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行政不服審査法11条:総代

一人で、審査請求を行うこともできますが、複数の人(共同請求人)がまとまって審査請求をすることも可能です。そして、行政不服審査法11条では、複数の人が審査請求する場合のルールについて規定しています。行政書士試験でも出題されるので、覚えておきましょう!

総代におけるポイント

  1. まず、「3人を超えない総代」を互選することができる。言い換えると、最大3人まで代表者(総代)を定めることができるということです。
  2. 総代を定めない場合、必要に応じて審理員は「総代を定めるよう」命じることができます。
  3. 総代は、原則、審査請求に関する一切の行為を行うことができます。ただし例外として、総代は審査請求の取り下げを行うことはできません
  4. 総代以外の共同審査請求人は、総代を通して、審査請求の行為を行います。つまり、審査請求の実務を行うのは総代ということです。
  5. 審査請求に関する行政庁の通知は、総代一人に対して行えばよい総代全員に行う必要はないです。
  6. 共同審査請求人は、必要があると認める場合には、総代を解任することができます。

 

(総代)
第11条 多数人が共同して審査請求をしようとするときは、三人を超えない総代を互選することができる。
2 共同審査請求人が総代を互選しない場合において、必要があると認めるときは、第九条第一項の規定により指名された者(以下「審理員」という。)は、総代の互選を命ずることができる。
3 総代は、各自、他の共同審査請求人のために、審査請求の取下げを除き、当該審査請求に関する一切の行為をすることができる。
4 総代が選任されたときは、共同審査請求人は、総代を通じてのみ、前項の行為をすることができる。
5 共同審査請求人に対する行政庁の通知その他の行為は、二人以上の総代が選任されている場合においても、一人の総代に対してすれば足りる。
6 共同審査請求人は、必要があると認める場合には、総代を解任することができる。

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行政不服審査法10条:法人でない社団又は財団の審査請求

行政不服審査法10条の「法人でない社団又は財団の審査請求」については、行政書士試験では出題される可能性も低い部分なので、覚えなくても大丈夫でしょう。

法人でない社団とは?

法人ではない社団とは、単なる個人の集合体でなく、団体としての組織を有し統一された団体です。例えば、「組合」です。意味合いとしては、権利能力なき社団と同じです。法人格は備えていないが、代表者を定めることで、民事訴訟の原告や被告となることができますし、審査請求をすることもできます。

法人でない財団とは?

特定の目的を持って、ある特定の個人や企業などの法人から拠出された財産の集合体で、法人化すれば財団法人になりますが、法人化していない場合が法人ではない財団です。この法人ではない財団でも、代表者や管理人を定めれば、審査請求ができます。

(法人でない社団又は財団の審査請求)
第10条 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名で審査請求をすることができる。

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行政不服審査法9条:審理員

行政不服審査法9条の審理員の指名について行政書士試験でも非常に重要です。しっかり押さえておきましょう!

審理員の指名

まず、審査請求をされた行政庁(審査庁)は、原則、審査庁に所属する職員の中から審査手続を行う者(審理員)を指名します。

もし、審理員となるべき者の名簿があるのであれば、その名簿に記載されている者の中から選びます。

審理員を指名したことの通知

審査庁が審理員を指名したら、審査庁は、原則、その旨を審査請求人及び処分庁等(審査庁以外の処分庁等に限る。)に通知しなければなりません。

例えば、処分庁が、市町村長で、審査庁が都道府県知事の場合、都道府県知事が審理員を指名し、審理員を指名したことを、知事は、審査請求人と市町村長に通知しなければなりません。

例外として、「内閣府」や「各省の外局である委員会審議会」、「普通地方公共団体の執行機関としての委員会(行政委員会)」が審査庁となる場合は、審理員の指名は不要です。その理由は、これらの機関は有識者で構成される機関なので、公正かつ慎重な審理を行うことができるとされているので、あえて審理員を指名する必要はないとされています。この場合、上記審査庁が審理手続きを行います。

審理員になれない者

下記の者は審理員になることができません。

  1. 利害関係人
  2. 審査請求人
  3. 審査請求人の配偶者および一定の親族
  4. 審査請求人の代理人
  5. 審査請求人の元配偶者および一定の親族、並びに元代理人
  6. 審査請求人の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人等

行政書士試験では、上記まで勉強していれば大丈夫です!

(審理員)
行政不服審査法第9条 第四条又は他の法律若しくは条例の規定により審査請求がされた行政庁(第十四条の規定により引継ぎを受けた行政庁を含む。以下「審査庁」という。)は、審査庁に所属する職員(第17条に規定する名簿を作成した場合にあっては、当該名簿に記載されている者)のうちから第三節に規定する審理手続(この節に規定する手続を含む。)を行う者を指名するとともに、その旨を審査請求人及び処分庁等(審査庁以外の処分庁等に限る。)に通知しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに掲げる機関が審査庁である場合若しくは条例に基づく処分について条例に特別の定めがある場合又は第二十四条の規定により当該審査請求を却下する場合は、この限りでない。
一 内閣府設置法第四十九条第一項若しくは第二項又は国家行政組織法第三条第二項に規定する委員会
二 内閣府設置法第三十七条若しくは第五十四条又は国家行政組織法第八条に規定する機関
三 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百三十八条の四第一項に規定する委員会若しくは委員又は同条第三項に規定する機関
2 審査庁が前項の規定により指名する者は、次に掲げる者以外の者でなければならない。
一 審査請求に係る処分若しくは当該処分に係る再調査の請求についての決定に関与した者又は審査請求に係る不作為に係る処分に関与し、若しくは関与することとなる者
二 審査請求人
三 審査請求人の配偶者、四親等内の親族又は同居の親族
四 審査請求人の代理人
五 前二号に掲げる者であった者
六 審査請求人の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人
七 第十三条第一項に規定する利害関係人
3 審査庁が第一項各号に掲げる機関である場合又は同項ただし書の特別の定めがある場合においては、別表第一の上欄に掲げる規定の適用については、これらの規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとし、第十七条、第四十条、第四十二条及び第五十条第二項の規定は、適用しない。
4 前項に規定する場合において、審査庁は、必要があると認めるときは、その職員(第二項各号(第一項各号に掲げる機関の構成員にあっては、第一号を除く。)に掲げる者以外の者に限る。)に、前項において読み替えて適用する第三十一条第一項の規定による審査請求人若しくは第十三条第四項に規定する参加人の意見の陳述を聴かせ、前項において読み替えて適用する第三十四条の規定による参考人の陳述を聴かせ、同項において読み替えて適用する第三十五条第一項の規定による検証をさせ、前項において読み替えて適用する第三十六条の規定による第二十八条に規定する審理関係人に対する質問をさせ、又は同項において読み替えて適用する第三十七条第一項若しくは第二項の規定による意見の聴取を行わせることができる。

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行政不服審査法8条:特別の不服申立ての制度

行政不服審査法8条では、行政不服審査法7条で、審査請求できない場合を規定していますが、別途、個別の法令で、審査請求できる規定を定めてもよいとしています。 例えば、沖縄の辺野古移設問題で、元沖縄県知事(中山知事)が、辺野古の埋め立てを承認をしており、それに基づいて、国が埋め立てを行っていました。 その後、辺野古移設反対の次の沖縄県知事(翁長知事)が当選し、翁長知事が「中山知事が行った埋め立ての承認」の取り消しを行った。 それに対して、国は、承認取り消しの効力を停止する決定(執行停止の決定)を行いました。=翁長知事の承認取り消しの効力は生じないこととした。 それに対して、沖縄県知事(翁長知事)は、国に対して、不服申し立てをしました。 この不服申し立ては地方自治法第250条の13第1項の規定に基づいて行ったものです。このように、上記地方自治法で、地方公共団体も審査請求ができる旨の規定があります。
(特別の不服申立ての制度) 第8条 前条の規定は、同条の規定により審査請求をすることができない処分又は不作為につき、別に法令で当該処分又は不作為の性質に応じた不服申立ての制度を設けることを妨げない。
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行政不服審査法6条:再審査請求

再審査請求については、行政書士試験でもよく出題される部分です。特に1.どういった場合に再審査請求できるか? 2.誰に対して再審査請求できるか? 3.何を対象として再審査請求できるのか? この3つは押さえておきましょう! 再審査請求は、審査請求を行い、その裁決にも不服がある場合に行うものです。つまり、審査請求→再審査請求という流れで不服申立てを行います。 ただ、どんな場合でも再審査請求を行うことができるというわけではありません。要件があります。

どんな場合に再審査請求ができるか?(再審査請求の要件)

法律に再審査請求をするこができる旨の定めがあることが再審査請求の要件です。 法律に再審査請求ができる旨の定めがない場合は、再審査請求はできません。 再調査請求も同様に法律に定めがあることが要件でしたね!一緒に覚えておきましょう! 例えば、生活保護法では、市町村長が行った保護の決定について、不服がある者は、都道府県知事に対して審査請求を行う旨の規定(64条)があり、さらに、都道府県知事の裁決に不服がある者は、厚生労働大臣に対して再審査請求をすることができるとしています。(66条)

誰に対して再審査請求できるか?(再審査請求の申立先)

再審査請求を誰に対して行うかというと、法律に定める行政庁に対してします。 上記生活保護法の事例では、 審査請求を受けた審査庁は、都道府県知事で 法律で定められた行政庁は、厚生労働大臣となります。

何を対象に再審査請求できるか?(再審査請求の対象)

そして、何について再審査請求をするかというと(=再審査請求の対象は)、原裁決または、当該処分です。 原裁決とは、審査庁が行った裁決で、上記事例では、都道府県知事の裁決です。 一方、当該処分とは、審査請求人が受けた処分で、上記事例では、市町村長の処分です、 このどちらに対して再審査請求を行ってもよいということです。
(再審査請求) 第6条 行政庁の処分につき法律に再審査請求をすることができる旨の定めがある場合には、当該処分についての審査請求の裁決に不服がある者は、再審査請求をすることができる。 2 再審査請求は、原裁決(再審査請求をすることができる処分についての審査請求の裁決をいう。以下同じ。)又は当該処分(以下「原裁決等」という。)を対象として、前項の法律に定める行政庁に対してするものとする。
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行政不服審査法5条:再調査の請求

再調査請求は、行政書士試験でも出題されています。審査請求や再審査請求と似ており、審査請求を中心に勉強している方が多いので、再調査請求が出題されると間違えてしまいます。それでは行政書士試験に合格できませんので注意しましょう!

再調査請求とは、行政庁の処分に対して納得がいかないので、もう一度調査してみてください!と請求することです。再調査請求は、処分した行政庁(=処分庁)に対して行います。

どんな場合に再調査請求が行えるか?(再調査請求の要件)

再調査請求が行るのは、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 審査請求ができること
  2. 法律に再調査請求できる旨があること

つまり、法律に再調査請求ができる旨がない場合、たとえ審査請求ができても再調査請求はできません。

また、審査請求をした場合、上記再調査請求ができる2つの要件を満たしていても、再調査請求ができなくなります。

再調査請求後の審査請求

再調査請求をした後に審査請求を行うことも可能です。その場合、再調査請求の決定を経た後でなければ、原則審査請求はできません

ただし、例外として、次の2つの場合、再調査請求の決定を経る前に審査請求ができます

  1. 再調査の請求をした日の翌日から起算して3か月を経過しても、処分庁が当該再調査の請求につき決定をしない場合
    ※再調査請求書に不備があり、その補正を命じられた時は、その補正をしたときから3か月を経過しても、処分庁が当該再調査の請求につき決定をしない場合
  2. 再調査の請求についての決定を経ないことにつき正当な理由がある場合

再調査請求は取り下げとみなされる

そして、上記例外規定に基づいて、再調査請求の決定を経る前に審査請求を行った場合、もともと行っていた再調査請求は取り下げたものとみなされます。(行政不服審査法56条

3か月を経過しても再調査請求が係属している場合

処分庁は、再調査の請求がされた日の翌日から起算して3か月を経過しても当該再調査の請求が係属している(続いている)ときは、遅滞なく、当該処分について直ちに審査請求をすることができる旨を書面でその再調査の請求人に教示しなければなりません。(行政不服審査法57条)

教示とは、「教えること」です。

再調査請求の請求期間

>>再調査請求の請求期間(54条)

(再調査の請求)
第5条 行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができる。ただし、当該処分について第二条の規定により審査請求をしたときは、この限りでない。

2 前項本文の規定により再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定を経た後でなければ、審査請求をすることができない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 当該処分につき再調査の請求をした日(第六十一条において読み替えて準用する第二十三条の規定により不備を補正すべきことを命じられた場合にあっては、当該不備を補正した日)の翌日から起算して三月を経過しても、処分庁が当該再調査の請求につき決定をしない場合
二 その他再調査の請求についての決定を経ないことにつき正当な理由がある場合

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行政不服審査法4条:審査請求すべき行政庁

行政不服審査法4条では、実際に審査請求を行う場合、「誰に対して行うか」を規定しています。

非常にややこしいので、処分庁等に上級行政庁がない場合と上級行政庁がある場合に分けて、上級行政庁がある場合については、原則と例外に分けて整理するとよいでしょう!

まず、言葉の意味から理解しましょう!

処分庁とは、実際に「処分をした行政庁」を指します。
不作為庁とは、申請したけど、その申請に対して何もしない行政庁です。

審査請求先
処分庁・不作為庁に上級行政庁がないとき 当該処分庁や不作為庁
処分庁・不作為庁に上級行政庁があるとき 原則 最上級行政庁
例外 処分庁・不作為庁が、主任大臣、宮内庁長官、内閣府や各省の外局の長の場合、当該処分庁・不作為庁 ※

※の具体例は、処分庁が財務省の外局である国税庁長官の場合、最上級行政庁は、財務大臣です。しかし、この場合、処分庁である国税庁長官に対して審査請求を行います。

(審査請求をすべき行政庁)
第4条 審査請求は、法律(条例に基づく処分については、条例)に特別の定めがある場合を除くほか、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める行政庁に対してするものとする。
一 処分庁等(処分をした行政庁(以下「処分庁」という。)又は不作為に係る行政庁(以下「不作為庁」という。)をいう。以下同じ。)に上級行政庁がない場合又は処分庁等が主任の大臣若しくは宮内庁長官若しくは内閣府設置法第49条第1項若しくは第2項若しくは国家行政組織法第3条第2項に規定する庁の長である場合 当該処分庁等
二 宮内庁長官又は内閣府設置法第49条第1項若しくは第2項若しくは国家行政組織法第3条第2項に規定する庁の長が処分庁等の上級行政庁である場合 宮内庁長官又は当該庁の長
三 主任の大臣が処分庁等の上級行政庁である場合(前二号に掲げる場合を除く。) 当該主任の大臣
四 前三号に掲げる場合以外の場合 当該処分庁等の最上級行政庁

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行政不服審査法2条・3条:処分・不作為についての審査請求

行政不服審査法の2条、3条は基本的な部分で重要です。行政書士試験で出題されても得点できるように処分や不作為の定義をしっかり押さえておきましょう!この定義は、この後で勉強する行政事件訴訟法にも関連してきます!

行政不服審査法における「処分」の定義

行政不服審査法における「処分」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為を言います。

その他公権力の行使について

「その他公権力の行使」とは、公権力の行使に当たる事実行為で、人の収容物の留置その他その内容が継続的性質を有する場合が含まれます。

  • 人の収容とは、例えば、不法入国者を強制退去させる前に収容する場合
  • 物の留置とは、例えば、食品添加物などの試験のために食品を持って帰る場合

ただし、「公権力の行使に当たる事実行為」は条文には規定されていません。条文には規定されていないですが、不服申立ての対象に含まると解されています

公権力の行使に当たらない事実行為はこちら>>

行政不服審査法における「不作為」の定義

行政不服審査法における「不作為」とは、行政庁が、申請に対して何らの処分もしないことです。

そして、申請して直ちに不作為に該当するのではなく、相当期間を経過した場合に不作為に該当します。

例えば、宅建業者が、免許の申請をしたにも関わらず、知事が許可も不許可もしない場合、不作為となります。

審査請求とは?

審査請求とは、処分または不作為に対する、原則的な不服申立ての手段を言います。

不服申立てには、①審査請求、②再調査請求、③再審査請求の3つがあるのですが、原則、①審査請求を行い、法律に定めがある場合に、②再調査請求や③再審査請求ができます。

審査請求の申立先(誰に審査請求をするか)はこちら>>

(処分についての審査請求)
第2条 行政庁の処分に不服がある者は、第4条及び第5条第二項の定めるところにより、審査請求をすることができる。

(不作為についての審査請求)
第3条 法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないことをいう。以下同じ。)がある場合には、次条の定めるところにより、当該不作為についての審査請求をすることができる

行政不服審査法1条:目的

行政不服審査法は、行政書士試験では、行政手続法同様、条文が非常に重要になってきます。そのため、条文を一つ一つ解説していきます!

行政不服審査法とは?

行政庁の処分に関し、国民が「行政庁の処分は不服だ!それは法律上おかしいだろ!」といった場合に、行政庁に不服を申し立てることができます。その不服申立てのやり方や流れなどをルール化しています。

行政不服審査法の目的

この法律は、行政庁の違法な処分・公権力の行使又は不当な処分・公権力の行使に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、 ○ 国民の権利利益の救済を図るとともに、 ○ 行政の適正な運営を確保すること を目的としています。 この目的はそのまま行政書士試験の問題で出題されるので覚えておきましょう!キーワードは上記赤文字です。

行政不服審査法の目的のポイント

  1. 違法な処分だけでなく、不当な処分も不服審査法の対象となる
  2. 「簡易迅速かつ公正な手続きを行うこと」で、「国民の権利利益の救済を図り」「行政の適正な運営確保」を目的としている

行政事件訴訟法との「対象」の違い

行政不服審査法 違法又は不当な処分・公権力の行使
行政事件訴訟法 違法な処分・公権力の行使

行政手続法との「目的」の違い

行政不服審査法 国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする
行政手続法 手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。
(目的等) 第1条 この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。 2 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下単に「処分」という。)に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。
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行政手続法46条:地方公共団体の措置

地方公共団体の機関がする行為で行政手続法が適用されないものは、行政手続法3条3項に規定されています。ただ、行政手続法が適用されないとしても、その趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければなりません(努力義務)。 この点は、行政書士試験でも出題される部分なので、行政手続法が適用されない地方公共団体の機関がする行為と合わせて覚えておきましょう!
(地方公共団体の措置) 行政手続法第46条 地方公共団体は、第3条第3項において第二章から前章までの規定を適用しないこととされた処分、行政指導及び届出並びに命令等を定める行為に関する手続について、この法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
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