民法の無料テキスト

弁済

弁済とは?

弁済とは、債務を履行することです。分かりやすく言えば義務を果たすことをです。弁済をすることで債務は消滅します(民法473条)。

例えば、100万円を借りたのであれば、「100万円を返済すること」が弁済であり、300万円の自動車を購入したのであれば「300万円を支払うこと」が弁済です。

弁済の提供方法(弁済の仕方)

「弁済の提供」とは、債務者が弁済を行うための必要な準備をして、債権者に協力を求めることを言います。

そして、「弁済の提供」の仕方は「現実の提供」と「口頭の提供」の2つがあります。

現実の提供

「現実の提供」とは、現実に弁済して債務を消滅させることです。上記事例でいうと、「現実に100万円債権者に渡すこと」「売主に300万円を支払うこと」です。

原則として、弁済の提供方法は「現実の提供」が必要です(民法493条本文)。

例外的に下記「口頭の提供」があります。

口頭の提供

「口頭の提供」とは、債権者に対して「現実の提供をするのに必要な準備が完了した旨」の通知をして、受領を催告することです。

口頭の提供は、下記2つのいずれかに該当する場合に行えます(民法493条ただし書)。

  1. 債権者があらかじめその受領を拒んでいるとき
  2. 債務の履行について債権者の行為を要するとき

口頭の提供も不要な場合

債務者が口頭の提供をしても、債権者が契約そのものの存在を否定するなど弁済を受領しない意思が明確と認められる場合には、債務者は口頭の提供をしなくても、債務不履行の責任を免れます(最判昭32.6.5)。

弁済の場所

弁済をすべき場所は、原則

  • 特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所
  • その他の弁済は債権者の現在の住所

で行います。

例外として、別段、弁済場所を決めたのであれば、その場所が弁済場所となります(民法484条本文)。

弁済の時間

法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができます(民法484条ただし書)。

弁済の費用

弁済の費用は、原則、債務者の負担です。もっとも、弁済費用ついて別段の定めをした場合は、その定めに従います。

ただし例外として、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする(民法485条)。

具体例は個別指導で解説します。

第三者弁済

原則として、第三者も債務を弁済することができます(民法474条1項)。

弁済をするについて正当な利益を有さない第三者による弁済

弁済をするについて正当な利益を有さない第三者」とは、取引に全く関係のない第三者です。

例えば、保証人は、取引に関係するので「正当な利益を有する第三者」ですが、債務者でない「保証人の親族」は「正当な利益を有さない第三者」となります。

そして、「弁済をするについて正当な利益を有さない第三者」は、原則として、債務者の意思に反して弁済をすることができません(民法474条2項本文)。

ただし例外として、「債務者の意思に反すること」を債権者が知らなかったときは、弁済できます(民法474条2項ただし書)。

さらに、「弁済をするについて正当な利益を有さない第三者」は、債権者の意思に反して弁済をすることができません(民法474条3項本文)。

ただし例外として、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合で、かつ、委託を受けて弁済することを債権者が知っていたときは、弁済できます(民法474条3項ただし書)。

第三者弁済ができない場合

上記民法474条1項~3項の内容に関わらず、下記いずれかに該当する場合、第三者弁済ができません(民法474条4項)。

  1. その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき
  2. 当事者が第三者の弁済を禁止されているとき
  3. 当事者が第三者の弁済を制限する旨の意思表示をしたとき

弁済による代位

第三者が弁済することで、「債権者の有していた一切の権利」が第三者に移転することを「弁済による代位」と言います。

例えば、債権者Aが、債務者Bに100万円を貸し、B所有の土地に抵当権を設定した。CがAに100万円を第三者弁済すると、債権者Aが有していた「100万円の貸金債権」と「抵当権」がCに移ります。

結果として、第三者が債務者Bに100万円を求償することができます。

受領権者としての外観を有する者に対する弁済

「受領権者としての外観を有する者」とは、例えば、「預金通帳と印鑑を持っていた人」「受取証書(本物・偽物を問わない)を持っていた人」等です。

「受領権者としての外観を有する者」に弁済をしてしまった場合、弁済した者が善意無過失の場合、弁済は有効となります(民法478条)。

弁済の充当

債務者が、債権者に対して複数の債務を持っていた場合に、弁済するとき、どの債務の弁済にあてるかを定めることが「弁済の充当」です。

そして「元本・費用(振込手数料等)・利息」がある債務の場合、どの順番で弁済に充てるのか?

当事者の合意がない場合、①費用→②利息→③元本の順で充当されます。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

民法テキストの目次

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参考条文

(弁済)
第473条 債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は、消滅する。

(第三者の弁済)
第474条 債務の弁済は、第三者もすることができる。
2 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。
3 前項に規定する第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。
4 前三項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。

(受領権者としての外観を有する者に対する弁済)
第478条 受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。

(受領権者以外の者に対する弁済)
第479条 前条の場合を除き、受領権者以外の者に対してした弁済は、債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ、その効力を有する。

(弁済の場所及び時間)
第484条 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
2 法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができる。

(弁済の費用)
第485条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

(元本、利息及び費用を支払うべき場合の充当)
第489条 債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合(債務者が数個の債務を負担する場合にあっては、同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担するときに限る。)において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。
2 前条の規定は、前項の場合において、費用、利息又は元本のいずれかの全てを消滅させるのに足りない給付をしたときについて準用する。

(弁済の提供の効果)
第492条 債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる。

(弁済の提供の方法)
第493条 弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。

債務引受

債務引受とは?

債務引受(さいむひきうけ)とは、債務をその同一性を失わせないで債務引受人に移転することをいいます。

債務引受には、「免責的債務引受」と「併存的債務引受(重畳的債務引受)」の2種類があります。

併存的債務引受

「併存的債務引受」は「重畳的債務引受(ちょうじょうてき さいむひきうけ)」とも言います。

併存的債務引受の効果

併存的債務引受の場合、引受人が債務者と同一の債務を連帯して負担することとなります(民法470条1項)。また、債務者も従前どおり債務を履行する責任があります。

例えば、債権者A、債務者Bがおり、債務者の債務について、第三者C(引受人という)が併存的債務引受をすると、引受人CもBと同一の債務を負い、BとCが連帯債務を負うことになります。

併存的債務引受の要件

併存的債務引受の要件として、下記3つのパターンがあり、いずれかに該当すれば成立します。

  1. 債権者・債務者・引受人の三者契約
  2. 引受人と債権者の契約(民法470条2項)
    ※債務者の意思に反していても構わない(大判大15.3.25)
  3. 引受人と債務者との契約(470条3項前段)

詳細は個別指導で解説します。

免責的債務引受

免責的債務引受の効果

免責的債務引受とは、債権者に負っている債務を第三者が債務者の代わりに引き受けることです。免責的債務引受がなされると、債務は旧債務者(債務者)から新債務者(引受人)に完全に移転するため、旧債務者の債務は免責されます(民法472条1項)。

免責的債務引受の要件

免責的債務引受の要件として、下記3つのパターンがあり、いずれかに該当すれば成立し、効力が生じます。

  1. 債権者・債務者・引受人の三者契約
  2. 「引受人と債権者の契約」(民法472条2項)かつ、「債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知」(民法472条3項)
  3. 「引受人と債務者との契約」かつ「債権者が引受人となる者に対して承諾」(472条3項前段)

詳細は個別指導で解説します。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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参考条文

(併存的債務引受の要件及び効果)
第470条 併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。
2 併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。
3 併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。
4 前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。

(併存的債務引受における引受人の抗弁等)
第471条 引受人は、併存的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
2 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(免責的債務引受の要件及び効果)
第472条 免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。
2 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
3 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。

(免責的債務引受における引受人の抗弁等)
第472条の2 引受人は、免責的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
2 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、免責的債務引受がなければこれらの権利の行使によって債務者がその債務を免れることができた限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(免責的債務引受における引受人の求償権)
第472条の3 免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しない。

債権譲渡

債権譲渡とは?

債権を譲渡することを「債権譲渡」と言います。

例えば、AがBに対して100万円の時計を売却したとします。すると、Aは「100万円の代金債権」を持ちます。この代金債権をAは第三者Cに譲渡(売却や贈与)することができます。

債権は自由に譲渡できる

債権譲渡は原則、自由に行えます(民法466条1項)。

譲渡できない債権

例外として、下記債権は譲渡できません。

  1. 債権の性質上譲渡を許さない債権
    例えば、自分の肖像画を描かせる債権
  2. 法律上譲渡が禁止された債権
    例えば、扶養請求権

譲渡禁止特約(譲渡制限)がある場合どうなるか?

「当事者が債権の譲渡を禁止したり、譲渡を制限する旨の意思表示(譲渡禁止特約)」をしたときであっても、債権の譲渡は、有効です(民法466条2項)。

とはいうものの、譲受人その他の第三者が譲渡制限の意思表示がされたことを知り(悪意)、又は重大な過失によって知らなかった(重過失)場合、
債務者は、悪意または重過失の譲受人に対して
その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって譲受人に対抗することができます(民法466条3項)。

しかし、債務者が、悪意または重過失の譲受人に対して債務を履行しない場合、譲受人が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、債務者は、譲受人からの履行請求を拒むことができず、悪意または重過失の譲受人に対して債務を履行しなければなりません。

ここはややこしいので、個別指導で細かく具体例を入れて解説をします。

譲渡禁止特約が付いた債権の差押え

「譲渡禁止特約が付いた債権」も差押えの対象となります。

債権譲渡の対抗要件

債務者に対する対抗要件

債権譲渡された場合、債権の譲受人が債務者に対して対抗するための要件は、下記1、2のいずれかです。

  1. 譲渡人が債務者に通知
  2. 債務者が承諾

※債権の譲渡は、現に発生していない債権の譲渡も含みます。

第三者に対する対抗要件

債権譲渡された場合、債権の譲受人が第三者(例えば、債権の二重譲渡の別の譲受人)に対して対抗するための要件は、下記1、2のいずれかです。

  1. 譲渡人が債務者に「確定日付のある証書」により通知
  2. 債務者が「確定日付のある証書」により承諾

※確定日付のある証書とは、例えば、内容証明郵便や公正証書等です。

債権の二重譲渡における優劣

債権の二重譲渡があった場合、第一譲受人と第二譲受人のどちらが優先するのか?

まず、上記の通り、第三者に対する対抗要件は「確定日付のある証書」による通知・承諾です。

この「通知の到達日」や「承諾日」の早い方が、優先します。

確定日付の早い方ではないので注意しましょう!

具体例は個別指導で解説します。

債権の二重譲渡で確定日付のある証書が同時に到達した場合

第一譲受人・第二譲受人は債務者に対してそれぞれ債権の全額を請求することができ、債務者は第一譲受人から請求を受けた際に第二譲受人がいることを理由に債務の弁済を拒むことはできません(最判55.1.11)。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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参考条文

(債権の譲渡性)
第466条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
4 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。

(債権の譲渡の対抗要件)
第467条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

連帯保証

連帯保証とは?(普通保証との違い)

連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯して保証債務を負うことを言います。ここは、普通保証人との違いを考えると分かりやすいです。

連帯保証に補充性・催告の抗弁権・検索の抗弁権はない

普通保証は、補充性・催告の抗弁権・検索の抗弁権があるのに対して、連帯保証は補充性・催告の抗弁権・検索の抗弁権がありません。

連帯保証に補充性がない

主たる債務者が債務を履行するか否かに関わらず、連帯保証人は履行の責任を負います。

連帯保証人に催告の抗弁権がない

主たる債務者から履行請求があったとき、連帯保証人は、「まず主たる債務者に対して請求してください!」と主張することができません。請求があれば、履行する義務を負います。

連帯保証人に検索の抗弁権がない

連帯保証人が「①主たる債務者に弁済する資力があること」と「②執行が容易であること」を証明したとしても、主たる債務者の財産から先に取り立てをさせることはできません。

連帯保証における絶対効と相対効

主たる債務者に生じた事由は、すべて連帯保証人にその効果が及びます(すべて絶対効)。

一方、連帯保証人に生じた事由は、原則、相対効ですが、「弁済、相殺、混同、更改」は絶対効となります。

細かい具体例等は個別指導で解説します。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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参考条文

(連帯債務者の一人との間の更改)
第438条 連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
(連帯債務者の一人による相殺等)
第439条 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(連帯債務者の一人との間の混同)
第440条 連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。

(相対的効力の原則)
第441条 第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。

(催告の抗弁)
第452条 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

(検索の抗弁)
第453条 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

(連帯保証の場合の特則)
第454条 保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。

(連帯保証人について生じた事由の効力)
第458条 第四百三十八条、第四百三十九条第一項、第四百四十条及び第四百四十一条の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する。

連帯債務

連帯債務とは?

連帯債務とは、数人の債務者が同一の債務を負担し、一人が弁済すれば他の債務者の債務も消滅する債務関係を言います。

例えば、甲土地の売主Aが、買主Bと買主Cに対して1000万円で売却したとします。

この場合、「売主Aが債権者」「買主B・Cは連帯債務者」となります。

そして、買主Bが売主Aに対して1000万円を支払ったら、買主Cは売主Aに対して1円も支払う必要がなくなります。

連帯債務者に対する履行の請求

債権者は、その連帯債務者の「一人」に対し、全部又は一部の履行を請求することができます。

また、「全ての連帯債務者」に対し、「同時にまたは順次に全部又は一部の履行を請求することもできます(民法436条)。

連帯債務における絶対効と相対効

絶対効とは?相対効とは?

絶対効とは、連帯債務者はそれぞれ関連していると考え、連帯債務者の1人に生じた事由が他の債務者に影響することを言います。

相対効とは、連帯債務者はそれぞれ独立していると考え、連帯債務者の1人について生じた事由が他の債務者に影響しないことを言います。

連帯債務における絶対効

「相殺」は絶対効です。

例えば、甲土地の売主Aが、買主Bと買主Cに対して1000万円で売却したとします。そして、買主BがAに対して以前から1000万円を貸しており、返済してもらっていなかった。

ここで、買主Bが相殺を主張すると、買主Bの1000万円の債務は消滅します。

また、これが買主C(他の連帯債務者)にも影響し、買主Cの1000万円の債務も消滅します。

連帯債務における絶対効は「相殺、混同、更改」があります。

各具体例と細かい解説は個別指導で解説します。

連帯債務における相対効

「履行請求」は相対効です。

例えば、甲土地の売主Aが、買主Bと買主Cに対して1000万円で売却したとします。売主Aが買主Bに「1000万円を支払え!」と履行請求したとします。

すると、買主Bの消滅時効の完成が猶予されます。

しかし、履行請求を受けていない買主Cには上記履行請求は影響せず、買主Cの消滅時効の完成は猶予されません。

連帯債務における相対効は「履行請求、免除、時効の完成、債務の承認」等があります。

各具体例と細かい解説は個別指導で解説します。

連帯債務の求償関係

連帯債務者の一人が、弁済をすると、自己の負担部分を超えるかどうかに関わらず、負担割合に応じて求償権を有します(民法442条1項)。

例えば、例えば、甲土地の売主Aが、買主Bと買主Cに対して1000万円で売却したとします(負担部分を1:1とする=負担割合は1/2ずつ)。

ここで、買主Bが600万円を売主Aに対して弁済したら、半分の300万円を買主C(他の連帯債務者)に対して求償できます。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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参考条文

(連帯債務者に対する履行の請求)
第436条 債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。

(連帯債務者の一人についての法律行為の無効等)
第437条 連帯債務者の一人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない。

(連帯債務者の一人との間の更改)
第438条 連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。

(連帯債務者の一人による相殺等)
第439条 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(連帯債務者の一人との間の混同)
第440条 連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。

(相対的効力の原則)
第441条 第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。

(連帯債務者間の求償権)
第442条 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。
2 前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。

詐害行為取消権(詐害行為取消請求)

詐害行為取消権(詐害行為取消請求)とは?

例えば、①AはBに100万円を貸した(Aは貸金債権を有している)。その後、弁済期が到来したにも関わらず、BはAに100万円を弁済しなかった。Bは唯一の財産である2000万円の甲地を有していたが、そのまま所有し続けると、Aに差し押さえられてしまうので、②Bは甲地をCに売却した。

この状況で、Aを債権者Bを債務者Cを受益者と呼びます。

※受益者は、「その行為によって利益を受けた者」という言い方もします。

ここで、Bが甲地を売却してしまったら、Aは甲地を差し押さえて、100万円を回収するという事ができなくなってしまいます。そこで、民法では、債務者BがAを害することを知ってした行為(Cへの売却)について、債権者Aは、取り消すことができるとしています。

これが「詐害行為取消権・詐害行為取消請求」です。

※「債務者BがAを害することを知ってした行為」を「詐害行為」と言います。

より細かい具体例については個別指導で解説します。

 

詐害行為取消請求ができる要件

詐害行為取消権を行使するためには、下記要件を全て満たす必要があります。

  1. 被保全債権が存在する
  2. 被保全債権は、詐害行為前の原因に基づいて発生
  3. 保全の必要性がある(債務者が無資力
  4. 財産権を目的としていた行為である
  5. 上記行為が債務者が債権者を害する行為である(詐害行為
  6. 債務者が詐害行為時、債権者を害することを知っていた(詐害意思
  7. 受益者や転得者が、債権者を害することを知っていたこと(悪意

詳細は個別指導で解説します。

詐害行為取消請求の方法

詐害行為取消請求は、必ず裁判によって行使しなければなりません(民法424条1項本文)。

裁判外で詐害行為取消請求はできません。

詐害行為取消請求の相手方(訴訟の被告)

原告は、債権者Aですが、被告は、受益者Cまたは転得者です(民法424条の7第1項)。

出訴期間

詐害行為取消請求に係る訴えは、①債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から2年を経過したとき、または②行為の時から10年を経過すると、訴えを提起することができなくなります(民法426条)。

詐害行為取消請求の範囲

債権者の詐害行為取消請求ができる範囲は、債務者がした行為(詐害行為)の目的が可分であるときは、債権者Aの有する被保全債権の額が限度です。

上記事例の通り、売却については可分ではないので、すべてを取消すことができます。

債権者への支払請求・引渡請求

債権者は、詐害行為取消請求によって受益者又は転得者に対して財産の返還を請求する場合、

その返還請求が「金銭の支払又は動産の引渡し」を求めるものであるときは、

受益者に対しては「その支払又は引渡し」を求めることができ、
転得者に対しては「その引渡し」を、自己に対してすることを求めることができます(民法424条の9)。

そして、受益者又は転得者は、債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払又は引渡しをしなくてもよいです。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

民法テキストの目次

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参考条文

(詐害行為取消請求)
第424条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
3 債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
4 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。

(詐害行為の取消しの範囲)
第424条の8 債権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができる。
2 債権者が第四百二十四条の六第一項後段又は第二項後段の規定により価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

(債権者への支払又は引渡し)
第424条の9 債権者は、第四百二十四条の六第一項前段又は第二項前段の規定により受益者又は転得者に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が金銭の支払又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができる。この場合において、受益者又は転得者は、債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払又は引渡しをすることを要しない。
2 債権者が第四百二十四条の六第一項後段又は第二項後段の規定により受益者又は転得者に対して価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

第426条 詐害行為取消請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から二年を経過したときは、提起することができない。行為の時から十年を経過したときも、同様とする。

債権者代位権

債権者代位権とは?

例えば、AがBに100万円を貸したとします。これにより、Aは「Bに対する貸金債権(被保全債権:債権者が保全したい権利)」を有します。

BはCに100万円の時計を売り、まだ代金を受け取っていません。つまり、Bは「Cに対する代金債権」を有しています。

このような場合に、AがBの代わりに、「Bが持っている代金債権(=被代位権利:債権者に取られる権利という)」を
使って、Cから100万円を回収することができます。

これを「債権者代位権」といいます。

債権者代位権を行使できる要件

  1. 被保全債権が存在する
  2. 被保全債権の履行期が到来している
  3. 保全の必要性がある(債務者が無資力
  4. 債務者が権利を行使していない
  5. 被代位権利が債務者の一身専属権でなく、また差押え禁止の債権でない

要件3(債務者の無資力)について

被保全債権が金銭債権以外の場合(登記請求権等)、無資力要件は不要です。

要件5(債務者の無資力)について

一身専属権とは、「慰謝料請求権」や「財産分与」、「夫婦間の契約取消権」等

差押え禁止の債権とは「年金受給権」や「生活保護受給権利」等

債権者代位権の行使の方法

債権者代位権は、「裁判外」でも「裁判上」でも行使できます。

そして、債権者Aが自己の名で、債務者Bの権利を行使できます。(債務者Bの代理人として行使するのではないので注意)

債権者代位権の行使の範囲

債権者は、被代位権利を行使する場合、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、被代位権利を行使することができます(民法423条の2)。

上記事例では、債権者Aは100万円の債権しか持っていないので、代位行使できる上限額は100万円となります。

債権者への支払請求・引渡請求

債権者は、被代位権利を行使する場合、被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方に対し、その支払又は引渡しを自己(債権者)に対してすることを求めることができます

この場合において、相手方(第三債務者C)が債権者Aに対してその支払又は引渡しをしたときは、被代位権利は、消滅します(民法423条の3)。

債権者代位権が行使された場合の相手方の抗弁

債権者Aが被代位権利を行使したときは、相手方(第三債務者C)は、債務者Bに対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができます(民法423条の4)。

具体例については個別指導で解説します。

債務者の権限

債権者Aが被代位権利を行使した場合であっても、債務者Bは、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることができます

この場合、相手方(第三債務者C)は、被代位権利について、債務者Bに対して履行してもよいです(民法423条5)。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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参考条文

(債権者代位権の要件)
第423条 債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。
2 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
3 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない。

(代位行使の範囲)
第423条の2 債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、被代位権利を行使することができる。

(債権者への支払又は引渡し)
第423条の3 債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方に対し、その支払又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。この場合において、相手方が債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、被代位権利は、これによって消滅する。

(相手方の抗弁)
第423条の4 債権者が被代位権利を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる。

(債務者の取立てその他の処分の権限等)
第423条の5 債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。この場合においては、相手方も、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。

債務不履行

債務不履行とは?

債務不履行とは、契約したことを守らないことを言います。「契約したことを守らないこと」を「不履行」「履行しないこと」と言います。

債務不履行の種類

債務不履行には「履行遅滞」「履行不能」「不完全履行」の3つがあります。

履行遅滞

「履行遅滞(りこうちたい)」とは、履行が可能であるにもかかわらず、履行期限が過ぎても履行をしないことです。

例えば、お金を借りて、返済期限が8月末日にも関わらず、9月1日になると債務者は履行遅滞(債務不履行)となります。

履行不能

「履行不能」とは、「契約その他の債務の発生原因」及び「取引上の社会通念」に照らして不能であるときを言います(民法412条の2第1項)。

難しく書いてありますが、例えば、建物の売買契約をした後に、大地震が発生し、この建物が倒壊してしまった場合、この建物を買主に引き渡すことは不可能です。この場合、売主は建物を引渡すことが不可能なので、売主は履行不能となります。

不完全履行

「不完全履行」とは、契約を果たしたものの、義務の履行が十分とは言えない場合です。例えば、弁当屋さんが弁当100個の注文を受けて、100個の弁当を引渡したが、一部が腐っていた場合、弁当屋さんの不完全履行となります。

債務不履行に基づく損害賠償請求

債務不履行があったとき、債権者は債務者に対して、損害の賠償を請求することができます(民法415条)。

ただし、その債務の不履行が「契約その他の債務の発生原因」及び「取引上の社会通念」に照らして、債務者の責任とはいえない事由の場合、債権者は、損害賠償請求できません

具体例は個別指導で解説します!

金銭賠償の原則

損害賠償は、原則、金銭(お金)で評価をして、その額を金銭で支払うこととなっています。ただし、別段の意思表示(契約)があれば、その契約に従います(民法417条)。

具体例は個別指導で解説します!

損害賠償すべき範囲

債務者が損害賠償すべき範囲は、原則として、通常生ずべき損害です(民法416条1項)。

例外的に、当事者が予見すべきであった特別事情から生じた損害については、損害賠償すべき範囲に含まれ、損害賠償しないといけませ(民法416条2項)。

「通常生ずべき損害」「特別事情から生じた損害」の具体例は個別指導で解説します!

過失相殺

  • 債務不履行について債権者にも過失があった場合
  • 損害が発生したことについて債権者にも過失があった場合
  • 損害が拡大したことについて債権者にも過失があった場合

裁判所が、債権者の過失を考慮して損害賠償額を決定することを「過失相殺」と言います。

イメージとしては、債権者の過失が大きければ、損害賠償額が小さくなり(減額が大きくなる)、債権者の過失が小さければ、損害賠償額が大きくなります(減額が小さくなる)。

賠償額の予定

債務不履行があった場合に、「損害賠償額をいくらにするのか」を事前に契約で決めておくことを「賠償額の予定」と言います(民法420条)。

賠償額の予定を定めた場合、債権者は損害額を証明する必要はなくなります。

金銭債務の特則

金銭債務とは、お金に関する債務で、例えば、物を買った時の「代金を支払う債務」、お金を借りた時の「貸金債務」等です。

金銭債務については、特別ルールが適用されます。その特別ルールが下記の通りです。

  • 債務者に帰責事由がなくても履行遅滞は成立する→不可抗力があっても履行遅滞が成立する
  • 金銭債務は、履行不能はない→必ず、履行しないといけない
  • 債権者は、損害に関する立証責任はない。債権者は債務不履行(履行遅滞)を立証できればよい
  • 債務者は当然に法定利率・約定利率に基づく利息が発生する

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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参考条文

(履行不能)
第412条の2 債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。

(債務不履行による損害賠償)
第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

(損害賠償の範囲)
第416条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

(損害賠償の方法)
第417条 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。

(過失相殺)
第418条 債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。

(金銭債務の特則)
第419条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

(賠償額の予定)
第420条 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
3 違約金は、賠償額の予定と推定する。

根抵当権

根抵当権とは?

複数の債権を担保(保証)するために、不動産に設定するものが根抵当権です。

例えば、製造会社Aが、銀行Bから毎月仕入代金を借りるとします。

仕入代金を借りるたびにA所有の不動産に抵当権を設定して、返済したら抵当権を消滅させるというのは非常に面倒です。

そのため、不動産で保証する上限(極度額という)を決めて、その金額内は、この不動産で保証しているというのが根抵当権です。

根抵当権の被担保債権の範囲(根抵当権で保証される債権とは?)

根抵当権で保証される債権は、「確定した元本」並びに「利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部」について、極度額を限度まで保証されます(民法398条の3第1項)。

例えば、上記で、極度額5000万円とし、銀行Bが製造会社Aに対して、1000万円・2000万円・500万円と3回貸し、すべてについて返済されていないとします。そして、利息や損害賠償額が300万円だった場合、上記合計金額は3800万円です。

ここで、銀行Aが元本確定し、その後競売にかけて、5000万円で落札された(売れた)場合、銀行Bは、この5000万円から3800万円を優先的に弁済を受けることができます。

元本確定とは?

元本確定とは、根抵当権を実行するために(競売にかけるために)元本がいくらなのかを確定させる行為です。

元本が確定しないと、競売手続中に、被担保債権の額が変動するし、利息も変動してしまいます。そのため元本がいくらなのかを確定させます。

根抵当権設定者からの元本確定請求

根抵当権設定者(製造業者A)は、根抵当権の設定の時から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができます。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から2週間を経過することによって確定します(民法398条の19第1項)。

※ 元本確定日の定めがあるときは、この定めに従います(同条19第3項)。

根抵当権者からの元本確定請求

根抵当権者(銀行B)は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができます。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定します(民法398条の19第2項)。

※ 元本確定日の定めがあるときは、この定めに従います(同条19第3項)。

根抵当権の被担保債権の譲渡(随伴性について)

元本確定前に根抵当権者(銀行B)が、被担保債権を第三者Cに譲渡(債権譲渡)しても、Cは根抵当権を取得しません。

言い換えると、元本確定前は、根抵当権に「随伴性(ずいはんせい)がない」ということです(第398条の7第1項)。

詳細解説は個別指導で解説します。

根抵当権の被担保債権の消滅(付従性について)

元本確定前に根抵当権設定者(製造会社A)が、債務を弁済して、被担保債権が消滅したとしても、当然に根抵当権が消滅するわけではありません。

言い換えると、元本確定前は、根抵当権に「付従性(ふじゅうせい)がない」ということです(第398条の7第1項)。

詳細解説は個別指導で解説します。

根抵当権の譲渡

元本確定前に、根抵当権者(銀行B)が根抵当権を譲り渡す場合根抵当権設定者(製造会社A)の承諾を得る必要があります(第398条の12第1項)。

元本確定後は、根抵当権設定者の承諾なく、根抵当権を譲渡できます。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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参考条文

(根抵当権)
第398条の2 抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。
2 前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。
3 特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権、手形上若しくは小切手上の請求権又は電子記録債権(電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子記録債権をいう。次条第二項において同じ。)は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。

(根抵当権の被担保債権の範囲)
第398条の3 根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。
2 債務者との取引によらないで取得する手形上若しくは小切手上の請求権又は電子記録債権を根抵当権の担保すべき債権とした場合において、次に掲げる事由があったときは、その前に取得したものについてのみ、その根抵当権を行使することができる。ただし、その後に取得したものであっても、その事由を知らないで取得したものについては、これを行使することを妨げない。
一 債務者の支払の停止
二 債務者についての破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始の申立て
三 抵当不動産に対する競売の申立て又は滞納処分による差押え

(根抵当権の被担保債権の範囲及び債務者の変更)
第398条の4 元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする。
2 前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。
3 第一項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。

(根抵当権の極度額の変更)
第398条の5 根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない。

(根抵当権の元本確定期日の定め)
第398条の6 根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる。
2 第三百九十八条の四第二項の規定は、前項の場合について準用する。
3 第一項の期日は、これを定め又は変更した日から五年以内でなければならない。
4 第一項の期日の変更についてその変更前の期日より前に登記をしなかったときは、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定する。

(根抵当権の被担保債権の譲渡等)
第398条の7 元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする。
2 元本の確定前に債務の引受けがあったときは、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができない。
3 元本の確定前に免責的債務引受があった場合における債権者は、第四百七十二条の四第一項の規定にかかわらず、根抵当権を引受人が負担する債務に移すことができない。
4 元本の確定前に債権者の交替による更改があった場合における更改前の債権者は、第五百十八条第一項の規定にかかわらず、根抵当権を更改後の債務に移すことができない。元本の確定前に債務者の交替による更改があった場合における債権者も、同様とする。

(根抵当権の譲渡)
第398条の12 元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。
2 根抵当権者は、その根抵当権を二個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する。
3 前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない。

(根抵当権の元本の確定事由)
第398条の20 次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。
一 根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は第三百七十二条において準用する第三百四条の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る。
二 根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。
三 根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したとき。
四 債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。
2 前項第三号の競売手続の開始若しくは差押え又は同項第四号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。

(根抵当権の元本の確定請求)
第398条の19 根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から二週間を経過することによって確定する。
2 根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する。
3 前二項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない。

法定地上権

法定地上権とは?

土地や建物に抵当権が設定されて、競売にかかることにより、土地と建物の所有者が異なることとなると、建物所有者は、建物を所有する権利がなくなるので、土地所有者から、「建物を取り壊して、立ち退いてください!」と言われたら困ります。そのため、一定要件を満たす場合、自動的に建物に地上権(土地を使う権利)が設定されます。これを「法定地上権」と言います。この法定地上権が成立すると、建物所有者は、土地について地上権を有することとなるので、引き続き建物を使い続けることができます

法定地上権の成立要件

下記4つの要件をすべて満たすことで、法定地上権は成立します。

  1. 抵当権設定当時に、土地の上に建物が存在していること
    →更地に抵当権が設定されていた場合、法定地上権は成立しない
  2. 抵当権設定当時に、土地と建物の所有者が同一であること
  3. 土地と建物の一方または双方に抵当権が設定されていること
  4. 競売により、土地と建物の所有者が異なる者となったこと

法定地上権に関する判例

土地にのみ抵当権が設定され、建物を取り壊して再築した場合

【事案】 土地及び建物の所有者が土地に抵当権を設定後、建物を取り壊して再築した。

【判例】 旧建物のために法定地上権が成立する場合におけると同一の範囲内において法定地上権が成立する(大判昭10.8.10)

土地・建物の両方に抵当権が設定され、建物を取り壊して再築した場合

【事案】 土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、建物が取り壊され、土地上に新建物を再築された。

【判例】 新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、「新建物が建築された時点での土地の抵当権者」が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り新建物のために法定地上権は成立しない(最判平9.2.14)。

分かりやすい解説については個別指導で解説します。

抵当権設定当時に土地と建物の所有者が別人だった場合

【事案】 抵当権設定当時において土地及び建物の所有者が異なる人である。

【判例】 その土地又は建物に対する抵当権実行による競落の際、たまたま、当該土地及び建物の所有権が同一の者に帰していたとしても、成立要件2を満たさないため法定地上権は成立しない(最判昭44.2.14)

土地に1番抵当権・2番抵当権が設定され、2番抵当権のみ要件を満たす場合

【事案】 土地に先順位抵当権が設定された当時は土地と建物の所有者が異なっていたため成立要件を満たしていなかった。しかし、その後、土地と建物が同一人所有者となった後に後順位抵当権が設定され、後順位抵当権者を基準にすると、成立要件を満たしていた。

【判例】 土地の先順位抵当権が実行されたときであっても、土地に対する法定地上権は成立しない(最判平2.1.22)。

理由については個別指導で解説します。

建物に1番抵当権・2番抵当権が設定され、2番抵当権のみ要件を満たす場合

【事案】 建物に抵当権設定当時、土地・建物が所有者が異なっていたため成立要件を満たしていなかった。しかし、その後、土地と建物が同一人所有者となった後に後順位抵当権が設定され、後順位抵当権者を基準にすると、成立要件を満たしていた。

【判例】 建物の先順位抵当権が実行された時であっても、法定地上権が成立する(大判昭14.7.26)。

理由については個別指導で解説します。

単独所有の建物があり、土地が共有で、土地の共有持分に抵当権が設定された場合

【事案】 「A・B共有の土地」の上に「単独でAが建物を所有」していて、Aが、土地の共有持分について抵当権を設定していた。

【判例】 法定地上権は成立しない(最判昭29.12.23)。

理由については個別指導で解説します。

建物が共有で、単独所有の土地に抵当権が設定された場合

【事案】 「Aが単独所有する土地」の上に「A・B共有の建物」があり、Aが土地について抵当権を設定していた。

【判例】 法定地上権が成立する(最判昭46.12.21)

理由については個別指導で解説します。

共有である土地・建物に抵当権が設定された場合

【事案】 「A・B共有の土地」上に「A・C共有の建物」があるとき、土地の共有者A・Bが「Aの債務」を担保するため、「Aの土地の持分」および「Bの土地の持分」それぞれに抵当権を設定していた。

【判例】 法定地上権は成立しない(最判平6.12.20)

理由については個別指導で解説します。

また上記以外の判例についても、個別指導で解説します。

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参考条文

(法定地上権)
第388条 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。