に対する取消訴訟の係属中に、当該建築確認に係る建築工事が完了した場合、当該取消訴訟の訴えの利益は消滅する。
  4. 民間の指定確認検査機関が行った建築確認につき、その取消訴訟を提起した原告が、この訴えを、損害賠償を求める訴えに変更することの許可を申し立てる場合、変更後の訴えの被告は、当該指定確認検査機関である民間法人となる。
  5. 一級建築士により構造計算書に偽装が行われていた建築物の計画について、これを看過した建築主事による建築確認が国家賠償法の適用上違法となる余地はなく、当該建築確認の申請者である建築主による国家賠償請求は認められない。

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【答え】:3
【解説】
1.東京都建築安全条例に基づく安全認定を先行処分とする建築確認の取消訴訟において、当該安全認定について裁判所が審査できるのは、重大かつ明白な瑕疵があり無効か否かに限定される。

1.妥当でない

先行処分である安全認定に違法がある場合、建築確認取消訴訟においてその違法を主張できるかという「違法性の承継」の問題です。判例(最判平成21年12月17日)は、安全認定と建築確認は同一目的を達成するための一連の手続であるとして、安全認定の違法性を建築確認取消訴訟において主張できるとしました。審査は「重大かつ明白な瑕疵による無効」に限定されるわけではなく、通常の取消事由としての違法性も含めて判断されます。

※「違法性の承継」とは、先行処分の違法を後行処分の取消訴訟で主張できるかという問題です。原則として承継されませんが、両処分が一連一体の関係にある場合は例外的に承継が認められます。

2.建築主事は、建築確認の申請書を受理してから一定期間内に申請者に確認済証を交付しなければならないところ、この期間経過後も交付をしないことが適法とされるのは、当該申請者がそれにつき任意に同意をしているものと明確に認められる場合に限られる。

2.妥当でない

建築基準法は建築主事に対して一定期間内に確認済証を交付する義務を課していますが、期間経過後も交付しないことが適法となる例外は「申請者が明確に同意した場合に限られる」わけではありません。判例は申請者の同意がある場合のほか、申請書の補正など手続上の合理的な理由がある場合なども考慮するとしており、「明確な同意に限定」という記述は例外を過度に狭く捉えています。

3.建築確認は、建築工事の開始前に、当該建築物の計画が建築関係規定に適合することを公権的に判断する行為にすぎないため、建築確認に対する取消訴訟の係属中に、当該建築確認に係る建築工事が完了した場合、当該取消訴訟の訴えの利益は消滅する。

3.妥当である

建築確認は建築工事開始前に計画の法適合性を判断する工事着手の前提条件となる処分にすぎません。そのため、建築確認の取消訴訟係属中に建築工事が完了してしまうと、建築確認を取り消してもそれ以上工事を阻止する実益がなくなるため、訴えの利益は消滅します(最判昭和59年10月26日)。工事完了前に仮の差止め等を求めることが重要となる場面です。

※「訴えの利益」とは、取消訴訟において処分を取り消すことで回復すべき法律上の利益のことです。訴えの利益が失われると、本案審理を行う実益がないため却下されます。

4.民間の指定確認検査機関が行った建築確認につき、その取消訴訟を提起した原告が、この訴えを、損害賠償を求める訴えに変更することの許可を申し立てる場合、変更後の訴えの被告は、当該指定確認検査機関である民間法人となる。

4.妥当でない

指定確認検査機関は民間法人ですが、建築確認という公権力の行使を行う機関として位置づけられています。取消訴訟から損害賠償請求訴訟への変更の場面では、国家賠償責任を負うのは指定確認検査機関を指定・監督する国または地方公共団体であり、民間法人である指定確認検査機関自体が被告となるわけではありません(国家賠償法1条)。「変更後の被告が民間法人たる指定確認検査機関」という記述が誤りです。

※「指定確認検査機関」とは、建築基準法に基づき国土交通大臣または都道府県知事が指定した民間機関で、建築確認・完了検査等の業務を行います(建築基準法77条の18)。

5.一級建築士により構造計算書に偽装が行われていた建築物の計画について、これを看過した建築主事による建築確認が国家賠償法の適用上違法となる余地はなく、当該建築確認の申請者である建築主による国家賠償請求は認められない。

5.妥当でない

一級建築士による構造計算書の偽装があったとしても、建築主事がその偽装を見抜けなかったことに過失があれば、国家賠償法上の違法となる余地があります。建築主事には建築確認の審査義務があり、高度な偽装であっても審査の過程でどの程度の注意義務が求められるかは個別の事情に応じて判断されます。「違法となる余地はない」という絶対的な否定は誤りであり、国家賠償請求が認められる可能性は排除されません

令和8年度行政法予想模試

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問26|情報公開法

行政機関情報公開法* (以下「法」という)に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。 (注)* 行政機関の保有する情報の公開に関する法律

  1. 開示請求にかかる行政文書に個人に関する情報が含まれている場合、開示請求者は、法が定める範囲内で、行政機関において、特定の個人を識別することができないように個人情報を加工した情報を記載した新たな別の行政文書を作成し、その交付を求めることができる。
  2. 法にいう「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、または取得した文書、図画および電磁的記録であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、事案処理手続における決裁、縦覧を経た上で当該行政機関が保有しているものをいう。
  3. 法は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めることにより、政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的としていることから、外国に在住する外国人は、行政文書の開示を請求する権利を有しない。
  4. 法は、個人に関する情報について、それが一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報であるか否かにかかわりなく、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものを不開示情報としている。
  5. 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合において、不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、法の定める場合を除き、開示請求者の求めに応じ、当該部分を除いた情報の概要を記載した新たな別の文書を作成し、これを交付しなければならない。

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【答え】:4
【解説】
1.開示請求にかかる行政文書に個人に関する情報が含まれている場合、開示請求者は、法が定める範囲内で、行政機関において、特定の個人を識別することができないように個人情報を加工した情報を記載した新たな別の行政文書を作成し、その交付を求めることができる。

1.妥当でない

行政機関情報公開法は、あくまで現に存在する行政文書の開示を請求できる制度であり、新たな文書を作成して交付することまでは求めていません。個人情報を加工した新たな文書の作成・交付は、個人情報保護法における匿名加工情報の仕組み(個人情報保護法2条6項等)の問題であり、情報公開法の枠組みとは別の話です。情報公開法と個人情報保護法を混同しないよう注意しましょう。

2.法にいう「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、または取得した文書、図画および電磁的記録であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、事案処理手続における決裁、縦覧を経た上で当該行政機関が保有しているものをいう。

2.妥当でない

情報公開法における「行政文書」の定義(情報公開法2条2項)は、「行政機関の職員が職務上作成し、または取得した文書・図画・電磁的記録であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして当該行政機関が保有しているもの」とされています。「事案処理手続における決裁・縦覧を経た上で」という要件は定められておらず、この記述は要件を過剰に限定するものです。「組織的に用いるもの」として保有していれば足り、決裁・縦覧の有無は問いません。

3.法は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めることにより、政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的としていることから、外国に在住する外国人は、行政文書の開示を請求する権利を有しない。

3.妥当でない

情報公開法3条は「何人も」行政文書の開示を請求することができると定めており、日本国民・外国人・在住者・非在住者を問いません。外国に住む外国人も開示請求権を有します。「国民主権の理念にのっとり」と目的規定に書かれていますが、だからといって請求権者を日本国民に限定しているわけではない点が重要です。

4.法は、個人に関する情報について、それが一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報であるか否かにかかわりなく、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものを不開示情報としている。

4.妥当である

情報公開法5条1号は、特定の個人を識別することができる個人情報を不開示情報としており、その情報が「他人に知られたくない情報かどうか」という本人の意思や情報の性質には関係なく、特定の個人を識別できるか否かのみを基準としています。また、他の情報と照合することで特定個人が識別できるものや、識別はできなくても公開により個人の権利利益を害するおそれがあるものも不開示情報に含まれます。

※「不開示情報」とは、情報公開法5条各号に列挙された開示することが適切でない情報のことです。個人情報・法人情報・安全保障情報・審議検討情報・事務事業情報などが定められています。

5.行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合において、不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、法の定める場合を除き、開示請求者の求めに応じ、当該部分を除いた情報の概要を記載した新たな別の文書を作成し、これを交付しなければならない。

5.妥当でない

一部開示(情報公開法6条)とは、行政文書の一部に不開示情報が含まれる場合に、不開示部分を除いた既存の行政文書をそのまま開示する制度です。肢1・肢5のいずれも「新たな別の文書を作成して交付する」としている点が誤りです。情報公開法は既存文書の開示を求める制度であり、新たな文書の作成義務は課していません。「概要を記載した別文書の作成・交付」は法が求めていない要件です。

令和8年度行政法予想模試

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問27|民法

行為能力に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
  2. 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人または被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始または補助開始の審判を取り消さなければならない。
  3. 被保佐人が遺産の分割をする場合には、その保佐人の同意を得る必要はないが、被保佐人が相続の承認または放棄をする場合には、その保佐人の同意を得なければならない。
  4. 制限行為能力者が、行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
  5. 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人または補助人に対し、その権限内の行為について、1ヵ月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をした場合、これらの者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

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【答え】:3
【解説】
1.補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。

1.正しい

補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意しない場合、家庭裁判所は被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができます(民法17条3項)。これは補助人が不当に同意を拒絶することから被補助人を保護する規定です。同様の規定は保佐人の同意に代わる許可(民法13条3項)にも存在します。

※「補助」とは、精神上の障害により事理弁識能力が不十分な者を対象とする後見制度の一類型で、後見・保佐より支援の程度が軽いものです(民法15条)。補助人の同意権の対象は、保佐人の同意権の対象の一部に限られます。

2.後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人または被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始または補助開始の審判を取り消さなければならない。

2.正しい

後見・保佐・補助は支援の程度が異なる段階的な制度です。後見開始の審判を受ける場合、本人がすでに被保佐人または被補助人であるときは、より軽い制度である保佐開始・補助開始の審判は家庭裁判所が職権で取り消さなければなりません(民法19条1項)。重複適用を排除し、適切な保護類型に一本化する趣旨です。

3.被保佐人が遺産の分割をする場合には、その保佐人の同意を得る必要はないが、被保佐人が相続の承認または放棄をする場合には、その保佐人の同意を得なければならない。

3.誤り

「被保佐人が遺産の分割をする場合に保佐人の同意が不要」という記述が誤りです。民法13条1項9号により、相続の承認もしくは放棄および遺産の分割はいずれも保佐人の同意が必要な行為として明示されています。遺産分割は財産的影響が大きく被保佐人を保護する必要があるため、相続の承認・放棄と並んで両方とも同意が必要です。「遺産分割は不要」という点が誤りです。

※「被保佐人」とは、精神上の障害により事理弁識能力が著しく不十分な者として保佐開始の審判を受けた者のことです(民法11条)。民法13条1項に列挙された重要な財産行為には保佐人の同意が必要です。

4.制限行為能力者が、行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

4.正しい

制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるために詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができません(民法21条)。自ら相手方を騙した制限行為能力者を保護する必要はなく、むしろ善意で信頼した相手方を保護すべきという趣旨です。なお、単に黙秘しているだけでは詐術にあたりませんが、他の言動と相まって誤信を強めるような場合は詐術にあたると解されています。

5.制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人または補助人に対し、その権限内の行為について、1ヵ月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をした場合、これらの者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

5.正しい

制限行為能力者の相手方が、法定代理人・保佐人・補助人に対して1か月以上の期間を定めて追認するか否かの確答を催告した場合、期間内に確答がなければ追認したものとみなされます(民法20条1項・2項)。これは制限行為能力者の相手方を不確定な状態から解放する規定です。ただし、制限行為能力者本人に直接催告した場合、確答がなければ取り消したものとみなされる点(民法20条4項)と区別して覚えておきましょう。

※「追認」とは、取り消しうる行為を確定的に有効とする意思表示のことです(民法122条)。追認後は取り消すことができなくなります。

令和8年度行政法予想模試

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問28|民法

代理人の行う代理行為に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.任意後見契約に基づく任意代理人は、任意後見契約で定められた被後見人の財産に関する代理行為を行うのに対し、家庭裁判所の審判により選任された法定代理人である後見人は、家庭裁判所の審判において定められた被後見人の特定の財産行為についてのみ代理行為を行う。

イ.法定代理人は、任意代理人と異なり、いつでも復代理人を選任することができるが、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任および監督についての責任のみを負う。

ウ.法定代理人も任意代理人も、本人が死亡した場合には当然に代理権を失うが、任意代理については、本人と任意代理人との間に本人が死亡した後も代理権が存続する旨の合意がある場合には、本人が死亡した後も代理権が存続する。

エ.代理人であった者がその代理権が消滅した後に、その代理権の範囲内において代理行為を行った場合、その者が当該代理人が任意代理人であったか法定代理人であったかを問わず、本人は、代理権の消滅について善意・無過失の第三者に対して、その責任を負う。

オ.代理人が制限行為能力者であったとしても、当該代理人の代理行為を制限行為能力を理由として取り消すことはできず、これは当該代理人が他の制限行為能力者の法定代理人である場合でも同様である。

  1. ア・エ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. イ・オ
  5. ウ・エ

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【答え】:3

【解説】
ア.任意後見契約に基づく任意代理人は、任意後見契約で定められた被後見人の財産に関する代理行為を行うのに対し、家庭裁判所の審判により選任された法定代理人である後見人は、家庭裁判所の審判において定められた被後見人の特定の財産行為についてのみ代理行為を行う。

ア.妥当でない

家庭裁判所の審判により選任された後見人は、被後見人の財産に関するすべての法律行為について広範な代理権を持ちます(民法859条1項)。「家庭裁判所の審判において定められた特定の財産行為についてのみ代理権を持つ」という記述は誤りです。特定の行為に代理権が限定されるのは後見人ではなく、保佐人・補助人において家庭裁判所が代理権の範囲を定める場合(民法876条の4・876条の9)に当たります。

※「任意後見契約」とは、本人が将来の判断能力低下に備え、信頼できる者に財産管理等の代理権を付与する公正証書による契約です(任意後見契約法2条)。

イ.法定代理人は、任意代理人と異なり、いつでも復代理人を選任することができるが、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任および監督についての責任のみを負う。

イ.妥当である

法定代理人はいつでも自己の責任で復代理人を選任できます(民法105条本文)。ただし、やむを得ない事由がある場合は、選任と監督についての責任のみを負います(民法105条ただし書)。これに対して、任意代理人は本人の許諾またはやむを得ない事由がある場合のみ復代理人を選任できます(民法104条)。法定代理人は本人の指示なく広範な権限を持つため復代理人選任が自由である一方、責任範囲が重くなる仕組みです。

※「復代理人」とは、代理人が自己の権限内で本人を代理するために選任した代理人のことです。復代理人は本人を直接代理し、元の代理人の代理人ではありません(民法106条)。

ウ.法定代理人も任意代理人も、本人が死亡した場合には当然に代理権を失うが、任意代理については、本人と任意代理人との間に本人が死亡した後も代理権が存続する旨の合意がある場合には、本人が死亡した後も代理権が存続する。

ウ.妥当である

本人の死亡は原則として代理権を消滅させます(民法111条1項1号)。しかし、任意代理については本人死亡後も代理権を存続させる旨の合意がある場合、死亡後も代理権は存続します(最判昭和31年6月1日)。これは委任契約における特約として有効と解されており、遺産整理・事業継続などの実務上の必要性に対応するものです。法定代理と任意代理でルールが異なる点を押さえておきましょう。

エ.代理人であった者がその代理権が消滅した後に、その代理権の範囲内において代理行為を行った場合、その者が当該代理人が任意代理人であったか法定代理人であったかを問わず、本人は、代理権の消滅について善意・無過失の第三者に対して、その責任を負う。

エ.妥当でない

代理権消滅後の表見代理(民法112条)は任意代理には適用されますが、法定代理には原則として適用されません。法定代理は法律の規定または裁判所の審判によって生じるものであり、第三者が代理人の権限の外観を信頼することに合理的な根拠が乏しいためです。「任意代理人であったか法定代理人であったかを問わず」という記述が誤りです。

※「表見代理(民法112条)」とは、代理権が消滅した後もその代理権の範囲内でされた行為について、善意・無過失の第三者を保護するために本人がその責任を負う制度です。取引の安全を保護する趣旨です。

オ.代理人が制限行為能力者であったとしても、当該代理人の代理行為を制限行為能力を理由として取り消すことはできず、これは当該代理人が他の制限行為能力者の法定代理人である場合でも同様である。

オ.妥当でない

民法102条本文は、代理人が制限行為能力者であっても代理行為を行為能力の制限を理由として取り消せないと定めています。しかし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでないとする例外があります(民法102条ただし書)。例えば、成年被後見人が未成年の子の親権者として代理行為をした場合には取り消すことができます。「法定代理人である場合でも同様」という記述は民法102条ただし書を無視した誤りです。

令和8年度行政法予想模試

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問29|民法

即時取得に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.Aは、相続により、被相続人Bが現に占有していた動産甲を、それが設置された不動産と共に承継したが、甲はCの所有物であった。この場合、甲がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、Aは甲を即時取得する。

イ.Aは、売買により動産乙を、現にそれを占有する未成年者Bから購入して現実の引渡しを受けたが、その後、Bの法定代理人Cが、AB間の売買契約を未成年を理由に取り消した。この場合、Bが未成年者であったことにつきAが善意・無過失であれば、Aは乙を即時取得する。

ウ.Aは、売買により動産丙を、現にそれを占有するBから購入して現実の引渡しを受けた。丙が自動車である場合、丙が登録済みであるか否かにかかわらず、Aは丙を即時取得しない。

エ.Aは、売買により動産丁を、それを占有代理人Cによって占有するBから購入し、BはCに今後Aのために占有するように指示してAがそれを承諾した。丁はAからBに寄託されているものであった場合、承諾時において丁がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、後にその事実を知るに至ったとしても、Aは丁を即時取得する。

オ.Aは、売買により動産戊を、現にそれを占有するBから購入したが、その際、AがBの元に戊を引取りにいくこととし、それまでの間、BがAのために占有することが合意された。戊はBが他から賃借したものであった場合、AがBから戊の現実の引渡しを受ける時点において、戊がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、Aは戊を即時取得する。

  1. ア・ウ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】
ア.Aは、相続により、被相続人Bが現に占有していた動産甲を、それが設置された不動産と共に承継したが、甲はCの所有物であった。この場合、甲がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、Aは甲を即時取得する。

ア.妥当でない

即時取得が成立するためには、取引行為(法律行為)によって占有を取得することが必要です。相続は被相続人の権利義務を包括的に承継するものであり、取引行為にあたりません。Aがたとえ善意・無過失であっても、相続による承継には即時取得の規定は適用されないため、AはCの所有物である甲を即時取得しません。

※「即時取得」とは、動産を取引行為によって占有取得した者が、その動産についての占有者の処分権限を信頼した場合に所有権等を取得できる制度です(民法192条)。取引の安全を保護することを目的とします。

イ.Aは、売買により動産乙を、現にそれを占有する未成年者Bから購入して現実の引渡しを受けたが、その後、Bの法定代理人Cが、AB間の売買契約を未成年を理由に取り消した。この場合、Bが未成年者であったことにつきAが善意・無過失であれば、Aは乙を即時取得する。

イ.妥当でない

即時取得は制限行為能力者の取消しには適用されません。未成年者制度・後見制度は制限行為能力者を保護するための特別制度であり、即時取得を認めてしまうと取消権が無意味になるからです。Aが未成年者であることにつき善意・無過失であっても、取消しによる契約の遡及的無効はAに及びます。制限行為能力者制度の趣旨と即時取得制度の趣旨が衝突する場面では、前者が優先されます。

ウ.Aは、売買により動産丙を、現にそれを占有するBから購入して現実の引渡しを受けた。丙が自動車である場合、丙が登録済みであるか否かにかかわらず、Aは丙を即時取得しない。

ウ.妥当でない

自動車について即時取得の適否は登録の有無によって異なります登録済みの自動車については登録制度が公示手段として機能するため即時取得は適用されませんが、未登録の自動車については登録制度による公示がなく、占有が権利の外観となるため即時取得が認められます。「登録済みか否かにかかわらず即時取得しない」という記述が誤りです。

エ.Aは、売買により動産丁を、それを占有代理人Cによって占有するBから購入し、BはCに今後Aのために占有するように指示してAがそれを承諾した。丁はAからBに寄託されているものであった場合、承諾時において丁がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、後にその事実を知るに至ったとしても、Aは丁を即時取得する。

エ.妥当である

指図による占有移転(民法184条)とは、占有代理人に対して以後第三者のために占有するよう命じ、その第三者が承諾することで占有を移転する方法です。判例はこの指図による占有移転によっても即時取得が成立することを認めています。Aが承諾の時点で善意・無過失であれば、その後に丁がBの所有物でないことを知ったとしても即時取得の効果は妨げられません。善意・無過失の判断時点は承諾時である点が重要です。

オ.Aは、売買により動産戊を、現にそれを占有するBから購入したが、その際、AがBの元に戊を引取りにいくこととし、それまでの間、BがAのために占有することが合意された。戊はBが他から賃借したものであった場合、AがBから戊の現実の引渡しを受ける時点において、戊がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、Aは戊を即時取得する。

オ.妥当である

売買後にBがAのために占有するという合意(占有改定)の段階では外観上の変化がないため、占有改定による占有取得では即時取得は成立しません。しかし、その後に現実の引渡しが行われた時点でAが善意・無過失であれば即時取得が成立します(最判昭和35年2月11日)。善意・無過失の判断時点は占有改定時ではなく現実の引渡し時である点が本肢のポイントです。占有改定時に悪意であっても、現実の引渡しを受けた時点で善意・無過失であれば足ります。

※「占有改定」とは、売買後も売主がそのまま物を占有し続けるが、以後は買主のために占有する旨を合意することで観念的に引渡しを行う方法です(民法183条)。外観上の変化がないため即時取得の根拠となる公信力が生じません。

令和8年度行政法予想模試

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問30|民法

Aは、Bとの間でA所有の建設機械甲(以下「甲」という)をBに売却する旨の本件売買契約を締結し、甲をBに引き渡したが、弁済期が徒過したにもかかわらずBから代金の支払を受けていない。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. AはBに対して、催告した上で代金不払を理由として本件売買契約を解除する旨の通知を行った場合、その後Bは甲をCに売却して引き渡したとしても、Aは、Cに対して甲の返還を求めることができる。
  2. DがBから甲の修理を請け負い、修理を終えて甲をBに返還したが報酬の支払を受けていない場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使して、Dに先立って優先弁済を受けることができる。
  3. BがEのために甲に質権を設定した場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使して、Eに先立って優先弁済を受けることができる。
  4. BがFのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡した場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使することができ、Fはこれに対して異議を述べることはできない。
  5. 本件売買契約において所有権留保特約が設けられていた場合、BがGのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡したとしても、Aは、Bに対して留保所有権に基づいて甲の引渡しを求めることができ、Gはこれに対して異議を述べることはできない。

>解答と解説はこちら


【答え】:5
【解説】
1.AはBに対して、催告した上で代金不払を理由として本件売買契約を解除する旨の通知を行った場合、その後Bは甲をCに売却して引き渡したとしても、Aは、Cに対して甲の返還を求めることができる。

1.妥当でない

売買契約が解除されてAに所有権が復帰した場合でも、動産の物権変動は引渡しがなければ第三者に対抗できません(民法178条)。BはすでにCに甲を引き渡しており、AはCから甲の返還を求めることができません。解除による所有権の復帰は当事者間では有効ですが、引渡しを受けて占有しているCに対してはAの所有権を対抗できない点が重要です。

2.DがBから甲の修理を請け負い、修理を終えて甲をBに返還したが報酬の支払を受けていない場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使して、Dに先立って優先弁済を受けることができる。

2.妥当でない

動産の先取特権が競合する場合の優先順位は、第1順位が「保存の先取特権」、第2順位が「動産売買の先取特権」となっています(民法330条1項)。Dが修理(保存・維持)によって取得した先取特権は第1順位、Aの動産売買先取特権は第2順位であるため、DがAに先立って優先弁済を受けます。「Aがに先立って優先弁済を受けることができる」という記述は順位が逆です。

※「動産の保存先取特権」とは、他人の動産の保存・修理に要した費用について認められる先取特権です(民法320条)。財産価値を維持した者を保護するため第1順位に置かれています。

3.BがEのために甲に質権を設定した場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使して、Eに先立って優先弁済を受けることができる。

3.妥当でない

動産の先取特権と動産質権が競合する場合、質権者は第1順位の先取特権者と同一の権利を有します(民法334条)。AのBに対する動産売買先取特権は第2順位であるため、第1順位と同等の地位を持つEの質権に対してAは優先しません。「Eに先立って優先弁済を受けることができる」という記述は誤りです。

※「動産質権」とは、動産を債権の担保として債権者に引き渡す担保権です(民法344条)。質権は占有を移転することが成立要件であり、占有継続が対抗要件となります。

4.BがFのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡した場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使することができ、Fはこれに対して異議を述べることはできない。

4.妥当でない

動産の先取特権は、債務者がその目的動産を第三取得者に引き渡した後は行使できません(民法333条)。占有改定は民法上の引渡し方法の一つ(民法183条)であり、BがFのために甲を譲渡担保に供して占有改定による引渡しをした場合、この占有改定が民法333条の「引渡し」に該当し、Aの先取特権は消滅します(最判昭和62年11月10日)。よってAは先取特権を行使することができません。

※「占有改定」とは、譲渡人がそのまま目的物を占有し続けることを合意することで、観念上の引渡しを行う方法です(民法183条)。物理的に物を移動させずに引渡しの効果を生じさせます。
※「譲渡担保」とは、担保の目的で財産権を債権者に移転し、被担保債権が弁済されたときに返還する担保方法です。民法上の明文規定はありませんが判例・実務上広く認められています。

5.本件売買契約において所有権留保特約が設けられていた場合、BがGのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡したとしても、Aは、Bに対して留保所有権に基づいて甲の引渡しを求めることができ、Gはこれに対して異議を述べることはできない。

5.妥当である

所有権留保特約がある場合、代金完済まで甲の所有権はAに留保されます。Bが甲を譲渡担保に供して占有改定による引渡しをしても、Aは所有権者として甲の引渡しをBに対して求めることができます(最判昭和49年7月18日)。Gは占有改定という不完全な引渡ししか受けていないため、AのGに対する留保所有権の主張を排除できません。肢4との違いは、先取特権(担保権)ではなく所有権そのものを留保している点にあります。

※「所有権留保」とは、売買代金が完済されるまで目的物の所有権を売主に留保する特約です。割賦販売などで広く利用され、代金未払いの場合に売主が所有権に基づいて目的物を取り戻せる手段となります。

令和8年度行政法予想模試

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問31|民法

Aを売主、Zを買主とする売買契約に基づいて発生したAのZに対する売買代金債権(以下「本件債権」という)を、AがBに譲渡し、その旨の債権譲渡通知(以下「本件債権譲渡通知」という)が内容証明郵便によって行われ、Zに到達した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 本件債権譲渡通知がZに到達する前に、ZがすでにAに対して本件債権を弁済していた場合、Zは、Bから本件債権の弁済を請求されたとしても、これを拒むことができる。
  2. Aは、本件債権をBに譲渡した直後にCに対しても譲渡し、その旨の債権譲渡通知が内容証明郵便によって行われ、これが本件債権譲渡通知と同時にZに到達した。Zが、Bから本件債権の弁済を求められた場合、同順位の対抗要件を具備したCの存在を理由として、これを拒むことができる。
  3. Aは、本件債権をBに譲渡した直後にCに対しても譲渡し、その旨の債権譲渡通知が内容証明郵便によって行われ、これが本件債権譲渡通知と同時にZに到達したため、Zが、本件債権につき弁済供託を行った場合、Bは、本件債権全額については供託金の還付を請求することはできない。
  4. 本件債権譲渡通知がZに到達する前に、ZがすでにAに対して貸金債権を有している場合、当該通知の到達後に、Aに対して本件債権と当該貸金債権を相殺する旨の意思表示を行ったとしても、Zは、この相殺による本件債権の消滅をBに対して主張することができる。
  5. 本件債権譲渡通知がZに到達した後になって、AZ間の売買契約の履行としてAから引き渡された目的物の品質が契約に適合しておらず、ZのAに対する損害賠償請求権が発生したため、Zは、Aに対して本件債権と当該損害賠償請求権を相殺する旨の意思表示を行った。Zは、この相殺による本件債権の消滅をBに対して主張することができる。

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【答え】:2
【解説】
1.本件債権譲渡通知がZに到達する前に、ZがすでにAに対して本件債権を弁済していた場合、Zは、Bから本件債権の弁済を請求されたとしても、これを拒むことができる。

1.妥当である

債権譲渡の対抗要件(通知のZへの到達)が具備される前にZがAへ弁済していた場合、ZはBからの請求を拒むことができます(民法468条1項)。対抗要件具備時より前にZとAの間で生じた事由(弁済)は、Zが譲受人Bに対抗できます。債権譲渡通知が届く前の弁済は有効であり、Zは二重払いを強いられません。

※「対抗要件」とは、当事者間で生じた法律関係を第三者に主張するために必要な要件のことです。債権譲渡では、譲渡人(A)からの確定日付のある証書による通知または債務者(Z)の承諾が第三者対抗要件となります(民法467条2項)。

2.Aは、本件債権をBに譲渡した直後にCに対しても譲渡し、その旨の債権譲渡通知が内容証明郵便によって行われ、これが本件債権譲渡通知と同時にZに到達した。Zが、Bから本件債権の弁済を求められた場合、同順位の対抗要件を具備したCの存在を理由として、これを拒むことができる。

2.妥当でない

BへとCへの債権譲渡通知が同時にZに到達した場合、BとCは同順位の対抗要件を持つ競合譲受人となりますが、Zはこれを理由にBへの弁済を拒むことはできません(最判昭和55年1月11日)。同時到達の場合、ZはBまたはCのいずれかに対して有効に弁済することができ、弁済を拒む権限はありません。ZがどちらへもZが弁済したくない場合は弁済供託(民法494条)を利用することが認められています。「拒むことができる」という記述が誤りです。

※「弁済供託」とは、債権者が誰であるか不明な場合などに、債務者が法務局等に弁済金を供託することで、自己の債務を免れる制度です(民法494条)。

3.Aは、本件債権をBに譲渡した直後にCに対しても譲渡し、その旨の債権譲渡通知が内容証明郵便によって行われ、これが本件債権譲渡通知と同時にZに到達したため、Zが、本件債権につき弁済供託を行った場合、Bは、本件債権全額については供託金の還付を請求することはできない。

3.妥当である

BとCへの債権譲渡通知がZに同時到達し、ZがZの選択により弁済供託をした場合、BとCはそれぞれの譲受債権額に応じて供託金を按分した額の還付請求権を分割取得します(最判平成5年3月30日)。本件でAからBへとCへの譲渡はいずれも同一の債権(本件債権)の譲渡ですから、BはC分を含めた債権全額の供託金還付請求権をCと按分することになり、全額の請求はできません

4.本件債権譲渡通知がZに到達する前に、ZがすでにAに対して貸金債権を有している場合、当該通知の到達後に、Aに対して本件債権と当該貸金債権を相殺する旨の意思表示を行ったとしても、Zは、この相殺による本件債権の消滅をBに対して主張することができる。

4.妥当である

対抗要件具備時(通知のZへの到達)より前にZがAに対して取得していた貸金債権は、通知到達後に相殺の意思表示をした場合でも、Bに対して相殺による本件債権の消滅を対抗することができます(民法469条1項)。相殺は「取得した時点」が対抗要件具備時より前であればよく、意思表示の時点が通知到達後であっても構いません。債務者Zを保護するための規定です。

※「相殺」とは、互いに同種の債務を有する場合に、一方的意思表示によってその債務を対当額で消滅させることをいいます(民法505条)。

5.本件債権譲渡通知がZに到達した後になって、AZ間の売買契約の履行としてAから引き渡された目的物の品質が契約に適合しておらず、ZのAに対する損害賠償請求権が発生したため、Zは、Aに対して本件債権と当該損害賠償請求権を相殺する旨の意思表示を行った。Zは、この相殺による本件債権の消滅をBに対して主張することができる。

5.妥当である

対抗要件具備時より後に取得した債権であっても、対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権であれば、相殺をもって譲受人に対抗できます(民法469条2項1号)。本件では、AZ間の売買契約(対抗要件具備時より前に締結)から生じた契約不適合による損害賠償請求権であり、発生原因が通知到達前の売買契約であるため、ZはBに対して相殺による本件債権の消滅を主張することができます。「原因の発生時期」が判断基準となる点を押さえましょう。

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令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問32|民法

AとBが、Cから連帯して400万円を借りている場合(AとBの負担部分は200万円ずつ)に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Aが、Cに400万円を弁済するのに先立ち、Bに事前の通知をすることを怠った場合において、すでに弁済により共同の免責を得ていたBがAに事後の通知をしていなかったときは、Aは、Bに対して自己の免責行為を有効であるとみなすことができる。
  2. Aが、Cに400万円を弁済するのに先立ち、Bに事前の通知をしないで弁済をし、共同の免責を得た場合において、Bは、Cに対して200万円の反対債権を有していたときは、自己の負担部分の200万円について、Aの求償に対して相殺をもって対抗できる。
  3. Aが、Cに対して400万円の反対債権を有する場合において、Aが相殺を援用したときは、Aの負担部分の200万円についてのみ、Bの利益のためにも、その効力を生ずる。
  4. Cが、Aに対して債務を免除した場合において、Aの負担部分の200万円の限度で、Bは、Cに対して債務の履行を拒むことができる。
  5. AのためにCの貸金債権の消滅時効が完成した場合において、BがCに400万円を弁済したときは、Bは、Aに求償権を行使することができない。

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【答え】:2
【解説】
1.Aが、Cに400万円を弁済するのに先立ち、Bに事前の通知をすることを怠った場合において、すでに弁済により共同の免責を得ていたBがAに事後の通知をしていなかったときは、Aは、Bに対して自己の免責行為を有効であるとみなすことができる。

1.妥当でない

事前通知を怠ったのはAですが、本肢では「Aは自己の免責行為を有効とみなすことができる」としており、これが誤りです。民法443条2項において自己の免責行為を有効とみなすことができるのはBです。BはすでにCへ弁済して共同の免責を得ていたにもかかわらず、AがBへの事前通知を怠ったためAの弁済と重複してしまった場面では、事前通知義務を怠ったAが不利益を受けるべきであり、善意であったBが保護されます

※「事前通知」とは、連帯債務者が弁済等をしようとする場合に、他の連帯債務者に対してあらかじめその旨を知らせる通知のことです(民法443条1項)。

2.Aが、Cに400万円を弁済するのに先立ち、Bに事前の通知をしないで弁済をし、共同の免責を得た場合において、Bは、Cに対して200万円の反対債権を有していたときは、自己の負担部分の200万円について、Aの求償に対して相殺をもって対抗できる。

2.妥当である

Aが事前通知なしにCへ400万円を弁済した場合、Bは自己の負担部分(200万円)について、Cに対して有していた反対債権による相殺をもってAの求償に対抗することができます(民法443条1項前段)。これは、事前通知を怠ったAに不利益を負わせ、Bを保護する規定です。BがCに対して持っていた200万円の反対債権を「事由」として、Aの200万円の求償に対して相殺で対抗できる点が正確に記述されています。

※「求償権」とは、連帯債務者の一人が自己の負担部分を超えて弁済した場合に、他の連帯債務者に対してその超過部分の償還を求めることができる権利です(民法442条)。

3.Aが、Cに対して400万円の反対債権を有する場合において、Aが相殺を援用したときは、Aの負担部分の200万円についてのみ、Bの利益のためにも、その効力を生ずる。

3.妥当でない

Aが400万円の反対債権を持ち相殺を援用した場合、消滅するのはAの負担部分200万円だけではありません。民法439条1項により、相殺を援用した連帯債務者の債権額の限度で、債権は全ての連帯債務者の利益のために消滅します。Aが400万円の反対債権全額で相殺を援用した場合は400万円全額がAとB両者の利益のために消滅します。「Aの負担部分200万円についてのみBの利益のために効力を生ずる」という記述が誤りです。

4.Cが、Aに対して債務を免除した場合において、Aの負担部分の200万円の限度で、Bは、Cに対して債務の履行を拒むことができる。

4.妥当でない

2020年の民法改正により、連帯債務における免除は相対効(民法441条)となりました。CがAに対して債務を免除しても、その効力はAとCの間にのみ生じ、BのCに対する債務には影響しません。改正前の旧民法では免除に絶対効が認められていましたが(旧民法437条)、改正後はBはCに対して履行を拒むことができません。「改正前・改正後」で結論が逆転する点を注意して覚えておきましょう。

5.AのためにCの貸金債権の消滅時効が完成した場合において、BがCに400万円を弁済したときは、Bは、Aに求償権を行使することができない。

5.妥当でない

民法改正(2020年)により、時効の完成も相対効となりました(民法441条)。AのためにCの貸金債権の消滅時効が完成しても、その効力はAとCの間にのみ及び、BのCに対する債務には影響しません。BはCに対して依然として400万円全額の支払義務を負うため、BがCに400万円を弁済した場合、BはAに対してAの負担部分200万円の求償権を行使することができます(民法442条)。「求償できない」という記述が誤りです。

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令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問33|民法

消費貸借契約に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.消費貸借契約は書面によっても行うことができるが、書面でする消費貸借契約の貸主は、借主が消費貸借契約の目的物を受け取るまでの間は当該消費貸借契約を解除することができ、解除によって損害を受けた借主は、貸主に対してその損害の賠償を請求することができる。

イ.金銭消費貸借契約の借主が、利息の支払を含む貸金返還債務を新しい消費貸借契約の目的とすることを貸主と合意したときは、これにより新たな消費貸借契約が成立するが、旧契約に付された利息の約定が利息制限法の上限利率を超過する場合には、その限りで当該新たな消費貸借契約は無効となる。

ウ.消費貸借契約は原則として利息の発生を伴い、無利息とするためには特約が必要である。

エ.消費貸借契約において、契約内容に適合しない物が借主に引き渡された場合、当該消費貸借契約が利息付きであるか無利息であるかにかかわらず、借主はその物の価額を返還することができる。

オ.消費貸借契約において返還時期の定めがない場合、当該消費貸借契約が利息付きであるか無利息であるかにかかわらず、貸主は借主に対していつでもその貸借物の返還を求めることができ、借主は返還請求があった時から直ちに履行遅滞の責任を負う。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・エ
  4. イ・オ
  5. ウ・オ

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【答え】:3

【解説】
ア.消費貸借契約は書面によっても行うことができるが、書面でする消費貸借契約の貸主は、借主が消費貸借契約の目的物を受け取るまでの間は当該消費貸借契約を解除することができ、解除によって損害を受けた借主は、貸主に対してその損害の賠償を請求することができる。

ア.妥当でない

本肢は貸主と借主が逆になっています。書面でする消費貸借契約において、目的物の引渡しを受けるまでの間に契約を解除できるのは貸主ではなく借主です(民法587条の2第2項)。借主にとって事情が変わったときの保護規定です。また、その解除によって損害を受けた場合に賠償請求ができるのは借主ではなく貸主です。「貸主」と「借主」をそのまま入れ替えると正しい記述になります。

イ.金銭消費貸借契約の借主が、利息の支払を含む貸金返還債務を新しい消費貸借契約の目的とすることを貸主と合意したときは、これにより新たな消費貸借契約が成立するが、旧契約に付された利息の約定が利息制限法の上限利率を超過する場合には、その限りで当該新たな消費貸借契約は無効となる。

イ.妥当である

既存の債務を合意によって消費貸借上の債務に変更することを準消費貸借といいます(民法588条)。本肢のように、既存の消費貸借債務を新たな消費貸借債務に組み替えることも準消費貸借に含まれます(大判大正2年1月24日)。ただし、旧契約の利息約定が利息制限法の上限利率を超過する部分を含む場合、その超過部分を目的とする新たな消費貸借契約は無効となります(最判昭和55年1月24日)。

※「準消費貸借」とは、売買代金債務・損害賠償債務など既存の債務を、当事者の合意によって消費貸借上の債務に転換する契約です(民法588条)。
※「利息制限法」とは、貸付金利の上限を定めた法律です。元本額に応じて上限利率(15〜20%)が定められており、超過部分の利息約定は無効となります。

ウ.消費貸借契約は原則として利息の発生を伴い、無利息とするためには特約が必要である。

ウ.妥当でない

消費貸借契約は原則として無利息です(民法589条1項)。利息を請求するためには利息付きとする特約が必要です。「原則として利息が発生し、無利息とするために特約が必要」という記述は原則と例外が逆になっています。民法は利息の受取りを原則とはしておらず、当事者が利息を定める場合に特約を要する点を正確に押さえておきましょう。

エ.消費貸借契約において、契約内容に適合しない物が借主に引き渡された場合、当該消費貸借契約が利息付きであるか無利息であるかにかかわらず、借主はその物の価額を返還することができる。

エ.妥当である

貸主から引き渡された物が種類または品質に関して契約内容に適合しない場合、利息付き・無利息を問わず、借主はその物の価額を返還することができます(民法590条2項)。種類物として引き渡された物に瑕疵がある場合でも、借主が同種・同品質の物ではなく価額での返還が認められるため、借主保護が図られています。「利息の有無にかかわらず」という点が出題ポイントです。

オ.消費貸借契約において返還時期の定めがない場合、当該消費貸借契約が利息付きであるか無利息であるかにかかわらず、貸主は借主に対していつでもその貸借物の返還を求めることができ、借主は返還請求があった時から直ちに履行遅滞の責任を負う。

オ.妥当でない

返還時期の定めがない場合、貸主は「いつでも」返還を求めることができるわけではなく、相当の期間を定めた催告が必要です(民法591条1項)。また、借主が履行遅滞となるのは返還請求の直後ではなく、相当期間が経過した後です。「いつでも返還を求めることができ」「直ちに履行遅滞の責任を負う」の2点がともに誤りです。なお、借主は返還時期の定めの有無にかかわらずいつでも返還できる点(民法591条3項)も合わせて覚えておきましょう。

※「相当期間」とは、借主が準備をして返還するために合理的に必要な期間のことです。何日が相当かは個別事情によりますが、突然の即時返還は認められません。

令和8年度行政法予想模試

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問34|民法

不当利得に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 盗品である動産甲を、盗品とは知らずに、甲と同種の物の販売業者から購入して引渡しを受けた買主が、所有者に甲を返還すべき場合、その買主は、所有者に対して、返還するまでの間における甲の使用利益相当額を支払わなければならない。
  2. 他人物である動産乙の売買契約に基づいてその引渡しを受けた買主が、その後乙を所有者に返還して売買契約を解除した場合、その買主は売主に対して、返還するまでの間における乙の使用利益相当額を支払う義務を負わない。
  3. 違法な賭博を目的とする契約に基づいて賭金を支払った者は、いつでも当該契約が無効であることを理由として、相手方に対して賭金の返還を求めることができる。
  4. 不倫関係の維持を目的として丙建物(既登記建物)の所有者Aが丙建物を受贈者Bに贈与してこれを引き渡したが、所有権移転登話手続が未了であった場合、その贈与者Aは当該契約が無効であることを理由として、Bに対して丙建物の返還を求めることができる。
  5. Aを貸主、Bを借主とする金銭消費貸借契約において、AがBに対して有する貸金債権につき、BがCから騙取した金銭をもって弁済を行った場合、Cは、弁済として受領した金銭が騙取金である旨をAが知っていたか否かを問わず、Aに対してその返還を求めることができる。

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【答え】:4
【解説】
1.盗品である動産甲を、盗品とは知らずに、甲と同種の物の販売業者から購入して引渡しを受けた買主が、所有者に甲を返還すべき場合、その買主は、所有者に対して、返還するまでの間における甲の使用利益相当額を支払わなければならない。

1.妥当でない

盗品を盗品と知らずに同種物の販売業者から購入した買主は善意占有者にあたります。善意占有者は、占有物から生じる果実(使用利益を含む)を取得する権利があり(民法189条1項)、所有者に対して使用利益相当額を支払う義務を負いません。「返還するまでの間の使用利益相当額を支払わなければならない」という記述が誤りです。

※「善意占有者」とは、自分に占有権限があると信じて占有している者のことです。善意占有者は果実を取得できますが、損傷・滅失した場合の賠償責任は現存利益の限度にとどまります(民法191条)。

2.他人物である動産乙の売買契約に基づいてその引渡しを受けた買主が、その後乙を所有者に返還して売買契約を解除した場合、その買主は売主に対して、返還するまでの間における乙の使用利益相当額を支払う義務を負わない。

2.妥当でない

売買契約が解除された場合、買主は原状回復義務として目的物を返還しますが、その間に目的物を使用していた場合は使用利益相当額も返還しなければなりません(民法545条1項・3項)。「使用利益相当額を支払う義務を負わない」という記述が誤りです。契約解除による原状回復は、物の返還だけでなく使用利益の返還も含む点を押さえておきましょう。

※「他人物売買」とは、売主が所有していない他人の財産を目的物として締結した売買契約です。有効な契約として成立しますが、売主は所有権を取得して買主に移転する義務を負います(民法561条)。

3.違法な賭博を目的とする契約に基づいて賭金を支払った者は、いつでも当該契約が無効であることを理由として、相手方に対して賭金の返還を求めることができる。

3.妥当でない

違法な賭博は公序良俗に反し無効ですが(民法90条)、賭金を支払った者は不法原因給付(民法708条)にあたるため、その返還を請求することができません。民法708条は「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない」と定めており、「いつでも返還を求めることができる」という記述は誤りです。不法に関与した者を法が保護しないという趣旨です。

※「不法原因給付」とは、公序良俗違反など不法な原因のために行った給付のことです。民法708条により、給付者は返還請求できませんが、ただし書により不法原因が相手方のみにある場合は返還請求できます。

4.不倫関係の維持を目的として丙建物(既登記建物)の所有者Aが丙建物を受贈者Bに贈与してこれを引き渡したが、所有権移転登話手続が未了であった場合、その贈与者Aは当該契約が無効であることを理由として、Bに対して丙建物の返還を求めることができる。

4.妥当である

不倫関係の維持を目的とした贈与は公序良俗に反し無効ですが(民法90条)、所有権移転登記が未了の場合は、不法原因給付(民法708条)として給付が完成したとはいえません。不動産の場合、引渡しがあっても登記が完了していない段階では給付が完結していないと解されるため、贈与者Aは民法708条による返還請求の制限を受けず、契約無効を理由として丙建物の返還を求めることができます。引渡し済みでも登記未了という点が妥当であるとなる決め手です。

※「不法原因給付と不動産」:不動産では、引渡しに加えて所有権移転登記が完了してはじめて給付が完成したと解される場合があります。登記未了の段階では完全な給付とはいえず、民法708条の適用が制限されることがあります。

5.Aを貸主、Bを借主とする金銭消費貸借契約において、AがBに対して有する貸金債権につき、BがCから騙取した金銭をもって弁済を行った場合、Cは、弁済として受領した金銭が騙取金である旨をAが知っていたか否かを問わず、Aに対してその返還を求めることができる。

5.妥当でない

騙取金による弁済があった場合、被害者Cが弁済受領者Aに返還を求めることができるかは、Aの善意・悪意によって異なります。Aが悪意または重過失であった場合にはCからAへの不当利得返還請求が認められますが、Aが善意・無重過失であった場合は認められません。「Aが知っていたか否かを問わず」という記述が誤りです。善意のAまで保護しないとすると取引の安全が害されるためです。

※「騙取金による弁済」とは、第三者から詐取した金銭を自己の債務弁済に充てることをいいます。判例は、債権者が悪意または重過失のある場合に限り、被害者からの不当利得返還請求を認めています。

令和8年度行政法予想模試

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略