令和6年度(2024年度)過去問

令和6年・2024|問7|憲法

国会議員の地位・特権に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 両議院の議員には国庫から相当額の歳費を受ける権利が保障されており、議員全員を対象とした一律の措置としてであっても、議員の任期の途中に歳費の減額を行うことはできない。
  2. 両議院の議員は、国会の会期中は、法律の定める場合を除いては逮捕されることがなく、また所属する議院の同意がなければ訴追されない。
  3. 両議院の議員には、議院で行った演説、討論、表決について免責特権が認められているが、議場外の行為については、議員の職務として行ったものであっても、免責の対象とならない。
  4. 参議院の緊急集会は、衆議院の解散中に開催されるものであるが、その際にも、議員に不逮捕特権や免責特権の保障が及ぶ。
  5. 議院が所属議員に科した懲罰には、議院自律権の趣旨から司法審査は及ばないのが原則であるが、除名に関しては、手続の適正さについて審査が及ぶとするのが最高裁判所の判例である。

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【答え】:4
【解説】
1.両議院の議員には国庫から相当額の歳費を受ける権利が保障されており、議員全員を対象とした一律の措置としてであっても、議員の任期の途中に歳費の減額を行うことはできない。

1・・・妥当でない

憲法49条は「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。」と定めており、議員が国庫から歳費を受ける権利を保障していますが、任期中の減額を禁止する規定はありません

したがって、たとえ議員全員を対象とする一律の措置であっても、法律に基づいて歳費を減額することは可能です。

これに対して、裁判官の報酬については、憲法79条6項および80条2項により「在任中は減額されない」ことが明文で保障されています。これは司法の独立を守るための特別な保障です。

2.両議院の議員は、国会の会期中は、法律の定める場合を除いては逮捕されることがなく、また所属する議院の同意がなければ訴追されない。

2・・・妥当でない

この記述のうち、「所属する議院の同意がなければ訴追されない」という部分が誤りです。

憲法50条は、両議院の議員について、国会の会期中は、法律の定める場合を除いて逮捕されないこと、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば釈放しなければならないことを定めています。

また、国会法33条では、現行犯逮捕を除き、会期中に議員を逮捕するには議院の許諾が必要であるとされています。

しかし、「訴追」(=刑事訴訟法上の公訴の提起)に関して、議員に特別な制限は設けられていません。つまり、議院の同意がなくても訴追することは可能です。

対比ポイント

一方、訴追に関する特別な規定は国務大臣に対して定められており、憲法75条により「内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない」とされています(ただし、訴追の権利自体が失われるわけではない)。

<国会議員と国務大臣における逮捕・訴追の制限比較表>
対象 会期中の逮捕 訴追(起訴)
国会議員 原則禁止(憲法50条)
※現行犯などを除く
制限なし(同意不要)
国務大臣 特に制限なし(一般人と同じ) 内閣総理大臣の同意が必要(憲法75条)
3.両議院の議員には、議院で行った演説、討論、表決について免責特権が認められているが、議場外の行為については、議員の職務として行ったものであっても、免責の対象とならない。

3・・・妥当でない

憲法51条「両議院の議員は、議院で行った演説、討論または表決について、院外で責任を問はれない。」により、国会議員には次のような免責特権が認められています。

本肢は「議場外の行為については、議員の職務として行ったものであっても、免責の対象とならない」という記述が誤りです。
なぜなら、ここでいう「議院で行った」とは、単なる物理的な場所を指すのではなく、議会活動として正規の手続で行われた職務行為かどうかという機能的な観点から判断されるからです。

4.参議院の緊急集会は、衆議院の解散中に開催されるものであるが、その際にも、議員に不逮捕特権や免責特権の保障が及ぶ。

4・・・妥当である

憲法54条2項ただし書きでは、衆議院が解散された場合において、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を開くことができると定められています。

この参議院の緊急集会は、形式的には国会の会期ではありませんが、実質的には国会の機能を代替する重要な国政活動です。

そのため、緊急集会も、これらの特権が適用される「国政の議論の場」である以上、不逮捕・免責特権の保障が及ぶと考えられています。

本肢は関連ポイントも重要なので、個別指導で解説します。

5.議院が所属議員に科した懲罰には、議院自律権の趣旨から司法審査は及ばないのが原則であるが、除名に関しては、手続の適正さについて審査が及ぶとするのが最高裁判所の判例である。

5・・・妥当でない

この記述の問題点は、「除名処分に対して司法審査が及ぶ」とする部分です。

>実際の最高裁判例は、議院懲罰についてではなく政党による党員処分に関するもの(共産党袴田事件)であり、議院懲罰とは異なる問題です。

判例の内容(共産党袴田事件・最判昭和63年12月20日)

この判例では以下のように述べられています。

  • 政党が党員に対してした処分が、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばない
  • しかし、その処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合は、適正な手続に則ってされたか否かに限って司法審査が及ぶ

これはあくまで政党内部の処分に関する判断であり、国会の議院懲罰権に関する判断ではない点に注意が必要です。

よって、本問は、政党処分に関する判例を議院懲罰に誤って適用しており、混同による誤解を含むため妥当ではないです。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問6|憲法

選挙制度の形成に関する国会の裁量についての次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 都道府県が歴史的にも政治的、経済的、社会的にも独自の意義と実体を有する単位である以上、参議院の選挙区選出議員に都道府県代表的な意義を付与し、その枠内で投票価値の平等の実現を図ることは、憲法上許容される。
  2. 小選挙区制は、死票を多く生む可能性があることは否定し難いが、死票はいかなる制度でも生ずるものであり、結局のところ選挙を通じて国民の総意を議席に反映させる一つの合理的方法ということができる。
  3. 同時に行われる二つの選挙に同一の候補者が重複して立候補することを認めるか否かは、国会が裁量により決定することができる事項であり、衆議院議員選挙で小選挙区選挙と比例代表選挙との重複立候補を認める制度は憲法に違反しない。
  4. 政党を媒体として国民の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制を採用することは国会の裁量に属し、名簿登載者個人には投票したいがその属する政党には投票したくないという意思を認めない非拘束名簿式比例代表制もまた同様である。
  5. 参議院の比例代表選出議員について、政党が優先的に当選者となるべき候補者を定めることができる特定枠制度は、選挙人の総意によって当選人が決定される点で、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異ならず、憲法に違反しない。

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【答え】:1
【解説】
1.都道府県が歴史的にも政治的、経済的、社会的にも独自の意義と実体を有する単位である以上、参議院の選挙区選出議員に都道府県代表的な意義を付与し、その枠内で投票価値の平等の実現を図ることは、憲法上許容される。

1・・・妥当でない

「最大判昭和58年4月27日」において、最高裁は参議院の選挙区選出議員の選挙制度の決定について、国会に広範な裁量があることを認めました。しかし、この判例は「参議院議員が全国民の代表である」という点と、「選挙制度に都道府県の代表的意義を加えること」が矛盾しないと判断しただけであり、選択肢にあるような「都道府県の代表的な意義を前提として、投票価値の平等を図ることが憲法上許容される」という趣旨の判断は行っていません。

また、平成26年11月26日の最高裁判決では、都道府県単位の選挙区制度が投票価値の大きな不平等を生じさせる場合、その合理性が否定されると判断されています。

したがって、本肢は「全文が誤り」であり、妥当でない

2.小選挙区制は、死票を多く生む可能性があることは否定し難いが、死票はいかなる制度でも生ずるものであり、結局のところ選挙を通じて国民の総意を議席に反映させる一つの合理的方法ということができる。

2・・・妥当である

小選挙区制は、1選挙区につき1名しか当選しないため、落選者に投じられた票(死票)が多く発生しやすいという特徴があります。しかし、これは選挙制度の特性によるものであり、比例代表制などの他の制度でも一定の死票は生じるため、小選挙区制の導入が直ちに不合理とはならないとされています。

「最大判平成11年11月10日」では、小選挙区制は、選挙を通じて国民の総意を議席に反映させる一つの合理的方法であり、それによって選出された議員が全国民の代表であるという性格と矛盾しないと判断されました。したがって、本肢の内容は判例の趣旨に沿っており、妥当です。

3.同時に行われる二つの選挙に同一の候補者が重複して立候補することを認めるか否かは、国会が裁量により決定することができる事項であり、衆議院議員選挙で小選挙区選挙と比例代表選挙との重複立候補を認める制度は憲法に違反しない。

3・・・妥当である

衆議院議員選挙における小選挙区比例代表並立制の「重複立候補制度」とは、同一の候補者が 小選挙区選挙と比例代表選挙の両方に立候補できる 制度を指します。この制度により、小選挙区で落選しても、比例代表の名簿順位によって当選する可能性があります。

「最大判平成11年11月10日」では、選挙制度の決定は 国会の広範な裁量に委ねられていることを前提に、小選挙区比例代表並立制自体は憲法違反ではないと判断されました。また、重複立候補制についても、政党本位の選挙を目指す立法政策の一環として許容される ため、憲法の要請に反するものではないとしています。したがって、本肢は妥当です。

4.政党を媒体として国民の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制を採用することは国会の裁量に属し、名簿登載者個人には投票したいがその属する政党には投票したくないという意思を認めない非拘束名簿式比例代表制もまた同様である。

4・・・妥当である

参議院議員選挙の比例代表制には名簿式比例代表制が採用されており、これに関する制度設計国会の裁量に委ねられています。

「最大判平成16年1月14日」では、政党を通じて国民の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制の採用は、国会の裁量の範囲内であると判断されました。

また、非拘束名簿式比例代表制(候補者個人の名前を書いて投票するが、実際には政党の得票として計算される制度)についても、「特定の候補者個人には投票したいが、その政党には投票したくない」という意思を反映できない点に関しては議論の余地があるものの、制度全体として合理性が認められ、国民の選挙権(憲法15条)を侵害するものとはいえないとされました。

よって、本肢は妥当です。

5.参議院の比例代表選出議員について、政党が優先的に当選者となるべき候補者を定めることができる特定枠制度は、選挙人の総意によって当選人が決定される点で、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異ならず、憲法に違反しない。

5・・・妥当である

参議院の比例代表選出議員の選挙における「特定枠制度」とは、政党が優先的に当選者となるべき候補者を事前に指定できる制度です。この制度の下では、選挙人は候補者個人または政党に投票し、その得票数に基づいて当選者が決定されます。

「最判令和2年10月23日」では、特定枠制度について、最終的に当選人が決まるのは、選挙人の投票(総意)によるものであり、候補者個人を直接選択して投票する方式と本質的に異ならないと判断されました。

したがって、公職選挙法の規定は憲法43条1項(国会議員が全国民の代表であること)等に違反しないと結論づけられました。
したがって、本肢は妥当です。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問5|憲法

教育に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 義務教育は無償とするとの憲法の規定は、授業料不徴収を意味しており、それ以外に、教科書、学用品その他教育に必要な一切の費用を無償としなければならないことまでも定めたものと解することはできない。
  2. 教科書は執筆者の学術研究の結果の発表を目的とするものではなく、また、教科書検定は検定基準に違反する場合に教科書の形態での研究結果の発表を制限するにすぎないので、教科書検定は学問の自由を保障した憲法の規定には違反しない。
  3. 公教育に関する国民全体の教育意思は、法律を通じて具体化されるべきものであるから、公教育の内容・方法は専ら法律により定められ、教育行政機関も、法律の授権に基づき、広くこれらについて決定権限を有する。
  4. 国民の教育を受ける権利を定める憲法規定の背後には、みずから学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在している。
  5. 普通教育では、児童生徒に十分な判断能力がなく、また、全国的に一定の教育水準を確保すべき強い要請があること等からすれば、教師に完全な教授の自由を認めることはとうてい許されない。

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【答え】:3
【解説】
1.義務教育は無償とするとの憲法の規定は、授業料不徴収を意味しており、それ以外に、教科書、学用品その他教育に必要な一切の費用を無償としなければならないことまでも定めたものと解することはできない。

1・・・妥当である

憲法26条2項では、「義務教育は、これを無償とする。」と規定しています。

この規定の解釈について、最高裁判所の判例(最大判昭和39年2月26日・教科書国家負担請求事件)は、次のように示しています。

  • 憲法26条2項が定める「無償」とは、授業料を徴収しないことを意味する
  • したがって、教科書や学用品、その他教育に必要なすべての費用を無償とすることまでは規定していない

つまり、義務教育にかかる費用のすべてが無償となるわけではなく、授業料のみが対象となります。

なお、現在の制度では、「義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律」などにより、公立の小・中学校で使用される教科書は無償で支給されています。

2.教科書は執筆者の学術研究の結果の発表を目的とするものではなく、また、教科書検定は検定基準に違反する場合に教科書の形態での研究結果の発表を制限するにすぎないので、教科書検定は学問の自由を保障した憲法の規定には違反しない。

2・・・妥当である

教科書検定がこの学問の自由の規定に違反するかどうかについて、最高裁判所は「家永教科書訴訟」(最判平成5年3月16日)において、次のように判断しました。

  • 教科書は、学術研究の結果を発表することを目的としたものではない
  • 教科書検定は、検定基準に違反する場合に限り、教科書の形態における研究結果の発表を制限するものである。

したがって、教科書検定は、学問の自由(憲法23条)に違反しないとされています。

これは、検定が学問の内容そのものを規制するものではなく、義務教育の場で使用される教材としての適切性を判断するための制度であるという考え方に基づいています。

「教科書検定は、検定基準に違反する場合に限り、教科書の形態における研究結果の発表を制限するものである。」という部分が理解しづらいので、個別指導で解説します。

3.公教育に関する国民全体の教育意思は、法律を通じて具体化されるべきものであるから、公教育の内容・方法は専ら法律により定められ、教育行政機関も、法律の授権に基づき、広くこれらについて決定権限を有する。

3・・・妥当でない

憲法26条では「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と規定しています。

そして、公教育に関する決定権が誰にあるのかについて、以下の2つの対立する見解があります。

① 国家主導の立場(法律・行政機関の決定権を重視)

  • 子どもの教育は、親だけでなく国民全体の関心事である。
  • 公教育制度は国民の期待と要求に応じて作られるため、その内容・方法は法律を通じて決定されるべき。
  • 法律が教育の内容・方法を包括的に定め、教育行政機関も法律の授権に基づいて決定する権限を持つ。

② 親・国民主体の立場(親の責務を重視)

  • 子どもの教育は、憲法26条が保障する「教育を受ける権利」に対する責務として行われるべきもの。
  • 教育の責務を担うのは親を中心とする国民全体であり、公教育は「親の教育義務の共同化」ともいえる。
  • 教育は、国民全体の信託の下に、教育に直接責任を負う形で行われなければならない。(教育基本法10条1項)

判例の立場(旭川学力テスト事件:最大判昭和51年5月21日)

最高裁判所は、この2つの見解について次のように判断しました。

  • いずれの見解も極端かつ一方的であり、そのいずれをも全面的に採用することはできない。」
  • つまり、公教育の内容・方法が法律だけによって決定されるわけではなく親や国民の役割も無視できないという立場をとっています。

したがって、問題文の「公教育の内容・方法は専ら法律により定められる」という考え方は、判例の立場と異なるため、「妥当でない」と判断されます。

4.国民の教育を受ける権利を定める憲法規定の背後には、みずから学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在している。

4・・・妥当である

憲法26条は、教育を受ける権利と義務教育の無償を定めています。

  • 1項:「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」
  • 2項:「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。」

この規定は、福祉国家の理念に基づき、国が教育を提供する責務を負うことを示しています。また、子どもの成長・発達にとって普通教育が不可欠であることから、親には子どもに教育を受けさせる義務が課され、義務教育の費用は国が負担すべきであるとされています。

判例(旭川学力テスト事件:最大判昭和51年5月21日)

最高裁判所は、憲法26条の背後にある観念について、次のように述べています。

  • すべての国民は、人格を形成し、社会の一員として成長・発達するために必要な学習をする権利を持っている。
  • 特に、子どもは自ら学習することができないため、大人(社会全体)に対して教育を受ける機会を提供するよう求める権利を持っている
  • つまり、憲法26条は単に教育を受ける権利を保障するだけでなく、子どもが自らの学習を満たすために、大人に教育を求める権利を有するという考え方を基礎にしています。

したがって、「子どもはその学習要求を満たすために、大人一般に対して教育を施すことを要求する権利を有する」という考え方は、判例(旭川学力テスト事件)にも裏付けられており、妥当であるといえます。

5.普通教育では、児童生徒に十分な判断能力がなく、また、全国的に一定の教育水準を確保すべき強い要請があること等からすれば、教師に完全な教授の自由を認めることはとうてい許されない。

5・・・妥当である

「教授の自由」とは、教師が教育内容や教授方法を自由に決定できる権利を指します。憲法23条は「学問の自由」を保障していますが、これが学校教育、とくに義務教育(普通教育)にどのように適用されるかが問題になります。

判例の判断(最判昭和51年5月21日)

普通教育においては、これらの事情を考慮すると、教師に完全な教授の自由を認めることは許されないとしています。

例えば、教師が個人的な思想や特定の政治的主張を児童・生徒に押しつけることは、教育の中立性や生徒の適切な成長を妨げる恐れがあります。そのため、普通教育における教師の教授の自由には制約があるべきと考えられています。

よって、「普通教育においては、教師に完全な教授の自由を認めることは許されない」という考え方は、判例にも基づいており、妥当であるといえます。

本肢は、「大学教育と普通教育の違い」が重要なので、個別指導で解説します!


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問4|憲法

インターネット上の検索サービスにおいて、ある人物Xの名前で検索をすると、Xの過去の逮捕歴に関する記事等が表示される。Xは、この検索事業者に対して、検索結果であるURL等の情報の削除を求める訴えを提起した。これに関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は、法的保護の対象となるというべきであり、過去の逮捕歴もこれに含まれる。
  2. 検索結果として提供される情報は、プログラムによって自動的に収集・整理・提供されるものにすぎず、検索結果の提供は、検索事業者自身による表現行為とはいえない。
  3. 検索事業者による検索結果の提供は、公衆の情報発信や情報の入手を支援するものとして、インターネット上の情報流通の基盤としての役割を果たしている。
  4. 当該事実を公表されない法的利益と、当該情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量した結果、前者が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対してURL等の情報を当該検索結果から削除することを求めることができる。
  5. 過去の逮捕歴がプライバシーに含まれるとしても、児童買春のように、児童への性的搾取・虐待として強い社会的非難の対象とされ、罰則で禁止されている行為は、一定の期間の経過後も公共の利害に関する事柄でありうる。

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【答え】:2
【解説】
1.個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は、法的保護の対象となるというべきであり、過去の逮捕歴もこれに含まれる。

1・・・妥当である

本件は、過去に児童買春により逮捕され罰金刑を受けた人物Aが、インターネット検索サービスの事業者に対し、自身の逮捕歴に関する情報(逮捕事実を掲載するウェブサイトのURLや検索結果の抜粋)を検索結果から削除するよう求めた事案です。

最高裁は、「個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は、法的保護の対象となる」としました。
そして、逮捕歴というプライバシーに関わる事実が含まれているものの、それを検索結果から削除するかどうかは、社会的な影響や公益性とのバランスによって決定されるとされました。したがって、一律に削除請求が認められるわけではなく、具体的な事情に応じて個別に判断されることになります。

この点は、判例のポイントをまとめて頭に入れておく必要があるので、個別指導で解説します。

2.検索結果として提供される情報は、プログラムによって自動的に収集・整理・提供されるものにすぎず、検索結果の提供は、検索事業者自身による表現行為とはいえない。

2・・・妥当でない

最高裁は、「検索結果の提供は、検索事業者自身による表現行為とはいえない」とする見解を否定しました。つまり、検索結果の提供は単なる自動処理ではなく、検索事業者が情報の提供に関与している以上、一定の表現行為としての性質を持つと判断したのです。

よって、「検索結果の提供は検索事業者自身による表現行為とはいえない」という考え方は妥当ではありません。検索事業者は、検索結果の表示について一定の方針を定め、それに基づくアルゴリズムを設計している以上、その提供行為には表現の自由に関する側面があると考えられます。

この点も細かい解説が必要なので、個別指導で解説します。

3.検索事業者による検索結果の提供は、公衆の情報発信や情報の入手を支援するものとして、インターネット上の情報流通の基盤としての役割を果たしている。

3・・・妥当である

最高裁は、検索事業者の役割について以下の点を確認しました。

  • 検索エンジンは、単にウェブサイトの情報を自動的に整理しているだけではなく、公衆が情報を発信・取得するための手段を提供するものである。
  • そのため、検索事業者の活動は、インターネット上の情報流通にとって重要な基盤となっている
  • したがって、検索結果の削除請求が認められる場合については、プライバシー保護と情報流通の公益性のバランスを慎重に判断すべきである。

最高裁の見解に基づけば、「検索事業者による検索結果の提供は、公衆の情報発信や情報の入手を支援し、インターネット上の情報流通の基盤としての役割を果たしている」とする考え方は妥当であるといえます。

本肢は周辺知識も含めて頭に入れておく必要があるので、個別指導で解説します。

4.当該事実を公表されない法的利益と、当該情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量した結果、前者が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対してURL等の情報を当該検索結果から削除することを求めることができる。

4・・・妥当である

最高裁は、検索事業者が提供する検索結果の削除請求の可否について、以下の諸要素を比較衡量して判断すべきであると述べています。

  • 当該事実の性質および内容
    → 逮捕歴のような個人的な情報は、プライバシーに属する事実として慎重に取り扱う必要があります。
  • 当該URL等情報が提供されることによって、その者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲と被る具体的被害の程度
    → 検索結果の提供が、対象者の社会生活や職業にどの程度影響を及ぼすかが考慮されます。
  • その者の社会的地位や影響力
    → 公人(政治家や芸能人など)の場合、公益性が認められやすく、削除請求が認められにくい傾向にあります。
  • 記事等の目的や意義
    → 報道の自由や社会的関心のある事件に関する情報であるかどうかが考慮されます。
  • 記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化
    → 事件の経過時間が長くなり、社会的関心が薄れている場合、削除請求が認められやすくなります。
  • 記事等において当該事実を記載する必要性
    → 記事の内容が単なる興味本位のものである場合、削除請求が認められやすくなります。

そして、最高裁は、上記の諸要素を総合的に比較衡量した結果、「当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかである場合」には、検索事業者に対し、当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができると判断しました。

5.過去の逮捕歴がプライバシーに含まれるとしても、児童買春のように、児童への性的搾取・虐待として強い社会的非難の対象とされ、罰則で禁止されている行為は、一定の期間の経過後も公共の利害に関する事柄でありうる。

5・・・妥当である

最高裁は、本件に関して次のように判断しました。

  • 児童買春の逮捕歴はプライバシーに属する事実であるが、同時に公共の利害に関わる事項である。
  • 逮捕歴がプライバシーに属する事実であることは認めつつも、児童買春という犯罪の性質上、一定期間経過後も公共の利害に関する事柄であるといえる
  • 児童買春は社会的に強く非難される犯罪であり、罰則をもって禁止されていることを考慮すると、情報提供の公益性は依然として高い。
  • そのため、削除請求が必ずしも認められるわけではなく、ケースバイケースでの判断が必要とされた。

最高裁の見解に基づけば、「過去の逮捕歴がプライバシーに含まれるとしても、児童買春のように、児童への性的搾取・虐待として強い社会的非難の対象とされ、罰則で禁止されている行為は、一定の期間の経過後も公共の利害に関する事柄でありうる」とする考え方は妥当であるといえます。

本肢は周辺知識も含めて頭に入れておく必要があるので、個別指導で解説します。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問3|憲法

人格権と夫婦同氏制に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 氏名は、社会的にみれば、個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが、同時に、その個人からみれば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成する。
  2. 氏は、婚姻および家族に関する法制度の一部として、法律がその具体的な内容を規律しているものであるから、氏に関する人格権の内容も、憲法の趣旨を踏まえつつ定められる法制度をまって、初めて具体的に捉えられる。
  3. 家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位であるから、氏をその個人の属する集団を想起させるものとして一つに定めることにも合理性があり、また氏が身分関係の変動に伴って改められることがあり得ることは、その性質上予定されている。
  4. 現行の法制度の下における氏の性質等に鑑みると、婚姻の際に「氏の変更を強制されない自由」が憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえない。
  5. 婚姻前に築いた個人の信用、評価、名誉感情等を婚姻後も維持する利益等は、憲法上保障される人格権の一内容とはいえず、当該利益を婚姻および家族に関する法制度の在り方を検討する際に考慮するか否かは、専ら立法裁量の問題である。

>解答と解説はこちら


【答え】:5
【解説】
1.氏名は、社会的にみれば、個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが、同時に、その個人からみれば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成する。

1・・・妥当である

氏名は、社会的にみると個人を他人と識別し、特定する機能を持っています。しかし、それだけでなく、個人にとっては人格を尊重される基礎であり、人格の象徴ともいえるものです。そのため、氏名は人格権の一内容を構成するとされています。

本問題は、最大判平成27年12月16日を題材としたものです。

この判決では、夫婦が婚姻の際に夫または妻の氏を称すると定める民法750条について、憲法13条(個人の尊重)、憲法14条1項(法の下の平等)、憲法24条(婚姻の自由)などに違反するかが争われました。原告は、この規定が違憲であるとして、立法措置を講じないことが国家賠償法1条1項に基づく違法な立法不作為であると主張しました。

しかし、最高裁は「民法750条は憲法13条、憲法14条1項、憲法24条に違反しない」と判断し、また、立法措置をとらないことも国家賠償法1条1項の適用上違法とはいえないと結論づけました。

この判決の中で、最高裁は氏名の意義について以下のように述べています。

氏名は、社会的にみれば、個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが、同時に、その個人からみれば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成するものというべきである。

つまり、氏名は単なる識別記号ではなく、人格の一部として重要な意味を持つものであることが、最高裁の判例でも明確に示されています。

2.氏は、婚姻および家族に関する法制度の一部として、法律がその具体的な内容を規律しているものであるから、氏に関する人格権の内容も、憲法の趣旨を踏まえつつ定められる法制度をまって、初めて具体的に捉えられる。

2・・・妥当である

氏は、婚姻および家族に関する法制度の一部として、法律によってその具体的な内容が規律されています。そのため、氏に関する人格権の内容についても、憲法上ただちに確定されるものではなく憲法の趣旨を踏まえた法制度のもとで、初めて具体的に捉えることができるとされています。

これは、氏が単なる個人の識別記号ではなく、家族制度と密接に関連していることによるものです。現行の民法では、婚姻によって夫または妻のいずれかの氏を選択することとされており(民法750条)、このような法制度が氏の扱いを具体的に定めています。

最高裁判例(最大判平成27年12月16日)においても、氏に関する人格権の内容は、憲法上直ちに一義的に決まるものではなく、法制度による具体的な規定が必要であると示されています。この判例は、夫婦同姓を定める民法750条が憲法13条(個人の尊重)、憲法14条1項(法の下の平等)、憲法24条(婚姻の自由)に違反しないことを確認したものです。

このように、氏に関する人格権の具体的な内容は、憲法の理念を踏まえつつ、立法による制度の構築を待って初めて明確になるものとされています。

3.家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位であるから、氏をその個人の属する集団を想起させるものとして一つに定めることにも合理性があり、また氏が身分関係の変動に伴って改められることがあり得ることは、その性質上予定されている。

3・・・妥当である

氏は、単に個人を識別するためのものではなく、家族の呼称としての意義を持っています。現行の民法のもとでは、家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位と捉えられており、その呼称として氏を統一することには合理性が認められます

また、氏は親子関係などの一定の身分関係を反映する性質を持っており、婚姻や養子縁組といった身分関係の変動に伴い変更されることがあり得るものです。これは、氏の性質上、あらかじめ予定されていることといえます。

最高裁判例(最大判平成27年12月16日)でも、氏は「家族の呼称としての意義を有する」と認められ、氏の変更が身分関係の変動に伴って生じること自体は合理的であると判断されています。

このように、氏は個人の識別記号としての側面だけでなく、家族という社会単位を示す要素でもあり、一定の身分関係の変動に応じて改められることが予定されているのです。

4.現行の法制度の下における氏の性質等に鑑みると、婚姻の際に「氏の変更を強制されない自由」が憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえない。

4・・・妥当である

現行の法制度における氏の性質を踏まえると、婚姻の際に「氏の変更を強制されない自由」が憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえません

これは、氏の変更が、一定の法制度のもとで予定されていることによるものです。日本の民法では、婚姻に際して夫または妻のいずれかの氏を選択し、統一することが定められています(民法750条)。したがって、婚姻によって氏が変更されること自体を「人格権の侵害」や「違憲」とすることは適切ではないと考えられます。

また、最高裁判例(最大判平成27年12月16日)でも、「具体的な法制度を離れて、氏が変更されること自体を捉えて直ちに人格権を侵害し、違憲であるか否かを論ずることは相当ではない」とされています。これは、氏の変更が個人の意思とは無関係に一方的に強制されるものではなく、婚姻の自由な選択に基づいて行われるものであることが考慮されているためです。

このように、氏の変更は一定の法制度のもとで予定されているものであり、それ自体が人格権の侵害となるものではないと解されています。

5.婚姻前に築いた個人の信用、評価、名誉感情等を婚姻後も維持する利益等は、憲法上保障される人格権の一内容とはいえず、当該利益を婚姻および家族に関する法制度の在り方を検討する際に考慮するか否かは、専ら立法裁量の問題である。

5・・・妥当でない

婚姻前に築いた個人の信用、評価、名誉感情などを婚姻後も維持する利益は、憲法上の権利として人格権の一内容であるとまではいえません。しかし、このような利益は、氏を含めた婚姻および家族に関する法制度の在り方を検討する際に考慮すべき人格的利益であるといえます。

最高裁判例(最大判平成27年12月16日)でも、婚姻前に築いた社会的信用や名誉感情を維持する利益について、「憲法上の権利として保障される人格権の一内容とはいえない」としつつも、婚姻や家族制度に関する立法政策を考慮する際には無視できない要素であると述べています。

したがって、「この利益を考慮するか否かは専ら立法裁量の問題である」という記述は適切ではなく、立法裁量の範囲内ではあるものの、考慮すべき重要な人格的利益であるとするのが妥当です。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問2|基礎知識

訴訟の手続の原則に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。

  1. 民事訴訟手続において、裁判長は、口頭弁論の期日または期日外に、訴訟関係を明確にするため、事実上および法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、または立証を促すことができる。
  2. 刑事訴訟手続において、検察官は、犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の状況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
  3. 非訟事件手続において、裁判所は、利害関係者の申出により非公開が相当と認められる場合を除き、その手続を公開しなければならない。
  4. 民事訴訟手続において、裁判所は、裁判をするにあたり、口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
  5. 刑事訴訟手続において、検察官は、起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添付し、またはその内容を引用してはならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:3
【解説】
1.民事訴訟手続において、裁判長は、口頭弁論の期日または期日外に、訴訟関係を明確にするため、事実上および法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、または立証を促すことができる。

1・・・妥当である

裁判長は、口頭弁論の期日または期日外において、訴訟の進行を適切に導くために、当事者に対して事実上および法律上の事項について問いを発したり立証を促したりすることができます。これは、民事訴訟法149条1項に基づくものであり、訴訟関係を明確にするために認められています。

このような裁判官の権限は「釈明権」と呼ばれ、当事者が主張や立証を適切に行えるようにするためのものです。裁判官は公平な立場を保ちつつ、必要に応じてこの権限を行使し、裁判の適正な進行を図ります。

2.刑事訴訟手続において、検察官は、犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の状況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

2・・・妥当である

検察官は、犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重や情状、さらには犯罪後の状況を考慮し、訴追を必要としないと判断した場合、公訴を提起しないことができます。これは、刑事訴訟法248条に規定されています。

刑事訴訟法では、検察官に公訴を提起するかどうかについての裁量を認めています。このような制度を起訴便宜主義といい、検察官が社会的な影響や被告人の更生可能性などを総合的に判断した上で、公訴提起の必要性を決定できる仕組みとなっています。

3.非訟事件手続において、裁判所は、利害関係者の申出により非公開が相当と認められる場合を除き、その手続を公開しなければならない。

3・・・妥当でない

非訟事件の手続は、原則として公開されません。ただし、裁判所は、必要に応じて相当と認める者の傍聴を許可することができます。これは、非訟事件手続法30条に規定されています。

一方、民事訴訟に関しては、刑事制裁を科する作用とは異なり、憲法82条や憲法32条に定められた「公開の法廷における対審および判決」の要件には該当しません。この点について、最判昭和41年12月27日は「純然たる訴訟事件としての性質の認められる刑事制裁を科する作用とは異なる」と判示しています。

したがって、「非訟事件手続は公開しなければならない」という記述は誤りであり、原則として非公開であることに注意が必要です。

4.民事訴訟手続において、裁判所は、裁判をするにあたり、口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。

4・・・妥当である

裁判所は、判決をするにあたり、口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果をしん酌(しんしゃく)し、自由な心証に基づいて、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断します。これは民事訴訟法247条に規定されています。

※斟酌(しんしゃく)とは、相手の事情や心情をくみとって、それに応じて手加減したり、考慮したりすること

この原則を自由心証主義といいます。自由心証主義のもとでは、裁判所は提出された証拠の証拠力をどの程度認めるかについて、法が定めた特別な制約がない限り、自由に判断することができます。つまり、特定の証拠に対して機械的な評価基準があるわけではなく、裁判官の合理的な判断によって証拠の信用性や証明力が決定されるのです。

5.刑事訴訟手続において、検察官は、起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添付し、またはその内容を引用してはならない。

5・・・妥当である

検察官は、起訴状に裁判官に事件について予断を生じさせるおそれのある書類その他の物を添付したり、その内容を引用したりしてはならないとされています。これは、刑事訴訟法256条6項に規定されています。

これは、公訴の提起が裁判官に偏った先入観を与えないようにするための制度です。そのため、起訴状は1枚のみ提出され、それ以外の証拠資料などは起訴状には含めません。このような方式を起訴状一本主義といいます。

起訴状一本主義は、裁判官が偏りのない公正な判断を下すことを確保し、被告人の防御権を保障するために設けられています。この制度により、裁判はあくまで公判の場で提出された証拠に基づいて行われることが確保されます。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問1|基礎知識

次の文章の空欄[ ア ]~[ オ ]にあてはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

「[ ア ]」と「[ イ ]」とは基本的に共通な発想に立脚する概念であるが、前者が大陸的背景のもとで何よりも[ ウ ]の国政における優位を含意するのに対し、後者は、そのイギリス的伝統に対応して、[ エ ]としての[ オ ]をまず前提しているという点で、必ずしも同一の思想を表わしているとは言い難い。

(出典 碧海純一「新版 法哲学概論〔全訂第2版〕」1989年から<原文の表記を一部改めた。>)

  1. ア:法の支配 イ:法治国 ウ:判例法 エ:一般意思 オ:コモン・ロー
  2. ア:法治国 イ:法の支配 ウ:憲法 エ:一般意思 オ:法律
  3. ア:法の支配 イ:法治国 ウ:憲法 エ:主権者 オ:国会
  4. ア:法治国 イ:法の支配 ウ:議会立法 エ:判例法 オ:コモン・ロー
  5. ア:法の支配 イ:法治国 ウ:議会立法 エ:最高法規 オ:憲法

>解答と解説はこちら


【答え】:4

【解説】

この文章は、「法治国(法治国家)」と「法の支配」という2つの法的概念の違いについて説明しています。両者は基本的に共通の発想に立脚していますが、背景となる法制度が異なるため、同一の思想ではないという点を指摘しています。

「[ ア:法治国 ]」と「[ イ:法の支配 ]」とは基本的に共通な発想に立脚する概念であるが、前者が大陸的背景のもとで何よりも[ ウ:議会立法 ]の国政における優位を含意するのに対し、後者は、そのイギリス的伝統に対応して、[ エ:判例法 ]としての[ オ:コモン・ロー ]をまず前提しているという点で、必ずしも同一の思想を表わしているとは言い難い。

ア・イ・・・法治国・法の支配

「前者(ア)が大陸的背景のもとで」と書いてあります。

「大陸的背景」とは、主にフランスやドイツの大陸法(シビル・ロー)を指します。
大陸法は、成文法を基本とし、法律が国家の統治の基準となります。
この考え方は 「法治国(法治国家)」 に対応します。


「後者(イ)は、そのイギリス的伝統に対応して」と書いてあります・

イギリス法(英米法)は、判例を重視し、成文法よりも司法の判断が大きな役割を果たします。
この考え方に対応するのは 「法の支配」 です。
よって、「ア=法治国、イ=法の支配」となります。

ウ・・・議会立法

「前者(法治国)は、大陸的背景のもとで何よりも[ ウ ]の国政における優位を含意する」とあります。

大陸法では、国家の統治は 議会が制定する法律(成文法) によって行われます。そのため、「議会立法」が入るのが適切です。
よって、「ウ=議会立法」となります。

エ・オ・・・判例法 ・ コモン・ロー

「後者(法の支配)は、そのイギリス的伝統に対応して、[ エ ]としての[ オ ]をまず前提している」とあります。

イギリス法では、判例の積み重ねによって法が形成されてきたため、判例法が重要な位置を占めます。その判例法の根幹をなすのが「コモン・ロー」。
よって、「エ=判例法、オ=コモン・ロー」となります。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略