令和6年度(2024年度)過去問

令和6年・2024|問28|民法

無効および取消しに関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 贈与契約が無効であるにもかかわらず、既に贈与者の履行が完了している場合、受贈者は受け取った目的物を贈与者に返還しなければならず、それが滅失して返還できないときは、贈与契約が無効であることを知らなかったとしても、その目的物の現存利益の返還では足りない。
  2. 売買契約が無効であるにもかかわらず、既に当事者双方の債務の履行が完了している場合、売主は受け取った金銭を善意で費消していたとしても、その全額を返還しなければならない。
  3. 秘密証書遺言は、法が定める方式に欠けるものであるときは無効であるが、それが自筆証書による遺言の方式を具備しているときは、自筆証書遺言としてその効力を有する。
  4. 未成年者が親権者の同意を得ずに締結した契約について、未成年者本人が、制限行為能力を理由としてこれを取り消す場合、親権者の同意を得る必要はない。
  5. 取り消すことができる契約につき、取消権を有する当事者が、追認をすることができる時以後に、異議をとどめずにその履行を請求した場合、これにより同人は取消権を失う。

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【答え】:1
【解説】
1.贈与契約が無効であるにもかかわらず、既に贈与者の履行が完了している場合、受贈者は受け取った目的物を贈与者に返還しなければならず、それが滅失して返還できないときは、贈与契約が無効であることを知らなかったとしても、その目的物の現存利益の返還では足りない。

1・・・誤り

贈与契約のような無償行為が無効である場合、民法121条の2第2項が適用されます。

無効な無償行為に基づいて給付を受けた者が、その無効を知らなかった(善意)ときは、現に利益を受けている限度でのみ返還義務を負う。

つまり、受贈者が贈与契約が無効であることを知らず、善意であった場合には、目的物が滅失していたり、すでに使ってしまって手元に残っていなければ、現存利益がない部分についての返還義務は免れることになります。

この規定は、「善意の受贈者に過度な不利益を与えない」ことを目的としており、現に得ている利益の範囲で返還すれば足りるという立場です。
したがって、記述のように「現存利益の返還では足りない」とするのは誤りです。

2.売買契約が無効であるにもかかわらず、既に当事者双方の債務の履行が完了している場合、売主は受け取った金銭を善意で費消していたとしても、その全額を返還しなければならない。

2・・・正しい

売買契約は有償契約であるため、民法121条の2第1項が適用されます。

無効な法律行為に基づいて給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。

つまり、契約が無効であった場合、たとえ受領した者(ここでは売主)がその給付を善意で使ってしまっていたとしても、その金銭は全額返還しなければならないということになります。

これは、有償契約では当事者双方が対価的な給付を受けているため、不当利得が明確に生じるからであり、受領者が善意であったかどうかは返還義務の有無に影響しません。

なお、買主側が目的物をすでに消費または滅失させていた場合には、その価値に見合う金銭の支払義務(価額償還義務)を負うことになります。

3.秘密証書遺言は、法が定める方式に欠けるものであるときは無効であるが、それが自筆証書による遺言の方式を具備しているときは、自筆証書遺言としてその効力を有する。

3・・・正しい

秘密証書遺言は、民法970条に定められた厳格な方式に従わなければなりません。
たとえば封印や、公証人・証人の立会い、封紙への記載といった手続きが必要です。

しかし、仮に秘密証書遺言としての方式(民法970条)を欠いていた場合であっても、その遺言書が自筆証書遺言の方式(民法968条)を満たしていれば、自筆証書遺言として有効になります(民法971条)。

✅ 具体的には

  • 全文・日付・氏名を遺言者が自書している
  • 押印がある

といった自筆証書遺言としての基本的要件を満たしていれば秘密証書遺言としては無効でも、自筆証書遺言として有効になるというわけです。

これは、遺言者の最終意思をできる限り尊重し、形式的な不備だけで無効とするのを避けるための規定です。

4.未成年者が親権者の同意を得ずに締結した契約について、未成年者本人が、制限行為能力を理由としてこれを取り消す場合、親権者の同意を得る必要はない。

4・・・正しい

未成年者が、法定代理人(=親権者)の同意を得ないで契約をした場合、その契約は取り消すことができます(民法5条2項)。

この取消権は、法定代理人だけでなく、未成年者本人も行使できます(民法120条1項)。

そして、取り消すという行為自体は、もともとの契約をなかったことにする行為(=未成年者を保護するための制度)なので、取消しの際に親権者の同意は必要ありません。

つまり、「未成年者が同意を得ないで契約してしまった。でもそれを本人が取り消したい」っといった場合、本人の意思だけで有効に取り消せるのです。

5.取り消すことができる契約につき、取消権を有する当事者が、追認をすることができる時以後に、異議をとどめずにその履行を請求した場合、これにより同人は取消権を失う。

5・・・正しい

取り消すことができる契約は、追認されると、もはや取り消すことはできなくなります(民法122条)。

そして、追認には「明示の追認」だけでなく、行為や態度から黙示的に追認とみなされる場合(法定追認)もあります。
この「法定追認」にあたる行為の一つが、異議をとどめずに履行を請求することです(民法125条2号)。

民法125条
次に掲げる事実があったときは、取り消すことができる行為を追認したものとみなす。
(中略)
二 追認をすることができる時以後に、異議をとどめずにその履行を請求したとき。

つまり、取消権者が「この契約には取消事由がある」とわかっていながら、それに対して何の異議も出さずに履行を求めた場合、追認したものとみなされ取消権を失うことになります。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問26|公文書管理法

公文書管理法 * について説明する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 (注) * 公文書等の管理に関する法律

  1. 公文書管理法に定める「行政文書」とは、同法の定める例外を除き、行政機関の職員が職務上作成しまたは取得した文書で、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして当該行政機関が保有しているものであるとされる。
  2. 公文書管理法は、行政機関の職員に対し、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き文書を作成しなければならないという文書作成義務を定め、違反した職員に対する罰則を定めている。
  3. 行政機関の職員が行政文書を作成・取得したときには、当該行政機関の長は、政令で定めるところにより、当該行政文書について分類し、名称を付するとともに、保存期間および保存期間の満了する日を設定しなければならない。
  4. 行政機関の長は、行政文書の管理が公文書管理法の規定に基づき適正に行われることを確保するため、行政文書の管理に関する定め(行政文書管理規則)を設けなければならない。
  5. 行政機関の長は、行政文書ファイル管理簿の記載状況その他の行政文書の管理の状況について、毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならない。

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【答え】:2
【解説】
1.公文書管理法に定める「行政文書」とは、同法の定める例外を除き、行政機関の職員が職務上作成しまたは取得した文書で、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして当該行政機関が保有しているものであるとされる。

1・・・正しい

本肢は正しいです。

公文書管理法第2条第4項では、「行政文書」について、以下のように定義されています。

行政機関の職員が職務上作成し、または取得した文書であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。

つまり、以下の3つの条件を満たすものが「行政文書」です。

  1. 職務上作成・取得した文書であること
  2. 組織として利用する目的で作成・取得されたこと
  3. 行政機関が実際に保有していること

ただし、行政文書に該当しないもの

次のようなものは、たとえ行政機関が保有していても「行政文書」には該当しません(除外されます)。

不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの

たとえば以下のような出版物です。

  • 官報
  • 白書
  • 新聞
  • 雑誌
  • 書籍 など

これらは広く一般に販売・配布されるため、行政文書には含まれません。

特定歴史公文書等

国立公文書館などで保存・管理される「特定歴史公文書等」は、既に歴史資料として扱われるものであり、現行の行政活動とは切り離されています。

歴史的・文化的・学術的資料として特別に管理されているもの

政令で定める研究所などの施設で、特別な管理下に置かれている資料は、行政文書にはあたらないとされています。

つまり、行政文書とは、行政機関の職員が職務上作成・取得し、組織的に用いるために保有している文書のことです。
ただし、一般向けに発行される出版物や、歴史的・文化的資料などは除かれます。

2.公文書管理法は、行政機関の職員に対し、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き文書を作成しなければならないという文書作成義務を定め、違反した職員に対する罰則を定めている。

2・・・誤り

本肢は誤りです。

確かに、公文書管理法では、行政機関の職員に対して文書作成義務があると定められています。しかし、違反した場合の罰則は定められていません

公文書管理法第4条第1項では、次のように定められています。

行政機関の職員は、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、
当該行政機関における意思決定の過程および事務・事業の実績を
合理的に跡付け、または検証することができるように文書を作成しなければならない。

つまり、単なる事務記録ではなく、意思決定や実績の記録性・検証可能性が求められているという点が重要です。

文書作成義務の例外(除外される事項)

以下のような事項については、文書作成義務の対象外となります。

  1. 法令の制定・改廃およびその経緯
  2. 閣議、省議、各種会議の決定または了解とその経緯
  3. 複数の行政機関による申合せや、基準の設定等とその経緯
  4. 個人・法人の権利義務に関する得喪とその経緯
  5. 職員の人事に関する事項

これらは政策形成や内部運用に関するもので、すべてについて文書を義務づけると行政運営に過度な負担となるため、除外されています。

3.行政機関の職員が行政文書を作成・取得したときには、当該行政機関の長は、政令で定めるところにより、当該行政文書について分類し、名称を付するとともに、保存期間および保存期間の満了する日を設定しなければならない。

3・・・正しい

この記述は正しいです。

公文書管理法第5条第1項では、行政文書の作成・取得後の適切な管理のため、行政機関の長に次のような義務が課されています。

行政機関の職員が行政文書を作成または取得したときは、当該行政機関の長は政令で定めるところにより、その行政文書について「分類」「名称の付与」「保存期間の設定」「保存期間の満了日の設定」をしなければならない。

この条文の趣旨は、行政文書を後から正確に探し出し、適切に保存・廃棄できるようにするためのルールを定めている点にあります。

4.行政機関の長は、行政文書の管理が公文書管理法の規定に基づき適正に行われることを確保するため、行政文書の管理に関する定め(行政文書管理規則)を設けなければならない。

4・・・正しい

公文書管理法第10条第1項では、行政機関の長に対して、行政文書の管理を適正に行うためのルール(=行政文書管理規則)を策定する義務が課されています。

公文書管理法10条1項
各行政機関の長は、行政文書の管理が
第4条(文書作成義務)から第9条(歴史的文書の移管等)までの規定に基づき
適正に行われることを確保するため、行政文書の管理に関する定め(行政文書管理規則)を設けなければならない。

よって、本肢は正しいです。

「行政文書管理規則」とは?

これは、各行政機関ごとに作成する内部ルールです。
つまり、公文書管理法の内容を踏まえて、各機関が独自に運用できるように整備したルールのことです。

なぜ必要なのか?

行政文書の管理は、公文書の信頼性・保存性・検証可能性を確保するために重要です。
そのため、各機関の実情に即した明確なルールづくりが求められます。

5.行政機関の長は、行政文書ファイル管理簿の記載状況その他の行政文書の管理の状況について、毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならない。

5・・・正しい

公文書管理法第9条第1項では、行政機関の長に対し、行政文書の管理状況に関する年次報告義務が定められています。

公文書管理法9条1項
各行政機関の長は、
行政文書ファイル管理簿の記載状況その他の行政文書の管理の状況について、
毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならない。

よって本肢は正しいです。

「行政文書ファイル管理簿」とは?

これは、各行政機関が保有する行政文書ファイルの一覧表のようなもので、

  • 文書の名称
  • 作成年月日
  • 保存期間
  • 管理部署

などの情報が記録されています。

これを適切に記載・更新しているかどうかが、行政文書管理の透明性を担保する鍵となります。

「その他の管理の状況」とは?

  • 文書の分類・保存・廃棄の手続きが適切に行われているか
  • 保存期間の設定が正確か
  • 移管や廃棄がルールに従って処理されているか

などを指します。

なぜ内閣総理大臣に報告?

報告先が「内閣総理大臣」であるのは、政府全体としての文書管理の統一性と透明性を保つためです。
内閣総理大臣はこの情報をもとに、行政文書管理の実態を把握し、必要に応じて改善措置をとることができます。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問25|行政法

公立学校をめぐる裁判に関する次のア~オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.公立高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分または退学処分を行った場合、裁判所がその処分の適否を審査するにあたっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきである。

イ.教育委員会が、公立学校の教頭で勧奨退職に応じた者を校長に任命した上で同日退職を承認する処分をした場合において、当該処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するものといえないときは、校長としての退職手当の支出決定は財務会計法規上の義務に違反する違法なものにはあたらない。

ウ.公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、当該施設の管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障がない場合であっても、学校施設の目的および用途と当該使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により許可をしないこともできる。

エ.公立高等学校等の教職員に対し、卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の校長の職務命令がなされた場合において、当該職務命令への違反を理由とする懲戒処分の差止めを求める訴えについて、仮に懲戒処分が反復継続的・累積加重的にされる危険があるとしても、訴えの要件である「重大な損害を生ずるおそれ」があるとは認められない。

オ.市立学校教諭が同一市内の他の中学校教諭に転任される処分を受けた場合において、当該処分が客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に不利益を伴うものであるとしても、当該教諭には転任処分の取消しを求める訴えの利益が認められる余地はない。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:3

【解説】
ア.公立高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分または退学処分を行った場合、裁判所がその処分の適否を審査するにあたっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきである。

ア・・・妥当でない

本肢は、いわゆる「エホバの証人剣道受講拒否事件」(最判平成8年3月8日)に関連するものです。

この事件では、宗教上の理由で剣道の授業を拒否した学生に対して、高等専門学校の校長が原級留置の処分を行ったことが争われました。

この判例で、最高裁は次のように述べています。

  • 学校教育における進級や退学といった処分は、教育上の専門的・技術的判断を含むものであり、校長の合理的な教育的裁量に委ねられるべきである。
  • よって、裁判所がこのような処分の適否を判断するにあたっては、校長と同じ立場に立って、処分すべきかどうかを再判断することは許されない
  • 処分が「全く事実の基礎を欠く」か、「社会観念上著しく妥当性を欠く」など、裁量権の逸脱や濫用が認められる場合に限って違法と判断すべきである。

つまり、裁判所は、校長の判断と「同じ目線」で処分の当否を再評価するわけではなく、裁量権が逸脱・濫用されたかどうかを限定的に審査するにとどまります。

したがって、本肢のように「裁判所が校長と同一の立場に立って判断すべき」とする見解は、判例に反しており妥当でないといえます。

イ.教育委員会が、公立学校の教頭で勧奨退職に応じた者を校長に任命した上で同日退職を承認する処分をした場合において、当該処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するものといえないときは、校長としての退職手当の支出決定は財務会計法規上の義務に違反する違法なものにはあたらない。

イ・・・妥当である

この選択肢は、最判平成4年12月15日の判例(いわゆる「1日校長事件」)に基づく正しい記述です。

事案の概要

ある地方公共団体で、公立学校の教頭が勧奨退職に応じるにあたり、退職前の1日だけ校長に昇任させ、そのうえで退職が承認されました。

これにより、教頭としてではなく校長としての退職手当が支給されることになりました。

この行為について、「形式的に昇格させることで退職手当を水増ししている」として、支出の違法性が争われました。

最高裁の判断

教頭を校長に昇格させ、同日に退職を承認するという処分があったとしても、それが著しく合理性を欠き、予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵があるとまではいえない限り、違法とはならない

よって、地方公共団体の長が校長としての退職手当を支給したとしても、その支出決定が財務会計法規上の義務に違反して違法なものとまではいえない

したがって、本肢は判例に即した正しい記述であり、妥当であると評価できます。

ポイント整理については個別指導で解説します。

ウ.公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、当該施設の管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障がない場合であっても、学校施設の目的および用途と当該使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により許可をしないこともできる。

ウ・・・妥当である

この設問は、最判平成18年2月7日の判例(いわゆる「学校施設使用不許可処分事件」)に基づいたものです。

判例の背景

公立小中学校の教職員で構成される職員団体が、教育研究集会の開催のために学校施設を使いたいと申請したところ、市教育委員会はこれを不許可としました。

この不許可処分の適法性が争われたのが本件です。

裁判所の判断

最高裁は次のような判断基準を示しました。

✅ 原則:学校施設の目的外使用の許可・不許可は、当該施設の管理者の裁量に委ねられる

✅ 許可を拒むことができる場合:学校教育上支障があると判断される場合には、許可をしないことができる

ここでいう「支障」には、以下のような内容も含まれます。

単なる物理的な支障だけでなく、「教育的配慮(例:児童・生徒に精神的悪影響が及ぶおそれ)」「将来の教育上の支障が明白に予見される場合」も含む。

そして本件では、市教育委員会が「妨害行動があるかもしれない」という理由で不許可にしましたが、そのおそれが具体的とはいえなかったこと他に考慮すべき重要な事実を十分に見ていなかったことなどから、最高裁はこの不許可処分を「裁量権の逸脱・濫用で違法」としました。

したがって、本肢の内容は妥当であり、正しいです。

エ.公立高等学校等の教職員に対し、卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の校長の職務命令がなされた場合において、当該職務命令への違反を理由とする懲戒処分の差止めを求める訴えについて、仮に懲戒処分が反復継続的・累積加重的にされる危険があるとしても、訴えの要件である「重大な損害を生ずるおそれ」があるとは認められない。

エ・・・妥当でない

この設問は、最判平成24年2月9日(国旗・国歌訴訟)に関するものです。

事案の概要
東京都立学校の教員が、校長の職務命令に反して卒業式で国歌斉唱の際に起立しなかったとして懲戒処分を受ける可能性があることに対し、処分の差止めを求めた事件です。

問題となったのは、差止訴訟に必要な訴訟要件である「重大な損害を生ずるおそれ」があるかどうかです。

裁判所の判断
最高裁は、以下の点を重視して「重大な損害を生ずるおそれ」があると判断しました。

  • 教員は毎年度の卒業式・入学式等で職務命令に従うことを強いられ、違反すれば懲戒処分を受ける立場にある。
  • 処分は反復継続的かつ累積的に行われるおそれがある。
  • 一度の処分だけであれば取消訴訟などで救済可能かもしれないが、継続的・加重的な処分がなされると、回復が著しく困難になる。

したがって、

「処分がされる前に差止めを命ずる方法でなければ救済を受けることが困難なもの」といえる
として、「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるとしました。

オ.市立学校教諭が同一市内の他の中学校教諭に転任される処分を受けた場合において、当該処分が客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に不利益を伴うものであるとしても、当該教諭には転任処分の取消しを求める訴えの利益が認められる余地はない。

オ・・・妥当でない

この問題は、最判昭和61年10月23日(教員の転任処分取消訴訟)に基づいています。

事案の概要
ある市立中学校の教員が、市内の別の中学校に転任するよう命じられたことに対し、その処分の取消しを求めて訴えを提起しました。

争点は、「このような転任処分について取消訴訟を起こす法律上の利益(訴えの利益)」があるかどうかです。

最高裁の判断
最高裁は、原則として次のように判断しました。

✅ 原則:転任処分は単なる配置換えにすぎず、教員の身分や俸給などの法的地位に影響を及ぼさない。

勤務場所・勤務内容に明確な不利益がない場合には、取消しを求める訴えの利益は認められない。

✅ ただし:「特段の事情」がある場合には、訴えの利益が認められる可能性がある。

つまり、裁判所は「絶対に認められない」とは言っておらず、状況によっては取消訴訟が可能になる余地を残しているのです。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問24|地方自治法

普通地方公共団体の条例または規則に関する次の記述のうち、地方自治法の定めに照らし、妥当なものはどれか。

  1. 普通地方公共団体の長が規則を定めるのは、法律または条例による個別の委任がある場合に限られる。
  2. 普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて条例を定めることができるが、条例において罰則を定めるためには、その旨を委任する個別の法令の定めが必要である。
  3. 普通地方公共団体は、特定の者のためにする事務につき手数料を徴収することができるが、この手数料については、法律またはこれに基づく政令に定めるものを除いて、長の定める規則によらなければならない。
  4. 普通地方公共団体の委員会は、個別の法律の定めるところにより、法令等に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を定めることができる。
  5. 普通地方公共団体は条例で罰則を設けることができるが、その内容は禁錮、罰金、科料などの行政刑罰に限られ、行政上の秩序罰である過料については、長が定める規則によらなければならない。

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【答え】:4
【解説】
1.普通地方公共団体の長が規則を定めるのは、法律または条例による個別の委任がある場合に限られる。

1・・・妥当でない

この選択肢は、「普通地方公共団体の長が規則を定めるには、法律または条例による個別の委任が必要だ」としていますが、それは誤りです。

地方自治法第15条第1項では、次のように定められています。

普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務について規則を制定することができる。

つまり、法律や条例の個別の委任がなくてもその長の権限に属する事務については、法令に反しない範囲で自由に規則を定めることができるのです。

2.普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて条例を定めることができるが、条例において罰則を定めるためには、その旨を委任する個別の法令の定めが必要である。

2・・・妥当でない

確かに、普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて条例を制定することができます(地方自治法第14条第1項)。
しかし、この選択肢の後半「罰則を定めるには個別の法令の委任が必要である」という部分が誤りです。

罰則付き条例は、個別の委任がなくてもOK

地方自治法第14条第3項では、次のように定められています。

普通地方公共団体は、法令に特別の定めがある場合を除いて、その条例中に、違反者に対して一定の刑罰または過料を科す旨の規定を設けることができる。

つまり、個別の法令による委任がなくても、条例の中に罰則を設けることが可能です(包括的授権)。

設定できる罰則の範囲

条例により科すことができる刑罰・過料の範囲は、以下のとおり上限が定められています(地方自治法14条3項)。

  • 2年以下の懲役または禁錮
  • 100万円以下の罰金
  • 拘留
  • 科料
  • 没収
  • 5万円以下の過料

※ 刑の内容の詳細(例:科料は1000円以上1万円未満など)は刑法等に規定があります。

3.普通地方公共団体は、特定の者のためにする事務につき手数料を徴収することができるが、この手数料については、法律またはこれに基づく政令に定めるものを除いて、長の定める規則によらなければならない。

3・・・妥当でない

選択肢の前半部分「普通地方公共団体は、特定の者のためにする事務について手数料を徴収することができる」という部分は正しいです。

しかし、後半部分「長の定める規則によらなければならない」は誤りであり、正しくは「条例」によって定めなければなりません。

地方自治法第227条
普通地方公共団体は、その事務で特定の者のためにするものについて、手数料を徴収することができる。

地方自治法第228条第1項
分担金、使用料、加入金及び手数料に関する事項については、条例でこれを定めなければならない。

つまり、手数料の徴収については、個別の規則ではなく、議会の議決を経た条例による定めが必要です。

特例:政令による標準手数料

なお、次のような特例もあります。

全国的に統一が必要な事務については、政令で定める手数料額を標準として条例を定めなければならない(同条後段)。

たとえば「旅券事務」など、全国一律の取扱いが求められるケースが該当します。

「特定の者のためにする事務」とは?

具体例としては次のような事務が該当します。

  • 住民票・印鑑証明の交付
  • 戸籍の附票の写しの交付
  • 書類・公簿の閲覧

これらはすべて、申請者個人の利益のために行われる行政サービスであり、費用の一部を手数料として負担してもらうことが正当とされます。

4.普通地方公共団体の委員会は、個別の法律の定めるところにより、法令等に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を定めることができる。

4・・・妥当である

普通地方公共団体には、長(知事・市町村長)だけでなく、委員会形式の執行機関が設けられていることがあります。たとえば、教育委員会、選挙管理委員会、監査委員などがそれに該当します。

こうした委員会は、独立した合議制の機関として、地方自治法等の定めに基づき、一定の事務を執行します。

地方自治法第138条の4第2項では、次のように規定されています。

委員会は、法律の定めるところにより、法令・条例または規則に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則その他の規程を定めることができる。

この規定により、委員会も法律の委任を受けて、自己の権限に関する範囲で規則を定めることができるのです。
ただし、「法令等に違反しないこと」が前提です。

5.普通地方公共団体は条例で罰則を設けることができるが、その内容は禁錮、罰金、科料などの行政刑罰に限られ、行政上の秩序罰である過料については、長が定める規則によらなければならない。

5・・・妥当でない

この選択肢の誤りは、「過料(行政上の秩序罰)は規則でしか定められない」としている点にあります。
実際には、過料は条例にも規則にも規定することができます

条例による罰則(地方自治法第14条第3項)
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがある場合を除き、次のような刑罰・過料を条例に規定できます。

  • 2年以下の懲役または禁錮
  • 100万円以下の罰金
  • 拘留
  • 科料
  • 没収
  • 5万円以下の過料

つまり、条例においても過料を含めた罰則規定が可能です。

規則による過料(地方自治法第15条第2項)
普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがある場合を除き、次のように規定できます。

規則に違反した者に対して、5万円以下の過料を科すことができる。

つまり、長の定める規則においても過料の規定が可能です。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問23|地方自治法

住民監査請求および住民訴訟に関する次の記述のうち、地方自治法の定めに照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 住民監査請求は、普通地方公共団体の住民が当該普通地方公共団体の監査委員に対して行う。
  2. 住民訴訟は、あらかじめ、地方自治法に基づく住民監査請求をしていなければ、適法に提起することができない。
  3. 住民訴訟で争うことができる事項は、住民監査請求の対象となるものに限定される。
  4. 住民訴訟において原告住民がすることができる請求は、地方自治法が列挙するものに限定される。
  5. 損害賠償の請求をすることを普通地方公共団体の執行機関に対して求める住民訴訟において、原告住民の請求を認容する判決が確定した場合は、当該原告住民に対して、当該損害賠償請求に係る賠償金が支払われることになる。

>解答と解説はこちら


【答え】:5
【解説】
1.住民監査請求は、普通地方公共団体の住民が当該普通地方公共団体の監査委員に対して行う。

1・・・妥当である

住民監査請求とは、地方自治法第242条第1項に基づき、普通地方公共団体(市区町村や都道府県)の住民が、当該団体の監査委員に対して行う請求です。

この請求では、住民は次のような目的で監査を求めることができます:

  • 違法・不当な財務会計上の行為の防止
  • すでに行われた違法・不当な行為の是正
  • 義務を怠っている事実の是正(履行)
  • 上記行為・不作為によって生じた損害の補填措置

ポイント

  • 住民監査請求は監査委員に対して行う
  • 請求できるのは「住民」であればよく、次のような要件は不要。
    ・日本国籍
    ・選挙権の有無
    ・納税義務の有無
  • 法律上の行為能力を有する自然人・法人を問わず請求可能。
  • 住民1人でも請求可能であり、複数人による共同請求である必要はない。

よって、本肢は妥当である。

2.住民訴訟は、あらかじめ、地方自治法に基づく住民監査請求をしていなければ、適法に提起することができない。

2・・・妥当である

住民訴訟は、住民が地方公共団体の違法な公金支出や財産の管理などに対して、司法の場で是正を求める制度です。
しかし、住民訴訟を提起するには、原則として事前に住民監査請求を行っておく必要があります
この要件を「住民監査請求前置主義」といいます。

地方自治法第242条の2第1項柱書き

普通地方公共団体の住民は、第242条第1項の規定による請求(住民監査請求)をした場合において、訴えをもって~(中略)~住民訴訟を提起することができる。

つまり、住民監査請求をしないまま住民訴訟を起こしても、それは不適法となります。

本肢は周辺知識も重要なので、個別指導で解説します!

3.住民訴訟で争うことができる事項は、住民監査請求の対象となるものに限定される。

3・・・妥当である

住民訴訟で争うことができるのは、地方自治法第242条第1項に規定された住民監査請求の対象となる財務会計上の行為や不作為に限られます。
つまり、住民訴訟で裁判所に訴えることができるのは、住民監査請求と同じ範囲の問題に限られています。よって、本肢は妥当です。

住民監査請求・住民訴訟の対象となる行為

たとえば、以下のような行為や不作為です。

  • 違法な公金の支出
  • 違法な契約の締結
  • 財産の不当な管理・処分
  • 本来行うべき義務の不履行(怠る事実)

これらはすべて、地方公共団体の財務会計上の行為や不作為に該当します。

対象外となる行為については、個別指導で解説します!

4.住民訴訟において原告住民がすることができる請求は、地方自治法が列挙するものに限定される。

4・・・妥当である

住民訴訟において住民(原告)が提起できる訴訟の内容は、地方自治法第242条の2第1項で明確に類型化されており、その4類型に限定されています。
つまり、住民訴訟で行える請求は、法律で定められた範囲内でしか認められていません。

類型 内容 相手方
1号訴訟 違法な財務会計行為の差止め請求 行為を行う執行機関または職員
2号訴訟 違法な財務会計行為の取消し・無効確認請求 処分を行った行政庁の属する普通地方公共団体
3号訴訟 財務会計上の義務の不履行(怠る事実)の違法確認請求 義務を怠っている執行機関または職員
4号訴訟 損害賠償・不当利得返還を行うことを求める請求(間接訴訟) 執行機関または職員に対し、責任追及の請求を求める

 

5.損害賠償の請求をすることを普通地方公共団体の執行機関に対して求める住民訴訟において、原告住民の請求を認容する判決が確定した場合は、当該原告住民に対して、当該損害賠償請求に係る賠償金が支払われることになる。

5・・・妥当でない

住民訴訟のうち、4号訴訟(損害賠償・不当利得返還を求める訴訟)では、住民(原告)が「地方公共団体の長などに対して、第三者(加害者)に損害賠償請求を行うよう求める」内容の訴訟です。
この訴訟で住民が勝訴しても、損害賠償金や返還金は、原告住民に支払われるわけではありません。よって、本肢は妥当ではありません。

判決確定後の流れ

地方自治法第242条の3に基づき、以下のような手続が取られます。

  1. 判決が確定した場合
     ➡ 普通地方公共団体の長は、加害者に対して60日以内に請求をしなければならない(同法第242条の3第1項)。
  2. その請求に対して、加害者が支払わなかった場合
     ➡ 地方公共団体は、損害賠償請求訴訟を起こす義務がある(同法第242条の3第2項)。
  3. 実際に賠償金や返還金が支払われた場合
     ➡ それは地方公共団体の財政に戻ることになる。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問22|地方自治法

普通地方公共団体の事務に関する次の記述のうち、地方自治法の定めに照らし、妥当なものはどれか。

  1. 普通地方公共団体が処理する事務には、地域における事務と、その他の事務で法律またはこれに基づく政令により処理することとされるものとがある。
  2. 都道府県の法定受託事務とは、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるものであり、都道府県知事が国の機関として処理することとされている。
  3. 市町村の法定受託事務とは、国または都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるものであるから、これにつき市町村が条例を定めることはできない。
  4. 法定受託事務は、普通地方公共団体が当該団体自身の事務として処理するものであるから、地方自治法上の自治事務に含まれる。
  5. 地方自治法は、かつての同法が定めていた機関委任事務制度のような仕組みを定めていないため、現行法の下で普通地方公共団体が処理する事務は、その全てが自治事務である。

>解答と解説はこちら


【答え】:1
【解説】
1.普通地方公共団体が処理する事務には、地域における事務と、その他の事務で法律またはこれに基づく政令により処理することとされるものとがある。

1・・・妥当である

地方自治法第2条第2項:
普通地方公共団体は、地域における事務及び法令により処理することとされる事務を処理する。

つまり、本肢は、地方公共団体の事務の分類と根拠条文に即した正しい内容であるため、妥当です。

普通地方公共団体(都道府県や市町村など)が処理する事務には、大きく分けて以下の2種類があります。

① 自治事務(=地域における事務)

これは、地域の住民の福祉の増進を目的として、地方公共団体が自主的・主体的に行う事務のことです。たとえば、道路や公園の整備、保育所の運営など、地域のニーズに応じて行う日常的な行政サービスが該当します。

② 法定受託事務(=その他の事務で法律や政令で定められたもの)

これは、国が本来行うべき事務を、法律や政令に基づいて地方公共団体に委託している事務のことです。地方公共団体は、これらを国の代わりに処理する義務があります。

2.都道府県の法定受託事務とは、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるものであり、都道府県知事が国の機関として処理することとされている。

2・・・妥当でない

法定受託事務は、国の事務地方公共団体が法令に基づいて処理するものです。
しかし、それを国の「機関」として処理するわけではありません
よって、「都道府県知事が国の機関として処理することとされている」という記述は誤りであり、妥当でないです。

法定受託事務とは、本来は国や都道府県などが行うべき事務を、法律や政令によって地方公共団体に処理させるものです。
地方公共団体が国などの機関として処理するのではなく、「あくまでも地方公共団体の事務として処理する」ことになります。

本肢は「都道府県知事が国の機関として処理することとされている」この部分が誤りです。

都道府県の法定受託事務であっても、都道府県知事が“国の機関”として処理するわけではありません。
地方自治法においても、そのような規定はありません。

法定受託事務の分類(地方自治法第2条第9項)

法定受託事務は、以下のように大きく2つに分類されます。

  • 第一号法定受託事務
    国の役割に関係する事務で、都道府県や市町村が処理するもの。
    例:旅券(パスポート)の交付事務など。
  • 第二号法定受託事務
    都道府県の役割に関係する事務で、市町村が処理するもの。
    例:自動車の登録申請に関する事務など。

地方自治法第2条第9項

この法律において「法定受託事務」とは、次に掲げる事務をいう。

一 法律又はこれに基づく政令により都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第一号法定受託事務」という。)

二 法律又はこれに基づく政令により市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に係るものであつて、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第二号法定受託事務」という。)

※都道府県知事が「国の機関」として行うとは規定されていない。

3.市町村の法定受託事務とは、国または都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるものであるから、これにつき市町村が条例を定めることはできない。

3・・・妥当でない

市町村が行う法定受託事務には、以下のようなものがあります。

第二号法定受託事務(地方自治法2条9項2号)

法律またはこれに基づく政令により、市町村または特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に関係し、適正な処理を特に確保する必要があるもの
例:自動車の車庫証明事務などがこれに該当します。

本肢は、「これにつき市町村が条例を定めることはできない」という部分が誤りです。

たとえ法定受託事務であっても、法令に違反しない限り、市町村はその事務に関して条例を制定することができます
これは、地方自治法が保障する自治権の一部として認められています。

4.法定受託事務は、普通地方公共団体が当該団体自身の事務として処理するものであるから、地方自治法上の自治事務に含まれる。

4・・・妥当でない

問題文では、「法定受託事務は…地方自治法上の自治事務に含まれる」
とありますが、これは明確な誤りです。
地方自治法第2条第8項では、自治事務について「法定受託事務以外の事務」と定義しており、法定受託事務は含まれないと明記されています。

地方自治法第2条第8項
この法律において「自治事務」とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものをいう。

① 自治事務(地方自治法第2条第8項)
地方公共団体が自主的・主体的に行う事務。
国の関与が少なく、地域の実情に応じて行われる事務です。
例:道路の維持管理、ゴミ処理、保育所の設置など。

※条文においては、「法定受託事務以外の事務」を指します。つまり、法定受託事務は自治事務に含まれません。

② 法定受託事務(地方自治法第2条第9項)
国または都道府県が本来行うべき事務を、法律や政令に基づいて地方公共団体に処理させるもの。
地方公共団体が処理しますが、処理方法などについて国からの関与が強いのが特徴です。

  • 第一号法定受託事務:国の役割に関係(例:旅券の交付)
  • 第二号法定受託事務:都道府県の役割に関係(例:車庫証明)
5.地方自治法は、かつての同法が定めていた機関委任事務制度のような仕組みを定めていないため、現行法の下で普通地方公共団体が処理する事務は、その全てが自治事務である。

5・・・妥当でない

かつての地方自治法には、「機関委任事務」という制度が存在していました。
これは、国の事務を地方公共団体の長(知事や市町村長など)に国の「機関」として処理させる仕組みです。

しかし、この制度は中央集権的であり、「地方自治の本旨」に反するとの批判が強かったため、
1999年の地方分権一括法の施行により、機関委任事務制度は廃止されました。

現行制度:事務の二元分類

機関委任事務制度の廃止後、地方公共団体が処理する事務は「自治事務」と「法定受託事務」の2つの分類に再編されました(地方自治法第2条第8項・第9項)。

問題文では、「普通地方公共団体が処理する事務は、その全てが自治事務である」
と述べていますが、これは誤りです。

確かに、機関委任事務制度は廃止されましたが、その代わりに法定受託事務という制度が導入され、現在も地方公共団体が処理しています。
したがって、地方公共団体が処理する事務はすべてが自治事務ではありません。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問21|国家賠償法

国家賠償法1条に基づく責任に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 指定確認検査機関による建築確認に係る建築物について、確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、指定確認検査機関が行った当該確認について、国家賠償法1条1項の国または公共団体としての責任を負うことはない。
  2. 公権力の行使にあたる国または公共団体の公務員が、その職務を行うについて、過失によって違法に他人に損害を加えた場合には、国または公共団体がその被害者に対して賠償責任を負うが、故意または重過失の場合には、公務員個人が被害者に対して直接に賠償責任を負う。
  3. 国または公共団体の公権力の行使にあたる複数の公務員が、その職務を行うについて、共同して故意によって違法に他人に加えた損害につき、国または公共団体がこれを賠償した場合においては、当該公務員らは、国または公共団体に対し、国家賠償法1条2項による求償債務を負うが、この債務は連帯債務であると解される。
  4. 国家賠償法1条1項が定める「公務員が、その職務を行うについて」という要件につき、公務員が主観的に権限行使の意思をもってするものではなく、専ら自己の利をはかる意図をもってするような場合には、たとえ客観的に職務執行の外形をそなえる行為をした場合であったとしても、この要件には該当しない。
  5. 都道府県警察の警察官が、交通犯罪の捜査を行うにつき故意または過失によって違法に他人に損害を加えた場合において、国家賠償法1条1項により当該損害につき賠償責任を負うのは国であり、当該都道府県が賠償責任を負うことはない。

>解答と解説はこちら


【答え】:3
【解説】
1.指定確認検査機関による建築確認に係る建築物について、確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、指定確認検査機関が行った当該確認について、国家賠償法1条1項の国または公共団体としての責任を負うことはない。

1・・・妥当でない

指定確認検査機関とは、国や地方公共団体に代わって、建築確認などを行うことができる民間の機関です。
一見すると「民間の機関だから、何かミスをしても行政(国や地方公共団体)は責任を負わないのでは?」と思うかもしれません。

しかし、最高裁判例(平成17年6月24日)は以下のように判断しています。

  • 指定確認検査機関が行う建築確認事務は、民間機関であっても行政事務にあたる。
  • その確認事務は、本来、建築主事(公務員)が行うべきものであり、法に基づき民間に委託されているにすぎない。
  • よって、指定確認検査機関が行った建築確認であっても、その責任の帰属先(行政主体)は、当該建築物について確認権限を有する地方公共団体である。

国家賠償法との関係

国家賠償法1条1項は、次のように定めています。

公務員が職務を行うについて、故意または過失により違法に他人に損害を与えたときは、国または公共団体がこれを賠償する責任を負う。

この「公務員」の職務には、民間に委託された行政事務も含まれると解されています。したがって、指定確認検査機関による違法な建築確認により損害が生じた場合、その損害賠償責任は、確認権限を有する地方公共団体が負うことになります。

したがって、「地方公共団体は責任を負わない」とする本肢は誤りであり、妥当ではないと判断されます。

2.公権力の行使にあたる国または公共団体の公務員が、その職務を行うについて、過失によって違法に他人に損害を加えた場合には、国または公共団体がその被害者に対して賠償責任を負うが、故意または重過失の場合には、公務員個人が被害者に対して直接に賠償責任を負う。

2・・・妥当でない

本肢は「故意や重過失の場合は公務員個人が責任を負う」としていますが、これは誤りです。

国家賠償法1条1項は、以下のように定めています。

公務員が職務を行うについて、故意または過失により違法に他人に損害を与えたときは、国または公共団体がこれを賠償する責任を負う

この条文のポイントは、「故意または過失」のどちらであっても、被害者に対する賠償責任はあくまで国または公共団体が負うという点です。

公務員個人は責任を負うのか?

結論から言うと、被害者に対しては、原則として責任を負いません。

最高裁判例(昭和30年4月19日)では次のように述べられています。

公権力の行使にあたる公務員の職務行為にもとづく損害については、国または公共団体が賠償の責に任じ、職務の執行にあたった公務員は、行政機関としての地位においても、個人としても、被害者に対しその責任を負担するものではない。

つまり、たとえそれが故意や重過失であっても、公務員個人が直接、被害者に賠償する義務はないということです。

民法の使用者責任との違い

民法709条や715条では、加害者本人(被用者)とその使用者(会社など)は「不真正連帯債務」の関係になります。つまり、被害者はどちらにも請求できます。

しかし、国家賠償法では、そうはなりません。国や公共団体が一義的に賠償責任を負い公務員個人には請求できないという点で異なります。

※なお、国や公共団体が賠償した後に、内部的にその職員に対して求償(お金の返還を求めること)することはありますが、それはあくまで内部的な関係であり、被害者との関係ではありません。

よって、「故意または重過失の場合には公務員個人が被害者に直接賠償責任を負う」とする本肢は誤り(妥当でない)です。

3.国または公共団体の公権力の行使にあたる複数の公務員が、その職務を行うについて、共同して故意によって違法に他人に加えた損害につき、国または公共団体がこれを賠償した場合においては、当該公務員らは、国または公共団体に対し、国家賠償法1条2項による求償債務を負うが、この債務は連帯債務であると解される。

3・・・妥当である

国家賠償法1条2項は、次のように定めています。

国または公共団体が賠償の責任を負ったときは、その損害が公務員の故意または重大な過失によって生じたものであるときに限り、その公務員に求償することができる。

この条文により、たとえ国や公共団体が被害者に損害賠償をしたとしても、加害行為に故意や重過失がある場合には、その職員に弁償を求める(求償する)ことができるとされています。

連帯債務になるのか?

令和2年7月14日の最高裁判例が明確に述べています。

複数の公務員が共同して故意に違法な損害行為をした場合、国家賠償法1条2項による国や公共団体への求償債務は連帯債務であると解される。

つまり、加害行為を共同で行った以上、公務員同士は「一体として責任を負うべき」だとされたのです。

なぜ連帯債務なのか?

連帯債務と解される理由は以下の通りです。

公務員らが共同で行為した結果、国が一括して賠償責任を負った以上、その責任の分配リスク(例えば一部の公務員が無資力の場合など)を国が背負うのではなく、加害者同士でリスクを分担するのが公平であると考えられるからです。

実務上も、国は誰からいくら取り戻すかを選ぶことができ、公務員側は内部的に精算することになります。

したがって、複数の公務員が共同して故意に損害を与えた場合、国または公共団体に対する求償債務は連帯債務となるとする本肢は、妥当であると判断されます。

4.国家賠償法1条1項が定める「公務員が、その職務を行うについて」という要件につき、公務員が主観的に権限行使の意思をもってするものではなく、専ら自己の利をはかる意図をもってするような場合には、たとえ客観的に職務執行の外形をそなえる行為をした場合であったとしても、この要件には該当しない。

4・・・妥当でない

本肢では「主観的に権限行使の意思がない場合には該当しない」と述べていますが、これは誤りです。
国家賠償法上は、客観的に職務執行の外形を備えていれば足りるため、本肢は 妥当でないです。

国家賠償法1条1項の要件の一つである「公務員が、その職務を行うについて」という文言は、公務員の行為が職務と関係しているかどうかを問う要件です。

■ 判断基準:「客観的外形説」が通説・判例

この要件については、判例・通説ともに「客観的外形説」を採用しています。

すなわち、
「たとえ本人に職務を果たす意思がなかったとしても、客観的に見て職務行為のように見える外形を備えていれば、職務執行中とみなされる」
という考え方です。

判例:昭和31年11月30日 最高裁判決(川崎駅非番警察官強盗殺人事件)

この考え方を明確に示したのが、次の有名な判例です。

事件の概要
非番の警察官(巡査)が制服を着て、職務質問を装い、被害者から金品を取り上げようとした。

被害者に騒がれたため、所持していたピストルで射殺した。

最高裁の判断
「巡査は、自己の利を図る目的で制服を着用し、警察官としての職務執行を装った行為である」

よって「国家賠償法1条1項にいう『その職務を行うについて』に該当する」

つまり、公務員に主観的な職務意思がなかったとしても、外見上、職務として行っているように見える行為であれば、それは国家賠償法の適用対象になるということです。

5.都道府県警察の警察官が、交通犯罪の捜査を行うにつき故意または過失によって違法に他人に損害を加えた場合において、国家賠償法1条1項により当該損害につき賠償責任を負うのは国であり、当該都道府県が賠償責任を負うことはない。

5・・・妥当でない

国家賠償法1条1項の適用において、「どの行政主体(国か地方公共団体か)」が賠償責任を負うかは、損害を与えた公務員の職務が、どの行政主体の事務に属するかによって決まります。

警察官というと「国家の公務員」のようなイメージがありますが、通常、警察官は都道府県に所属する地方公務員です。
(例外として警察庁職員などは国家公務員ですが、現場で捜査を行うのは通常、都道府県警察官です)

判例の立場(最判昭和54年7月10日)

この問題に関して、最高裁は次のように判断しています。

都道府県警察の警察官が、いわゆる交通犯罪の捜査を行うにつき、故意または過失によって違法に他人に損害を加えた場合には、その損害について国家賠償法1条1項に基づいて責任を負うのは、原則として当該都道府県であり、国ではない。

つまり、交通犯罪の捜査など、通常の警察活動に関しては、都道府県が責任を負うのが原則です。

例外もある

例外的に、たとえば次のような場合には国が責任を負うことになります。

  • 検察官が指揮して行った捜査(刑事訴訟法193条3項による)
  • 国家公安委員会や警察庁職員が直接関与していた場合 など

よって、「国が責任を負い、都道府県は責任を負わない」とする本肢は誤りです。
通常の交通犯罪捜査における損害賠償責任は、都道府県が負うのが原則なので、本肢は 妥当ではありません。


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問20|国家賠償法

国家賠償に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、その正誤を正しく示す組合せはどれか。

ア.教科用図書の検定にあたり文部大臣(当時)が指摘する検定意見は、すべて、検定の合否に直接の影響を及ぼすものではなく、文部大臣の助言、指導の性質を有するものにすぎないから、これを付することは、教科書の執筆者または出版社がその意に反してこれに服さざるを得なくなるなどの特段の事情のない限り、原則として、国家賠償法上違法とならない。

イ.政府が物価の安定等の政策目標を実現するためにとるべき具体的な措置についての判断を誤り、ないしはその措置に適切を欠いたため当該政策目標を達成できなかった場合、法律上の義務違反ないし違法行為として、国家賠償法上の損害賠償責任の問題が生ずる。

ウ.町立中学校の生徒が、放課後に課外のクラブ活動中の運動部員から顔面を殴打されたことにより失明した場合において、当該事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のない限り、顧問の教諭が当該クラブ活動に立ち会っていなかったとしても、当該事故の発生につき当該教諭に過失があるとはいえない。

エ.市内の河川について市が法律上の管理権をもたない場合でも、当該市が地域住民の要望にこたえて都市排水路の機能の維持および都市水害の防止など地方公共の目的を達成するために河川の改修工事をして、これを事実上管理することになったときは、当該市は、当該河川の管理につき、国家賠償法2条1項の責任を負う公共団体にあたる。

    1. ア:誤  イ:誤  ウ:正  エ:正
    2. ア:誤  イ:誤  ウ:正  エ:誤
    3. ア:誤  イ:正  ウ:誤  エ:誤
    4. ア:正  イ:正  ウ:誤  エ:誤
    5. ア:正  イ:正  ウ:正  エ:誤

    >解答と解説はこちら


    【答え】:1(ア:誤  イ:誤  ウ:正  エ:正

    【解説】
    ア.教科用図書の検定にあたり文部大臣(当時)が指摘する検定意見は、すべて、検定の合否に直接の影響を及ぼすものではなく、文部大臣の助言、指導の性質を有するものにすぎないから、これを付することは、教科書の執筆者または出版社がその意に反してこれに服さざるを得なくなるなどの特段の事情のない限り、原則として、国家賠償法上違法とならない。

    ア・・・誤り

    本肢では「検定意見はすべて合否に直接影響を及ぼさない」と断定していますが、
    これは明らかに 修正意見の存在を無視している点で誤りです。

    この問題は、教科書検定制度において文部大臣(当時)が行う「検定意見」が、
    国家賠償法上違法となるか否かについて争われた 最高裁平成9年8月29日判決 をもとにしています。

    当時の検定意見には、主に2種類がありました。

    ① 修正意見

    検定合格の条件として付されるもので、執筆者がこれに従って記述を修正しない限り、教科書は合格とならない。

    つまり、検定の合否に直接の影響を及ぼすものである。

    このような意見は、場合によっては執筆者の思想・表現の自由等を侵害し、国家賠償法上の違法性が問題となり得る。

    ② 改善意見

    内容上の改善を求める助言的なものであり、合否には直接関係しない。

    教科書の記述内容をより良くするための「行政指導」の一種。

    原則として違法ではないが、執筆者等がその意に反して従わざるを得ない状況に追い込まれるような特段の事情があれば、違法と評価される可能性もある。

    イ.政府が物価の安定等の政策目標を実現するためにとるべき具体的な措置についての判断を誤り、ないしはその措置に適切を欠いたため当該政策目標を達成できなかった場合、法律上の義務違反ないし違法行為として、国家賠償法上の損害賠償責任の問題が生ずる。

    イ・・・誤り

    本肢は、「判断を誤ったり措置が適切を欠いた場合に、国家賠償法上の損害賠償責任が生ずる」としていますが、
    それはあくまで政治的に責任を問われる範囲であり、
    法律上の義務違反とまではいえないというのが最高裁の判断です。

    この問題は、政府の経済政策などの高度な政策判断が、
    国家賠償法上の「違法な公権力の行使」となりうるかを問うものです。

    これに対して、最高裁昭和57年7月15日判決(郵便貯金インフレ損失訴訟)は次のように明言しています。

    • 目標(物価の安定、国民経済の健全な発展等)を調和的に実現するために、
      政府がその時々の内外の情勢を考慮して具体的にどのような措置をとるかは、
      政府の裁量的な政策判断に委ねられている事柄である。
    • たとえその判断に誤りがあったり、措置が適切でなかったりして、政策目標を達成できなかったとしても、
      法律上の義務違反や国家賠償法上の違法行為とはならない。
    • 責任があるとしても、それは政治的責任にとどまる。

    ポイント整理が重要なので、個別指導で解説します。

    ウ.町立中学校の生徒が、放課後に課外のクラブ活動中の運動部員から顔面を殴打されたことにより失明した場合において、当該事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のない限り、顧問の教諭が当該クラブ活動に立ち会っていなかったとしても、当該事故の発生につき当該教諭に過失があるとはいえない。

    ウ・・・正しい

    本肢は、課外活動での事故について、予見可能性がなければ顧問教諭の不在による過失は否定されるとする最高裁判例の考え方に基づいています。よって、正しいです。

    この問題は、学校活動中の事故における教諭の監督義務と過失責任について問うものです。
    特に、課外活動(放課後のクラブ活動)において事故が起きた場合に、顧問教諭がその場にいなかったことが直ちに過失となるかが争点となります。

    判例:最高裁昭和58年2月18日判決(クラブ活動失明事件)

    本件は、町立中学校の生徒が放課後のクラブ活動中に、トランポリンを使用していたところ、
    別の運動部員から顔面を殴打されて失明したという事故について、
    顧問教諭の不在に過失があるかどうかが争われた国家賠償請求事件です。

    最高裁は、次のように判断しました。

    教諭の一般的注意義務はある
    課外のクラブ活動であっても、学校の教育活動の一環である以上、
    学校および顧問教諭には、生徒を指導・監督し事故を未然に防ぐ一般的注意義務がある。

    ただし、常時立会い義務までは認められない
    課外活動は生徒の自主性を尊重すべき活動である。

    よって、常に顧問教諭が立ち会い、監視・指導すべき義務があるとは限らない。

    過失の有無は「予見可能性」が鍵

    事故発生が予見可能であったかどうかが、顧問教諭に過失があるかの判断基準となる。

    予見可能性を検討するには、次のような事情を総合的に考慮する必要がある。

    • 体育館の利用状況や過去のトラブルの有無
    • トランポリンの使用ルールや指導の有無
    • 生徒間の対立・紛争歴の有無
    • 暴力を防ぐ教育がされていたか など

    本件での結論
    特段の事情(予見可能性)が認められなければ、顧問教諭が体育館に立ち会わなかったことをもって、ただちに過失があるとはいえないとされました。

    エ.市内の河川について市が法律上の管理権をもたない場合でも、当該市が地域住民の要望にこたえて都市排水路の機能の維持および都市水害の防止など地方公共の目的を達成するために河川の改修工事をして、これを事実上管理することになったときは、当該市は、当該河川の管理につき、国家賠償法2条1項の責任を負う公共団体にあたる。

    エ・・・正しい

    本肢は正しいです。法律上の管理権限がなくても、事実上管理している地方公共団体であれば、国家賠償法2条1項に基づく責任を負うとした判例に基づいています。

    この問題は、公共施設(河川)の管理に関する国家賠償法第2条第1項の適用について問うものです。
    争点は、「法律上の管理権がない地方公共団体であっても、事実上の管理をしている場合に国家賠償責任を負うのか?」という点です。

    国家賠償法第2条第1項の趣旨

    道路、河川その他の公共の用に供する工作物の設置または管理に瑕疵があったことにより他人に損害を与えたときは、
    その工作物を設置または管理する公共団体が損害を賠償する責任を負う。

    ここでのポイントは、「管理している」という事実です。
    必ずしも法律上の管理権限がなければならないわけではなく、
    実際に管理行為を行っているかどうか(=事実上の管理)が重視されます。

    判例:最判昭和59年11月29日

    この判例では、市が法律上は管理権を持っていなかった河川(普通河川)について、
    地域住民の要望に応じて排水機能の改善・水害防止のために改修工事を行い、
    以後その河川を事実上管理していたことを理由に、
    当該市を国家賠償法2条1項における「管理者」と認定しました。

    判示要旨

    • 市が改修工事を行い、以後当該溝渠について事実上の管理をすることになった以上、
      その管理に瑕疵があったときは、市は国家賠償法2条により損害賠償責任を負う。
    • これは、国や都道府県が当該施設について法律上の管理権を有するか否かによって左右されるものではない。


      令和6年(2024年)過去問

      問1 基礎法学 問31 民法
      問2 基礎法学 問32 民法
      問3 憲法 問33 民法
      問4 憲法 問34 民法
      問5 憲法 問35 民法
      問6 憲法 問36 商法
      問7 憲法 問37 会社法
      問8 行政法 問38 会社法
      問9 行政法 問39 会社法
      問10 行政法 問40 会社法
      問11 行政手続法 問41 多肢選択
      問12 行政手続法 問42 多肢選択
      問13 行政手続法 問43 多肢選択
      問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
      問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
      問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
      問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
      問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
      問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
      問20 国家賠償法 問50 基礎知識
      問21 国家賠償法 問51 基礎知識
      問22 地方自治法 問52 行政書士法
      問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
      問24 地方自治法 問54 基礎知識
      問25 行政法 問55 基礎知識
      問26 公文書管理法 問56 基礎知識
      問27 民法 問57 個人情報保護法
      問28 民法 問58 著作権の関係上省略
      問29 民法 問59 著作権の関係上省略
      問30 民法 問60 著作権の関係上省略

      令和6年・2024|問19|行政事件訴訟法

      行政事件訴訟法(以下「行訴法」という)が定める民衆訴訟および機関訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

      1. 機関訴訟は、国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する紛争についての訴訟であり、そのような紛争の一方の当事者たる機関は、特に個別の法律の定めがなくとも、機関たる資格に基づいて訴えを提起することができる。
      2. 民衆訴訟とは、特に法律が定める場合に国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、自己の法律上の利益にかかわらない資格で何人も提起することができるものをいう。
      3. 機関訴訟で、処分の取消しを求めるものについては、行訴法所定の規定を除き、取消訴訟に関する規定が準用される。
      4. 公職選挙法が定める地方公共団体の議会の議員の選挙の効力に関する訴訟は、地方公共団体の機関たる議会の構成に関する訴訟であるから、機関訴訟の一例である。
      5. 行訴法においては、行政事件訴訟に関し、同法に定めがない事項については、「民事訴訟の例による」との規定がなされているが、当該規定には、民衆訴訟および機関訴訟を除くとする限定が付されている。

      >解答と解説はこちら


      【答え】:3
      【解説】
      1.機関訴訟は、国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する紛争についての訴訟であり、そのような紛争の一方の当事者たる機関は、特に個別の法律の定めがなくとも、機関たる資格に基づいて訴えを提起することができる。

      1・・・誤り

      前半部分:機関訴訟の定義
      機関訴訟は、国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する紛争についての訴訟である
      → これは 正しい 内容です。

      この定義は、行政事件訴訟法第6条に基づいており、
      国や地方公共団体内部の機関(例:国の大臣同士、市町村と都道府県など)の間で、
      「どちらに権限があるのか」などの争いがあるときに提起されます。

      後半部分の誤り:「個別の法律の定めがなくとも訴えを提起できる」
      → これは 誤り。

      機関訴訟は、どの行政機関でも自由に提起できるわけではなく、
      「法律に定めがある場合」に限って、その定められた者のみが提起できるとされています。

      これは、行政事件訴訟法第42条に明確に規定されています:

      「機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。」

      つまり、機関たる資格があるだけでは足りず、「誰が提起できるのか」を明確に定めた法律の根拠が必要なのです。

      機関訴訟の具体例(法律に定めがあるもの)

      • 市町村の境界確定に関する都道府県知事の裁定に対する訴え
        (地方自治法第9条第8項)
      • 国や都道府県による関与に対する普通地方公共団体の訴え
        (地方自治法第251条の5)
      • 住民の住所認定をめぐる市町村間の争いに関する訴訟
        (住民基本台帳法第33条)
      2.民衆訴訟とは、特に法律が定める場合に国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、自己の法律上の利益にかかわらない資格で何人も提起することができるものをいう。

      2・・・誤り

      民衆訴訟とは、国や地方公共団体の機関の行為法令に適合していないと考えられる場合に、特定の地位や資格を有する者が、その是正を裁判所に求める訴訟です。

      この訴訟の特徴は、原告が自己の「法律上の利益」に基づいて訴えるわけではない点にあります。

      行政事件訴訟法第5条は、以下のように規定しています。

      民衆訴訟とは、特別の法律に定める場合において、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求め、
      選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起する訴訟をいう。

      本肢は「何人も提起することができる」となっているので誤りです。

      民衆訴訟は、あくまで特別法により、特定の資格を有する者にのみ認められている訴訟類型です。
      つまり、誰でも自由に提起できるわけではありません。

      この点、行政事件訴訟法第42条にも明記されています。

      民衆訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。

      ■ 民衆訴訟の具体例

      訴訟の類型 根拠法 原告資格の例
      選挙無効訴訟、公職の当選無効訴訟 公職選挙法 選挙人たる資格を有する者など
      住民訴訟 地方自治法 地方公共団体の住民

      3.機関訴訟で、処分の取消しを求めるものについては、行訴法所定の規定を除き、取消訴訟に関する規定が準用される。

      3・・・正しい

      機関訴訟民衆訴訟は、通常の取消訴訟とは異なり、自己の法律上の利益の救済を目的としない特殊な訴訟類型です。

      それでも、その内容が「処分または裁決の取消しを求めるものである」場合には、訴訟の性質上、取消訴訟の規定を準用する必要があるとされています。

      この点について、行政事件訴訟法第43条は次のように規定しています。

      民衆訴訟又は機関訴訟で処分又は裁決の取消しを求めるものについては、第9条及び第10条第1項の規定を除き、取消訴訟に関する規定を準用する。

      ◎ 準用される主な規定(例)

      • 取消訴訟の審理手続や判決の効力など(訴訟の進行や効果に関するルール)

      ✖ 準用されない規定(=適用されない)

      • 第9条:原告適格(「法律上の利益を有する者」)
      • 第10条第1項:処分性のある行政行為に限るという要件

      → これらは私人の権利救済を目的とする取消訴訟特有の要件なので、
      民衆訴訟・機関訴訟にはそぐわないため、準用されないのです。

      4.公職選挙法が定める地方公共団体の議会の議員の選挙の効力に関する訴訟は、地方公共団体の機関たる議会の構成に関する訴訟であるから、機関訴訟の一例である。

      4・・・誤り

      この問題で問われているのは、地方議会議員の選挙に関する訴訟が、どの訴訟類型に当たるかという点です。

      まず、公職選挙法では、地方公共団体の議会の議員に関する選挙について、
      その効力や当選の有効性について争う制度が設けられています。

      このような訴訟は、たとえば以下のようなケースを含みます。

      • 議員の当選の無効を争う訴訟(公職選挙法207条1項)
      • 選挙全体の無効を求める訴訟(同206条1項)

      これらは、選挙人(有権者)や候補者などが、選挙が適正に行われたかどうかを問うものであり、
      自己の法律上の利益を直接問題としない特別な資格(=選挙人や候補者)に基づいて提起される訴訟です。

      このため、これらは「民衆訴訟」に分類されます(行政事件訴訟法第5条)。

      民衆訴訟の定義(行政事件訴訟法5条)

      特別の法律に定める場合において、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求め、
      選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起する訴訟

      一方、機関訴訟とは?(行政事件訴訟法6条)

      国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟

      機関訴訟は、行政機関相互間の権限争いに関するものであり、
      本問のように選挙人や候補者が提起する選挙訴訟とは性質も当事者もまったく異なります。

      5.行訴法においては、行政事件訴訟に関し、同法に定めがない事項については、「民事訴訟の例による」との規定がなされているが、当該規定には、民衆訴訟および機関訴訟を除くとする限定が付されている。

      5・・・誤り

      この問題は、行政事件訴訟法における補充的な準拠法としての民事訴訟法の適用範囲について問うものです。

       行政事件訴訟法 第7条(準用規定)

      行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。

      ここでいう「行政事件訴訟」とは、取消訴訟・無効確認訴訟・義務付け訴訟・差止訴訟・当事者訴訟・民衆訴訟・機関訴訟など、すべてを含みます。
      したがって、民衆訴訟や機関訴訟も対象に含まれており、「これらを除く」とするような限定は一切ありません。

      つまり、行政事件訴訟であれば、同法に規定のない事項については、すべて民事訴訟法の例によるというのが原則です。

      本肢は「民衆訴訟および機関訴訟を除く」とありますが、これは事実に反する記述です。
      そのような限定は、行政事件訴訟法第7条には存在しません。

      本肢は「民事訴訟の例による」という部分が理解すべき部分なので、個別指導で解説します。


      令和6年(2024年)過去問

      問1 基礎法学 問31 民法
      問2 基礎法学 問32 民法
      問3 憲法 問33 民法
      問4 憲法 問34 民法
      問5 憲法 問35 民法
      問6 憲法 問36 商法
      問7 憲法 問37 会社法
      問8 行政法 問38 会社法
      問9 行政法 問39 会社法
      問10 行政法 問40 会社法
      問11 行政手続法 問41 多肢選択
      問12 行政手続法 問42 多肢選択
      問13 行政手続法 問43 多肢選択
      問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
      問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
      問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
      問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
      問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
      問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
      問20 国家賠償法 問50 基礎知識
      問21 国家賠償法 問51 基礎知識
      問22 地方自治法 問52 行政書士法
      問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
      問24 地方自治法 問54 基礎知識
      問25 行政法 問55 基礎知識
      問26 公文書管理法 問56 基礎知識
      問27 民法 問57 個人情報保護法
      問28 民法 問58 著作権の関係上省略
      問29 民法 問59 著作権の関係上省略
      問30 民法 問60 著作権の関係上省略

      令和6年・2024|問18|行政事件訴訟法

      抗告訴訟における判決について説明する次のア~オの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。

      ア.裁判所は、相当と認めるときは、終局判決前に、判決をもって、処分が違法であることを宣言することができる。

      イ.申請を拒否した処分が判決により取り消されたときは、その処分をした行政庁は、速やかに申請を認める処分をしなければならない。

      ウ.処分または裁決を取り消す判決により権利を害された第三者で、自己の責めに帰することができない理由により訴訟に参加することができなかったため判決に影響を及ぼすべき攻撃または防御の方法を提出することができなかったものは、これを理由として、確定の終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服の申立てをすることができる。

      エ.直接型(非申請型)義務付け訴訟において、その訴訟要件がすべて満たされ、かつ当該訴えに係る処分について行政庁がこれをしないことが違法である場合には、裁判所は、行政庁がその処分をすべき旨を命じる判決をする。

      オ.処分を取り消す判決は、その事件について処分をした行政庁その他の関係行政庁を拘束すると規定されているが、この規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟には準用されない。

      1. ア・ウ
      2. ア・エ
      3. イ・エ
      4. イ・オ
      5. ウ・オ

      >解答と解説はこちら


      【答え】:4

      【解説】
      ア.裁判所は、相当と認めるときは、終局判決前に、判決をもって、処分が違法であることを宣言することができる。

      ア・・・正しい

      これは、行政事件訴訟法第31条第2項に基づく制度で、
      いわゆる「中間判決による違法宣言」(中間違法確認判決)に関する内容です。

      条文では次のように規定されています。

      行政庁の処分または裁決について取消訴訟が係属している場合において、裁判所は、相当と認めるときは、終局判決をする前に、処分または裁決が違法であることを宣言する判決をすることができる。(行政事件訴訟法31条2項)

      この制度は、取消訴訟の中でまず違法性の有無だけを先に確定させておきたい場合に利用され、
      たとえばその後の損害賠償請求や和解などに向けた判断材料とするために設けられています。

      違法性が確定すれば、訴訟当事者の間で損害賠償や補償についての話し合いや和解の促進が期待されるため、
      紛争の迅速・円満な解決を図る制度的意義があります。

      イ.申請を拒否した処分が判決により取り消されたときは、その処分をした行政庁は、速やかに申請を認める処分をしなければならない。

      イ・・・誤り

      この問題のポイントは、判決によって申請拒否処分が取り消された場合に、行政庁が必ず「申請を認める処分」をしなければならないのか?という点です。

      結論から言えば、必ず申請を認めなければならないわけではありません。

      行政事件訴訟法第33条第2項では、次のように定められています。

      申請を却下し、又は棄却した処分、または審査請求を却下し、又は棄却した裁決が判決により取り消されたときは、
      その処分又は裁決をした行政庁は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分又は審査請求に対する裁決をしなければならない

      つまり、裁判所の判断(例:手続違反や理由不備など)に従って再度適法な手続きをとり、
      改めて審査・判断したうえで処分をする義務があるのであって、
      直ちに申請を「認める」義務があるとは限らないのです。

      よって、本肢は妥当ではありません。

      ウ.処分または裁決を取り消す判決により権利を害された第三者で、自己の責めに帰することができない理由により訴訟に参加することができなかったため判決に影響を及ぼすべき攻撃または防御の方法を提出することができなかったものは、これを理由として、確定の終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服の申立てをすることができる。

      ウ・・・正しい

      本肢は、行政事件訴訟法第34条第1項に基づいています。
      この条文は、いわゆる「第三者のための再審請求制度」を定めたものです。

      行政事件訴訟法34条1項
      処分又は裁決を取り消す判決により権利を害された第三者で、自己の責めに帰することができない理由により訴訟に参加することができなかつたため判決に影響を及ぼすべき攻撃又は防御の方法を提出することができなかつたものは、これを理由として、確定の終局判決に対し、再審の訴えをもつて、不服の申立てをすることができる。

      行政訴訟では、処分の取消判決によって直接訴訟の当事者ではない第三者の権利・利益が害されることもあります。
      しかし、その第三者が正当な理由で訴訟に関与できなかった場合には、不利益を一方的に受けることになってしまいます。

      そこで、次の3つの要件を満たす第三者には、確定した判決に対して再審請求が認められています。

      1. 処分や裁決の取消判決によって自己の権利を害されたこと
      2. 自己の責めに帰すべき理由なく訴訟に参加できなかったこと
      3. 判決に影響を及ぼしうる主張・立証ができなかったこと

      この制度は、いわば第三者の「手続保障」を確保するための制度であり、
      予期せぬ不利益を被った者に対して例外的に再審の道を開くものです。

      エ.直接型(非申請型)義務付け訴訟において、その訴訟要件がすべて満たされ、かつ当該訴えに係る処分について行政庁がこれをしないことが違法である場合には、裁判所は、行政庁がその処分をすべき旨を命じる判決をする。

      エ・・・正しい

      この選択肢は、「義務付け訴訟(行政事件訴訟法37条の2)」に関するものです。
      義務付け訴訟には大きく2種類あり、本問は「直接型(非申請型)」の義務付け訴訟に関する内容です。

      義務付け訴訟とは
      行政庁が法律上義務づけられている処分をしない場合に、裁判所がその処分をすべき旨を命じる判決を出すことを求める訴訟です。

      直接型(非申請型)とは?
      申請に対する拒否処分がない場合(申請前または未処理のまま)でも、一定の条件を満たせば、行政庁に処分を命じることを裁判所に求めることができます。

      行政事件訴訟法 第37条の2 第5項(抜粋)
      義務付けの訴えが第1項及び第3項に規定する要件に該当する場合において、
      その義務付けの訴えに係る処分につき、行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ、
      または、行政庁がその処分をしないことが裁量権の範囲を超え、またはその濫用であると認められるときは、
      裁判所は、行政庁がその処分をすべき旨を命ずる判決をする。

      判決が出される条件

      1. 訴訟要件(法37条の2第1項・第3項)がすべて満たされている
      2. 行政庁が処分をすべき義務が法令上明らかである、または
      3. 行政庁が処分をしないことが裁量権逸脱・濫用にあたる場合

      この条件が揃えば、裁判所は義務付け判決(~をせよ)を出すことができます。

      オ.処分を取り消す判決は、その事件について処分をした行政庁その他の関係行政庁を拘束すると規定されているが、この規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟には準用されない。

      オ・・・誤り

      行政事件訴訟法では、処分または裁決を取り消す判決の効力について、
      それを行った行政庁や関係行政庁を法的に拘束すると定められています。

      これは、取消判決の実効性を確保し、行政庁が再び同様の違法処分を繰り返すことを防ぐためです。

      この点、行政事件訴訟法第33条第1項は次のように規定しています。

      処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。

      そして、これが取消訴訟以外の抗告訴訟(たとえば不作為の違法確認訴訟、義務付け訴訟、差止訴訟)についても準用されることが、
      行政事件訴訟法第38条第1項で明記されています。

      この章(第5章 抗告訴訟)の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟にも準用する。

      したがって、「取消訴訟以外には準用されない」という選択肢の記述は誤りです。


      令和6年(2024年)過去問

      問1 基礎法学 問31 民法
      問2 基礎法学 問32 民法
      問3 憲法 問33 民法
      問4 憲法 問34 民法
      問5 憲法 問35 民法
      問6 憲法 問36 商法
      問7 憲法 問37 会社法
      問8 行政法 問38 会社法
      問9 行政法 問39 会社法
      問10 行政法 問40 会社法
      問11 行政手続法 問41 多肢選択
      問12 行政手続法 問42 多肢選択
      問13 行政手続法 問43 多肢選択
      問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
      問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
      問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
      問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
      問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
      問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
      問20 国家賠償法 問50 基礎知識
      問21 国家賠償法 問51 基礎知識
      問22 地方自治法 問52 行政書士法
      問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
      問24 地方自治法 問54 基礎知識
      問25 行政法 問55 基礎知識
      問26 公文書管理法 問56 基礎知識
      問27 民法 問57 個人情報保護法
      問28 民法 問58 著作権の関係上省略
      問29 民法 問59 著作権の関係上省略
      問30 民法 問60 著作権の関係上省略