内閣の「責任」について書かれた次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 日本国憲法における内閣は、衆議院に対してのみ「責任」を負うのであり、参議院に対しては「責任」を負っていない。
- 日本国憲法は内閣の「連帯責任」を強調しており、特定の国務大臣に対して単独の「責任」を負わせることは認めていない。
- 明治憲法では、君主に対する内閣の「連帯責任」のみが規定されており、衆議院に対する「責任」は想定されていなかった。
- 内閣の「責任」のとり方は任意かつ多様であるべきなので、日本国憲法の下で総辞職が必要的に要求されることはない。
- 大臣に対する弾劾制度を認めない日本国憲法においては、内閣に対して問われる「責任」は、政治責任であって狭義の法的責任ではない。
【答え】:5
【解説】
1.日本国憲法における内閣は、衆議院に対してのみ「責任」を負うのであり、参議院に対しては「責任」を負っていない。
2.日本国憲法は内閣の「連帯責任」を強調しており、特定の国務大臣に対して単独の「責任」を負わせることは認めていない。
2・・・誤り
選択肢1の通り、内閣は国会に対して連帯責任を負っていることを憲法において強調しています。
ただし、「特定の国務大臣に対して単独の責任を負わせることは認めていない」とは規定されていません。
実際、特定の大臣のみ、不適切発言により政治責任を取ることもあります。
選択肢1の通り、内閣は国会に対して連帯責任を負っていることを憲法において強調しています。
ただし、「特定の国務大臣に対して単独の責任を負わせることは認めていない」とは規定されていません。
実際、特定の大臣のみ、不適切発言により政治責任を取ることもあります。
3.明治憲法では、君主に対する内閣の「連帯責任」のみが規定されており、衆議院に対する「責任」は想定されていなかった。
3・・・誤り
明治憲法(大日本帝国憲法)では、「国務各大臣が、天皇に対して単独でその責任を負う(明治憲法第55条)」としていました。
「連帯責任」ではなく「各大臣が単独で責任」を負います。衆議院に対する「責任」は想定されていなかった点については正しいです。
明治憲法(大日本帝国憲法)では、「国務各大臣が、天皇に対して単独でその責任を負う(明治憲法第55条)」としていました。
「連帯責任」ではなく「各大臣が単独で責任」を負います。衆議院に対する「責任」は想定されていなかった点については正しいです。
4.内閣の「責任」のとり方は任意かつ多様であるべきなので、日本国憲法の下で総辞職が必要的に要求されることはない。
4・・・誤り
①内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければなりません(憲法69条)また、
②内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければなりません(憲法70条)。①で解散された場合、その後衆議院の総選挙となり、選挙後初めて国会が召集された場合に内閣総辞職となります。つまり、内閣不信任決議が可決されると、内閣は責任を取るのですが、①の場合も②の場合もいずれにしても必ず総辞職をしなければなりません。
①内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければなりません(憲法69条)また、
②内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければなりません(憲法70条)。①で解散された場合、その後衆議院の総選挙となり、選挙後初めて国会が召集された場合に内閣総辞職となります。つまり、内閣不信任決議が可決されると、内閣は責任を取るのですが、①の場合も②の場合もいずれにしても必ず総辞職をしなければなりません。
よって、「日本国憲法の下で総辞職が必要的に要求されることはない」は誤りです。
5.大臣に対する弾劾制度を認めない日本国憲法においては、内閣に対して問われる「責任」は、政治責任であって狭義の法的責任ではない。
5・・・正しい
国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設けます(憲法64条)。
つまり、弾劾制度は「裁判官」に対する制度です。
日本国憲法では、大臣に対する弾劾制度を認めていません。
また、内閣に対して問われる「責任」は、政治責任であると解されています。
国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設けます(憲法64条)。
つまり、弾劾制度は「裁判官」に対する制度です。
日本国憲法では、大臣に対する弾劾制度を認めていません。
また、内閣に対して問われる「責任」は、政治責任であると解されています。
平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 内閣 | 問33 | 民法・債権 |
問4 | 内閣 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 財政 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 法の下の平等 | 問36 | 商法 |
問7 | 社会権 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 行政法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・情報通信 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・個人情報保護 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |