吸収合併に関する次の記述のうち、会社法の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。
- 吸収合併は、株式会社と持分会社との間で行うこともできるが、株式会社を消滅会社とする場合には、社員の責任の加重など複雑な法律問題が生じるため、株式会社が存続会社とならなければならない。
- 吸収合併存続会社は、消滅会社の株主に対して、消滅会社の株式に代えて存続会社の株式を交付し、消滅会社のすべての株主を存続会社の株主としなければならない。
- 吸収合併存続会社の株主総会において、消滅会社の債務の一部を承継しない旨の合併承認決議が成立しても、債務を承継しない旨の条項は無効であって、すべての債務が存続会社に承継される。
- 吸収合併存続会社の株主で当該吸収合併に反対した株主が株式買取請求権を行使し、当該会社が分配可能額を超えて自己株式を取得した場合には、当該会社の業務執行者は、取得対価につき支払義務を負う。
- 財務状態の健全な会社を存続会社として吸収合併を行う場合には、消滅会社の債権者の利益を害するおそれがないことから、消滅会社の債権者は、消滅会社に対し、当該合併について異議を述べることはできない。
【答え】:3【解説】
1.吸収合併は、株式会社と持分会社との間で行うこともできるが、株式会社を消滅会社とする場合には、社員の責任の加重など複雑な法律問題が生じるため、株式会社が存続会社とならなければならない。
1・・・誤り
会社が吸収合併をする場合において、吸収合併存続会社を持分会社とすることも可能です(会社法751条1項)。
つまり、 「吸収合併は、・・・株式会社が存続会社とならなければならない」は誤りです。
ちなみに、会社が吸収合併をする場合において、吸収合併存続会社を株式会社とすることも可能です(会社法749条1項)。
会社が吸収合併をする場合において、吸収合併存続会社を持分会社とすることも可能です(会社法751条1項)。
つまり、 「吸収合併は、・・・株式会社が存続会社とならなければならない」は誤りです。
ちなみに、会社が吸収合併をする場合において、吸収合併存続会社を株式会社とすることも可能です(会社法749条1項)。
2.吸収合併存続会社は、消滅会社の株主に対して、消滅会社の株式に代えて存続会社の株式を交付し、消滅会社のすべての株主を存続会社の株主としなければならない。
2・・・誤り
吸収合併存続会社は、消滅する会社の株主に対して、消滅会社の株式に代えて「存続会社の株式(又は持分)」を交付することができます(会社法749条1項2号)。
これは、任意なので、存続会社の株式等以外でもよいです。
例えば「社債、新株予約権、現金等」を与えることも可能です(同項2号イ~ホ)
よって、誤りです。
吸収合併存続会社は、消滅する会社の株主に対して、消滅会社の株式に代えて「存続会社の株式(又は持分)」を交付することができます(会社法749条1項2号)。
これは、任意なので、存続会社の株式等以外でもよいです。
例えば「社債、新株予約権、現金等」を与えることも可能です(同項2号イ~ホ)
よって、誤りです。
3.吸収合併存続会社の株主総会において、消滅会社の債務の一部を承継しない旨の合併承認決議が成立しても、債務を承継しない旨の条項は無効であって、すべての債務が存続会社に承継される。
3・・・正しい
吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継します(会社法750条)。
そして、判例によると「消滅会社の債務の一部を承継しない旨の合併承認決議が成立しても、債務を承継しない旨の条項は無効」としています(大判大6.9.26)。
よって、本肢は正しいです。
吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継します(会社法750条)。
そして、判例によると「消滅会社の債務の一部を承継しない旨の合併承認決議が成立しても、債務を承継しない旨の条項は無効」としています(大判大6.9.26)。
よって、本肢は正しいです。
4.吸収合併存続会社の株主で当該吸収合併に反対した株主が株式買取請求権を行使し、当該会社が分配可能額を超えて自己株式を取得した場合には、当該会社の業務執行者は、取得対価につき支払義務を負う。
4・・・誤り
株式会社が「株主併合や単元株式数についての定款の変更等に反対した株主による買取請求」に応じて株式を取得する場合において、当該請求をした株主に対して支払った金銭の額が当該支払の日における分配可能額を超えるときは、当該株式の取得に関する職務を行った業務執行者は、株式会社に対し、連帯して、その超過額を支払う義務を負います(会社法464条1項)。本肢の「吸収合併に反対した株主が株式買取請求」については、上記ルールは適用されません。
よって、業務執行者は支払い義務を負わないので誤りです。
株式会社が「株主併合や単元株式数についての定款の変更等に反対した株主による買取請求」に応じて株式を取得する場合において、当該請求をした株主に対して支払った金銭の額が当該支払の日における分配可能額を超えるときは、当該株式の取得に関する職務を行った業務執行者は、株式会社に対し、連帯して、その超過額を支払う義務を負います(会社法464条1項)。本肢の「吸収合併に反対した株主が株式買取請求」については、上記ルールは適用されません。
よって、業務執行者は支払い義務を負わないので誤りです。
5.財務状態の健全な会社を存続会社として吸収合併を行う場合には、消滅会社の債権者の利益を害するおそれがないことから、消滅会社の債権者は、消滅会社に対し、当該合併について異議を述べることはできない。
オ・・・誤り
吸収合併をする場合、吸収合併消滅株式会社の債権者は、消滅株式会社に対し、吸収合併等について異議を述べることができます(会社法789条1項1号)。よって、本肢は「消滅会社の債権者は、消滅会社に対し、当該合併について異議を述べることはできない」となっているので誤りです。
「異議を述べることは可能」です。
吸収合併をする場合、吸収合併消滅株式会社の債権者は、消滅株式会社に対し、吸収合併等について異議を述べることができます(会社法789条1項1号)。よって、本肢は「消滅会社の債権者は、消滅会社に対し、当該合併について異議を述べることはできない」となっているので誤りです。
「異議を述べることは可能」です。
平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
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問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 内閣 | 問33 | 民法・債権 |
問4 | 内閣 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 財政 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 法の下の平等 | 問36 | 商法 |
問7 | 社会権 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 行政法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・情報通信 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・個人情報保護 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |