平成24年度(2012年度)過去問

平成24年・2012|問6|憲法・法の下の平等

次の文章は、ある最高裁判所判決において、国籍取得の際の取り扱いの区別が憲法14条に違反するか否かにつき、審査するに当たっての基本的考え方を示した部分である。次の記述のうち、この文章から読み取れない内容を述べているものはどれか。

 憲法10条は、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」と規定し、これを受けて、国籍法は、日本国籍の得喪に関する要件を規定している。憲法10条の規定は、国籍は国家の構成員としての資格であり、国籍の得喪に関する要件を定めるに当たってはそれぞれの国の歴史的事情、伝統、政治的、社会的及び経済的環境等、種々の要因を考慮する必要があることから、これをどのように定めるかについて、立法府の裁量判断にゆだねる趣旨のものであると解される。しかしながら、このようにして定められた日本国籍の取得に関する法律の要作によって生じた区別が、合理的理由のない差別的取扱いとなるときは、憲法14条1項違反の問題を生ずることはいうまでもない。すなわち、立法府に与えられた上記のような裁量権を考慮しても、なおそのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合、又はその具体的な区別と上記の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合には、当該区別は、合理的な理由のない差別として、同項に違反するものと解されることになる。
日本国籍は、我が国の構成員としての資格であるとともに、我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある。一方、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。したがって、このような事柄をもって日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である。

(最大判平成20年6月4日民集62巻6号1367頁)

  1. 立法が不合理な差別を行っていないかどうかは、立法目的の合理性、立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性という二点から判断される。
  2. 憲法が国籍法制の内容を立法者の裁量判断に委ねていることに鑑みれば、この裁量権を考慮してもなお区別の合理性が認められない場合に憲法違反の問題が生じる。
  3. 憲法の基礎にある個人主義と民主主義の理念に照らせば、人種差別など個人の尊厳が問題になる場合や、選挙権や表現の自由が問題となる場合には、厳格な審査が要求される。
  4. 本件で取り扱いの区別の対象となる国籍が社会生活の様々な側面に強い影響を与える重要な法的地位である以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。
  5. 取り扱いの区別が、本人の意思や努力によって左右できない事項に基づいて人を不利益に扱うものである以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】

本問は「最大判平20.6.4:国籍法3条1項違憲判決」の問題で、
結婚していない「日本人の父」と「フィリピン人の母」との間に日本で生まれた子(原告)が、出生後に「日本人の父」から認知を受けたことを理由として、
法務大臣あてに日本国籍取得の届出をしたところ、国籍取得の条件を備えておらず、日本国籍を与えなかった事案です。

1.立法が不合理な差別を行っていないかどうかは、立法目的の合理性、立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性という二点から判断される。
1・・・読み取れる
まず、
憲法10条は、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」と規定し、これを受けて、国籍法は、日本国籍の得喪に関する要件を規定しています。そして、
国籍の得喪に関する要件を定めるに当たっては、立法府の裁量判断にゆだねる趣旨のものであると、言っています。そして、これを受けて、判決文では下記のように言っています。「立法府に与えられた上記のような裁量権を考慮しても、なおそのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合、又はその具体的な区別と上記の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合には、当該区別は、合理的な理由のない差別として、同項に違反するものと解されることになる」

区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合=立法目的の合理性による判断

その具体的な区別と上記の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合=立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性による判断

つまり、本肢の「立法が不合理な差別を行っていないかどうかは、立法目的の合理性、立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性という二点から判断される」は判決文から読み取れる記述です。

2.憲法が国籍法制の内容を立法者の裁量判断に委ねていることに鑑みれば、この裁量権を考慮してもなお区別の合理性が認められない場合に憲法違反の問題が生じる。
2・・・読み取れる
選択肢1の解説から、
「立法が不合理な差別を行っていないかどうかは、立法目的の合理性、立法目的と取り扱いの区別との合理的関連性という二点から判断され」続いて、判決文では、
「当該区別は、合理的な理由のない差別として、同項に違反するものと解されることになる。」と言っています。よって、区別の合理性が認められない場合に憲法違反の問題が生じるので、判決文から読み取れる記述です。
3.憲法の基礎にある個人主義と民主主義の理念に照らせば、人種差別など個人の尊厳が問題になる場合や、選挙権や表現の自由が問題となる場合には、厳格な審査が要求される。
3・・・読み取れない
本問の「厳格な審査が要求される」とは、「争いをした場合に違憲になりやすい」ことを指しています。
そして、判決文を見ると
「人種差別など個人の尊厳が問題」や、「選挙権や表現の自由の問題」については触れていません。
よって、本肢は判決文からは読み取れない記述です。
4.本件で取り扱いの区別の対象となる国籍が社会生活の様々な側面に強い影響を与える重要な法的地位である以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。
4・・・読み取れる
下記判決文の一部を見てください。「日本国籍は、我が国の構成員としての資格であるとともに、我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある。一方、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。したがって、このような事柄をもって日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である。」
  • 日本国籍は、我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある→国籍が社会生活の様々な側面に強い影響を与える重要な法的地位である、ということを指し
  • 日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である→区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる、ということを指しています。

よって、本肢は判決文から読み取れます。

5.取り扱いの区別が、本人の意思や努力によって左右できない事項に基づいて人を不利益に扱うものである以上、区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる。
5・・・読み取れる
判決文の下記部分を見てください。「父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。したがって、このような事柄をもって日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である。」
  • 子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄→本人の意思や努力によって左右できない事項、ということです。
  • 日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である→区別の合理性を判断する際には慎重な検討が必要となる、ということを指しています。

よって、本肢は判決文から読み取れます。

令和6年・2024年行政書士試験対策の個別指導はこちら

平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問5|憲法・財政

日本国憲法第7章の財政に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 内閣は、災害救助等緊急の必要があるときは、当該年度の予算や国会が議決した予備費によることなく、閣議の決定によって財政上必要な支出をすることができる。
  2. 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
  3. 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
  4. 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
  5. すべて皇室の費用は、予算に計上することを要し、かつ、国会の議決を経なければならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】

1.内閣は、災害救助等緊急の必要があるときは、当該年度の予算や国会が議決した予備費によることなく、閣議の決定によって財政上必要な支出をすることができる。
1・・・誤り
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け内閣の責任でこれを支出することができます(憲法87条1項)。
災害救助等緊急の必要があるときは、当該年度の予算や国会が議決した予備費で対応するので、本肢の「災害救助等緊急の必要があるときは、・・予備費によることなく」は誤りです。すべての選択肢に言えますが、財政については、体系的に勉強した方が効率的です!
この点は個別指導で解説します!
2.内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
2・・・正しい
内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければなりません(憲法86条)。
よって、正しいです。
3.国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
3・・・正しい
国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければなりません(憲法90条1項)。
よって、本肢は正しいです。
4.予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
4・・・正しい
予見し難い予算の不足に充てるため国会の議決に基いて予備費を設け内閣の責任でこれを支出することができます(憲法87条1項)。
よって、正しいです。
5.すべて皇室の費用は、予算に計上することを要し、かつ、国会の議決を経なければならない。
5・・・正しい
すべて皇室財産は、国に属するすべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければなりません(憲法88条)。
よって、正しいです。

令和6年・2024年行政書士試験対策の個別指導はこちら

平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問4|憲法・内閣

次の記述のうち、憲法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。
  2. 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、開会後直ちにこれを釈放しなければならない。
  3. 両議院の議員は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
  4. 国務大臣は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。
  5. 国務大臣は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、問責決議によらなければ罷免されない。

>解答と解説はこちら


【答え】:1【解説】
1.国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。
1・・・正しい
国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されません(憲法75条)。よって、本肢は正しいです。
但し、これは在任期間中の話であり、在任期間が終了した後は訴追される可能性はあります。
2.両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、開会後直ちにこれを釈放しなければならない。
2・・・誤り
両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければなりません(憲法50条)。
つまり、「開会後直ちにこれを釈放」ではなく、「議院の要求があれば釈放」です。
よって、誤りです。
3.両議院の議員は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
3・・・誤り
両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受けます(憲法49条)。
しかし、減額されることもあります
よって、誤りです。減額されないのは「裁判官」です(憲法79条6項、80条2項)。
4.国務大臣は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。
4・・・誤り
両議院の議員」は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれません憲法51条:免責特権)。
院外(衆議院の外、参議院の外)で責任を問われないのは「国会議員」です。国会議員でない大臣の場合、院外で責任を問われる場合はあります
5.国務大臣は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、問責決議によらなければ罷免されない。
5・・・誤り
内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができます(憲法68条)。
つまり、国務大臣の罷免は、内閣総理大臣の権限でどんな場合でも行えます。

令和6年・2024年行政書士試験対策の個別指導はこちら

平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問2|基礎法学

次に掲げる条文は、いずれも「みなす」の文言が含まれているが、正しい法律の条文においては「みなす」ではなく「推定する」の文言が用いられているものが一つだけある。それはどれか。

  1. 未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。(民法753条)
  2. 移送の裁判が確定したときは、訴訟は、初めから移送を受けた裁判所に係属していたものとみなす。(民事訴訟法22条3項)
  3. 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書とみなす。(民事訴訟法228条2項)
  4. 自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪*については、他人の財物とみなす。(刑法242条)
  5. 試験事務に従事する指定試験機関の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。(行政書士法4条の7第3項〔一部省略〕)

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】「みなす」とは、判断を確定させること言い、反対の事実を証明して、判断を覆すことはできません。一方、
「推定する」とは、一応そのよう判断を下すことをいい、反対の事実が証明されれば、その判断は覆されます(くつがえされます)

つまり、
反対の事実が証明できるような場合は、「推定する」という用語が使われ、
反対の事実を証明できない場合は「みなす」が使われます。

1.未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。(民法753条)
1・・・正しい
「未成年者が婚姻した」という事実があれば、成年に達した者とするわけなので
上記事実は通常、くつがえすことはできないので、「みなす」で正しいです。
2.移送の裁判が確定したときは、訴訟は、初めから移送を受けた裁判所に係属していたものとみなす。(民事訴訟法22条3項)
2・・・正しい
「移送の裁判が確定した」という事実は、通常、くつがえすことはできないので「みなす」を使います。
3.文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書とみなす。(民事訴訟法228条2項)
3・・・誤り
「文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきとき」ということは、公務員が職務上作成したものではない可能性もあります
その場合は、くつがえされるので、「推定する」が使われます。
4.自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。(刑法242条)
4・・・正しい
「自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるとき」という事実があれば、それで、他人のモノとする、ということですが
上記事実があるのが前提で、通常覆られないので、「みなす」が使われます。
5.試験事務に従事する指定試験機関の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。(行政書士法4条の7第3項〔一部省略〕)
5・・・正しい
「試験事務に従事する指定試験機関の役員及び職員」である事実は通常覆らないので、「みなす」が使われます。

令和6年・2024年行政書士試験対策の個別指導はこちら

平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年・2012|問1|基礎法学

「判例」に関する次の記述のうち、明らかに誤っているものはどれか。

  1. 判例は、一般的見解によれば、英米法系の国では後の事件に対して法的な拘束力を有する法源とされてきたが、大陸法系の国では法源とはされてこなかった。
  2. 英米法系の国では、判決のうち、結論を導く上で必要な部分を「主文(レイシオ・デシデンダイ)」、他の部分を「判決理由」と呼び、後者には判例法としての拘束力を認めない。
  3. 判例という語は、広義では過去の裁判例を広く指す意味でも用いられ、この意味での判例に含まれる一般的説示が時として後の判決や立法に大きな影響を与えることがある。
  4. 下級審が最高裁判所の判例に反する判決を下した場合、最高裁判所は申立てに対して上告審として事件を受理することができる。
  5. 最高裁判所が、法令の解釈適用に関して、自らの過去の判例を変更する際には、大法廷を開く必要がある。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

1.判例は、一般的見解によれば、英米法系の国では後の事件に対して法的な拘束力を有する法源とされてきたが、大陸法系の国では法源とはされてこなかった。
1・・・正しい
英米法系とは、「判例法主義」がとられ、裁判所で作り上げられた判例に先例的拘束力が認められ、判例が第一次的法源とされています。そして、アメリカやイギリス等が採用しています。一方、
大陸法系とは、「成文法主義」がとられ、議会や政府が作る高度に体系化された制定法が第一次的法源として、すべての法領域で尊重されます。ただ、現在は、大陸法を採用している国でも補完的に判例法を法源にしたりすることはあります。そして、ドイツ・フランス等が採用しています。
よって、本肢は正しいです。
2.英米法系の国では、判決のうち、結論を導く上で必要な部分を「主文(レイシオ・デシデンダイ)」、他の部分を「判決理由」と呼び、後者には判例法としての拘束力を認めない。
2・・・誤り
まず、判決のうち、判決理由について下記2つに分けます。
  1. 「判決の核心部分」を「レイシオ・デシデンダイ」と呼び
  2. 「他の部分」を「傍論(オビタ・ディクタム)」と呼びます。

1の核心部分(レイシオ・デシデンダイ)については、判例法としての法的拘束力を有するのに対し、
2のその他の部分(オビタ・ディクタム)は、判例法としての法的拘束力を有しません。
本肢は、『「主文(レイシオ・デシデンダイ)」、他の部分を「判決理由」と呼び』が誤りです。

3.判例という語は、広義では過去の裁判例を広く指す意味でも用いられ、この意味での判例に含まれる一般的説示が時として後の判決や立法に大きな影響を与えることがある。
3・・・正しい
判例とは、裁判において具体的事件における裁判所が示した法律的判断のことです。
判例の狭義では、最高裁判所判決の核心部分であり、広義には、下級審の判例も含めます。そして、判例は、「先例」としての重み付けがなされ、それ以後の判決に拘束力を持ち、影響を及ぼす。分かりやすく言えば、昔の判例を根拠にして、別の裁判の判決を出すこともあるということです。また、判例をきっかけに法改正されたりもします。

よって、本肢は正しいです。

4.下級審が最高裁判所の判例に反する判決を下した場合、最高裁判所は申立てに対して上告審として事件を受理することができる。
4・・・正しい
本肢は正しいです。刑事訴訟法によると、
高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、最高裁判所の判例と相反する判断をしたことを理由として上告の申立をすることができる(刑事訴訟法405条2号)。民事訴訟法によると
上告をすべき裁判所が最高裁判所である場合には、最高裁判所は、原判決に最高裁判所の判例と相反する判断がある事件について、申立てにより、決定で、上告審として事件を受理することができます(民事訴訟法318条1項)。上記刑事訴訟法、民事訴訟法いずれも分かりやすく言えば、本肢の内容「下級審が最高裁判所の判例に反する判決を下した場合、最高裁判所は申立てに対して上告審として事件を受理することができる」になります。
5.最高裁判所が、法令の解釈適用に関して、自らの過去の判例を変更する際には、大法廷を開く必要がある。
5・・・正しい
事件を大法廷又は小法廷のいずれで取り扱うかについては、最高裁判所の定めるところによります。
但し、下記の場合においては、必ず大法廷で裁判しなければなりません(裁判所法10条)。
  1. 当事者の主張に基いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断するとき。(意見が前に大法廷でした、その法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するとの裁判と同じであるときを除く。)
  2. 前号の場合を除いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合しないと認めるとき。
  3. 憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき

本肢は、3号に当たるので、大法廷を開く必要があります。

令和6年・2024年行政書士試験対策の個別指導はこちら

平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略