遺言に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア.重度の認知症により成年被後見人となった高齢者は、事理弁識能力を一時的に回復した場合であっても、後見開始の審判が取り消されない限り、遺言をすることができない。
イ.自筆証書遺言の作成に際し、カーボン紙を用いて複写の方法で作成が行われた場合であっても、自書の要件を満たし、当該遺言は有効である。
ウ.夫婦は、同一の証書によって遺言をすることはできない。
エ.遺言において受遺者として指定された者が、遺言者の死亡以前に死亡した場合には、受遺者の相続人が受遺者の地位を承継する。
オ.遺言は、遺言者が死亡して効力を生じるまでは、いつでも撤回することができるが、公正証書遺言を撤回するには公正証書遺言により、自筆証書遺言を撤回するには自筆証書遺言により行わなければならない。
- ア・エ
- ア・オ
- イ・ウ
- イ・エ
- ウ・オ
【答え】:3(イ・ウが妥当)
【解説】
ア・・・妥当でない
成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師2人以上の立会いがなければなりません(民法973条1項)。しかし、本肢のように「後見開始の審判が取り消されない限り、遺言をすることができない」という定めはありません。よって、妥当ではありません。
イ・・・妥当
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印(ハンコ)を押さなければなりません(民法968条1項)。そして、カーボン複写の方法によって記載された自筆の遺言であっても「自書」の要件を満たします(最判平5.10.19)。
ウ・・・妥当
遺言について、2人以上の者が同一の証書ですることはできません(民法975条)。つまり、1つの証書(遺言書)に夫婦二人が遺言を記載することはできないということです。夫婦であっても、別々の証書に遺言しなければなりません。
エ・・・妥当でない
遺贈について、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、遺贈の効力は生じません(民法994条1項)。
オ・・・妥当でない
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができます(民法1022条)。そして、「公正証書遺言を撤回するには公正証書遺言により、自筆証書遺言を撤回するには自筆証書遺言により行わなければならない」という規定はないので、妥当ではありません。遺言の方式に従ってさえいれば、後の遺言が優先し、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなします(民法1023条1項)。
(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第千二十三条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。)
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
令和5年(2023年)過去問
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法・多肢選択 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法・多肢選択 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法・多肢選択 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
問25 | 行政事件訴訟法 | 問55 | 基礎知識 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識 |
問27 | 民法 | 問57 | 基礎知識 |
問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |