国とA市との間の紛争に関する次の記述のうち、法令または判例に照らし、正しいものはどれか。
- A市長は、自治事務に関する国の関与に不服があるときは、地方裁判所に対し、当該関与を行った国の行政庁を被告として、その取消しを求める抗告訴訟を提起することができる。
- A市の法定受託事務に関する国の関与が違法であると認めるときは、国地方係争処理委員会は、当該関与を行った国の行政庁に対して、理由を付し、期間を示した上で、必要な措置を講ずべきことを勧告することになる。
- 国の所有地内にあるA市の物件の撤去を国が求める場合、担当大臣は、A市長に対して地方自治法所定の国の関与としての代執行の手続をとることになる。
- A市情報公開条例に基づき、A市長が国の建築物の建築確認文書について公開する旨の決定をした場合、当該決定について不服を有する国がこの決定に対して取消訴訟を提起しても、当該訴訟は法律上の争訟に該当しないとして却下されることになる。
- A市に対する国の補助金交付の決定について、それが少額であるとしてA市が不服をもっている場合、A市が救済を求める際の訴訟上の手段としては、地方自治法に機関訴訟が法定されている。
【答え】:2【解説】
1.A市長は、自治事務に関する国の関与に不服があるときは、地方裁判所に対し、当該関与を行った国の行政庁を被告として、その取消しを求める抗告訴訟を提起することができる。
1・・・誤り
国の関与に関する審査の申出をした「普通地方公共団体の長その他の執行機関」は、高等裁判所に対し、当該審査の申出の相手方となった国の行政庁を被告として、訴えをもって当該審査の申出に係る違法な国の関与の取消し又は当該審査の申出に係る国の不作為の違法の確認を求めること(機関訴訟)ができます(地方自治法251条の5の1項)。
つまり、「地方裁判所」ではなく「高等裁判所」が正しいです。
また、「抗告訴訟」ではなく「機関訴訟」が正しいです。
国の関与に関する審査の申出をした「普通地方公共団体の長その他の執行機関」は、高等裁判所に対し、当該審査の申出の相手方となった国の行政庁を被告として、訴えをもって当該審査の申出に係る違法な国の関与の取消し又は当該審査の申出に係る国の不作為の違法の確認を求めること(機関訴訟)ができます(地方自治法251条の5の1項)。
つまり、「地方裁判所」ではなく「高等裁判所」が正しいです。
また、「抗告訴訟」ではなく「機関訴訟」が正しいです。
2.A市の法定受託事務に関する国の関与が違法であると認めるときは、国地方係争処理委員会は、当該関与を行った国の行政庁に対して、理由を付し、期間を示した上で、必要な措置を講ずべきことを勧告することになる。
2・・・正しい
国地方係争処理委員会は、法定受託事務に関する国の関与が違法であると認めるときは、国の行政庁に対し、理由を付し、かつ、期間を示して、必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、勧告の内容を通知し、かつ、これを公表しなければなりません(地方自治法250条の14の2項)。
よって、本肢は正しいです。
国地方係争処理委員会は、法定受託事務に関する国の関与が違法であると認めるときは、国の行政庁に対し、理由を付し、かつ、期間を示して、必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、勧告の内容を通知し、かつ、これを公表しなければなりません(地方自治法250条の14の2項)。
よって、本肢は正しいです。
3.国の所有地内にあるA市の物件の撤去を国が求める場合、担当大臣は、A市長に対して地方自治法所定の国の関与としての代執行の手続をとることになる。
3・・・誤り
まず、代執行の対象となるのは、「法定受託事務」です。
法定受託事務とは、そもそも「国が本来果たすべき役割に係るもの(国がすべき事務)」です。
「A市の物件の撤去」については、国がすべき事務ではないので、代執行手続きはできません。
よって、誤りです。
まず、代執行の対象となるのは、「法定受託事務」です。
法定受託事務とは、そもそも「国が本来果たすべき役割に係るもの(国がすべき事務)」です。
「A市の物件の撤去」については、国がすべき事務ではないので、代執行手続きはできません。
よって、誤りです。
4.A市情報公開条例に基づき、A市長が国の建築物の建築確認文書について公開する旨の決定をした場合、当該決定について不服を有する国がこの決定に対して取消訴訟を提起しても、当該訴訟は法律上の争訟に該当しないとして却下されることになる。
4・・・誤り
那覇市が、市の情報公開条例に基づいて、自衛隊対潜水艦戦作戦センター庁舎の建築計画書付属資料を市民団体の請求に対して開示決定をしたので、「国防上の支障が生じる」として国が当該開示決定の取消訴訟を提起したという事案で
判例(最判平13.7.13)によると、「公開されることで、本件建物の内部構造などが明らかになり、警備上の支障が生じるほか、外部からの攻撃に対応する機能の減殺により建物の安全性が低減するなど、本件建物の所有者として有する固有の利益が侵害されるため「法律上の争訟に当たる」としました。
よって、「法律上の争訟に該当しない」というのは誤りです。
那覇市が、市の情報公開条例に基づいて、自衛隊対潜水艦戦作戦センター庁舎の建築計画書付属資料を市民団体の請求に対して開示決定をしたので、「国防上の支障が生じる」として国が当該開示決定の取消訴訟を提起したという事案で
判例(最判平13.7.13)によると、「公開されることで、本件建物の内部構造などが明らかになり、警備上の支障が生じるほか、外部からの攻撃に対応する機能の減殺により建物の安全性が低減するなど、本件建物の所有者として有する固有の利益が侵害されるため「法律上の争訟に当たる」としました。
よって、「法律上の争訟に該当しない」というのは誤りです。
5.A市に対する国の補助金交付の決定について、それが少額であるとしてA市が不服をもっている場合、A市が救済を求める際の訴訟上の手段としては、地方自治法に機関訴訟が法定されている。
5・・・誤り
補助金等の交付の決定に対して不服のある地方公共団体は、各省各庁の長に対して不服を申し出ることができます(補助金適正化法25条)。
機関訴訟できる旨の規定はないので、本肢は誤りです。
本肢の場合、各省各庁の長に対して不服申し立てができます。
補助金等の交付の決定に対して不服のある地方公共団体は、各省各庁の長に対して不服を申し出ることができます(補助金適正化法25条)。
機関訴訟できる旨の規定はないので、本肢は誤りです。
本肢の場合、各省各庁の長に対して不服申し立てができます。
平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 内閣 | 問33 | 民法・債権 |
問4 | 内閣 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 財政 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 法の下の平等 | 問36 | 商法 |
問7 | 社会権 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 行政法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・情報通信 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・個人情報保護 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |