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行政手続法31条:聴聞に関する手続の準用

行政手続法31条では、「聴聞の手続きが準用されるもの」について規定していますが、行政書士試験では、「聴聞手続きが準用されるもの」よりも、「聴聞と弁明の機会の付与の手続きの違い」の方が重要です。そのため、手続き上の違いをしっかり覚えておきましょう!

弁明の機会の付与も、聴聞の手続きが準用されます。

聴聞の手続きが準用されるもの

行政手続法15条3項を弁明の機会の付与に準用

行政庁は、不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合においては、弁明の機会の付与の通知を、その者の氏名、弁明書の提出先及び提出期限、並びに当該行政庁が同項各号に掲げる事項を記載した書面をいつでもその者に交付する旨を当該行政庁の事務所の掲示場に掲示することによって行うことができる。この場合においては、掲示を始めた日から二週間を経過したときに、当該通知がその者に到達したものとみなす。

行政手続法16条を弁明の機会の付与に準用

  1. 弁明の機会の付与の通知を受けた者は、代理人を選任することができる。
  2. 代理人は、各自、当事者のために、弁明の機会の付与に関する一切の行為をすることができる。
  3. 代理人の資格は、書面で証明しなければならない。
  4. 代理人がその資格を失ったときは、当該代理人を選任した当事者は、書面でその旨を行政庁に届け出なければならない。

聴聞と弁明の機会の付与の手続上の違い

聴聞 弁明の機会の付与
文書の閲覧請求権 認められている 認められていない
口頭意見陳述権 認められている 原則、認められない
口頭で意見を述べることを行政庁が認められた場合のみ例外的に認められている
主宰者 行政庁は、主宰者を指名する 主宰者を指名しない

(聴聞に関する手続の準用)
第31条 第15条第3項及び第16条の規定は、弁明の機会の付与について準用する。この場合において、第15条第3項中「第1項」とあるのは「第30条」と、「同項第3号及び第4号」とあるのは「同条第3号」と、第16条第1項中「前条第1項」とあるのは「第30条」と、「同条第3項後段」とあるのは「第31条において準用する第15条第3項後段」と読み替えるものとする。

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行政手続法29条:弁明の機会の付与の方式

行政手続法29条の弁明の機会の付与については、聴聞との比較問題が非常に多いです。きちんと、聴聞と弁明の機会付与の違いを頭に入れておきましょう!また、聴聞と弁明の機会付与を合わせて「意見陳述」ということも併せて覚えていきましょう!こういった基本的な部分をしっかり押さえておかないと、あとで似た言葉で混乱してきます。それでは、細かい内容に入っていきます!

行政手続法15条~28条までは「聴聞」についての内容でした。そして、29条から31条までは「弁明の機会の付与」についての内容です。

「聴聞」と「弁明の機会の付与」はいずれも不利益処分をする前の意見陳述のルールです。

「聴聞」と「弁明の機会の付与」の違いはこちら>>

弁明の機会とは、聴聞と同じく、不利益処分を受ける者が、行政庁に対して「言い分や反論」を伝えるための手続きですが、聴聞は、口頭審理なのに対して、弁明の機会の付与は書面審理です。つまり、弁明の機会の付与は、聴聞よりを簡略化した手続きと言えます。

そして、弁明の機会の付与は、聴聞が必要な不利益処分を以外の不利益処分を行う場合に行います。

例えば、業務停止処分や指示処分です。免許取消処分は聴聞が必要ですが、業務停止処分や指示処分の場合は、原則として弁明の機会の付与で足ります。

ただし、個別の法律で、上記業務停止処分や指示処分でも、聴聞が必要な場合もあります。それは例えば、宅建業法における宅建業者に対する業務停止処分や指示処分です。これは、宅建業法で、聴聞が必要と規定されているので、例外的に聴聞が必要になります。

なお、意見陳述の手続きが不要な場合は、意見陳述(聴聞や弁明の機会の付与)の手続きを執らずに、不利益処分をすることができます。

(弁明の機会の付与の方式)
行政手続法第29条 弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明を記載した書面(以下「弁明書」という。)を提出してするものとする。
2 弁明をするときは、証拠書類等を提出することができる。

<<行政手続法28条:役員等の解任等を命ずる不利益処分をしようとする場合の聴聞等の特例 | 行政手続法30条:弁明の機会の付与の通知の方式>>

行政手続法30条:弁明の機会の付与の通知の方式

行政手続法29条で、弁明の機会付与は書面審理を行うことを勉強しました。

行政手続法30条では、書面審理を行う上で、行政庁が、不利益処分の名あて人となるべき者に対して、通知しなければならない内容について規定しています。

具体的には、行政庁は、下記内容を、不利益処分の名あて人となるべき者に対して通知します。そして、この通知は、弁明書の提出期限までに相当期間をおいて通知しなければなりません。言い換えると、弁明の提出期限直前に送ってもだめですよ!ということです。

弁明の機会付与のために行政庁が通知する内容

①予定される不利益処分の内容根拠法令の条項
②不利益処分の原因となる事実
③弁明書の提出先及び提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その旨並びに出頭すべき日時及び場所)

①とは、例えば、
予定される不利益処分の内容とは、「行政書士に対する戒告」です。
根拠法令の条項とは、「行政書士法第14条の2」です。

②とは、例えば
行政書士の業務として 車庫証明業務を行ってきたが、約9割の依頼について 、受注、車庫調査並びに証明に係る書類の作成及び警察署への提出のすべてを補助者に行わせており、業務には 関与していなかった場合

③とは、例えば、駐車違反の反則金の処分について、反論がある場合、公安委員からいつまでに弁明書を提出してくださいと通知されるので、その期間内に、公安委員会に対して弁明書を提出します。

(弁明の機会の付与の通知の方式)
行政手続法第30条 行政庁は、弁明書の提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その日時)までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項
二 不利益処分の原因となる事実
三 弁明書の提出先及び提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その旨並びに出頭すべき日時及び場所)

行政手続法28条:役員解任の場合の聴聞等の特例

行政手続法28条は、ややこしそうに見えますが、内容的には簡単です。

例えば、法人Aに役員Bがいたとします。そして、行政庁が法人Aに対して「役員Bを解任しなさい!」と命じようとする場合、聴聞手続きを行う必要があります。

聴聞手続きが必要な不利益処分はこちら>>

この役員を解任する不利益処分については、行政庁は、当該役員に聴聞の通知をする必要はありません。法人Aに対して通知して、聴聞を行えば、役員にも通知したことになります。また、役員について聴聞を行うことを必要はありません。

(役員等の解任等を命ずる不利益処分をしようとする場合の聴聞等の特例)
行政手続法第28条 第13条第1項第1号ハに該当する不利益処分に係る聴聞において第15条第1項の通知があった場合におけるこの節の規定の適用については、名あて人である法人の役員、名あて人の業務に従事する者又は名あて人の会員である者(当該処分において解任し又は除名すべきこととされている者に限る。)は、同項の通知を受けた者とみなす。

2 前項の不利益処分のうち名あて人である法人の役員又は名あて人の業務に従事する者(以下この項において「役員等」という。)の解任を命ずるものに係る聴聞が行われた場合においては、当該処分にその名あて人が従わないことを理由として法令の規定によりされる当該役員等を解任する不利益処分については、第13条第1項の規定にかかわらず、行政庁は、当該役員等について聴聞を行うことを要しない。

<<行政手続法27条:審査請求の制限 | 行政手続法29条:弁明の機会の付与の方式>>

行政手続法27条:審査請求の制限

行政手続法27条(審査請求の制限)は条文自体短く、簡単に見えるのですが、理解していない方が多いです。この点は具体例を含めてしっかり頭にいれておきましょう!

行政手続法の「聴聞」に基づく処分やその不作為については、審査請求をすることができません。

聴聞に基づく処分や不作為とは?

聴聞に基づく処分や不作為とは、例えば、

  1. 文書閲覧の不許可処分
  2. 利害関係人の参加不許可処分
  3. 文書閲覧の閲覧請求に対して、何も処分をしない
  4. 利害関係人の参加請求に対して何の処分もしない

といったことです。上記処分に対して、不服があったとしても、審査請求をすることができないということです。

行政書士試験でも出題される部分なので、しっかり頭に入れておきましょう!

審査請求は、行政不服審査法で勉強するので、まだ勉強していない方は、行政不服審査法を学んでからこの条文を確認するとよいでしょう!

(審査請求の制限)
行政手続法第27条 この節の規定に基づく処分又はその不作為については、審査請求をすることができない。

この節=聴聞に関する節=行政手続法第15条第28条です。

<<行政手続法26条:聴聞を経てされる不利益処分の決定 | 行政手続法28条:役員等の解任等を命ずる不利益処分をしようとする場合の聴聞等の特例>>

行政手続法26条:聴聞を経てされる不利益処分の決定

行政手続法26条の内容を理解するためには、聴聞の背景と流れを理解しておく必要があります。この点については、行政手続法13条行政手続法25条までを大まかにでも頭に入れておく必要があります。

ざっくり説明すると、まず、一定の不利益処分を行う場合に、事前に聴聞を行う必要があります。聴聞が必要な不利益処分はこちら>>

そして、主宰者が聴聞の日に、審理を行い、その後、主宰者は、聴聞を終えたら遅滞なく聴聞調書と報告書を、行政庁に提出します。

聴聞調書と報告書」を受け取った行政庁は、この「聴聞調書と報告書」に記載された主宰者の意見を十分に参酌しなければなりません(義務)。

※参酌とは、参考にして取り入れることを言います。

(聴聞を経てされる不利益処分の決定)
行政手続法第26条 行政庁は、不利益処分の決定をするときは、第24条第1項の調書の内容及び同条第3項の報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌してこれをしなければならない。

<<行政手続法25条:聴聞の再開 | 行政手続法27条:審査請求の制限>>

行政手続法24条:聴聞調書及び報告書

行政手続法24条の聴聞調書及び報告書は、行政書士試験でも頻出なのでしっかり頭に入れておきましょう!

主宰者は、聴聞の審理の経過を記載した調書(聴聞調書)を作成し、
「当事者および参加人の陳述の要旨」を明らかにしなければなりません。

聴聞調書は、聴聞の期日ごとに作成し、審理が行われなかった場合は、聴聞の終結後速やかに作成しなければなりません。

そして、聴聞終結後速やかに報告書を作成し、聴聞調書とともに、行政庁に提出しなければなりません。この点は下図の、⑩の内容です。

聴聞手続きの流れ

聴聞の報告書

聴聞の報告書には、不利益処分の原因となる事実に対する当事者などの主張に理由があるかどうか、主宰者の意見を記載しなければなりません。

つまり、「当事者の主張・反論に理由があるから、不利益処分は不当だと思います!」とか「当事者の主張・反論には理由がないので、不利益処分は妥当だと思います!」といった意見を記載します。

(聴聞調書及び報告書)
第24条 主宰者は、聴聞の審理の経過を記載した調書を作成し、当該調書において、不利益処分の原因となる事実に対する当事者及び参加人の陳述の要旨を明らかにしておかなければならない。
2 前項の調書は、聴聞の期日における審理が行われた場合には各期日ごとに、当該審理が行われなかった場合には聴聞の終結後速やかに作成しなければならない。
3 主宰者は、聴聞の終結後速やかに、不利益処分の原因となる事実に対する当事者等の主張に理由があるかどうかについての意見を記載した報告書を作成し、第一項の調書とともに行政庁に提出しなければならない。
4 当事者又は参加人は、第一項の調書及び前項の報告書の閲覧を求めることができる。

<<行政手続法23条:不出頭等の場合における聴聞の終結 | 行政手続法25条:聴聞の再開>>

行政手続法25条:聴聞の再開

行政庁は、聴聞の終結後に、何らかの事情が発生し、再度、聴聞を行う必要があると認めたときは、行政庁は聴聞の再開を命じることができます

例えば、不利益処分を行うか行わないかに関係する新たな証拠書類を行政庁が手に入れた場合等です。

その場合、行政庁は、主宰者から提出された報告書を返戻(返却)します。

(聴聞の再開)
行政手続法第25条 行政庁は、聴聞の終結後に生じた事情にかんがみ必要があると認めるときは、主宰者に対し、前条第3項の規定により提出された報告書を返戻して聴聞の再開を命ずることができる。第22条第2項本文及び第三項の規定は、この場合について準用する。

<<行政手続法24条:聴聞調書及び報告書 | 行政手続法26条:聴聞を経てされる不利益処分の決定>>

行政手続法23条:不出頭等の場合における聴聞の終結

当事者が、聴聞の日に、出頭しなかったり、陳述書や証拠書類を提出しない場合、主宰者は、「この当事者は、不利益処分に対して言い分・反論はないんだな!」と判断して、聴聞を終了することができます。

※当事者とは、「聴聞の通知を受けた者=不利益処分の名あて人」を言います。

この点については、行政書士試験では、上記内容だけ覚えておけば十分です!

(当事者の不出頭等の場合における聴聞の終結)
第23条 主宰者は、当事者の全部若しくは一部が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、かつ、第21条第1項に規定する陳述書若しくは証拠書類等を提出しない場合、又は参加人の全部若しくは一部が聴聞の期日に出頭しない場合には、これらの者に対し改めて意見を述べ、及び証拠書類等を提出する機会を与えることなく、聴聞を終結することができる。
2 主宰者は、前項に規定する場合のほか、当事者の全部又は一部が聴聞の期日に出頭せず、かつ、第21条第1項に規定する陳述書又は証拠書類等を提出しない場合において、これらの者の聴聞の期日への出頭が相当期間引き続き見込めないときは、これらの者に対し、期限を定めて陳述書及び証拠書類等の提出を求め、当該期限が到来したときに聴聞を終結することとすることができる。

<<行政手続法22条:続行期日の指定 | 行政手続法24条:聴聞調書及び報告書>>

行政手続法22条:続行期日の指定

行政手続法22条は、聴聞の審理を延長する場合のルールです。行政書士試験ではあまり出題されませんが、内容的には簡単なので勉強しておいて損はないでしょう!

聴聞の審理を行った結果、もう少し審理を行う必要があると主宰者が判断した場合、主宰者は聴聞の期日を延長できます。

その場合、当事者と参加者に、次回の聴聞の日と場所を通知しなければなりません。ただし、当事者と参加者が聴聞に出頭したときに伝える場合は、通知する必要はなく、その場で告知すればよいです。

行政庁は、当事者と参加人の所在が判明しない場合は、上記通知することができないので、当該行政庁の事務所の掲示場に2週間掲示することで、通知したものとみなします。

(続行期日の指定)
第22条 主宰者は、聴聞の期日における審理の結果、なお聴聞を続行する必要があると認めるときは、さらに新たな期日を定めることができる。
2 前項の場合においては、当事者及び参加人に対し、あらかじめ、次回の聴聞の期日及び場所を書面により通知しなければならない。ただし、聴聞の期日に出頭した当事者及び参加人に対しては、当該聴聞の期日においてこれを告知すれば足りる。
3 第15条第3項の規定は、前項本文の場合において、当事者又は参加人の所在が判明しないときにおける通知の方法について準用する。この場合において、同条第3項中「不利益処分の名あて人となるべき者」とあるのは「当事者又は参加人」と、「掲示を始めた日から二週間を経過したとき」とあるのは「掲示を始めた日から二週間を経過したとき(同一の当事者又は参加人に対する二回目以降の通知にあっては、掲示を始めた日の翌日)」と読み替えるものとする。

<<行政手続法21条:陳述書等の提出 | 行政手続法23条:不出頭等の場合における聴聞の終結>>