わが国の議会の運営に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- かつて国会では、官僚が政府委員として大臣の代わりに答弁するなど、政治家の主体性が問われる事態が見られたため、1990年代末に、政府委員制度が廃止されるとともに、いわゆるクエスチョン・タイム制が導入されたが、この制度では、野党第一党の党首以外には与党党首(首相)との討論の機会がない。
- 国会における立法については、これまでは官僚が法案を作成し、内閣提出法案として提出されることが多かったが、1990年代からは議員提出法案が増加傾向にあり、特に法案成立率では例年、内閣提出法案を上回るようになっている。
- 議員が所属する政党の決定に拘束される党議拘束は、法律上、参議院の審議には及ばないと定められているにもかかわらず、実際には党議に反する行動は困難であるため、議員の自由な発言や議論を阻害する場合があることが指摘されている。
- 自治体議会では、審議の活性化を図るため、近年、本会議における質疑を一問一答方式に変える議会が増えており、議会基本条例を制定して、首長や執行機関の職員に、議員の質問に対して反問する権利を認める議会が現れている。
- 自治体では一種の大統領制がとられ、原則として首長が予算案以外の議案を議会に提出できないことから、首長が事務執行等のため条例制定などを必要とする場合は、便宜上与党の議員を通じて提案している。
【答え】:4
【解説】
1.かつて国会では、官僚が政府委員として大臣の代わりに答弁するなど、政治家の主体性が問われる事態が見られたため、1990年代末に、政府委員制度が廃止されるとともに、いわゆるクエスチョン・タイム制が導入されたが、この制度では、野党第一党の党首以外には与党党首(首相)との討論の機会がない。
1・・・誤り
本肢は、
「野党第一党の党首以外」にも、与党党首(首相)との討論の機会はあるので誤りです。政府委員とは、議会において議案の説明などにあたり、大臣を補佐するために内閣が任命する政府の職員のことです。
そして、政府委員は議員の求めに応じ,大臣に代わって所管事項について答弁し,説明を行なうのが、政府委員制度です。この政府委員制度については、大臣が政策について勉強しないことにつながることから2001年に廃止されました。その一方で、イギリスのクエスチョンタイムをもとに日本では、「党首討論」が導入されました。
この制度は、政党の党首同士が討論をすることです。
討論できるのは、野党第一党だけでなく、その他の党首にもあります。
本肢は、
「野党第一党の党首以外」にも、与党党首(首相)との討論の機会はあるので誤りです。政府委員とは、議会において議案の説明などにあたり、大臣を補佐するために内閣が任命する政府の職員のことです。
そして、政府委員は議員の求めに応じ,大臣に代わって所管事項について答弁し,説明を行なうのが、政府委員制度です。この政府委員制度については、大臣が政策について勉強しないことにつながることから2001年に廃止されました。その一方で、イギリスのクエスチョンタイムをもとに日本では、「党首討論」が導入されました。
この制度は、政党の党首同士が討論をすることです。
討論できるのは、野党第一党だけでなく、その他の党首にもあります。
2.国会における立法については、これまでは官僚が法案を作成し、内閣提出法案として提出されることが多かったが、1990年代からは議員提出法案が増加傾向にあり、特に法案成立率では例年、内閣提出法案を上回るようになっている。
2・・・誤り
法案成立率は、内閣提出法案が高く、議員提出法案は低いです。
よって、誤りです。例えば、平成30年1月~7月の通常国会(第196回)では、
法案成立率は、内閣提出法案が高く、議員提出法案は低いです。
よって、誤りです。例えば、平成30年1月~7月の通常国会(第196回)では、
- 内閣提出法案の成立率:92%
- 議員提出法案の成立率:28%
となっています。
3.議員が所属する政党の決定に拘束される党議拘束は、法律上、参議院の審議には及ばないと定められているにもかかわらず、実際には党議に反する行動は困難であるため、議員の自由な発言や議論を阻害する場合があることが指摘されている。
3・・・誤り
党議拘束とは、議案の賛否について政党、会派の決めた方針に議員が拘束されることを言います。
ただ、これは、法律で定められているのでなく、政党内部のルールです。
よって、「法律上、参議院の審議には及ばないと定められている」は誤りです。実際、重要案件でこれに反した行動をとると党内懲罰の対象となったりするケースもあります。
党議拘束とは、議案の賛否について政党、会派の決めた方針に議員が拘束されることを言います。
ただ、これは、法律で定められているのでなく、政党内部のルールです。
よって、「法律上、参議院の審議には及ばないと定められている」は誤りです。実際、重要案件でこれに反した行動をとると党内懲罰の対象となったりするケースもあります。
4.自治体議会では、審議の活性化を図るため、近年、本会議における質疑を一問一答方式に変える議会が増えており、議会基本条例を制定して、首長や執行機関の職員に、議員の質問に対して反問する権利を認める議会が現れている。
4・・・正しい
本肢は正しいです。
例えば、質問1.2.3.4と4つの質問あった場合に、
本肢は正しいです。
例えば、質問1.2.3.4と4つの質問あった場合に、
- 質問1→回答1
質問2→回答2
と行っていくのが一問一答方式です。 - 質問1.2.3.4→回答1.2.3.4
と行っていくのが一括質問一括答弁方式です。
一問一答方式の方が、議会での議論の活性化と市民に分かりやすいので、採用している自治体も増えてきています。
5.自治体では一種の大統領制がとられ、原則として首長が予算案以外の議案を議会に提出できないことから、首長が事務執行等のため条例制定などを必要とする場合は、便宜上与党の議員を通じて提案している。
5・・・誤り
地方自治体の首長(知事や市長)は、住民による選挙(直接選挙)で選びます。したがって、一種の大統領制が採られています。よって、前半は正しいです。そして、普通地方公共団体の長(知事や市長)は、議会の議決を経べき事件につきその議案を提出することができます(地方自治法149条1号)。
よって、後半部分が誤りです。
地方自治体の首長(知事や市長)は、住民による選挙(直接選挙)で選びます。したがって、一種の大統領制が採られています。よって、前半は正しいです。そして、普通地方公共団体の長(知事や市長)は、議会の議決を経べき事件につきその議案を提出することができます(地方自治法149条1号)。
よって、後半部分が誤りです。
平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 内閣 | 問33 | 民法・債権 |
問4 | 内閣 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 財政 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 法の下の平等 | 問36 | 商法 |
問7 | 社会権 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 行政法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・情報通信 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・個人情報保護 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |