令和6年度(2024年度)過去問

令和6年・2024|問17|行政事件訴訟法

処分取消訴訟における訴えの利益の消滅に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 公務員に対する免職処分の取消訴訟における訴えの利益は、免職処分を受けた公務員が公職の選挙に立候補した後は、給料請求権等の回復可能性があるか否かにかかわらず、消滅する。
  2. 保安林指定解除処分の取消訴訟における訴えの利益は、原告適格の基礎とされた個別具体的な利益侵害状況が代替施設の設置によって解消するに至った場合には、消滅する。
  3. 公文書非公開決定処分の取消訴訟における訴えの利益は、公開請求の対象である公文書が当該取消訴訟において書証として提出された場合には、消滅する。
  4. 運転免許停止処分の取消訴訟における訴えの利益は、免許停止期間が経過した場合であっても、取消判決により原告の名誉・感情・信用等の回復可能性がある場合には、消滅しない。
  5. 市立保育所廃止条例を制定する行為の取消訴訟における訴えの利益は、当該保育所で保育を受けていた原告ら児童の保育の実施期間が満了した場合であっても、当該条例が廃止されない限り、消滅しない。

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【答え】:2
【解説】
1.公務員に対する免職処分の取消訴訟における訴えの利益は、免職処分を受けた公務員が公職の選挙に立候補した後は、給料請求権等の回復可能性があるか否かにかかわらず、消滅する。

1・・・妥当でない

たとえ免職処分を受けた後に、公務員が公職選挙に立候補し、当然に辞職したとみなされる場合であっても、
それによって直ちに「訴えの利益(処分取消訴訟を提起する法律上の必要性)」が消滅するわけではありません。

というのも、違法な免職処分がなければ、本来公務員として受け取るはずであった給料債権などの経済的利益があり、
それを回復する手段として、免職処分の取消を求める必要性は依然として残るからです。

この点について、最高裁昭和40年4月28日判決(最大判)は次のように述べています。

  • 違法な免職処分さえなければ公務員として有するはずであった給料請求権その他の権利、利益につき、裁判所に救済を求めることができなくなるのであるから、免職処分の効力を排除する判決を求めることは、これらの権利、利益を回復するための必要な手段である
  • 権利、利益が害されたままになっているという不利益状態が存在する限り、原告はなお訴訟を追行する利益を有する

したがって、本件では訴えの利益は消滅しないです。

2.保安林指定解除処分の取消訴訟における訴えの利益は、原告適格の基礎とされた個別具体的な利益侵害状況が代替施設の設置によって解消するに至った場合には、消滅する。

2・・・妥当である

行政処分の取消訴訟においては、単に処分が違法であるというだけでは足りず処分の取消しによって、原告が現に被っている不利益が解消される必要がある、すなわち「訴えの利益」が必要です。

本問のケースでは、「保安林指定の解除」が違法であるとして争われていますが、
仮に原告が「保安林が解除されたことにより洪水や渇水の危険が生じた」として訴えた場合でも、
その危険が代替施設(例えばダムや治水設備)の設置によって解消されたのであれば、
もはや処分の取消しによって原告が救済されるべき不利益は存在しないことになります。

この点について、最高裁昭和57年9月9日判決(長沼ナイキ基地訴訟)は次のように述べています。

保安林の指定が違法に解除され、それによって自己の利益を害された場合には、右解除処分に対する取消しの訴えを提起する原告適格を有するが、
代替施設の設置によって洪水や渇水の危険が解消され、本件保安林の存続の必要性がなくなったときは、
指定解除処分の取消しを求める訴えの利益は失われる

したがって、本件では訴えの利益は消滅するとされます。

3.公文書非公開決定処分の取消訴訟における訴えの利益は、公開請求の対象である公文書が当該取消訴訟において書証として提出された場合には、消滅する。

3・・・妥当でない

公文書の公開請求制度(情報公開法や条例に基づく制度)は、
国民が適法な手続により行政文書を閲覧または写しの交付を受ける権利を保障することを目的としています。

この制度に基づき、文書公開を請求したにもかかわらず、行政機関が「非公開」と判断した場合、
請求者はその処分の取消しを裁判所に求めることができます。

このような訴訟において、仮に争っている文書が裁判の過程で「書証」として提出された(つまり裁判所や当事者が内容を確認できた)としても
それはあくまで裁判の手続内におけるものであり、
正式な公開制度に基づいて「閲覧」や「写しの交付」を受けるという原告の法的利益が満たされたわけではありません

この点について、最高裁平成14年2月28日判決は次のように述べています。

  • 本件条例に基づき公文書の公開を請求して、所定の手続により請求に係る公文書を閲覧し、または写しの交付を受けることを求める法律上の利益を有する
  • 当該公文書が書証として提出されたとしても、当該非公開決定の取消しを求める訴えの利益は消滅するものではない

つまり、訴えの利益は失われないと明確に示されています。

4.運転免許停止処分の取消訴訟における訴えの利益は、免許停止期間が経過した場合であっても、取消判決により原告の名誉・感情・信用等の回復可能性がある場合には、消滅しない。

4・・・妥当でない

行政処分の取消訴訟では、処分が違法であったとしても、
取消しを求める「法律上の利益」が現に存在していなければ、訴えの利益は認められません。

本問では、自動車運転免許の停止処分について争われていますが、
このような処分は、一定期間が経過すればその効力が自然に終了します。

また、道路交通法の下では、違反点数も無事故・無違反の状態が1年間続けばリセットされ、
将来的にその処分を根拠として不利益を受けるおそれもなくなります

そのため、たとえ処分が名誉や感情、信用を損ねたとしても、
それは法的に保護される「法律上の利益」ではなく、単なる事実上の不利益に過ぎないとされます。

この点について、最高裁昭和55年11月25日判決は次のように明確に述べています。

  • 処分を理由に道路交通法上不利益を受けるおそれがなくなったことはもとより、他に本件原処分を理由に不利益に取り扱いうる法令の規定はない
  • 名誉、感情、信用等を損なう可能性の存在が認められるとしても、それは事実上の効果にすぎず、法律上の利益とは言えない

したがって、免許停止期間が終了し、違反点数も消滅したような場合には、訴えの利益は失われると解されます。

5.市立保育所廃止条例を制定する行為の取消訴訟における訴えの利益は、当該保育所で保育を受けていた原告ら児童の保育の実施期間が満了した場合であっても、当該条例が廃止されない限り、消滅しない。

5・・・妥当でない

行政処分や行政行為に対する取消訴訟では、「訴えの利益」=「その取消しによって回復される具体的・法律上の利益」が必要です。

この問題で問われているのは、「市立保育所を廃止する条例の制定行為」に対する取消訴訟です。

原告は、その保育所に通っていた児童たちですが、すでに保育の実施期間が終了している(=卒園など)場合には、
たとえ条例自体が残っていたとしても、その取消しによって原告らに回復される法律上の利益はもはや存在しません

この点について、最高裁平成21年11月26日判決は次のように明確に述べています:

上告人らに係る保育の実施期間がすべて満了していることが明らかであるから、本件改正条例の制定行為の取消しを求める訴えの利益は失われたものというべきである。

つまり、条例が存在し続けていても、それにより現に不利益を受けている児童がいないのであれば、訴えの利益は消滅するという判断です。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問16|行審法・行訴法

行政不服審査法(以下「行審法」という)と行政事件訴訟法(以下「行訴法」という)との違いに関する次のア~オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

ア.行訴法は、処分取消訴訟につき、出訴期間の制限を規定するとともに、「ただし、正当な理由があるときは、この限りでない」という規定(以下「ただし書き」という)を置いているが、行審法は、処分についての審査請求につき、審査請求期間の制限を規定しているものの、行訴法のようなただし書きは置いていない。

イ.行審法は、行政庁が不服申立てをすることができる処分をする場合には、原則として、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすべき行政庁や不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければならないと規定しているが、行訴法は、取消訴訟を提起することができる処分をする場合につき、被告とすべき者や出訴期間を教示すべき旨を定めた明文の規定は置いていない。

ウ.行訴法は、判決の拘束力について、「処分または裁決を取り消す判決は、その事件について、処分または裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。」と定めているのに対し、行審法は、裁決の拘束力について、「裁決は、関係行政庁を拘束する。」と定めている。

エ.行審法は、行訴法における取消訴訟と同様、審査請求について執行停止の規定を置くとともに、執行停止の申立てまたは決定があった場合、内閣総理大臣は、審査庁に対し、異議を述べることができる旨を定めている。

オ.行訴法は、行政庁がその処分または裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟として「差止めの訴え」を設けているが、行審法は、このような処分の差止めを求める不服申立てについて明文の規定を置いていない。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・エ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

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【答え】:5(ウ・オが妥当)

【解説】
ア.行訴法は、処分取消訴訟につき、出訴期間の制限を規定するとともに、「ただし、正当な理由があるときは、この限りでない」という規定(以下「ただし書き」という)を置いているが、行審法は、処分についての審査請求につき、審査請求期間の制限を規定しているものの、行訴法のようなただし書きは置いていない。

ア・・・妥当でない

この記述は前半部分(行政事件訴訟法)については正しいですが、後半部分(行政不服審査法)について誤りがあります。

■ 行政事件訴訟法における出訴期間とただし書き(14条)

取消訴訟は、

原則として「処分または裁決があったことを知った日から6か月以内」に提起しなければならず(14条1項)、

また、「処分または裁決の日から1年を経過したとき」は、原則として提起することができません(14条2項)。

しかし、これらの期間については、「正当な理由があるときは、この限りでない」とされています。

→ 行訴法は、出訴期間の制限を設けつつ、正当な理由がある場合の例外(ただし書き)を明記しています。

■ 行政不服審査法における審査請求期間とただし書き(18条1項)

審査請求は、

処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内

再調査請求がされた場合は、その決定を知った日の翌日から起算して1か月以内に行わなければなりません。

ただし、「正当な理由があるときは、この限りでない」とされており、こちらにも明確に例外規定(ただし書き)が設けられています。

したがって、「行審法には行訴法のようなただし書きがない」という記述は誤りであり、
この選択肢は「妥当でない」ものです。

イ.行審法は、行政庁が不服申立てをすることができる処分をする場合には、原則として、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすべき行政庁や不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければならないと規定しているが、行訴法は、取消訴訟を提起することができる処分をする場合につき、被告とすべき者や出訴期間を教示すべき旨を定めた明文の規定は置いていない。

イ・・・妥当でない

この記述は前半(行政不服審査法)については正確ですが、後半(行政事件訴訟法)に誤りがあります。
行政事件訴訟法にも教示に関する明文の規定が存在するため、本肢は誤りです。

■ 行政不服審査法における教示義務(82条1項)

行政庁が、審査請求や再調査の請求、その他の不服申立てをすることができる処分を行う場合、原則として、処分の相手方に対し、以下の事項を書面で教示しなければなりません。

  • 不服申立てができる旨
  • 不服申立てをすべき行政庁
  • 不服申立てをすることができる期間

※ただし、当該処分を口頭で行う場合は、この限りではありません。

■ 行政事件訴訟法における教示義務(46条)

行政事件訴訟法にも、教示に関する明文の規定があります。

行政庁が取消訴訟を提起できる処分または裁決を書面で行う場合、その相手方に対して、次の事項を書面で教示しなければならないとされています(46条本文、1項・2項)。

  • 被告とすべき者
  • 出訴期間
  • 審査請求前置に関する定めがある場合はその旨

※こちらも、処分が口頭でされた場合には教示義務はありません。

よって、本肢は、行政不服審査法・行政事件訴訟法のどちらにも教示に関する明文の規定があるため、「行訴法には定めがない」という記述は誤りです。したがって、この選択肢は「妥当でない」ものです。

ウ.行訴法は、判決の拘束力について、「処分または裁決を取り消す判決は、その事件について、処分または裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。」と定めているのに対し、行審法は、裁決の拘束力について、「裁決は、関係行政庁を拘束する。」と定めている。

ウ・・・妥当である

この記述は、行政事件訴訟法と行政不服審査法それぞれの規定内容を正しく説明しており、妥当です。

■ 行政事件訴訟法における判決の拘束力(33条)

行政事件訴訟法33条は次のように定めています。

処分または裁決を取り消す判決は、その事件について、処分または裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。

つまり、取消判決には行政庁に対する法的拘束力が生じます。
これは、裁判所の判断に従って行政が対応すべきことを明確にする趣旨です。

■ 行政不服審査法における裁決の拘束力(52条)

行政不服審査法52条は次のように定めています。

裁決は、関係行政庁を拘束する。

この規定により、たとえば審査庁が処分を取り消す裁決をした場合には、その裁決に関係する行政庁は、その内容に従って対応しなければなりません。
→ 裁決の実効性を確保するための規定です。

よって、両法ともに、上位機関の判断が下位行政機関に対して拘束力を持つ旨を定めており、本肢は「妥当である」といえます。

エ.行審法は、行訴法における取消訴訟と同様、審査請求について執行停止の規定を置くとともに、執行停止の申立てまたは決定があった場合、内閣総理大臣は、審査庁に対し、異議を述べることができる旨を定めている。

エ・・・妥当でない

本肢は、後半部分が誤りであり、全体として妥当でないものとなります。

■ 行政不服審査法における執行停止(25条)

行政不服審査法では、審査請求の対象となった処分について、以下のような場合に執行停止が認められます(25条)。

処分の執行または手続の続行により、重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき

または、処分に取消しの理由があると明らかに認められるとき

このように、行審法も行訴法と同様に、処分の執行停止制度を設けています。

記述の後半にある「内閣総理大臣は、審査庁に対し、異議を述べることができる」という部分は、行政不服審査法には存在しない制度です。

これは、行政事件訴訟法にのみ規定された制度であり、以下のとおりです。

行政事件訴訟法27条(執行停止と内閣総理大臣の異議)
執行停止の申立てがあった場合、内閣総理大臣は、裁判所に対して異議を述べることができる(27条1項)

内閣総理大臣が異議を述べた場合、裁判所は執行停止をしてはならず、すでに執行停止の決定をしているときはこれを取り消さなければならない(27条4項)

これは、国の重要な政策執行に支障が出ることを防ぐための特別な制度であり、行政訴訟に特有の規定です。

オ.行訴法は、行政庁がその処分または裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟として「差止めの訴え」を設けているが、行審法は、このような処分の差止めを求める不服申立てについて明文の規定を置いていない。

オ・・・妥当である

■ 行政事件訴訟法における「差止めの訴え」(3条7項)

行政事件訴訟法では、「差止めの訴え」という独立の訴訟類型を規定しています。

第3条第7項
行政庁が一定の処分または裁決をすべきでないにもかかわらず、これがされようとしている場合において、行政庁がその処分または裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟を「差止めの訴え」といいます。

つまり、将来に向けてなされようとしている違法な処分を未然に防ぐための訴訟が可能です。

■ 行政不服審査法における対応の有無

一方、行政不服審査法には、将来の処分を差し止めるための不服申立て制度(=差止め請求)に関する明文の規定はありません

つまり、処分がまだされていない段階では、行政不服審査法に基づく審査請求などを行うことはできず、差止め的な効力を持つ制度は設けられていないということです。

つまり、

  • 行訴法 → 差止めの訴え(明文あり)〇
  • 行審法 → 差止め的な制度についての明文なし ×

したがって、本肢は妥当です。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問15|行政不服審査法

行政不服審査法(以下「行審法」という)に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、または金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分については、行審法の規定は適用されない。
  2. 行審法が審査請求の対象とする「行政庁の不作為」には、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がされていない場合も含まれる。
  3. 地方公共団体の機関がする処分でその根拠となる規定が条例または規則に置かれているものについては、行審法の規定は適用されない。
  4. 地方公共団体またはその機関に対する処分で、当該団体または機関がその固有の資格において処分の相手方となるものについては、行審法の規定は適用されない。
  5. 行審法は、国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める審査請求で、自己の法律上の利益にかかわらない資格でするものについても規定している。

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【答え】:4
【解説】
1.納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、または金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分については、行審法の規定は適用されない。

1・・・妥当でない

この選択肢は、「行政不服審査法の規定は適用されない」としていますが、これは誤りです。

行政不服審査法(行審法)には、金銭の納付や給付に関する処分を除外する規定はありません。つまり、金銭に関する処分であっても、他の処分と同様に、審査請求の対象となり、行審法の適用を受けます。

一方、選択肢が混同しているのは行政手続法の規定です。

行政手続法第13条第2項第4号では、以下のように定められています。

納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、または金銭の給付決定の取消しその他金銭の給付を制限する不利益処分」については、
聴聞や弁明の機会の付与を要しない(=行政手続法13条1項の適用除外)。

つまり、行政手続法上の手続保障が一部省略されるケースがあるだけであり、不服申立ての対象(=行審法の適用)とは関係ありません。

したがって、この選択肢は誤り(妥当でない)です。

2.行審法が審査請求の対象とする「行政庁の不作為」には、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分がされていない場合も含まれる。

2・・・妥当でない

この選択肢は、「法令違反の是正のために処分がされていない場合」も審査請求の対象となる不作為に含まれるとしており、これは誤りです。

行政不服審査法第3条は、不作為についての審査請求を以下のように限定しています。

行政庁に対して法令に基づく申請をした者が、相当の期間が経過しても何らの処分がされない場合」に限って、不作為に対する審査請求が認められます

つまり、対象となる「不作為」とは、申請があったにもかかわらず処分がされない場合に限られます。

一方で、本肢が述べているような「法令に違反する事実があるにもかかわらず、是正のための処分がなされていない」ケースについては、申請に基づかない不作為であり、審査請求の対象外です。

このような場合は、行政手続法第36条の3第1項に基づき、処分または行政指導を求める「申出」は可能ですが、審査請求として争うことはできません。

3.地方公共団体の機関がする処分でその根拠となる規定が条例または規則に置かれているものについては、行審法の規定は適用されない。

3・・・妥当でない

本肢は「条例や規則に基づく処分には行政不服審査法が適用されない」としている点が誤りです。

行政不服審査法には、上記のように「条例や規則に基づく処分」を適用除外とする規定はありません。

行政不服審査法では、「概括主義」がとられており、原則としてすべての行政処分および不作為が審査請求の対象となります(第2条)。
つまり、条例や規則に基づく処分であっても、不服申立て(審査請求)の対象となります。

4.地方公共団体またはその機関に対する処分で、当該団体または機関がその固有の資格において処分の相手方となるものについては、行審法の規定は適用されない。

4・・・妥当である

この選択肢は、行政不服審査法第7条第2項の内容に基づく正しい記述です。

行政不服審査法第7条第2項

「国の機関または地方公共団体その他の公共団体もしくはその機関に対する処分で、これらの機関または団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの」およびその不作為については、行政不服審査法の規定は適用されません

🔍「固有の資格」とは?

「固有の資格」とは、その機関や団体が一般私人とは異なる、公的な立場で行動している場合のことを指します。

たとえば、地方公共団体が国からの補助金に関する処分を受けたような場合、それは「私人」としてではなく、行政主体としての特別な立場で処分の対象となっているということです。

このような処分については、行政不服審査法による不服申立ての対象外とされています。

5.行審法は、国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める審査請求で、自己の法律上の利益にかかわらない資格でするものについても規定している。

5・・・妥当でない

この選択肢は、「自己の法律上の利益にかかわらない資格でも審査請求できる」としており、行政不服審査法(行審法)にはそのような規定はありません。

行政不服審査法第2条では、「行政庁の処分に不服がある者は、審査請求をすることができる」と定めています。

ここでいう「不服がある者」とは、単に不満を持っている者ではなく、その処分によって自己の権利または法律上保護された利益を侵害された者、すなわち不服申立適格を有する者を意味します。

この点について明確な定義規定は行審法には存在しませんが、判例(最判昭和53年3月14日・主婦連ジュース訴訟)において、次のように整理されています。

「当該処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害され、または必然的に侵害されるおそれのある者」に限り、審査請求が可能。

つまり、法律上の利益と無関係な者による審査請求は認められないというのが行審法の立場です。

比較:行政事件訴訟法の「民衆訴訟」

一方、選択肢の内容は、行政事件訴訟法第5条の「民衆訴訟」の定義にあたります。

たとえば選挙無効訴訟などが代表的で、これは自己の権利利益とは関係なく、公益的立場から訴えを提起するものです。

しかし、これは訴訟法上の制度であり、行政不服審査法の審査請求には適用されません。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問14|行政不服審査法

行政不服審査法における審査請求に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 審査請求は、審査請求人本人がこれをしなければならず、代理人によってすることはできない。
  2. 審査請求人以外の利害関係人は、審査請求に参加することは許されないが、書面によって意見の提出をすることができる。
  3. 多数人が共同して審査請求をしようとする場合、1人の総代を選ばなければならない。
  4. 審査請求人本人が死亡した場合、当該審査請求人の地位は消滅することから、当該審査請求の目的である処分に係る権利が承継されるか否かにかかわらず、当該審査請求は当然に終了する。
  5. 法人でない社団または財団であっても、代表者または管理人の定めがあるものは、当該社団または財団の名で審査請求をすることができる。

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【答え】:5
【解説】
1.審査請求は、審査請求人本人がこれをしなければならず、代理人によってすることはできない。

1・・・妥当でない

審査請求は、審査請求人本人だけでなく、代理人によって行うことも可能です。行政不服審査法第12条第1項において、代理人は審査請求人のために審査請求に関する一切の行為をすることができるとされています。

ただし、審査請求の取下げについては、本人の意思確認が重要であるため、特別の委任がある場合に限り、代理人が行うことができます(同条第2項)。

よって、「代理人によってすることはできない」という記述は誤りです。

2.審査請求人以外の利害関係人は、審査請求に参加することは許されないが、書面によって意見の提出をすることができる。

2・・・妥当でない

この選択肢は、「審査請求人以外の利害関係人は、審査請求に参加することは許されない」という点で誤りです。

行政不服審査法第13条において、利害関係人審査請求人以外の者で、処分や不作為について法令上の利害関係を有する者)は、審理員の許可を得て、審査請求に「参加」することが認められています。

これは、審査請求の結果により直接影響を受ける可能性がある利害関係人に対して、主張・立証の機会を保障し、公正かつ適正な審理手続を確保することを目的とした制度です。

また、参加まではしない場合でも、利害関係人が書面で意見を提出することも可能です(同条第4項)。

したがって、「参加することは許されない」という記述は妥当ではありません。

3.多数人が共同して審査請求をしようとする場合、1人の総代を選ばなければならない。

3・・・妥当でない

この選択肢の誤りは、「1人の総代を選ばなければならない」という部分にあります。

行政不服審査法第11条第1項では、多数人が共同して審査請求をする場合には、3人を超えない範囲で総代を互選することができると定められています。

つまり、

  • 総代を選任することは義務ではなく任意であり、
  • 総代の人数も1人に限らず、最大で3人まで可能です。

したがって、「1人の総代を選ばなければならない」という記述は、制度の趣旨と条文に反する不適切な内容です。

4.審査請求人本人が死亡した場合、当該審査請求人の地位は消滅することから、当該審査請求の目的である処分に係る権利が承継されるか否かにかかわらず、当該審査請求は当然に終了する。

4・・・妥当でない

この選択肢の誤りは、「審査請求は当然に終了する」という点にあります。

行政不服審査法第15条第1項によると、審査請求人が死亡した場合でも、当該審査請求の目的である処分に係る権利が法令により承継される場合には、承継した者が審査請求人の地位を引き継ぐことができます。

したがって、処分に係る権利の承継が認められる限り、審査請求は当然に終了するわけではなく、承継人が手続を継続できるというのが正しい理解です。

たとえば、国家公務員共済組合法第44条では、支払未済の共済給付について、受給者の死亡後にその配偶者や子など一定の親族が給付を受けられると定めており、そのようなケースでは、これらの者が審査請求人の地位を承継して審査請求を続けることが可能です。

したがって、この選択肢は不適切(妥当でない)といえます。

5.法人でない社団または財団であっても、代表者または管理人の定めがあるものは、当該社団または財団の名で審査請求をすることができる。

5・・・妥当である

行政不服審査法第10条は、法人でない社団または財団であっても、代表者または管理人の定めがあるものについては、その名で審査請求をすることができると定めています。

これは、いわゆる「権利能力なき社団または財団」に審査請求の当事者能力が認められるということです。たとえ法人格を持たない団体であっても、社会的に一定の活動を行い、実質的に独立した団体として存在している以上、行政処分の対象になり得ることがあります。

そのため、実務上の必要性から、こうした団体にも審査請求を行う資格(当事者能力)が認められているのです。

したがって、この選択肢は正しい(妥当である)といえます。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問13|行政手続法

審査基準と処分基準に関する次の記述のうち、行政手続法に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 審査基準を公にすることによって行政上特別の支障が生じる場合、行政庁が当該審査基準を公にしなかったとしても違法とはならない。
  2. 処分基準は、不利益処分を行うに際して、その名あて人からの求めに応じ、当該名あて人に対してこれを示せば足りるものとされている。
  3. 行政庁が審査基準を作成し、それを公にすることは努力義務にすぎないことから、行政庁が審査基準を公にしなかったとしても違法とはならない。
  4. 審査基準を公にする方法としては、法令により申請の提出先とされている機関の事務所において備え付けることのみが認められており、その他の方法は許容されていない。
  5. 行政庁が処分基準を定めることは努力義務に過ぎないが、処分基準を定めた場合には、これを公にする法的義務を負う。

>解答と解説はこちら


【答え】:1
【解説】
1.審査基準を公にすることによって行政上特別の支障が生じる場合、行政庁が当該審査基準を公にしなかったとしても違法とはならない。

1・・・妥当である

行政手続法第5条第3項では、行政庁は審査基準を「公にしておかなければならない」と定めていますが、その義務には例外が設けられています。それは、「行政上特別の支障があるとき」です。

この「行政上特別の支障があるとき」とは、審査基準を公開することで、例えば不正防止の観点から支障が出るような場合などが想定されています。したがって、こうした特別の事情がある場合には、審査基準を公にしなかったとしても違法とは評価されません。

よって、本肢の記述は妥当です。

2.処分基準は、不利益処分を行うに際して、その名あて人からの求めに応じ、当該名あて人に対してこれを示せば足りるものとされている。

2・・・妥当でない

行政手続法第12条第1項では、行政庁は処分基準を定めるよう努めなければならず、またこれを公にしておくよう努めなければならないとされています。

この規定は、行政運営の透明性や公平性を確保するためのものです。つまり、処分基準は、単に処分の名あて人に対して求めがあった場合にだけ示せばよいという考え方ではなく、原則としてあらかじめ公にしておくことが求められているのです。

また、第12条第2項では、処分基準を定める際には、その不利益処分の性質に照らして、できる限り具体的なものとしなければならないとされています。

したがって、本肢のように「名あて人からの求めに応じて示せば足りる」というのは、法の趣旨に反しており、妥当でないといえます。

3.行政庁が審査基準を作成し、それを公にすることは努力義務にすぎないことから、行政庁が審査基準を公にしなかったとしても違法とはならない。

3・・・妥当でない

行政手続法第5条において、審査基準の作成および公表は法的義務とされています。

  • 第5条第1項:行政庁は審査基準を定めなければならない(義務)。
  • 第5条第2項:審査基準は、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとする。
  • 第5条第3項:行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、審査基準を法令で定められた申請先の事務所等で公にしておかなければならない(義務)。

つまり、審査基準の公表は「努力義務」ではなく、「義務」です。例外として、行政上特別の支障があるときのみ、公表しなくても許されます。

一方、処分基準については、行政手続法第12条により「定め、公にしておくよう努めなければならない」とされており、こちらは努力義務です。

したがって、本肢のように「審査基準の公表は努力義務」とするのは処分基準との混同による誤りであり、妥当ではないといえます。

4.審査基準を公にする方法としては、法令により申請の提出先とされている機関の事務所において備え付けることのみが認められており、その他の方法は許容されていない。

4・・・妥当でない

行政手続法第5条第3項では、審査基準の公表方法について、以下のように定められています。

行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により、審査基準を公にしておかなければならない。

つまり、「事務所での備付け」だけではなく、それに加えて「その他の適当な方法」も認められているのです。

この「その他の適当な方法」には、たとえば行政庁の公式ウェブサイトでの公開などが含まれ、実務上も一般的な手段とされています。

したがって、本肢のように「事務所における備付けのみが認められている」とするのは誤りであり、妥当でないです。

5.行政庁が処分基準を定めることは努力義務に過ぎないが、処分基準を定めた場合には、これを公にする法的義務を負う。

5・・・妥当でない

行政手続法第12条第1項では、処分基準について以下のように定めています:

行政庁は、不利益処分に関する処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。

つまり、

  • 処分基準を定めることも、
  • 処分基準を公にすることも、

いずれも努力義務です。

したがって、本肢のように「定めることは努力義務だが、定めた場合には公にする法的義務が生じる」とするのは誤りです。

なお、「定めた場合に公にする法的義務がある」という扱いになるのは、たとえば行政手続法第6条に定められている標準処理期間についてであり、処分基準のケースとは異なります。

よって、本肢は妥当でないといえます。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問12|行政手続法

行政指導についての行政手続法の規定に関する次のア~エの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

ア.行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項等、行政手続法が定める事項を示さなければならない。

イ.地方公共団体の機関がする行政指導については、その根拠となる規定が法律で定められている場合に限り、行政指導に関する行政手続法の規定が適用される。

ウ.法令に違反する行為の是正を求める行政指導で、その根拠となる規定が法律に置かれているものを受けた相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思科するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。

エ.意見公募手続の対象である命令等には、審査基準や処分基準など、処分をするかどうかを判断するための基準は含まれるが、行政指導に関する指針は含まれない。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】
ア.行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項等、行政手続法が定める事項を示さなければならない。

ア・・・妥当である

行政指導とは、行政機関が特定の者に対して、法律上の義務ではないけれども、一定の作為(やること)や不作為(やらないこと)を求める行為のことです。これは「処分」ではなく、任意の協力を求める形式になります(行政手続法2条6号)。

そして、行政指導が行われる場合、相手方に対して次のような情報をきちんと伝える義務があります。

誰がその行政指導の責任者であるか(行政手続法35条1項)

②さらに、行政指導の場面で、行政機関が「許可しないこともあるよ」などと、自らの権限をちらつかせるような場合(=許認可等を行使し得る旨を示すとき)は、ただ漠然とそう言うのではなく、「何という法律の、どの条文に基づいてその権限があるのか」という根拠を相手にきちんと示さなければなりません。(行政手続法35条2項)

つまり、「言うことを聞かないと許可しないかもよ?」というような態度を取る場合には、法的な裏付けを明確にする必要があるということです。

行政手続法35条(行政指導の方式)

1項 行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。

2項 行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、次に掲げる事項を示さなければならない。

一 当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項
二 前号の条項に規定する要件
三 当該権限の行使が前号の要件に適合する理由

イ.地方公共団体の機関がする行政指導については、その根拠となる規定が法律で定められている場合に限り、行政指導に関する行政手続法の規定が適用される。

イ・・・妥当でない

結論からいうと、本肢は「法律で定められている場合に限り適用される」と述べていますが、行政指導については、法律に根拠があっても、地方公共団体の機関が行う場合は行政手続法の規定が適用されません。

よって、本肢は、誤り(妥当でない) です。

行政手続法は、行政の公正さ・透明性の確保を目的とし、国の行政機関を主な対象としていますが、地方公共団体の機関にも一部適用される場合があります。ただし、すべての行為に適用されるわけではありません。

行政手続法第3条第3項では、以下の場合、行政手続法(第2章~第6章)は適用されない、としています。

  • 地方公共団体の機関による行政指導や命令等の制定行為
    法律に基づいていても、条例または規則に基づいていても適用されない
  • 地方公共団体の機関による処分や届出
    → その根拠が「条例または規則」である場合に限り、適用されない
    → 逆に、根拠が法律にある場合は適用される
ウ.法令に違反する行為の是正を求める行政指導で、その根拠となる規定が法律に置かれているものを受けた相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思科するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。

ウ・・・妥当である

行政手続法36条の2(行政指導の中止等の求め)

法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。ただし、当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、この限りでない。

上記を整理すると下表の通りです。
本肢は、この内容を説明しているため、妥当である(正しい)です。

要件の区分 内容
対象となる行政指導 法令違反の是正を目的とする行政指導
根拠法令 その行政指導の根拠が「法律」に置かれていること
求めることができる人 行政指導を受けた相手方(※第三者は含まれない)
求めの内容 「中止」や「その他必要な措置」の申し出が可能
エ.意見公募手続の対象である命令等には、審査基準や処分基準など、処分をするかどうかを判断するための基準は含まれるが、行政指導に関する指針は含まれない。

エ・・・妥当でない

結論から言うと、意見公募手続の対象である命令等には、審査基準処分基準など、処分をするかどうかを判断するための基準だけでなく、行政指導に関する指針も含まれるので誤り(妥当ではない)です。

行政手続法2条8号における「命令等」とは、以下のようなものを指します。

  1. 命令・規則: 各省庁が法律に基づいて定める命令や規則
  2. 審査基準: 許認可などの審査をする際の判断基準
  3. 処分基準: 行政処分(例:営業停止など)を行う際の基準
  4. 行政指導指針: 行政指導を行う際の方針やルール(これも「命令等」に含まれる)

意見公募手続(いわゆるパブリックコメント制度)は、「命令等」を定めようとする場合に、あらかじめ案を公表し、広く国民から意見を募る制度です。

つまり、行政が審査基準・処分基準・行政指導指針などを定めるときも、原則として意見公募手続を行わなければならないということになります。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問11|行政手続法

会社Xは、宅地建物取引業法(以下「宅建業法」という)に基づく免許を受けて不動産取引業を営んでいる。ところが、Xの代表取締役であるAが交通事故を起こして、歩行者に重傷を負わせてしまった。その後、自動車運転過失傷害の罪でAは逮捕され、刑事裁判の結果、懲役1年、執行猶予4年の刑を受けて、判決は確定した。宅建業法の定めによれば、法人の役員が「禁錮以上の刑」に処せられた場合、その法人の免許は取り消されるものとされていることから、知事YはXの免許を取り消した(以下「本件処分」という)。 この事例への行政手続法の適用に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

(参考条文)

宅地建物取引業法

(免許の基準) 第5条① 国土交通大臣または都道府県知事は、第3条第1項の免許を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合または免許申請書もしくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、もしくは重要な事実の記載が欠けている場合においては、免許をしてはならない。

一~四 略

五 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

六 以下略

② 以下略

(免許の取消し) 第66条① 国土交通大臣または都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該免許を取り消さなければならない。

一 第5条第1項第1号、第5号から第7号まで、第10号または第14号のいずれかに該当するに至ったとき。

二 略

三 法人である場合において、その役員または政令で定める使用人のうちに第5条第1項第1号から第7号までまたは第10号のいずれかに該当する者があるに至ったとき。

四 以下略

② 以下略

  1. 本件処分は、許認可等の効力を失わせる処分であるが、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出に対する応答としてなされるものであるから、行政手続法のいう「不利益処分」にはあたらない。
  2. 本件処分は、刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官または司法警察職員がする処分を契機とするものであるので、行政手続法の規定は適用されない。
  3. 本件処分は、その根拠となる規定が法律に置かれているが、地方公共団体の機関がする処分であることから、行政手続法の規定は適用されない。
  4. 本件処分は、申請に対する処分を取り消すものであるので、本件処分をするに際して、行政庁は許認可等の性質に照らしてできる限り具体的な審査基準を定めなければならない。
  5. 本件処分は、法令上必要とされる資格が失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている処分であり、その喪失の事実が客観的な資料により直接証明されるものであるので、行政庁は聴聞の手続をとる必要はない。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】
1.本件処分は、許認可等の効力を失わせる処分であるが、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出に対する応答としてなされるものであるから、行政手続法のいう「不利益処分」にはあたらない。

1・・・妥当でない

本件は、宅建業者である会社Xの代表取締役Aが「懲役1年・執行猶予4年」という禁錮以上の刑を受けたことで、X社の免許が取り消されたという事例です。この処分が、行政手続法における「不利益処分」に該当するかが問われています。

結論からいうと、この処分(免許取消し)は、「不利益処分」に該当するので、記述は妥当ではありません。

行政手続法第2条第4号では、「不利益処分」とは、許認可の取消しや停止など、相手方に不利益となる行政処分をいいます。

本件で行われた免許取消しは、法人の業務に重大な影響を与えるものなので、まさにこの「不利益処分」にあたります。

問題文では、「この処分は、事実が消滅した旨の届出に対する応答としてなされるものだから、不利益処分ではない」としていますが、これは誤りです。

行政手続法2条4号ただし書きニで規定されている「届出に対する応答」とは、たとえば「営業廃止届」など、事業者自らの意思による廃止を届け出た場合に行政庁が形式的に応じるものです。

今回のように、刑罰を受けたことによって当然に免許取消しの要件に該当することになったというのは、「届出に対する応答」ではなく、行政庁が主体的に判断して行う処分です。

したがって、この処分は不利益処分に該当し、処分の理由の提示などの行政手続法上の手続が必要です。

行政手続法2条4号ただし書きニ
許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるものは、不利益処分に該当しない
2.本件処分は、刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官または司法警察職員がする処分を契機とするものであるので、行政手続法の規定は適用されない。

2・・・妥当でない

本件は、会社Xの代表取締役Aが「懲役1年・執行猶予4年」の有罪判決を受けたことにより、会社Xが宅建業法第66条第1項第1号・第3号に該当し、免許取消処分を受けたケースです。

このような免許取消処分は、あくまで知事(行政庁)による行政処分であり、行政手続法の定める「不利益処分」にあたります。

選択肢では、「刑事事件に関する法令に基づいて検察官等がする処分を契機とするものなので、行政手続法は適用されない」とありますが、これは誤りです。

確かに行政手続法第3条第1項第5号では、「刑事事件に関する法令に基づき、検察官や警察官などがする処分」には行政手続法が適用されないとされています。しかし、本件の処分を行ったのは検察官や警察官ではなく、「宅建業法に基づく免許権者(都道府県知事)」です。よって、この規定は当てはまりません。

したがって、本件処分には行政手続法の規定が適用されます。

行政手続法第3条第1項第5号(適用除外):
刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分及び行政指導については、次章から第四章の二までの規定は、適用しない。
3.本件処分は、その根拠となる規定が法律に置かれているが、地方公共団体の機関がする処分であることから、行政手続法の規定は適用されない。

3・・・妥当でない

本件のように、都道府県知事が行う免許の取消しは、確かに地方公共団体の機関が行う「処分」にあたります。しかし、ここで重要なのは、その処分の根拠が「どの法令に基づいているか」です。

行政手続法第3条第3項では、次のように定められています。

地方公共団体の機関がする処分、行政指導及び届出については、その根拠が条例または規則にある場合は、行政手続法は適用されない

つまり、行政手続法の適用が除外されるのは、条例や規則に基づく処分などの場合です。

ところが、本件の免許取消処分は、宅地建物取引業法という国の法律(法第5条・第66条)に基づいています。よって、行政手続法の適用除外には当たりません。

したがって、本件処分には行政手続法が適用されるため、記述は妥当ではありません。

4.本件処分は、申請に対する処分を取り消すものであるので、本件処分をするに際して、行政庁は許認可等の性質に照らしてできる限り具体的な審査基準を定めなければならない。

4・・・妥当でない

本件は、宅地建物取引業者である会社Xの免許が取り消されたという事案です。これは、許認可を与える処分(申請に対する処分)ではなく、すでに与えた免許を取り消す処分です。このように、行政庁が国民に対して何らかの不利益を与える処分は、「不利益処分」と呼ばれます。

不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準を「処分基準」といいます。

審査基準」は、申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準です。そのため、本肢は妥当ではないです。

関連ポイントも重要なので、個別指導で解説します。

5.本件処分は、法令上必要とされる資格が失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている処分であり、その喪失の事実が客観的な資料により直接証明されるものであるので、行政庁は聴聞の手続をとる必要はない。

5・・・妥当である

行政手続法では、原則として重大な不利益処分(例:免許の取消し)をする際には、名あて人に言い分を述べる機会(=聴聞)を与える必要があります(行政手続法13条1項1号)。
しかし、以下のような例外があります。

行政手続法13条2項2号:

以下の要件を満たす場合、聴聞は不要になります。

  1. 法令上、必ず行わなければならない不利益処分であること
    → 今回のように、宅建業法66条により免許を「取り消さなければならない」とされているケースが該当します。
  2. 資格喪失の事実が客観的資料によって証明されていること
    → 今回は「裁判で有罪判決を受けた」という事実が、判決文などの客観的資料で確認できます。

    本肢に適用

    • Aが「禁錮以上の刑(懲役1年)」に処せられた。
    • その結果、会社Xの免許は法律上、必ず取り消さなければならない。
    • その事実(Aが有罪になったこと)は裁判の判決で証明されている。

    よって、行政手続法13条2項2号に該当し、「聴聞は不要」となります。


    令和6年(2024年)過去問

    問1 基礎法学 問31 民法
    問2 基礎法学 問32 民法
    問3 憲法 問33 民法
    問4 憲法 問34 民法
    問5 憲法 問35 民法
    問6 憲法 問36 商法
    問7 憲法 問37 会社法
    問8 行政法 問38 会社法
    問9 行政法 問39 会社法
    問10 行政法 問40 会社法
    問11 行政手続法 問41 多肢選択
    問12 行政手続法 問42 多肢選択
    問13 行政手続法 問43 多肢選択
    問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
    問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
    問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
    問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
    問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
    問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
    問20 国家賠償法 問50 基礎知識
    問21 国家賠償法 問51 基礎知識
    問22 地方自治法 問52 行政書士法
    問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
    問24 地方自治法 問54 基礎知識
    問25 行政法 問55 基礎知識
    問26 公文書管理法 問56 基礎知識
    問27 民法 問57 個人情報保護法
    問28 民法 問58 著作権の関係上省略
    問29 民法 問59 著作権の関係上省略
    問30 民法 問60 著作権の関係上省略

    令和6年・2024|問9|行政立法

    行政立法に関する次の記述のうち、法令の定めまたは最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

    1. 行政手続法が定める意見公募手続の対象となるのは、法規命令のみであり、行政規則はその対象とはされていない。
    2. 法律の規定を実施するために政令を定めるのは内閣の事務であるが、その法律による委任がある場合には、政令に罰則を設けることもできる。
    3. 法律による委任の範囲を逸脱して定められた委任命令は違法となるが、権限を有する機関が取り消すまでは有効なものとして取り扱われる。
    4. 通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合には、当該通達に対して取消訴訟を提起することができる。
    5. 行政手続法が適用される不利益処分の処分基準において、過去に処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定が加重される旨の定めがある場合には、当該処分基準の定めに反する後行の処分は当然に無効となる。

    >解答と解説はこちら


    【答え】:2
    【解説】
    1.行政手続法が定める意見公募手続の対象となるのは、法規命令のみであり、行政規則はその対象とはされていない。

    1・・・妥当でない

    行政手続法における意見公募手続の対象は、法規命令に限られず、行政規則等も含まれるので、本肢は誤りです。

    意見公募手続とは?
    行政手続法39条に定められた手続で、行政庁が「命令等」を定めようとする場合に、その案をあらかじめ公示して、国民や事業者などの意見を広く募る制度です。
    いわゆるパブリックコメント制度とも呼ばれています。

    「命令等」とは何か?
    行政手続法2条8号では、「命令等」を以下のように定義しています。

    法律に基づく命令、規則、審査基準、処分基準、行政指導指針その他これらに類するもの

    つまり、

    • 法規命令(政令、省令など)
    • 行政規則(訓令・通達など)
    • 審査基準、処分基準、行政指導指針

    など、かなり幅広いものが「命令等」に含まれます。

    したがって、意見公募手続の対象は「法規命令だけ」ではなく、「行政規則」等も含まれるので、「法規命令のみが対象で、行政規則は対象外」とする本肢の記述は誤りです。

    2.法律の規定を実施するために政令を定めるのは内閣の事務であるが、その法律による委任がある場合には、政令に罰則を設けることもできる。

    2・・・妥当である

    原則として、罰則は国民の権利・自由を制限するものであるため、法律で定める必要があります(法律主義の原則)。
    ただし、憲法73条6号ただし書きにより、次のようにされています:
    政令には特にその法律の委任がある場合でなければ、罰則を設けることができない。」
    つまり、法律に明確な委任がある場合に限り、政令で罰則を設けることが可能となります。よって、本肢は妥当です。

    本肢は周辺知識も頭に入れておく必要があるので、個別指導で解説します。

    3.法律による委任の範囲を逸脱して定められた委任命令は違法となるが、権限を有する機関が取り消すまでは有効なものとして取り扱われる。

    3・・・妥当でない

    法律の委任の範囲を超えて命令を定めた場合、その命令は無効です。言い換えると、法令の委任に基づく命令であっても、委任の趣旨や内容、範囲を逸脱している場合には、最初から効力がない(=無効)ということです。よって「違法だが、取り消されるまでは有効」とする本肢の記述は誤りです。

    判例による裏付け

    📌 最判平成3年7月9日

    • 監獄法施行規則が、未決拘禁者と14歳未満の者との接見を一律に禁止。
    • これは、監獄法の委任の範囲を逸脱しており、無効と判断。

    📌 最判平成14年1月31日

    • 児童扶養手当法施行令が、父から認知された子を対象外にする規定を追加。

    本肢も関連ポイントがあるので、個別指導で解説します。

    4.通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合には、当該通達に対して取消訴訟を提起することができる。

    4・・・妥当でない

    通達は一般に行政機関の内部的な指示に過ぎず、通常は行政処分には当たらないため、原則として取消訴訟の対象にはならないです。よって、本肢は誤りです。

    判例:最判昭和43年12月24日

    この判例は、通達が取消訴訟の対象になるかについて判断したもので、次のように述べています。

    「通達は、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対して、その職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものである。
    このような通達は関係下級行政機関および職員に対する行政組織内部の命令にすぎず、一般国民はこれに拘束されない。」

    さらに、

    「通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するものであって、国民の権利義務に重大な関わりを持つものであっても、
    それ自体が直接国民に対して法律上の効果を生じさせるものではない限り、取消訴訟の対象にはならない」

    としています。

    本肢は基本事項を頭に入れておく必要があるので、個別指導で解説します。

    5.行政手続法が適用される不利益処分の処分基準において、過去に処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定が加重される旨の定めがある場合には、当該処分基準の定めに反する後行の処分は当然に無効となる。

    5・・・妥当でない

    処分基準に反するからといって、直ちにその処分が「当然に無効」となるわけではありません。よって、本肢は妥当ではないです。

    行政庁が処分基準に反する処分をしたとしても、それは自動的に「無効」となるわけではありません。
    このような場合、行政事件訴訟法30条に基づき、裁量権の逸脱または濫用があったかどうかが問われます
    つまり、「無効」ではなく、「違法(取消しうる)」かどうかが問題となるのです。

    行政事件訴訟法30条
    行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。

    重要判例:最判平成27年3月3日

    この判例では、次のように判示されました。

    「処分基準に反する取扱いをする場合、裁量権の行使における公正・平等の原則や、基準の内容に対する相手方の信頼保護の観点から、特段の事情がなければ裁量権の逸脱・濫用にあたる。」

    つまり、処分基準に反する処分は「当然に無効」なのではなく、特段の事情なく基準から逸脱すれば、裁量権の逸脱として違法となり得るということで、その場合には、取消訴訟で争う余地があると整理されています。


    令和6年(2024年)過去問

    問1 基礎法学 問31 民法
    問2 基礎法学 問32 民法
    問3 憲法 問33 民法
    問4 憲法 問34 民法
    問5 憲法 問35 民法
    問6 憲法 問36 商法
    問7 憲法 問37 会社法
    問8 行政法 問38 会社法
    問9 行政法 問39 会社法
    問10 行政法 問40 会社法
    問11 行政手続法 問41 多肢選択
    問12 行政手続法 問42 多肢選択
    問13 行政手続法 問43 多肢選択
    問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
    問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
    問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
    問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
    問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
    問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
    問20 国家賠償法 問50 基礎知識
    問21 国家賠償法 問51 基礎知識
    問22 地方自治法 問52 行政書士法
    問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
    問24 地方自治法 問54 基礎知識
    問25 行政法 問55 基礎知識
    問26 公文書管理法 問56 基礎知識
    問27 民法 問57 個人情報保護法
    問28 民法 問58 著作権の関係上省略
    問29 民法 問59 著作権の関係上省略
    問30 民法 問60 著作権の関係上省略

    令和6年・2024|問10|行政法

    行政法における一般原則に関する最高裁判所の判例について説明する次の記述のうち、妥当なものはどれか。 (注) * 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律

    1. 特定の事業者の個室付浴場営業を阻止する目的で町が行った児童福祉法に基づく児童福祉施設の認可申請に対し、県知事が行った認可処分は、仮にそれが営業の阻止を主たる目的としてなされたものであったとしても、当該処分の根拠法令たる児童福祉法所定の要件を満たすものであれば、当該認可処分を違法ということはできないから、当該個室付浴場営業は当然に違法となる。
    2. 特定の事業者の廃棄物処理施設設置計画を知った上で定められた町の水道水源保護条例に基づき、当該事業者に対して規制対象事業場を認定する処分を行うに際しては、町は、事業者の立場を踏まえて十分な協議を尽くす等、その地位を不当に害することのないよう配慮すべきであるが、このような配慮要請は明文上の義務ではない以上、認定処分の違法の理由とはならない。
    3. 法の一般原則である信義則の法理は、行政法関係においても一般に適用されるものであるとはいえ、租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、租税法規に適合する課税処分について信義則の法理の適用により当該課税処分を違法なものとして取り消すことは、争われた事案の個別の状況や特段の事情の有無にかかわらず、租税法律主義に反するものとして認められない。
    4. 地方公共団体が将来にわたって継続すべき施策を決定した場合でも、当該施策が社会情勢の変動等に伴って変更されることがあることは当然であるが、当該地方公共団体の勧告ないし勧誘に動機付けられて施策の継続を前提とした活動に入った者が社会観念上看過することのできない程度の積極的損害を被る場合において、地方公共団体が当該損害を補償するなどの措置を講ずることなく施策を変更することは、それがやむをえない客観的事情によるのでない限り、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法となる。
    5. 国の通達に基づいて、地方公共団体が被爆者援護法 * 等に基づく健康管理手当の支給を打ち切った後、当該通達が法律の解釈を誤ったものであるとして廃止された場合であっても、行政機関は通達に従い法律を執行する義務があることからすれば、廃止前の通達に基づいて打ち切られていた手当の支払いを求める訴訟において、地方公共団体が消滅時効を主張することは信義則に反しない。

    >解答と解説はこちら


    【答え】:4
    【解説】
    1.特定の事業者の個室付浴場営業を阻止する目的で町が行った児童福祉法に基づく児童福祉施設の認可申請に対し、県知事が行った認可処分は、仮にそれが営業の阻止を主たる目的としてなされたものであったとしても、当該処分の根拠法令たる児童福祉法所定の要件を満たすものであれば、当該認可処分を違法ということはできないから、当該個室付浴場営業は当然に違法となる。

    1・・・妥当でない

    本肢は、行政処分の「目的」を問題とするものです。

    確かに、県知事が児童福祉法に基づく認可処分を行う際、その処分が法令の形式的要件を満たしているかどうかは重要です。しかし、それが実質的には他人の営業活動を妨害することを目的としてなされたのであれば、行政権限の濫用として、その処分は違法となります。

    これは、最判昭和53年6月16日(いわゆる余目町個室付浴場事件)が典型です。この判例では、町が風俗営業を排除する目的で児童遊園の設置を県に申請し、県がそれを認可しましたが、その設置目的が風俗営業の排除にあり、児童の健全育成を真に目的としたものではなかったため、当該認可処分は違法とされました。

    このように、行政処分においては形式的な要件だけでなく、目的の適法性(動機の正当性)も問われます。民法1条3項の「権利の濫用は、これを許さない」という原則は、行政法にも類推適用されると考えられています。

    したがって、本肢の「営業の阻止を主たる目的としてなされたものであっても、要件を満たせば違法ではない」「よって浴場営業は当然に違法となる」という記述は、行政権限の濫用に対する理解を欠いており誤り(妥当でない)です。

    2.特定の事業者の廃棄物処理施設設置計画を知った上で定められた町の水道水源保護条例に基づき、当該事業者に対して規制対象事業場を認定する処分を行うに際しては、町は、事業者の立場を踏まえて十分な協議を尽くす等、その地位を不当に害することのないよう配慮すべきであるが、このような配慮要請は明文上の義務ではない以上、認定処分の違法の理由とはならない。

    2・・・妥当でない

    本肢は、条例に基づく認定処分における「手続的配慮義務」の有無と、その違反が処分の違法性に影響を及ぼすかどうかが問われています。

    この点について判断を示したのが、最判平成16年12月24日(いわゆる紀伊長島町水道水源保護条例事件)です。

    この判決では、以下のような事情を重視しています。

    • 町は条例制定の時点で、当該事業者が産業廃棄物処理施設の設置を計画し、既に許可申請手続きを進めていたことを知っていた。
    • 水源の保護と施設の設置という公益間の調整を図る機会が、町にはあった。
    • にもかかわらず、町は条例に基づく認定処分を行う際に、事業者との十分な協議を行わず、その立場に配慮する措置も取らなかった。

    判例は、上記のような事情の下では、町はたとえ明文の規定がなくとも
    上告人と十分な協議を尽くし、地下水使用量の限定を促すなど適切な指導を行い、その地位を不当に害することのないよう配慮すべき義務がある
    としました。
    そして、そのような義務に違反して処分が行われた場合には、
    当該処分は違法である」
    と明確に述べています。

    つまり、たとえ条例に明文で配慮義務が規定されていなくても、具体的状況に照らして、行政には合理的配慮を行う義務が生じうるということです。

    よって、本肢の「配慮要請は明文上の義務ではない以上、処分の違法理由にはならない」という記述は、判例の趣旨に反するものであり、妥当でないと判断されます。

    3.法の一般原則である信義則の法理は、行政法関係においても一般に適用されるものであるとはいえ、租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、租税法規に適合する課税処分について信義則の法理の適用により当該課税処分を違法なものとして取り消すことは、争われた事案の個別の状況や特段の事情の有無にかかわらず、租税法律主義に反するものとして認められない。

    3・・・妥当でない

    本肢では、租税法関係における信義則の適用が問題となっています。

    これに関する代表的な判例が、最判昭和62年10月30日です。

    この判決では以下のように述べられています。

    • 信義則(信義誠実の原則)は、法の一般原理として行政法関係にも原則として適用される。
    • ただし、租税法関係においては、憲法84条に基づく「租税法律主義」が厳格に適用されるため、信義則の適用は慎重であるべきとされます。
    • それでも、次のような「特段の事情」がある場合には、信義則の適用により、たとえ課税処分が法令に形式的に適合していたとしても、その違法性が認められる可能性があるとされました。
      「租税法規の適用における納税者間の平等・公平という要請を犠牲にしてもなお、当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存在する場合」

      つまり、信義則がまったく適用されないというわけではなく、あくまで限定的な適用が認められるという立場です。

      本肢では、「争われた事案の個別の状況や特段の事情の有無にかかわらず、信義則の適用は認められない」と述べていますが、これは判例の立場と相反する内容です。

      したがって、本肢は妥当でないと判断されます。

      4.地方公共団体が将来にわたって継続すべき施策を決定した場合でも、当該施策が社会情勢の変動等に伴って変更されることがあることは当然であるが、当該地方公共団体の勧告ないし勧誘に動機付けられて施策の継続を前提とした活動に入った者が社会観念上看過することのできない程度の積極的損害を被る場合において、地方公共団体が当該損害を補償するなどの措置を講ずることなく施策を変更することは、それがやむをえない客観的事情によるのでない限り、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法となる。

      4・・・妥当である

      この問題は、「行政による施策の変更と信頼保護原則」の関係がテーマです。
      これに関して重要な判例が、最判昭和56年1月27日(いわゆる「宜野座工場誘致事件」)です。

      この事件では、次のような事案が問題となりました。

      • 村(地方公共団体)は、積極的に企業誘致を進め、企業に対して協力や勧誘を行っていた。
      • 企業はこれに基づいて工場建設の準備を進め、相応の投資をした。
      • ところが、選挙で誘致反対派の村長が当選し、村が誘致方針を180度転換し、協力を拒否する方針に切り替えた。

      このような状況において、最高裁は以下のように判断しました。

      • 地方公共団体の施策は、社会情勢の変動等に応じて変更されうることは当然である。
      • しかし、地方公共団体の勧誘等を信頼して企業が重大な投資を行い、看過し得ない損害を被る場合には、地方公共団体はその損失に対して何らかの補償措置を講じることが期待される
      • そのような措置なく一方的に施策を転換した場合、信頼関係を破壊するものであり、違法性を帯び、不法行為責任を問われる可能性があるとされました。

        したがって、本肢の「一定の施策変更がやむを得ない客観的事情によるのでない限り、損害補償等の措置を講じることなく施策を変更することは、信頼関係を不当に破壊し違法となる」という記述は、判例の趣旨と一致しており妥当であるといえます。

        5.国の通達に基づいて、地方公共団体が被爆者援護法 * 等に基づく健康管理手当の支給を打ち切った後、当該通達が法律の解釈を誤ったものであるとして廃止された場合であっても、行政機関は通達に従い法律を執行する義務があることからすれば、廃止前の通達に基づいて打ち切られていた手当の支払いを求める訴訟において、地方公共団体が消滅時効を主張することは信義則に反しない。

        5・・・妥当でない

        この問題は、行政機関が誤った通達に基づいて処分を行った場合に、その後の訴訟において時効を主張できるか(信義則との関係)がテーマです。

        これに関して重要な判例が、「最判平成19年2月6日(在ブラジル被爆者健康管理手当等請求事件)」です。

        事案の概要

        • 被爆者に対して健康管理手当が支給されていた。
        • 被爆者が外国に出国したことを理由に、国の通達に従って手当の支給が打ち切られた。
        • しかし、その通達は法律の解釈を誤ったものであるとして後に廃止された。
        • 被爆者が未支給分の手当の支給を求めて提訴。
        • その際、地方公共団体が「支給請求権は時効により消滅した」と主張。

        判例の判断

        最高裁は、以下のように判断しました。

        地方公共団体が国の誤った通達に従い支給を打ち切ったにもかかわらず、のちに受給者が請求権を行使してきた際に、「時効で消滅した」と主張するのは、「自ら違法な処理をした行政機関が、そのことによって権利行使を困難にさせた結果を根拠に、支払いを拒絶するに等しい」

        として、「信義則に反し、許されない」としました。

        つまり、形式的には時効が成立していたとしても、信義則によって時効の援用が制限されることがあるというわけです。したがって、本肢の「時効の主張は信義則に反しない」とする記述は、判例の示す法理に反しており、妥当でないと判断されます。


        令和6年(2024年)過去問

        問1 基礎法学 問31 民法
        問2 基礎法学 問32 民法
        問3 憲法 問33 民法
        問4 憲法 問34 民法
        問5 憲法 問35 民法
        問6 憲法 問36 商法
        問7 憲法 問37 会社法
        問8 行政法 問38 会社法
        問9 行政法 問39 会社法
        問10 行政法 問40 会社法
        問11 行政手続法 問41 多肢選択
        問12 行政手続法 問42 多肢選択
        問13 行政手続法 問43 多肢選択
        問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
        問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
        問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
        問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
        問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
        問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
        問20 国家賠償法 問50 基礎知識
        問21 国家賠償法 問51 基礎知識
        問22 地方自治法 問52 行政書士法
        問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
        問24 地方自治法 問54 基礎知識
        問25 行政法 問55 基礎知識
        問26 公文書管理法 問56 基礎知識
        問27 民法 問57 個人情報保護法
        問28 民法 問58 著作権の関係上省略
        問29 民法 問59 著作権の関係上省略
        問30 民法 問60 著作権の関係上省略

        令和6年・2024|問8|行政法

        行政行為(処分)に関する次の記述のうち、法令の定めまたは最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

        1. 処分に瑕疵があることを理由とする処分の取消しは、行政事件訴訟法上の取消訴訟における判決のほか、行政不服審査法上の不服申立てにおける裁決または決定によってのみすることができる。
        2. 金銭納付義務を課す処分の違法を理由として国家賠償請求をするためには、事前に当該処分が取り消されていなければならない。
        3. 処分取消訴訟の出訴期間が経過した後に当該処分の無効を争うための訴訟としては、行政事件訴訟法が法定する無効確認の訴えのみが許されている。
        4. 処分Aの違法がこれに後続する処分Bに承継されることが認められる場合であっても、処分Aの取消訴訟の出訴期間が経過している場合には、処分Bの取消訴訟において処分Aの違法を主張することは許されない。
        5. 瑕疵が重大であるとされた処分は、当該瑕疵の存在が明白なものであるとまでは認められなくても、無効とされる場合がある。

        >解答と解説はこちら


        【答え】:5
        【解説】
        1.処分に瑕疵があることを理由とする処分の取消しは、行政事件訴訟法上の取消訴訟における判決のほか、行政不服審査法上の不服申立てにおける裁決または決定によってのみすることができる。

        1・・・妥当でない

        本肢の記述は 妥当でありません。

        たしかに、処分に瑕疵がある場合、その取消しを求める方法としては、

        • 行政事件訴訟法による 取消訴訟
        • 行政不服審査法による 不服申立て(審査請求など)

        などの法的手続きを通じて行うのが一般的です。

        しかし、それだけではありません。行政処分には、行政庁が自らの判断で処分を取り消す「職権取消し」という方法も認められています。

        よって、処分の取消しは訴訟や不服申立てだけでなく、職権によっても行うことができるため、本肢の「〜によってのみすることができる」という断定的な表現は誤りです。

        2.金銭納付義務を課す処分の違法を理由として国家賠償請求をするためには、事前に当該処分が取り消されていなければならない。

        2・・・妥当でない

        国家賠償請求の前提として、行政処分が事前に取り消されている必要はないため、本肢は誤りです。

        判例(最判昭和36年4月21日)でも、「行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ処分の救済または無効確認の判決を得る必要はない。」と言っています。

        この判例は、国家賠償請求と行政処分の取消訴訟とは別個の法的救済手段であり、互いに独立していることを明確にしています。

        3.処分取消訴訟の出訴期間が経過した後に当該処分の無効を争うための訴訟としては、行政事件訴訟法が法定する無効確認の訴えのみが許されている。

        3・・・妥当でない

        無効を争う訴訟手段は、無効確認訴訟だけに限られるわけではありません。以下のように他の訴訟類型でも無効を主張することが可能です。

        • 民事訴訟
          例えば、行政処分に基づいてされた契約が無効であることを理由に損害賠償を請求する場合など、民事訴訟の中で処分の無効を抗弁として主張できます。
        • 当事者訴訟
          処分に基づく法律関係に関する紛争(たとえば公務員の地位確認など)において、処分が無効であることを前提として争うことが可能です。

        よって、本肢は「無効を争う方法が行政事件訴訟法上の無効確認訴訟だけに限られる」としている点が誤りです。

        4.処分Aの違法がこれに後続する処分Bに承継されることが認められる場合であっても、処分Aの取消訴訟の出訴期間が経過している場合には、処分Bの取消訴訟において処分Aの違法を主張することは許されない。

        4・・・妥当でない

        「違法性の承継」が認められる場合には、たとえ先行処分(処分A)の出訴期間が過ぎていたとしても、後行処分(処分B)の取消訴訟において処分Aの違法を主張することが許されるので、本肢は妥当ではありません。

        最判平成21年12月17日(建築確認・安全認定の違法性承継)

        建築確認処分(後行)に対し、その前提となる安全認定処分(先行)が違法であることを争点とした事案です。

        判例は、「建築確認と安全認定は目的が共通し、結合して効果を発揮するものである
        とし、「出訴期間が経過した安全認定の違法を、建築確認の取消訴訟において主張することは許される」としました。

        よって、違法性の承継が認められる場合には、たとえ先行処分(処分A)の出訴期間が過ぎていても、後行処分(処分B)の取消訴訟において処分Aの違法を主張することが可能です。

        この点は周辺知識も含めて理解していただきたいので、個別指導で解説します。

        5.瑕疵が重大であるとされた処分は、当該瑕疵の存在が明白なものであるとまでは認められなくても、無効とされる場合がある。

        5・・・妥当である

        通常、ある処分が「無効」とされるには、その瑕疵が重大かつ明白であることが求められます(「重大かつ明白」説)。

        しかし、この原則には例外があります。
        つまり、瑕疵が重大であれば、それが「明白」でなくても処分が無効とされることがある
        ということです。

        判例:最一小判昭和48年4月26日(いわゆる大牟田税務署事件)

        この判例は、課税処分に関するものですが、重要な判断を示しました。

        「課税処分に重大な内容上の過誤があり、しかもそれが課税要件の根幹部分に関わるものであって、不服申立期間の経過によって不可争力が生じていたとしても、それを理由に課税処分の不利益を受け入れさせるのは著しく不当だと認められるような特別の事情がある場合には、その処分は当然無効である」

        つまり、この判例では、次のような事情があれば、「明白性」がなくても無効とされることを認めています。

        • 課税処分に重大な過誤がある
        • 課税要件の根幹にかかわる
        • 不服申立期間の経過で救済が困難
        • 第三者の信頼保護などの支障がない
        • それでも納税者に不利益を強いるのは著しく不当である

        したがって、本肢の記述は判例に沿っており、妥当であるといえます。


        令和6年(2024年)過去問

        問1 基礎法学 問31 民法
        問2 基礎法学 問32 民法
        問3 憲法 問33 民法
        問4 憲法 問34 民法
        問5 憲法 問35 民法
        問6 憲法 問36 商法
        問7 憲法 問37 会社法
        問8 行政法 問38 会社法
        問9 行政法 問39 会社法
        問10 行政法 問40 会社法
        問11 行政手続法 問41 多肢選択
        問12 行政手続法 問42 多肢選択
        問13 行政手続法 問43 多肢選択
        問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
        問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
        問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
        問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
        問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
        問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
        問20 国家賠償法 問50 基礎知識
        問21 国家賠償法 問51 基礎知識
        問22 地方自治法 問52 行政書士法
        問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
        問24 地方自治法 問54 基礎知識
        問25 行政法 問55 基礎知識
        問26 公文書管理法 問56 基礎知識
        問27 民法 問57 個人情報保護法
        問28 民法 問58 著作権の関係上省略
        問29 民法 問59 著作権の関係上省略
        問30 民法 問60 著作権の関係上省略