平成24年・2012|問20|国家賠償法

国家賠償制度に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。

  1. 国家賠償法4条に定める「民法の規定」には失火責任法(※)も含まれるが、消防署職員の消火活動上の失火による国家賠償責任については、消防署職員が消火活動の専門家であることから、失火責任法の適用はない。
  2. 国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動が含まれるが、課外クラブ活動中に教師が生徒に対して行う監視・指導は「公権力の行使」には当たらない。
  3. 税務署長のした所得税の更正処分が、税務署長が所得金額を過大に認定したとして判決によって取り消された場合、当該更正処分は直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受ける。
  4. 警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が事故を起こして第三者に損害を与えた場合、損害の直接の原因が逃走車両の運転手にあるとしても、当該追跡行為は国家賠償法1条1項の適用上違法となり得る。
  5. 同一行政主体に属する数人の公務員による一連の職務上の行為の過程で他人に損害が生じた場合、被害者が国家賠償を請求するためには、損害の直接の原因となった公務員の違法行為を特定する必要がある。

(注)※ 失火ノ責任ニ関スル法律

>解答と解説はこちら


【答え】:4【解説】

1.国家賠償法4条に定める「民法の規定」には失火責任法も含まれるが、消防署職員の消火活動上の失火による国家賠償責任については、消防署職員が消火活動の専門家であることから、失火責任法の適用はない。
1・・・誤り
判例の要旨によると、
公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、失火の責任に関する法律が適用される。」
としています。
よって、本肢は誤りです。

2.国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動が含まれるが、課外クラブ活動中に教師が生徒に対して行う監視・指導は「公権力の行使」には当たらない。
2・・・誤り
判例によると、
「町立中学校の生徒が、放課後、体育館において、課外のクラブ活動中の運動部員の練習の妨げとなる行為をしたとして同部員から顔面を殴打されたなど判示のような事情のもとで生じた喧嘩により左眼を失明した場合に、同部顧問の教諭が右クラブ活動に立ち会つていなかつたとしても、右事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のない限り、右失明につき同教諭に過失があるとはいえない。 」
と判示しています。
上記内容でいうと、特段の事情がない場合、教諭に過失がないとして、国家賠償責任は負わないことになりますが
逆に、特段の事情があれば、教諭に過失があるとして、国家賠償責任を負うことになります。したがって、公立学校における教師の教育活動が含まれるが、課外クラブ活動中に教師が生徒に対して行う監視・指導も、国家賠償法上の「公権力の行使」に該当するということです。

3.税務署長のした所得税の更正処分が、税務署長が所得金額を過大に認定したとして判決によって取り消された場合、当該更正処分は直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受ける。
3・・・誤り
判例によると、
税務署長Yのする所得税の更正は、所得金額を過大に認定していたとしても、そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り、違法の評価を受けるものと解するのが相当である。」
と判示しています。よって、税務署長のした所得税の更正処分が、税務署長が所得金額を過大に認定したとして判決によって取り消された場合、当該更正処分は直ちに国家賠償法1条1項にいう違法とはなりません

したがって、誤りです。

4.警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が事故を起こして第三者に損害を与えた場合、損害の直接の原因が逃走車両の運転手にあるとしても、当該追跡行為は国家賠償法1条1項の適用上違法となり得る。
4・・・正しい
判例によると

  1. 追跡が現行犯逮捕、職務質問等の職務の目的を遂行するうえで不必要であるか、又は
  2. 逃走車両の走行の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無・内容に照らして追跡の開始、継続若しくは方法が不相当である場合、

違法となる、としています。

つまり、上記の1もしくは2の場合、違法となる場合もあるので、正しいです。

理解できない方は「理解の仕方」の勉強が必要です。
「理解の仕方」の解説は行書塾で行っています!

5.同一行政主体に属する数人の公務員による一連の職務上の行為の過程で他人に損害が生じた場合、被害者が国家賠償を請求するためには、損害の直接の原因となった公務員の違法行為を特定する必要がある。
5・・・誤り
判例によると、
「国又は公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程において他人に被害を生じさせた場合において、それが具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、右の一連の行為のうちのいずれかに行為者の故意又は過失による違法行為があったのでなければ右の被害が生ずることはなかったであろうと認められ、かつ、それがどの行為であるにせよこれによる被害につき行為者の属する国又は公共団体が法律上賠償の責任を負うべき関係が存在するときは、国又は公共団体は、加害行為不特定の故をもって国家賠償法又は民法上の損害賠償責任を免れることができないと解するのが相当である。」
と判示しています。

つまり、損害の直接の原因となった公務員の違法行為を特定できなくても、国家賠償請求はできます。

したがって、本肢は誤りです。


平成24年度(2012年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 内閣 問33 民法・債権
問4 内閣 問34 民法:債権
問5 財政 問35 民法:親族
問6 法の下の平等 問36 商法
問7 社会権 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 一般知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 一般知識・政治
問19 国家賠償法 問49 一般知識・社会
問20 国家賠償法 問50 一般知識・経済
問21 地方自治法 問51 一般知識・社会
問22 地方自治法 問52 一般知識・社会
問23 地方自治法 問53 一般知識・社会
問24 行政法 問54 一般知識・個人情報保護
問25 行政法 問55 一般知識・個人情報保護
問26 行政法 問56 一般知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 一般知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

SNSでもご購読できます。