テキスト

最判昭54.12.25:輸入禁止の製品に該当する旨の通知

論点

  1. 輸入禁制品の該当通知に処分性が認められるか?

事案

輸入業者である株式会社Xは、女性ヌード写真集392冊を輸入するために、税関長Yに対して、当該書籍の輸入申告をした。

しかし、Yは、Xに対して、関税定率法21条1項3号の輸入禁制品(輸入禁止の製品)に該当する旨の通知をした。

そこで、Xが当該通知について異議を申し出たものの、Yは棄却し、Xは、当該通知、および棄却決定の取消訴訟を提起した。

判決

輸入禁制品の該当通知に処分性が認められるか?

認められる

関税定率法の規定による通知が、行政庁のいわゆる観念の通知とみるべきものであることは、原判決の判示するとおりである。

そして、輸入禁制品について税関長がその輸入を許可するものでないことは、明らかである。

そして、税関長Yにおいて、輸入申告者に対し、通知をした場合においては、当該貨物につき輸入の許可を得ることができなくなったことが明らかとなったものということができる。

また、輸入申告者Xは輸入の許可を受けないで貨物を輸入することを法律上禁止されているのであるから、輸入申告者は、当該貨物を適法に輸入する道を閉ざされるに至ったものといわなければならない。

そして、輸入申告者Xの被るこのような制約は、関税定率法の規定による通知によって生ずるに至った法律上の効果である、とみるのが相当である

そうすると、Yの関税定率法による通知は、その法律上の性質においてYの判断の結果の表明、すなわち観念の通知であるとはいうものの、もともと法律の規定に準拠してされたものであり、かつ、これにより上告人に対し申告にかかる本件貨物を適法に輸入することができなくなるという法律上の効果を及ぼすものというべきであるから、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当するもの、と解するのが相当である。

判決文の全文はこちら>>

最大判昭53.10.4:マクリーン事件

論点

  1. 外国人の在留期間の更新について法務大臣の裁量権が認められるか?
  2. 外国人にも人権の保障が及ぶか?
  3. 外国人にも政治活動の自由の保障が及ぶか?

事案

外国籍のマクリーン(X)は、在留期間を1年とする許可を得て、日本に入国した。

その後、Xは、法務大臣Yに対して、在留期間延長の申請をした。

しかし、「無断転職」および「政治活動(※)」を理由に、120日の更新しか認められず、その後、更新は不許可となった。

※ベトナム戦争の反対運動、日米安保条約の反対運動などを行っていた。

そこで、XはYの更新不許可処分を不服として、その取消しを求めて出訴した。

判決

1.外国人の在留期間の更新について法務大臣の裁量権が認められるか?

認められる

出入国管理令では、「在留期間の更新については、法務大臣がこれを適当と認めるに足りる相当の理由があると判断した場合に限り許可できる」としています。

そのため、更新事由の判断を、法務大臣の裁量に任せて、その裁量権の範囲を広汎なものとする趣旨であると解されます。

したがって、外国人の在留期間の更新について法務大臣の裁量権が認められます。

ただし、その裁量について、裁量権の範囲を超え又はその濫用があった場合、違法となります

そして、今回、法務大臣が、外国人の政治活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断し、更新不許可の処分を下したわけですが、

今回の事案では、「裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものということはできない」として、違法ではないとした。

※ 斟酌(しんしゃく)相手の事情や心情をよくくみとること

2.外国人にも人権の保障が及ぶか?

原則、外国人にも人権の保障は及ぶ

例外として、外国人在留制度の枠を超える部分は、人権保障が及ばない

判例では、「基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべき」としているので、原則、外国人にも人権保障が及びます。

しかし、外国人の人権保障は、外国人在留制度の枠内で与えられているにすぎず、外国人在留制度の枠を超える部分は、人権保障が及ばないとしています。

具体例が下記一定の政治活動の自由です。

「外国人在留制度の枠」については、個別指導で解説します!

3.外国人にも政治活動の自由の保障が及ぶか?

原則、外国人にも政治活動の自由を認めている

例外として、わが国の政治的意思決定または、その実施に影響を及ぼす活動などは、政治活動の自由の保障は及ばない

政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定または、その実施に影響を及ぼす活動など、外国人の地位にかんがみて、これを認めることが相当でないと解されるものを除いて、その保障が及びます

そして、今回の事案では、外国人Xの事実に対する法務大臣の不許可処分は、「明白に合理性に欠き、その判断が社会通念上著しく妥当性に欠くことが明らかである」とはいえないので、在留中の政治活動を理由に更新を不許可としたことは違憲ではない、とした。

※ かんがみる(鑑みる):先例や規範に照らし合わせる。他を参考にして考える

最判昭53.6.16:余目町個室付浴場事件

論点

  1. 行政権の濫用に相当する違法な行政処分に公定力があるか?

事案

有限会社Xは、個室付浴場業(ソープランドや風俗店)を営むために、山形県余目町(あまるめまち)に土地を購入し、個室付浴場業用の建物の建築確認の申請をし、建築確認を得た上で、建物の建築を完成させた。

また、個室付浴場業の営業許可についても、Xは受けていた。

ところが、当該個室付浴場業の建築に反対した地元住民から反対運動が起こったため、余目町と山形県Yは、個室付浴場業の開業を阻止するための方策を考えた。

その方策は、風俗営業等取締法(風営法)に「児童福祉施設から200m以内では、個室付浴場業の営業を禁止する」といる法律を利用することであった。

当該個室付浴場から200m以内にある無認可の児童遊園があり、この児童遊園について、認可を与えた。

これにより、上記風営法により、Xは、当該個室付浴場業を開業できなくなった。

それにも関わらず、Xは個室付浴場業の営業を開始した。

そのため、Xは風営法違反で起訴された。

判決

行政権の濫用に相当する違法な行政処分に公定力があるか?

→ない(公定力はない

まず、本件児童遊園設置の認可処分は、行政権の著しい濫用によるものとして違法である。

(この点は「最判昭53.5.26:余目町個室付浴場事件」参照)

Xの個室付浴場業の営業に先立つ児童遊園設置の認可処分が行政権の濫用に相当する違法性を帯びているときには、児童遊園の存在を理由に、Xの個室付浴場業の営業を規制する根拠にすることは許されない。

そして、本件当時余目町において、Xの個室付浴場業の営業の規制以外に、「児童遊園を無認可施設から認可施設に整備する必要性、緊急性があったこと」をうかがわせる事情は認められない。

したがって、「Xの個室付浴場業の営業の規制」を主たる動機、目的とする余目町の「児童遊園設置の認可処分」は、行政権の濫用に相当する違法性があり、Xの個室付浴場業の営業に対しこれを規制しうる効力を有しない
(Xのソープランド営業を規制する効力はない)

最判昭53.5.26:余目町個室付浴場事件

論点

  1. 個室付き浴場の開業阻止のために、知事が行った児童園設置認可処分は国家賠償法上の違法となるか?

事案

有限会社Xは、個室付浴場業(ソープランドや風俗店)を営むために、山形県余目町(あまるめまち)に土地を購入し、個室付浴場業用の建物の建築確認の申請をし、建築確認を得た上で、建物の建築を完成させた。

また、個室付浴場業の営業許可についても、Xは受けていた。

ところが、当該個室付浴場業の建築に反対した地元住民から反対運動が起こったため、余目町と山形県Yは、個室付浴場業の開業を阻止するための方策を考えた。

その方策は、風俗営業等取締法(風営法)に「児童福祉施設から200m以内では、個室付浴場業の営業を禁止する」という法律を利用することであった。

当該個室付浴場から200m以内にある無認可の児童遊園があり、この児童遊園について、認可を与えた。

これにより、上記風営法により、Xは、当該個室付浴場業を開業できなくなった。

それにも関わらず、Xは個室付浴場業の営業を開始したため、Xは業務停止処分を受けた。

そこで、Xは、処分の取消訴訟を提起したが、訴訟係属中に、営業停止処分期間が経過したため、Yを被告として、国家賠償請求の訴えに変更した。

判決

個室付き浴場の開業阻止のために、知事が行った児童園設置認可処分は国家賠償法上の違法となるか?

→違法

本件児童遊園設置の認可処分は、行政権の著しい濫用によるものとして違法である。

関連する判例

最判昭53.6.16:余目町個室付浴場事件(行政権の濫用に相当する違法な行政処分に公定力はない)

最判昭53.3.14:主婦連ジュース事件

論点

  1. 景表法に基づく不服申立について、一般消費者に不服申立人適格が認められるか?

事案

公正取引委員会Yは、社団法人日本果汁協会らの申請に基づき、昭和46年3月、果実飲料等の表示に関する公正競争規約を認定した。

これに対して、主婦連合会Xは、この規約の認定は「不当景品類及び不当表示防止法(景表法)」の要件に該当していないとして、Yに不服申し立てをした。

判決

景表法に基づく不服申立について、一般消費者に不服申立人適格が認められるか?

→認められない

一般消費者も国民を消費者としての側面からとらえたものというべきであり、景表法の規定により一般消費者が受ける利益は、公正取引委員会による同法の適正な運用によって実現されるべき公益の保護を通じ国民一般が共通してもつにいたる抽象的、平均的、一般的な利益である。

言い方をかえると、同法の規定の目的である公益の保護の結果として生ずる反射的な利益ないし事実上の利益であって、本来私人等権利主体の個人的な利益を保護することを目的とする法規により保障される法律上保護された利益とはいえないものである。

もとより、一般消費者といっても、個々の消費者を離れて存在するものではないが、景表法上かかる個々の消費者の利益は、同法の規定が目的とする公益の保護を通じその結果として保護されるべきものである。

言い方をかえると、公益に完全に包摂されるような性質のものにすぎないと解すべきである。

したがって、仮に、公正取引委員会による公正競争規約の認定が正当にされなかったとしても、一般消費者としては、景表法の規定の適正な運用によて得られるべき反射的な利益ないし事実上の利益が得られなかったにとどまり、その本来有する法律上の地位には、なんら消長はない(変化はない)といわなければならない。

そこで、単に一般消費者であるというだけでは、公正取引委員会による公正競争規約の認定につき景表法による不服申立をする法律上の利益をもつ者であるということはできず、不服申立人適格は認められない

判決文の全文はこちら>>

最判昭52.12.20:神戸税関事件

論点

  1. 公務員に対する懲戒処分について、裁判所はどのような方法で審査すべきか?

事案

神戸税関職員であり、全国税関・労働組合・神戸支部の役員であったXらは、昭和36年に、同僚職員に対する懲戒処分について、抗議活動を行ったり、勤務時間中にも関わらず、職員増員要求運動など行い、これらの運動の中心的な役割を果たしていた。

神戸税関長Yは、Xらの行った行為が、国家公務員法の定める「職命令遵守義務・争議行為等の禁止・職務専念義務」違反、人事院規則に定める「勤務時間中の組合活動の禁止」違反に該当するとして、Xらに対して懲戒処分を行った。

これに対して、Xらは、当該処分の取消しを求めて提訴した。

判決

公務員に対する懲戒処分について、裁判所はどのような方法で審査すべきか?

懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべき

国家公務員法(国公法)は、同法所定の懲戒事由がある場合に、懲戒権者が、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をするときにいかなる処分を選択すべきかを決するについては、具体的な基準を設けていない。

したがって、懲戒権者は、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか、を決定することができる。

そして、その判断は、右のような広範な事情を総合的に考慮してされるものである以上、部下の職員(Xら)の指揮監督者(Y)の裁量に任せるのでなければ、とうてい適切な結果を期待することができないものといわなければならない。

それ故、公務員につき、国公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきである。

そして、懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならない

したがつて、裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、

その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである。

判決文の全文はこちら>>

最判昭51.12.24:公共用財産と取得時効

論点

  1. 公共用財産について取得時効は成立するか?

事案

公図上で水路とされている国有地(係争地)があった。この係争地は、古くから水田等に作り変えており、水路としての外観を全く失っていた。

そして、「Xの祖父」は、「①係争地(元水路の国有地)」および「②その他の水田」を、Aから借り受けて、小作していた(農業をしていた)。

Xは昭和22年に、係争地を含む水田について、自作農創設特別措置法により、国Yは、Aから②を買い取り、Xに売り渡した。

Xは、「①係争地」と「②その他の水田」いずれも売り渡されたものと信じて、平穏かつ公然と占有してきた。

このような事実関係のもと、売渡日から10年以上経過したため、Xは係争地の所有権の時効取得を主張し、所有権確認の訴えを提起した。

判例

公共用財産について取得時効は成立するか?

→成立する場合はある

公共用財産が、長年の間、事実上、公の目的に供用されることなく放置され、

公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、

その物の上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されることもなく、

もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、

上記公共用財産について、黙示的に公用が廃止されたもの(公用廃止の意思を示さななくても、公用が廃止された)として、取得時効の成立を妨げない(取得時効が成立する可能性はある)。

黙示的とは、暗黙のうちに意思や考えを示すこと。

最判昭50.5.29:群馬中央バス事件

論点

  1. バス事業の免許に関し諮問を受けた運輸審議会の公聴会における審理手続の瑕疵が行政処分の取消事由となるか?

事案

株式会社Xは、運輸大臣Yに対して、道路運輸法4条に基づく一般乗合旅客自動車運送事業(バス事業)の免許を申請した。

そこで、Yは陸運局長の指示し、聴聞を行わせた後、運輸審議会に諮問した。

運輸審議会は、公聴会を開催してX社や利害関係人を聴取した上、申請を却下すべき旨を答申した(回答した)。

これを受けて、Yは、同答申に基づき、Xの申請を却下する処分をしたため、Xはその取消訴訟を提起した。

判決

バス事業の免許に関し諮問を受けた運輸審議会の公聴会における審理手続の瑕疵が行政処分の取消事由となるか?

①行政処分が諮問を経ないでなされた場合はもちろん、②これを経た場合においても、当該諮問機関の審理、決定(答申)の過程に重大な法規違反があることなどにより、諮問機関に対する諮問を経ることを要求した趣旨に反すると認められるような瑕疵があるときは、取消事由となる

これを経てなされた処分も違法として取消をまぬがれない(取消事由となる)

一般に、行政庁が行政処分をするにあたって、諮問機関に諮問し、その決定を尊重して処分をしなければならない旨を法が定めているのは、処分行政庁が、諮問機関の決定(答申)を慎重に検討し、これに十分な考慮を払い、特段の合理的な理由のないかぎりこれに反する処分をしないように要求することにより、当該行政処分の客観的な適正妥当と公正を担保するが目的である。

したがって、①行政処分が諮問を経ないでなされた場合はもちろん、②これを経た場合においても、当該諮問機関の審理、決定(答申)の過程に重大な法規違反があることなどにより、その決定(答申)自体に法が右諮問機関に対する諮問を経ることを要求した趣旨に反すると認められるような瑕疵があるときは、(①②のような手続き上の瑕疵がある場合)

これを経てなされた処分も違法として取消をまぬがれない(取消事由となる)

判決文の全文はこちら>>

最判昭49.2.5:「使用許可の取消し」と「損失補償」

論点

  1. 地方公共団体の財産である土地の使用許可の取消しによって生じた損失は、損失補償の対象になるのか?

事案

株式会社Xは、東京都Yの所有する本件土地をYから使用期限の定めなく、建物を建築し、所有することを目的として借り受けた。

その後、Yが本件土地を卸売市場用地として使用するため、Yは使用許可の取消しを行った。

これにより、Xは、建物の撤去費用などの損害を被ったとして、Yに対して損失補償の請求をした。

判決

地方公共団体の財産である土地の使用許可の取消しによって生じた損失は、損失補償の対象になるのか?

特別の事情がないかぎり、損失補償の対象とはならない

国有であれ都有であれ、行政財産に差等はなく、公平の原則からしても国有財産法の損失補償の規定は、都有行政財産の使用許可の場合にも類推適用すべきである。

そうだとしても、使用権者に損失が生じても、使用権者においてその損失を受忍すべきときは、右の損失は国有財産のいう補償を必要とする損失には当たらないと解すべきである。

したがって、本件のような都有行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約は内在しているものである。

したがって、原則として、損失補償を請求することはできない

例外として、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払をしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、②使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限って、損失補償を請求できる。

判決文の全文はこちら>>

最判昭48.10.18:建築制限付きの土地を収用した場合の補償額

論点

  1. 建築制限付きの土地を収用した場合の補償額について、建築制限を斟酌(しんしゃく)するか?

斟酌:条件などを考え合わせて処理する

事案

Xの所有する土地は、内閣総理大臣の「都市計画街路」の決定によって、計画街路に決定された。

その後、起業者である鳥取県知事Yは、鳥取県収用委員会に対し、本件土地の損失補償についての裁決申請をし、Xの損失補償額を約60万円とした。

これに対しXは、補償額が近傍類地の売買価格に比べて低すぎるとして、Yに対して、不足分の請求をした。

判決

建築制限付きの土地を収用した場合の補償額について、建築制限を斟酌(しんしゃく)するか?

→斟酌しない

都市計画事業決定がなされたときには、都市計画法等に定める建築制限が課せられているが、土地収用における損失補償の趣旨からすれば、被収用者Xに対し土地収用法72条によつて補償すべき相当な価格とは、被収用地が、都市計画事業の決定による建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいうと解すべきである

右のような建築制限の存する土地の収用による損失を決定するにあたり、当該土地をかかる建築制限を受けた土地として評価算定すれば足りると解するのは、前記土地収用法の規定の立法趣旨に反し、

被収用者Xに対し不当に低い額の補償を強いることになる。

さらに、右土地の近傍にある土地の所有者に比しても著しく不平等な結果を招くことになり、到底許されないものというべきである。

▲上記内容は、分かりづらいので、個別指導で分かりやすくかみ砕いて解説します!