商法第512条(報酬請求権)
商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
行政書士の試験対策として、上記条文で注意すべき点は、「報酬の契約」をしていなくても、相当の報酬を請求できるということです。
商法第512条(報酬請求権)
商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
行政書士の試験対策として、上記条文で注意すべき点は、「報酬の契約」をしていなくても、相当の報酬を請求できるということです。
商法第507条(対話者間における契約の申込み)
商人である対話者の間において契約の申込みを受けた者が直ちに承諾をしなかったときは、その申込みは、その効力を失う。商法第508条(隔地者間における契約の申込み)
商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
2 民法第523条の規定は、前項の場合について準用する。民法第523条
申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。
商人が対話の中で申込をした場合、直ちに相手方が承諾をしないときは、申込の効力は失います。
つまり、相手方が対話の中で承諾をした場合は契約が成立し、後日承諾をしてもすでに申込の効力が消滅しているため契約は成立しません。
隔地者間とは、遠く離れた人同士の間の話です。
例えば、東京に住むAと大阪に住むBがいたとします。
Aが、承諾の期間を定めないで契約の申込みし、Bが相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、Aの申込みは、その効力を失います。
そして、相当期間を過ぎた後にBが「承諾の通知」をした場合、Aは「承諾の通知」を「Bからの申込」とみなすことができ、AがBに対して承諾をすれば、契約は成立します。
商法第509条(契約の申込みを受けた者の諾否通知義務)
商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。
2 商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす。
例えば、商人Aと商人Bは、頻繁に取引をしていました。AからBに対して申込がなされた場合、Bは、遅滞なく、「Aの申込」を承諾するか否かをAに通知しなければなりません。
もし、Bが上記通知をしない場合、Bは「承諾」したものとみなされ、AB間の契約は成立したことになります。
商法第510条(契約の申込みを受けた者の物品保管義務)
商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければならない。ただし、その物品の価額がその費用を償うのに足りないとき、又は商人がその保管によって損害を受けるときは、この限りでない。
①例えば、カバンメーカーAが販売店Bに対して「このカバンを取り扱ってくれませんか?」と申込みの際に、Bのお店にカバンを置いていきました。この場合、販売店Bは申込みを拒絶したとしても保管義務を負います。しかし、保管に関する費用は、申込者Aが負担します。
②例外として、保管費用がカバン本体価格よりも高くなるようなときや、販売店Bが保管することによって損害を受ける場合は、販売店Bの利益を守るために、保管義務は負わなくても大丈夫です。
行政書士の試験対策としては、上記①の原則が重要です!
商法第504条(商行為の代理)
商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。
商行為の代理人(例えば、支配人)が、本人の代理である旨の表示をしない場合(顕名をしない場合)でも、原則、本人に効力が生じます。(非顕名主義)
そして、上記の通り、本人に効力が生じる場合であっても、相手方が善意無過失の場合、相手方は代理人に対して履行請求ができます。
商法第505条(商行為の委任)
商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。商法第506条(商行為の委任による代理権の消滅事由の特例)
商行為の委任による代理権は、本人の死亡によっては、消滅しない。
民法では、本人が死亡すると代理権が消滅しますが
商法では、本人(商人)が死亡しても、支配人等の代理権は消滅しません。
つまり、個人商人において営業主が死亡した場合に、支配人や代理商を用いて代理をさせていたとき、そのまま営業を続けられるということです。
支配人とは、商人や会社に代わって、裁判上および裁判外の営業・人事等の一切の事を取りしきる権限を持つ者です。
商法第20条(支配人)
商人は、支配人を選任し、その営業所において、その営業を行わせることができる。会社法第10条
会社(外国会社を含む。)は、支配人を選任し、その本店又は支店において、その事業を行わせることができる。
そして、商人・会社は、支配人を選任して、その営業所(本店や支店)において、その営業・事業を行わせることができます。そして、会社が支配人を選任したときはその旨の登記をしなければなりません。
商法第21条(支配人)
支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
2 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。
3 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
※会社法11条も同様の規定になっています。
支配人は、商人・会社の代わりに営業・事業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限があります。
支配人は、裁判に関する権限も有しているので注意しましょう!
また、支配人の代理権に制限を加えたとしても、善意の第三者に対抗することはできません。例えば、「支配人は、建物の賃貸借契約を締結できない」と商人や会社と取り決めをしていたとしても、建物賃貸借契約の相手方がそのことを知らずに契約したのであれば、この契約は有効ということです。
商法第23条(支配人の競業の禁止)
支配人は、商人の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。
- 自ら営業を行うこと。
- 自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること。
- 他の商人又は会社若しくは外国会社の使用人となること。
- 会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
2 支配人が前項の規定に違反して同項第二号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、商人に生じた損害の額と推定する。
支配人は、原則、上記1~4の内容を行ってはいけません。ただし、例外として、商人の許可を受けた場合は、行ってもよいです。
2は、競業避止義務といい、例えば、商人Aがホームページの作成事業を行っており、使用人BはAに雇われていた。使用人Bは、自らホームページ作成事業を立ち上げたり、他のホームページ作成業者Cに就職して、営業を行ったりしてはいけない、ということです。
また、支配人が、上記に競業避止義務に違反した場合、「支配人が得た利益」又は「第三者が得た利益」の額が損害額と推定され、損害賠償請求の対象となります。
つまり、上記事例で、使用人Bがホームページ作成業者を立ちあげて1000万円の利益をあげたら、商人Aは1000万円の損害賠償請求をBに対して行えます。
表見支配人とは、分かりやすくいうと、商業使用人のうち、支配人ではないが、支配人であるかのような肩書きを与えられている使用人のことを言います。
商法第24条(表見支配人)
商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。
上記「商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称」とは、例えば「支配人・支店長・営業所長」等です。支配人ではないけど、上記のような名刺を持っていた場合、そのものは支配人とみなして、一切の裁判外の行為ができます。この者を表見支配人と言います。
ただし、取引の相手方が、実際は支配人でないことを知って(悪意)、取引した場合は、この取引は有効とはなりません。
言い換えると、裁判外の行為に関しては、善意の相手方に対しては支配人と同一の権限を有するものとみなされます。
上記の通り、
支配人は、裁判上の行為も行えますが、
表見支配人は裁判上の行為は行えません。
名板貸とは、ある商人(名板貸人)が、他の商人(名板借人)に自分の商号を使って営業または事業を行うことを許諾することを言います。
読み方は下記の通りです。
名板貸人:ないたがしにん
名板借人:ないたがりにん
名板貸が成立するには、下記3つを満たす必要があります。
例えば、名板貸Aが、名板借人Bに、Aの商号使用を許諾をしたとします。
そして、BがAの商号を使って、Cと契約しました。
Cが、BをAと勘違いして契約した場合、名板貸が成立するこということです。
より細かく要件を見ていきます。
1について、名板貸人と名板借人は営業の同種性が必要です。(最判昭43.6.13)
つまり、名板貸人Aが飲食業を行っていて、名板借人が運送業を行っていては要件を満たさないということです。
2について、商号使用の許諾は、黙示の許諾であっても構いません。
客観的に見て許諾したように見える場合も許諾したことになる、ということです。
3について、取引相手が、善意無過失で、名板貸人と契約したと勘違いしたことが必要です。
まず、名板借人Bと相手方Cとで契約した場合、名板借人Bと相手方Cとの間で契約が成立したことになります。
つまり、名板借人Bは取引における債務を負います。
また、名板貸人は、自己の商号を使って名板借人が行った「取引による債務」について、名板借人と連帯して責任を負います。
つまり、名板貸人Aも名板借人Bも取引における債務を負うということです。
取引による債務の範囲ですが、下記も責任の範囲内として責任を負います。
一方、名板借人Bの不法行為による損害賠償債務は、原則、名板貸人の責任の範囲外で、責任を負わなくてもよいです。
ただし、名板借人Bの詐欺的行為の場合は、名板貸人の責任の範囲内として責任を負います。
目次
商号とは、商人が営業上、自己を表示するために用いる名称を言います。
会社の場合は、法人名(会社名)が商号で、
個人の場合は、法人名がありません。そのため、営業上用いる名前が商号です。
イメージとしては、個人事業主(個人商人)が、その事業を行うために使う名称で、例えば、あなたが、蕎麦屋を開こうと思い、会社にせずに個人事業をして行おうとしました。その際に、商号として「そば処やすらぎ」といった名称を付けたりします。これを登記すれば「商号」となり、登記をせずに、「屋号」として使うこともできます。
商法第11条(商号の選定)
商人は、その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる。
原則、上記の通り、商人は、自分の名前を商号とすることができます。また、その他自由に商号を選ぶことができます。
また、個人商人の場合は、複数の営業を営むことができ、複数の商号を使用することができます。
ただし、何でもよいというわけではありません。一定のルールがあります。
例えば下記のような制限(例外)があります。
個人商人の場合、その商号を登記してもよいし、しなくてもよい(任意)(商法11条2項)。
商法第15条(商号の譲渡)
商人の商号は、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる。
前項の規定による商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
商号は、①営業とともに譲渡する場合、または、②営業を廃止する場合のいずれかの場合に限って譲渡できます。
つまり、商号だけ譲渡して、営業(事業)は譲渡しない、ということはできません。
また、登記をしなければ、第三者に対抗することはできません。第三者の善意・悪意は関係ないです。
ここから商法を学んでいくのですが、商法とはいったいどのような法律なのか?これは、商法の1条の趣旨を見ると分かります。
商法第1条
商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、この法律の定めるところによる。
2 商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによる。
上記1条から、商法は「商人の営業、商行為その他商事」について定めた法律であることが分かります。
そして、1項で重要な内容は、「商人」と「商行為」です。
「商人」については、このページで解説し、
「商行為」については、次のページで解説します。
「商事」とは、商業・商売に関する事といたイメージで大丈夫です。
2項では、商事については、まず初めに、商法を適用し、商法に定められていない場合、商慣習に従い、商慣習もない場合に、民法を適用するということになっています。
つまり、優先順位が高い方から、
商法>商慣習>民法
ということになります。
商法が民法の特別法であることを考えれば、必然と、商法が優先して適用されることは分かるでしょう。
上記1、2どちらであっても商法が適用されます。
つまり、「消費者―商人」との契約でも商法が適用されるわけです。
商法第4条
この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。
上記の通り、「商人」とは、自己の名をもって商行為を業として行う者ですが、「自己の名をもって」および「業」とはどういうことか?
この点について、判例では、下記のように言っています。
自己の名をもってとは、自己が法律上の商行為から生ずる権利義務の帰属主体になることを言います。(大判大8.5.19)
例えば、Aが、ビールメーカーBからビールを1ケース購入する契約をしたとします。
この場合、
「法律上の商行為」=「ビール1ケースを購入する契約」
「権利義務」=「ビール1ケースを引き渡してもらえる権利」「代金を支払う義務」
「帰属主体」=A(Aが上記権利義務を負う)
つまり、Aは自己の名をもって、商行為を行ったということです。
また、その者自身が現実に営業活動をする必要はなく、他人に実行させることもできます。例えば、Aの従業員が行っても、Aは商人として、商行為をしていることになるわけです。
業とは、営利目的で、同種の業務を、反復的かつ継続的に行うことを言います。
例えば、上記Aの事例でいうと、「Aが、繰り返しビールの仕入れを行うこと」は業に当たるということです。
単に、自分が飲むためにビール1ケースを買ったとしても、それは業ではありません。
擬制商人とは、上記4条2項に規定されている内容です。
店舗その他これに類似する設備によって、
「①物品を販売することを業とする者」又は「②鉱業を営む者」は、
商行為を行うことを業としない者であっても、商人とみなされます。
店舗その他これに類似する設備とは、例えば、自分の畑で採れた野菜を、その畑の端でテントを張って販売する場合の「テント張りの販売店」がこれに当たります。
自然人(ヒト)の場合、特定の営業を開始する目的で準備行為をした者は、その行為により営業を開始する意思を実現したものであり、これにより商人である資格を取得します。(最判昭33.6.19)
例えば、不動産会社を始めようと思って、営業車を購入することは、準備行為に当たります。
そして、営業の準備行為は、相手方だけでなく、それ以外の者にも、客観的に開業準備行為を認められるものであることが必要です。(最判昭47.2.24)
※未成年者、成年被後見人が商人として営業を行うときは、登記が必要です。
自然人は、営業目的行為の終了時でなく、残務処理の終了時に商人資格を失います。
小商人とは、商人のうち、営業の用に供する財産につき最終の営業年度に係る貸借対照表(最終の営業年度がない場合にあっては、開業時における貸借対照表)に計上した額が、50万円を超えないものをいいます。
商行為には、大きく分けて①絶対的商行為、②営業的商行為、③附属的商行為の3つに分けることができます。
先にポイントだけまとめると下表のとおりです。
絶対的商行為 | 営業としてしたか否かを問わず、商行為となる 商人ではない者が、1回だけ行った場合でも、商行為となる |
---|---|
営業的商行為 | 営利目的かつ反復継続して行うことで初めて商行為となる |
附属的商行為 | 前提として「商人の行為」である 営業開始前であっても、商人資格を取得したとされれば、開業準備行為も商行為となる |
絶対的商行為とは、行為自体の客観的性質によって商行為とされる行為を言います。
行為自体に営利性が強いので、営業としてしたか否かを問わず、商行為とされます。
この絶対的商行為は、商人ではない者が、1回だけ行った場合でも、商行為として商法が適用されます。
例えば、下記のようなものが絶対的商行為に当たります。
商法第501条(絶対的商行為とは?)
次に掲げる行為は、商行為とする。
- 利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為
- 他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為
- 取引所においてする取引
- 手形その他の商業証券に関する行為
1については、高く売る目的で、安く買う行為や、安く買ったものを高く売る行為です。
2については、先に高く売っておいて(売る契約をしておく)、その後、安く買う行為
3については、証券取引所や商品取引所での、有価証券や商品の取引(トレーダーと呼ばれる人)
4については、手形を振出したり、裏書をする行為(製造業者がよく行う行為ですが、分からなくても大丈夫です。)
営業的商行為は下記のような行為ですが、営利目的で反復継続して行うことで初めて商行為となります。
下記内容をさらっと読めばある程度は分かると思います。細かい理解までは不要です。
商法第502条(営業的商行為とは?)
次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。
- 賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為
- 他人のためにする製造又は加工に関する行為
- 電気又はガスの供給に関する行為
- 運送に関する行為
- 作業又は労務の請負
- 出版、印刷又は撮影に関する行為
- 客の来集を目的とする場屋における取引
- 両替その他の銀行取引
- 保険
- 寄託の引受け
- 仲立ち又は取次ぎに関する行為
- 商行為の代理の引受け
- 信託の引受け
附属的商行為とは、商人がその営業のためにする補助的行為を言います。
前提として、「商人の行為」であることが必要ですが、営業開始前であっても、商人資格を取得したとされれば、開業準備行為も、商人の最初の附属的商行為となります。
例えば、不動産会社を経営するために、事務所(ビルの1室)を借りる行為も附属的行為です。
憲法第92条
地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
上記92条の条文の地方自治とは、分かりやすく言えば、日本国内を地域で区切って、その中でそれぞれが独自に行政サービスを行ったり、ルール作りをしたりするということです。
地方自治の本旨とは、住民自治と団体自治の2つを意味します。この2つに従って、地方公共団体の組織や運営について法律(地方自治法)で定める、と憲法は言っているわけです。
住民自治とは、地方公共団体の行政は、その住民の意思に基づいて行わなければならない、ということです。
団体自治とは、国から独立した存在として、地方公共団体自らの意思と責任で地方公共団体の事務を処理する、ということで、国からの介入を排除して住民の自由を保障しています。
また、この団体自治は、国家と地方に権力分立させ、住民の人権保障にも役立っているといえます。
団体自治の具体例として、条例制定権(94条)があります。
憲法第94条
地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
憲法第93条
地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
上記93条2項を見ると、「地方公共団体の長は、住民が直接選挙で選ぶ」となっています。これは、大統領制であることを意味しています。
大統領制とは、国家元首ないし行政権の主体たる大統領を国民から直接的に選出する政治制度です。
東京都の特別区について区長の公選制を廃止することが憲法上許されるかどうかが争われた。この点について、最高裁は「憲法上の地方公共団体というためには、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識を持っているという社会的基盤が存在し沿革的にみても、現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的機能を付与された地域団体であることを必要とするが、東京都の特別区は、そのような実体を備えておらず、憲法上の地方公共団体に当たらない」としました。(最大判昭38.3.27:特別区長公選廃止事件)
憲法第83条
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。
財政とは、国家がその任務を行うために、必要な財力を調達し、管理し、使用することです。分かりやすく言えば、国家の歳入(収入)と歳出(支出)です。
具体的に言えば、
国民から税金を徴収したり、国債を発行して国民から借金をするのが、歳入で、
公務員の人件費だったり、公共事業にお金を使ったり、社会保障にお金を使ったりするのが歳出です。
そして、国家が使用する費用は、結局は国民が負担するものなので、国家財政の運用には、民主的なコントロールが必要です。
上記の通り、財政を処理する権限は国会に与えられています。国会は私たちが投票で選んだ議員によって成り立っていることから、民主的だといえるわけです。
これを財政民主主義と言います。
歳入において、この財政民主主義が現れているのは84条の租税法律主義です。
憲法第84条
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
租税法律主義とは、新たに税金を課したり、税制を変更したりする場合、国民の代表者からなる国会の法律によって決定しなければならないということです。
総理大臣が独断で、〇〇税を取り入れます!ということはできないのです。
そして、租税法律主義の内容としては、
課税要件法定主義とは、分かりやすく言えば、「納税義務が成立するための要件」と「租税の賦課・徴収の手続」は法律で定めなければならないという原則です。
具体的には、納税義務が発生する要件として、「納税義務者、課税物件、課税物件の帰属、課税標準、税率」を定め、さらに、細かくどのように税金等を徴収するかを法律で決めなければならないということです。
ここで問題になるのは、法律が、下位規範である政令や省令に定めを委任する場合です。
例えば、「財務省令で定める方法により」といった場合です。
委任自体は租税法律主義に反しませんが、委任する場合には一般的・白紙的委任は許されず、具体的・個別的委任でなければなりません。
また、委任の目的、内容及び程度が委任する法律の中で明確にされていなければならないと解されています。
課税要件明確主義というのは、法律またはその委任のもとに政令や省令において課税要件及び租税の賦課・徴収手続に関する定めをなす場合に、その定めは一義的で明確でなければならないという原則を言います。
一義的とは、それ以外に意味や解釈ができないということです。法律で定めた内容が、色々な解釈ができると、課税庁の自由裁量により、色々な課税ができてしまいます。それを防ぐための原則です。
憲法第81条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。