民法の無料テキスト

相殺

相殺とは?

相殺とは、2人が互いに同種の債権・債務を持っている場合、その債権債務を消滅させること(帳消しにすること)です(民法505条1項)。

そして、相殺は一方的な意思表示によって行うことができます。

自働債権と受働債権

AがBに対して「金銭債権X」を有し、逆に、
BがAに対して「金銭債権Y」を有していた。

ここで、Aから相殺を主張する場合、相殺を主張する側Aの有する金銭債権Xを「自働債権」と呼び
相殺を主張される側Bの有する債権を「受働債権」と呼びます。

相殺ができる要件(相殺適状)

相殺を主張するためには、下記4つの要件を全て満たす必要があります。

  1. お互いが相手方に対して債権を持っている(505条1項本文)
    →例)AがBに対して債権を有し、逆にBもAに対して債権を有している
  2. お互いが有する債権が同種の目的である(505条1項本文)
    →例)AとB、それぞが相手方に有する債権がいずれも金銭債権である
  3. 両債権が弁済期にある(505条1項本文)
    →原則、お互いの債権が弁済期でないといけないが、自働債権(相殺を主張する者が有する債権)が弁済期であれば、受働債権は弁済期が到来していなくてもよい
  4. 債務の性質上相殺が許されている(505条1項ただし書)
    →例)「同時履行の抗弁権がついている場合」や、「受働債権が人の生命又は侵害の侵害による損害賠償債権である場合」等は、相殺が禁止されているため、相殺できません。

ここはしっかり理解した方が良いので、個別指導で具体例を出しながら解説いたします。

相殺禁止の特約をした場合

当事者が相殺を禁止する特約をした場合、第三者が相殺禁止特約を知り(悪意)、又は重大な過失によって知らなかったとき(重過失)に限り、その第三者に対抗することができます=第三者がいても相殺できる(民法505条2項)。

具体例については個別指導で解説します。

相殺ができない場合

下記のいずれかに該当する場合、上記要件を満たしていても相殺をすることができません。

  1. 受働債権が悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権である場合(民法509条1号)
    →「悪意」とは、積極的な意思を持って行った不法行為を指します。
  2. 受働債権が、不法行為や債務不履行に基づく人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権である場合(民法509条2号)
  3. 受働債権が差押禁止の債権である場合(民法510条)
    →例)扶養請求権や賃金債権
  4. 受働債権が差押えられ、その後、反対債権を取得した場合(民法511条)

細かい具体例については個別指導で解説します。

相殺の方法

相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によって行います(民法506条1項前段)。

つまり、相手方の承諾なく、単独で相殺することができます。

また、相殺をする際、条件又は期限を付することができません(民法506条1項後段)。

相殺の効果

相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺適状となった時にさかのぼってその効力を生じます(民法506条2項)。

つまり、相殺適状後の遅延損害金は発生しません。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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参考条文

(相殺の要件等)
第505条 二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。

(相殺の方法及び効力)
第506条 相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。
2 前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。

(履行地の異なる債務の相殺)
第507条 相殺は、双方の債務の履行地が異なるときであっても、することができる。この場合において、相殺をする当事者は、相手方に対し、これによって生じた損害を賠償しなければならない。

(時効により消滅した債権を自働債権とする相殺)
第508条 時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。

(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第509条 次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)

(差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止)
第510条 債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。

(差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第511条 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。
2 前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。

貸人の地位の移転(賃貸人の変更)

賃貸人の変更とは?

例えば、アパートの所有者A(賃貸人)が、B(賃借人)にアパートの一室を貸していたとします。その後。Aがアパートを第三者Cに売却すると、アパートの所有者がAからCに変わります。

これによって、賃貸人がAからCに変更します。これが「賃貸人の変更」です。

賃借権の対抗要件

上記具体例の通り、賃貸人がAからCに変更になった場合、賃借人Bは新賃貸人Cに対して、「不動産の賃貸借」をどのような場合に対抗できるか?

民法では、賃借権を登記したときは、新賃貸人Cに対抗することができるとしています(民法605条)。

もっとも、建物の賃借権は、賃借権の登記がなくても、建物の引き渡しがあれば、新賃貸人に建物賃借権を対抗できます(借地借家法31条)。つまり、上記具体例では、賃借人Bは、「賃借権の登記」もしくは「建物の引渡し」によって、新賃貸人Cに対抗できます。

また、建物所有の土地の賃借権の場合、借地上の土地の建物を登記していれば、土地の賃借人は、土地の賃貸人(地主)に対抗できます(借地借家法10条1項)。

賃貸人の地位移転

上記具体例の通り、賃貸している不動産を譲渡することができます。これにより、賃貸人が変更となるのですが、どういった場合に「賃貸人の地位」が新しい賃貸人(所有者)に移転するかが問題です。

言い換えると、どういった場合に新賃貸人Cが、賃借人Bに賃貸人であることを主張できるかが問題です。

賃借人Bが賃貸借の対抗要件を備えている状況で、不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、新賃貸人Cに移転します(民法605条の2第1項)。

この場合、賃借人Bの承諾は不要です。

敷金返還債務、必要費・有益費償還債務の移転

上記のように「賃貸人の地位が移転(賃貸人が変更)」すると、敷金返還債務や必要費償還債務、有益費償還債務も、新賃貸人Cに移転します(民法605条の2第1項)。

具体例については個別指導で解説します!

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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参考条文

(不動産賃貸借の対抗力)
第605条 不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。

(不動産の賃貸人たる地位の移転)
第605条の2 前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
2 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。
3 第一項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
4 第一項又は第二項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第六百八条の規定による費用の償還に係る債務及び第六百二十二条の二第一項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。

(合意による不動産の賃貸人たる地位の移転)
第605条の3 不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。この場合においては、前条第三項及び第四項の規定を準用する。

即時取得

即時取得とは?

「即時取得」とは、簡単にいえば、他人が所有する動産が自分のモノになってしまう制度です。

例えば、A所有の時計を、Bが借りていたとします。
(時計の所有者・貸主A、時計の占有者・借主B)

その後、Cが、Bからこの時計を買いました。

この場合、Cは、時計を所有者Aに返さないといけないか?

答えは、下記の一定要件を満たすと、即時取得が成立して、この時計はCのモノとなります。

つまり、Cは所有者Aに時計を返さなくても良いことになります。これが「即時取得」です。

即時取得の成立要件

下記3つをすべて満たすとき、即時取得が成立します(民法192条)。

  1. 目的物は動産であること
  2. 有効な取引行為によること
  3. 平穏、公然、善意無過失で占有を始めること

要件1:目的物は動産であること

目的物は動産である必要があります。上記事例も「時計」で動産なので、即時取得は可能です。

一方、不動産は即時取得できません

不動産について即時取得できない理由は個別指導で解説します。

要件2:有効な取引行為によること

「有効な取引行為」とは、例えば、売買契約や贈与契約、質権設定契約などがあります。

【有効な取引とならないものの具体例】

  1. 制限行為能力者とした取引
  2. 錯誤や詐欺、強迫、無権代理などの取り消すことができる取引
  3. 相続によって取得した場合

要件3:平穏、公然、善意無過失で占有を始めること

平穏・公然・善意は推定されます(民法186条1項)。

無過失も推定されます(民法188条、最判昭41.6.9

上記判例から、占有者は、192条(即時取得の要件)の「過失がない」ことを立証する責任はありません。

即時取得の効果

即時取得すると、即時にその動産について行使する権利(所有権や質権等)を取得する。

盗品又は遺失物についての特例

占有物が盗品(盗まれた場合)又は遺失物であるとき(失くした場合)、被害者又は遺失者は、「盗難又は遺失の時から2年間」、占有者に対してその物の回復(取り戻し)を請求することができます(民法193条)。

即時取得の規定は、取引の安全を図るためのルールですが、反面、原権利者(一番上の事例でいうと所有者A)の権利を奪うことになります。そこで、所有者Aの意思に基づかないで占有を離れた物については、あとで取戻し(回復請求)ができるようにしています。

そして、この回復請求をするには、占有者が支払った代価を弁償する必要はありません

占有者が盗品又は遺失物を、競売や市場で、善意で購入した場合

上記の通り、原則、無償で物を取り戻すことができるのですが

占有者が、「盗品又は遺失物」を、「競売若しくは公の市場(店舗)等」で、「善意」で買い受けたときは、「被害者又は遺失者」は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができません(民法194条)。

つまり、占有者がお店で購入したのであれば、その代金を支払って、原権利者(所有者A)は回復請求できるということです。

理解学習について

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参考条文

(即時取得)
第192条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

(盗品又は遺失物の回復)
第193条 前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。

第194条 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。

民法の無料テキスト|行政書士

行政書士試験の無料テキスト(民法)

総則

物権

債権

親族

遺言

遺言とは?

遺言とは、被相続人が、死後、自己の財産(相続財産)を、誰に、どれだけ残すのかといった意思表示を言います。

遺言については、民法で厳格に「方式(形式)」が決まっており、この方式に従っていない場合は、法律上の遺言としての効力を持ちません(無効)(民法960条)。

そして、2人以上の者が同一の証書で遺言を記載することはできません(民法975条:共同遺言の禁止)。

また、遺言は相手方の承諾なく、単独行為で効力が発生します。

遺言能力

満15歳以上の者は、単独で遺言をすることができます。たとえ、未成年者・被保佐人・被補助人であっても、単独で遺言できます(民法961条・962条)。

成年被後見人については、「①事理を弁識する能力を一時回復した時に」、「②医師2人以上の立会い」があれば、遺言できます。

遺言の種類

遺言の種類には下記、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。

自筆証書遺言の方式

  • 遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、遺言に押印しなければならない(民法968条1項)。ただし、財産目録を添付する場合には、その目録については、自書しなくてもよいが、その目録の毎葉(各ページ)に署名し、印を押さなければならない(民法968条2項)。
  • 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、「変更した場所を指示」し、これを「変更した旨を付記」して特にこれに「署名」し、かつ、その「変更の場所に押印」しなければ、変更は無効となる(民法968条3項)。

公正証書遺言の方式

公正証書によって遺言をするには、下記の要件を全て満たさなければなりません(民法969条)。

  1. 証人2人以上の立会いがあること。
  2. 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授する(言葉で伝える)こと。
  3. 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
  4. 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、押印すること。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
  5. 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、押印すること。

秘密証書遺言

秘密証書によって遺言をするには、下記の要件を全て満たさなければなりません(民法970条)。

  1. 遺言者が、その証書に署名し、押印すること。
  2. 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
  3. 遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
  4. 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

もし、上記要件を満たさない場合、自筆証書の要件を満たせば、自筆証書遺言としての効力は認められます(民法971条)。

遺言の効力発生時期

遺言は、遺言者の死亡の時に効力が発生します(民法985条1項)。

遺言に停止条件を付した場合、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時に効力が発生します(民法985条2項)。

遺言の撤回

遺言者は、いつでも、その遺言の全部又は一部を撤回することができます(民法1022条)。

「前の遺言」と「後の遺言」とが矛盾するときは、矛盾する部分については、「後の遺言」で「前の遺言」を撤回したものとみなし、「後の遺言」が優先します(民法1023条)。

(遺言の撤回権の放棄の禁止)
遺言者は、上記遺言の撤回権を放棄することができません(民法1026条)。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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参考条文

(遺言の方式)
第960条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

(遺言能力)
第961条 十五歳に達した者は、遺言をすることができる。

第962条 第五条、第九条、第十三条及び第十七条の規定は、遺言については、適用しない。

第963条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

(相続人に関する規定の準用)
第965条 第八百八十六条及び第八百九十一条の規定は、受遺者について準用する。

(被後見人の遺言の制限)
第966条 被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。
2 前項の規定は、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、適用しない。

(普通の方式による遺言の種類)
第967条 遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。

(自筆証書遺言)
第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

(公正証書遺言)
第969条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

(秘密証書遺言)
第970条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
2 第九百六十八条第三項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。

(方式に欠ける秘密証書遺言の効力)
第971条 秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、第九百六十八条に定める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。

(秘密証書遺言の方式の特則)
第972条 口がきけない者が秘密証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を通訳人の通訳により申述し、又は封紙に自書して、第九百七十条第一項第三号の申述に代えなければならない。
2 前項の場合において、遺言者が通訳人の通訳により申述したときは、公証人は、その旨を封紙に記載しなければならない。
3 第一項の場合において、遺言者が封紙に自書したときは、公証人は、その旨を封紙に記載して、第九百七十条第一項第四号に規定する申述の記載に代えなければならない。

(成年被後見人の遺言)
第973条 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
2 遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。

(共同遺言の禁止)
第975条 遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。

(遺言の効力の発生時期)
第985条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
2 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。

(遺言の撤回)
第1022条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第1023条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。

(遺言の撤回権の放棄の禁止)
第1026条 遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。

単純承認・限定承認・相続放棄

相続財産の承継

財産には、プラスの財産(積極財産)とマイナスの財産(消極財産:借金等)があります。

ある人(被相続人)が死亡した場合、相続人は、被相続人の財産を承継するのか、放棄するのかを自由に選択することができます。

具体的には、①単純承認、②限定承認、③相続放棄の3つがあります。

単純承認

単純承認」とは、被相続人の権利・義務を(プラスの財産もマイナスの財産も)無限に(全て)承継するものです(民法920条)。

下記のいずれかに該当する場合、相続人は、単純承認をしたものとみなします(民法921条)。

  1. 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び602条に定める短期賃貸借の期間を超えない賃貸をすることは、処分に含めません。
  2. 相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内の期間(熟慮期間)内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
  3. 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。

限定承認

限定承認」とは、相続によって得たプラスの財産の限度で相続し、その財産で債務を弁済する方法です(民法922条)。

例えば、プラスの財産が1000万円あって、マイナスの財産(借金)が1500万円あった場合、1000万円だけ相続し、1000万円を借金の返済に充てる方法です。

相続人が数人あるときは、共同相続人の全員が共同して限定承認ができます。一人でも単純承認をする者がいたら、限定承認はできません(民法923条)。

相続人は、限定承認をしようとするときは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内の期間(熟慮期間)内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない(民法924条)。

相続放棄

相続放棄とは、相続を放棄することで、「最初から相続人でなかった」とみなされます(民法939条)。

被相続人の負債が多いなど相続することで、相続人の生活が厳しくなってしまう場合に使います。

相続放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければなりません(民法938条)。

理解学習について

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参考条文

(単純承認の効力)
第920条 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

(法定単純承認)
第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

(限定承認)
第922条 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。

(共同相続人の限定承認)
第923条 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。

(限定承認の方式)
第924条 相続人は、限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。

(限定承認をしたときの権利義務)
第925条 相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は、消滅しなかったものとみなす。

(限定承認者による管理)
第926条 限定承認者は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならない。

(相続の放棄の方式)
第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

(相続の放棄の効力)
第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

(相続の放棄をした者による管理)
第940条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
2 第六百四十五条、第六百四十六条、第六百五十条第一項及び第二項並びに第九百十八条第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。

特別受益者の相続分

特別受益者とは?

特別受益者」とは、共同相続人の中で、被相続人(死亡した人)から「遺贈を受けたり」「婚姻や養子縁組のために贈与を受けたり」、「生計の資本として贈与を受けたり」した者を言います。

遺贈や贈与の額が「特別受益」となります。

特別受益者の相続分

上記の通り、特別受益者が他の相続人と同じ相続分を受けられるとすれば不公平になります。なぜなら、被相続人から遺贈や贈与によって別途財産をもらっているからです。

そこで、民法では、共同相続人間の公平を図ることを目的として、特別受益分(贈与や遺贈分)を相続財産に戻した額を相続財産とみなし、各相続人の相続分を算定することにしています(民法903条1項)。

特別受益者の相続分の計算の具体例

例えば、被相続人Aは3000万円の財産の残して死亡した。
Aの相続人には、妻B、長男C、次男Dがいる。
Aは、長男Cに自宅購入資金として600万円を贈与し、
次男Bに自動車の購入資金として400万円を贈与していた。

この場合の各相続人の具体的相続分は下記のとおりとなります。

▼みなし相続財産
3000万円+600万円+400万円=4000万円

▼各相続人の一応の相続分
妻B:4000万円×2分の1=2000万円
長男C:4000万円×2分の1=1000万円
次男D:4000万円×2分の1=1000万円

▼各相続人の具体的な相続分
妻B  2000万円
長男C 1000万円-600万円=400万円
次男D 1000万円-400万円=600万円

※特別受益の額が「一応の相続分」を超過する場合は、その特別受益者は超過分を返還する必要はなく、
この場合、特別受益者は相続分を受け取ることができず、相続分はゼロとなります(民法903条2項)。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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参考条文

(特別受益者の相続分)
第903条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

相続欠格と相続廃除

相続欠格とは?

相続欠格とは、相続人が、下記民法891条の相続欠格事由に当てはまる場合、自動的に相続権がなくなってしまうことを言います。

相続欠格事由

次に掲げる者は、相続人となることができません(民法891条)。

  1. 故意に「被相続人」又は「相続について先順位若しくは同順位にある者」死亡させた、又は死亡させようとしたために、刑に処せられた者
  2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき(まだ子供であるとき)、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
  3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
  4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

相続欠格の効果

何ら手続きなく、相続の資格を失います(相続権がなくなる)。

欠格者の子は代襲相続が可能なので注意しましょう!

相続廃除とは?

「相続人の廃除」とは、①相続人から虐待を受けたり、②重大な侮辱を受けたりしたとき、または③その他の著しい非行が相続人にあったときに、被相続人が家庭裁判所に請求して虐待などした相続人の地位を奪うことをいいます(民法892条)。

遺言による廃除

遺言によって推定相続人の廃除することも可能で、この場合、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければなりません(民法893条本文)。この場合、その推定相続人の廃除の効力は、被相続人の死亡の時にさかのぼって生じます(民法893条ただし書)。

廃除の取消し

また、廃除の請求して、廃除された相続人がいたとして、被相続人が、やっぱり廃除しなくてもいいや!と思うこともあります。

このような場合、被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができます(民法894条)。

相続廃除の効果

廃除の審判が確定したり、調停が成立すると、その相続人は、相続権を失います。

廃除された者の子は代襲相続が可能なので注意しましょう!

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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参考条文

(相続人の欠格事由)
第891条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

(推定相続人の廃除)
第892条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

(遺言による推定相続人の廃除)
第893条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

(推定相続人の廃除の取消し)
第894条 被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。

(推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理)
第895条 推定相続人の廃除又はその取消しの請求があった後その審判が確定する前に相続が開始したときは、家庭裁判所は、親族、利害関係人又は検察官の請求によって、遺産の管理について必要な処分を命ずることができる。推定相続人の廃除の遺言があったときも、同様とする。
2 第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が遺産の管理人を選任した場合について準用する。

扶養

扶養とは?

「扶養」とは、親族から経済的援助を受けること・親族に対して経済支援をすることを言います。

扶養義務者

扶養義務者とは、扶養をする義務のある者(援助する側)を指します(民法878条)。

扶養権利者とは、扶養を受ける権利のある者(援助を受ける側)を指します(民法878条)。

扶養義務の範囲

直系血族」及び「兄弟姉妹」は、互いに扶養をする義務があります(民法877条1項)。

また、家庭裁判所は、特別の事情があるときは、上記以外に、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができます(民法877条2項)。

直系血族や親族については個別指導で解説します。

扶養の順位

  • 1人の扶養権利者(お金のない人)に対し、扶養義務者(お金のある人)が数人ある場合、まず誰が扶養するべきか?
  • 数人の扶養権利者(お金のない人)に対し、扶養義務者(お金のある人)の資力がその全員を扶養するに足りない場合に、まず誰を扶養するべきか?

上記2つについては優先順位があります(民法878条)。

  1. 当事者間の協議で決める
  2. 協議が整わないとき・協議をすることができないときは、家庭裁判所が決める

理解学習について

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参考条文

(扶養義務者)
第877条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

(扶養の順位)
第878条 扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するのに足りないときの扶養を受けるべき者の順序についても、同様とする。

(扶養の程度又は方法)
第879条 扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。

(扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し)
第880条 扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。

(扶養請求権の処分の禁止)
第881条 扶養を受ける権利は、処分することができない。

親権

親権とは?

「親権」とは、未成年の子どもの利益のために、監護・教育を行ったり、子の財産を管理したりする権利や義務です。

親権者

親権者とは、親権を持つ人のことを指し、父母の婚姻中は父母の双方が親権者とされており、父母が共同して親権を行使することとされています(民法818条3項)。

離婚する場合の親権者

父母が協議によって離婚をする場合には、父母のうち一方を親権者として定めなければなりません(民法819条1項)。

裁判上の離婚の場合には、裁判所が父母の一方を親権者と定めます(民法819条2項)。

親権の内容(身上監護権・財産管理権)

身上監護権(しんじょうかんごけん)

身上監護権とは、子の利益のために「子の監護及び教育」をすることを言い、親権者は、身上監護権の権利や義務を負います(民法820条1項)。

簡単に言えば、しつけや教育を行うことです。
※ 「しつけ」のことを民法上、「懲戒」と言います。

その他にも下記のようなことが身上監護権に含まれます。

  • 子は、親権を行う者が指定した場所に、住まなければならない(民法821条:居所の指定)。
  • 子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない(民法823条:職業の許可)。

財産管理権

財産管理権とは、親権者が子の法定代理人として財産上の行為についての代理権を言い、親権者は、財産管理権を有します(民法824条本文)。

簡単に言えば、子どものお金を管理したり、子どもの代わりに契約をしたりすることです。

ただし、「その子の行為を目的とする債務」を生ずべき場合には、本人の同意が必要です(民法824条ただし書)。

具体例は個別指導で解説します。

財産管理権と利益相反行為

「親権を行う父又は母」と「その子」との利益が相反する行為を「親権者である父又は母」が行った場合、親権者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません(民法826条1項)。つまり、勝手に、親が利益相反行為を行うことはできないということです。

親権者が子を代理して、利益相反行為をした場合、無権代理行為となる。

また、数人の子の親権者が、「一人の子」と「他の子」との利益が相反する行為をする場合、親権者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません(民法826条2項)。

財産管理における注意義務

親権者は、「自己のためにするのと同一の注意」をもって、その管理権を行わなければなりません(民法827条)。

親権の喪失

「①父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるとき」その他「②父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するとき」、「子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官」は家庭裁判所に対して親権の喪失の請求をすることができ、その請求に対して、家庭裁判所は、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができます(民法834条本文)。

ただし、2年以内に①②が消滅する見込みがあるときは、親権喪失の審判をすることができません(民法834条ただし書)。

管理権喪失

「父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するとき」は、家庭裁判所に対して「子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官」は管理権喪失の請求ができ、その請求に対して、家庭裁判所は、その父又は母について、管理権喪失の審判をすることができます(民法835条)。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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参考条文

(親権者)
第818条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

(離婚又は認知の場合の親権者)
第819条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
4 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
5 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

(監護及び教育の権利義務)
第820条 親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

(居所の指定)
第821条 子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。

(懲戒)
第822条 親権を行う者は、第八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。

(職業の許可)
第823条 子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。
2 親権を行う者は、第六条第二項の場合には、前項の許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

(財産の管理及び代表)
第824条 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

(父母の一方が共同の名義でした行為の効力)
第825条 父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子に代わって法律行為をし又は子がこれをすることに同意したときは、その行為は、他の一方の意思に反したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

(利益相反行為)
第826条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

(財産の管理における注意義務)
第827条 親権を行う者は、自己のためにするのと同一の注意をもって、その管理権を行わなければならない。

(財産の管理の計算)
第828条 子が成年に達したときは、親権を行った者は、遅滞なくその管理の計算をしなければならない。ただし、その子の養育及び財産の管理の費用は、その子の財産の収益と相殺したものとみなす。

第829条 前条ただし書の規定は、無償で子に財産を与える第三者が反対の意思を表示したときは、その財産については、これを適用しない。

(第三者が無償で子に与えた財産の管理)
第830条 無償で子に財産を与える第三者が、親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は、父又は母の管理に属しないものとする。
2 前項の財産につき父母が共に管理権を有しない場合において、第三者が管理者を指定しなかったときは、家庭裁判所は、子、その親族又は検察官の請求によって、その管理者を選任する。
3 第三者が管理者を指定したときであっても、その管理者の権限が消滅し、又はこれを改任する必要がある場合において、第三者が更に管理者を指定しないときも、前項と同様とする。
4 第二十七条から第二十九条までの規定は、前二項の場合について準用する。

(委任の規定の準用)
第831条 第六百五十四条及び第六百五十五条の規定は、親権を行う者が子の財産を管理する場合及び前条の場合について準用する。

(財産の管理について生じた親子間の債権の消滅時効)
第832条 親権を行った者とその子との間に財産の管理について生じた債権は、その管理権が消滅した時から五年間これを行使しないときは、時効によって消滅する。
2 子がまだ成年に達しない間に管理権が消滅した場合において子に法定代理人がないときは、前項の期間は、その子が成年に達し、又は後任の法定代理人が就職した時から起算する。

(子に代わる親権の行使)
第833条 親権を行う者は、その親権に服する子に代わって親権を行う。

(親権喪失の審判)
第834条 父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。

(親権停止の審判)
第834条の2 父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。
2 家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。

(管理権喪失の審判)
第835条 父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、管理権喪失の審判をすることができる。

(親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判の取消し)
第836条 第八百三十四条本文、第八百三十四条の二第一項又は前条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人又はその親族の請求によって、それぞれ親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判を取り消すことができる。

(親権又は管理権の辞任及び回復)
第837条 親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。
2 前項の事由が消滅したときは、父又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復することができる。