財政に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 国会が議決した予算の公布は、法律、政令、条約などの公布と同様に、憲法上、天皇の国事行為とされている。
- 国会による予算の修正をめぐっては、内閣の予算提出権を侵すので予算を増額する修正は許されないとする見解もあるが、現行法には、予算の増額修正を予想した規定が置かれている。
- 予算が成立したにもかかわらず、予算が予定する支出の根拠となる法律が制定されていないような場合、法律が可決されるまでの間、内閣は暫定的に予算を執行することができる。
- 皇室の費用はすべて、予算に計上して国会の議決を経なければならないが、皇室が財産を譲り受けたり、賜与したりするような場合には、国会の議決に基く必要はない。
- 国の収入支出の決算は、内閣が、毎年そのすべてについて国会の承認の議決を得たうえで、会計検査院に提出し、その審査を受けなければならない。
【答え】:2
【解説】
1・・・妥当でない
「憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること」は天皇の国事行為とされています(憲法7条一号)。この中に「国会が議決した予算の公布」は含まれていません。そのほか「国会が議決した予算の公布が天皇の国事行為である」旨の規定はないため、本肢は妥当ではありません。
2・・・妥当
国会法57条の3には「各議院又は各議院の委員会は、予算総額の増額修正、委員会の提出若しくは議員の発議にかかる予算を伴う法律案又は法律案に対する修正で、予算の増額を伴うもの若しくは予算を伴うこととなるものについては、内閣に対して、意見を述べる機会を与えなければならない。」と規定しています。つまり、この条文から予算の増額修正を予想した規定が置かれていることが分かります。また、「国会による予算の修正をめぐっては、内閣の予算提出権を侵すので予算を増額する修正は許されないとする見解もある」という記述も妥当です。
3・・・妥当でない
「予算が成立したにもかかわらず、予算が予定する支出の根拠となる法律が制定されていないような場合でも、法律が可決されるまでの間、内閣は暫定的に予算を執行することができる」わけではありません。よって妥当ではありません。予算が成立したとしても、その予算の支出について根拠となる法律が制定されていない場合、内閣は予算を執行することができません。
【理由】 なぜなら、予算の支出は法的な根拠がなければ行うことができないからです。法律がなければ、予算を執行するための具体的な手続きや条件が定められていないため、支出の正当性や適法性が保証されません。 したがって、内閣は予算案が成立する際に、予算の支出に関する法律を同時に制定する必要があります。この法律には、予算の使途や条件、支出の範囲などが明確に定められます。
【具体例】 例えば、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」です。補助金について予算が成立しても、執行するための法律がなければ執行できません。そのため、上記のような法律を作って、予算が正しくかつ適法に執行されるようにします。
4・・・妥当でない
【前半部分】 憲法88条には「すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。」と規定しています。よって、前半部分は妥当です。
【後半部分】 憲法8条には「皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。」と規定しています。そのため、皇室が財産を譲り受けたり、賜与したりするような場合にも、国会の議決に基く必要があります。よって、後半部分が妥当ではないので、本肢は妥当ではありません。
5・・・妥当でない
憲法90条には「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。」と規定しています。つまり、順番としては「会計検査院が検査」→「内閣が国会に報告・提出」です。本肢は「国会の承認の議決」→「会計検査院に提出し、審査」と順番になっています。順番が違うので妥当ではありません。なお、90条には「国会に提出しなければならない」とまでしか規定していませんが、毎年度の決算は、内閣から衆議院、参議院の両院に同時に提出され、それぞれの院で審査されます。そのため、「両院での審査」も必要となります。
令和5年(2023年)過去問
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
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問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法・多肢選択 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法・多肢選択 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法・多肢選択 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
問25 | 行政事件訴訟法 | 問55 | 基礎知識 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識 |
問27 | 民法 | 問57 | 基礎知識 |
問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |