令和6年度(2024年度)過去問

令和7年・2025|問10|行政法

行政行為の附款に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 行政庁は、行政行為に附款を付すことができる旨の法令の根拠が存在しない場合でも、裁量の範囲内で行政行為に附款を付すことができる。
  2. 行政庁は、行政行為について撤回権を留保する附款を付すことができるが、このような附款を付さなかった場合には、法令に根拠のない限り、行政行為を撤回することはできない。
  3. 行政行為の附款は行政庁の意思表示の一部を形成するものであるから、道路占用許可に付された使用料の納付などの負担を課す附款に違反した場合、当該占用許可は許可の時点に遡って無効となる。
  4. 道路の占用許可について、開始と終了の具体的な日付を示す附款は、講学上の「条件」に該当する。
  5. 行政行為の附款において、行政庁が負担として課すことができるのは作為義務に限られ、不作為義務を課すことはできない。

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【答え】:1
【解説】
1.行政庁は、行政行為に附款を付すことができる旨の法令の根拠が存在しない場合でも、裁量の範囲内で行政行為に附款を付すことができる。

1.妥当である

行政行為に附款を付すには、原則として法令上の根拠が必要です。しかし、当該行政行為が行政庁の自由裁量(裁量行為)に委ねられている場合には、法令の明示的な根拠がなくても、裁量の範囲内で附款を付すことができます

これは、裁量行為については行政庁が附款なしに拒否することも可能であることから、附款付きで許可等をする自由も当然に認められるという考え方に基づきます。ただし、裁量の逸脱・濫用は許されず、附款の内容は行政行為の目的に沿った合理的なものでなければなりません。

※「附款」とは、行政行為の効果を制限し、または特別の義務を課すために主たる意思表示に付加される従たる意思表示のことです。

2.行政庁は、行政行為について撤回権を留保する附款を付すことができるが、このような附款を付さなかった場合には、法令に根拠のない限り、行政行為を撤回することはできない。

2.妥当でない

行政行為に撤回権の留保の附款が付されていた場合、行政庁は留保した条件が生じたときに撤回をすることができます。

しかし、撤回権の留保がなかった場合でも、行政行為の撤回が一切できなくなるわけではありません。事後的に行政行為の要件事実が充足されなくなった場合や、公益上の必要性が生じた場合など、撤回を正当化する事由があれば附款がなくても撤回が認められます

撤回権の留保は撤回をより容易にするための附款ですが、その不存在が撤回を禁止するものではありません。

※「撤回」とは、瑕疵のない適法な行政行為について、その後の事情変更を理由に将来に向かって効力を消滅させることをいいます。遡及効を持つ「取消し」とは区別されます。

3.行政行為の附款は行政庁の意思表示の一部を形成するものであるから、道路占用許可に付された使用料の納付などの負担を課す附款に違反した場合、当該占用許可は許可の時点に遡って無効となる。

3.妥当でない

附款の一種である「負担」とは、主たる行政行為に付随して相手方に作為・不作為等の特別の義務を課す意思表示をいいます(例:道路占用許可における使用料納付義務)。

負担は、主たる行政行為(占用許可)の効果を直接制限するものではないため、相手方が負担に違反しても、許可の効力が当然に失われることはなく、遡及して無効となるわけでもありません

負担違反があった場合、行政庁は行政上の強制執行や許可の撤回といった別途の対応を取ることになります。この点が、条件(条件の成就で当然に効果が消滅する)と大きく異なります。

4.道路の占用許可について、開始と終了の具体的な日付を示す附款は、講学上の「条件」に該当する。

4.妥当でない

開始と終了の具体的な日付を示す附款は、講学上「期限」に該当します。「条件」ではありません。

条件は、将来の不確実な事実の成否に行政行為の効果の発生・消滅をかからせるものです。これに対し、期限将来確実に到来する日時に行政行為の効果の発生・消滅を結びつけるものです。

附款の種類 内容 具体例
条件 不確実な事実の成否に効果を依存 「〇〇が完成したとき許可する(停止条件)」
期限 確実に到来する日時に効果を依存 「〇月〇日から〇月〇日まで占用を許可する」
負担 特別の義務を課す 「使用料〇万円を納付すること」
撤回権の留保 一定の場合に撤回できる旨を留保 「公益上必要が生じた場合は許可を撤回できる」
5.行政行為の附款において、行政庁が負担として課すことができるのは作為義務に限られ、不作為義務を課すことはできない。

5.妥当でない

附款における「負担」は、行政行為の相手方に対して作為義務のみならず不作為義務を課すことも含まれます

不作為義務の例としては、営業許可を付与する際に「一定地区内では営業を行わないこと」を条件として課すケースが挙げられます。負担として課し得る義務の種類に「作為」と「不作為」の区別はなく、どちらも附款として認められます。

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問11|行政手続法

行政手続法が定める弁明の機会の付与に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 不利益処分の名宛人となるべき者として弁明の機会の付与の通知を受けた者は、代理人を選任することができる。
  2. 不利益処分の名宛人となるべき者として弁明の機会の付与の通知を受けた者は、行政庁に対し、弁明を記載した書面(弁明書)を提出する時までの間、当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。
  3. 弁明を記載した書面(弁明書)が提出された後、当該不利益処分に利害関係を有する者が当該弁明書の閲覧を求めた場合、行政庁は、正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むことができない。
  4. 弁明を記載した書面(弁明書)の提出を受けた行政庁は、当該弁明についての調書および報告書を作成しなければならない。
  5. 行政庁は、弁明を記載した書面(弁明書)が提出された後に新たな事情が生じたときは、弁明書を提出した者に対しその再提出を求めなければならない。

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【答え】:1
【解説】
1.不利益処分の名宛人となるべき者として弁明の機会の付与の通知を受けた者は、代理人を選任することができる。

1.妥当である

行政手続法31条は、弁明の機会の付与に対して聴聞の規定の一部を準用しています。準用されるのは、15条3項(所在不明者への掲示による通知)と16条(代理人の選任)の2つです。

16条が準用されることにより、弁明の機会の付与の通知を受けた者も代理人を選任することができます。弁明の機会の付与は聴聞よりも簡易な手続きですが、当事者が自ら反論・防御できない場合を考慮して、代理人による権利行使が認められています。

※「弁明の機会の付与」とは、不利益処分をしようとする場合に、名あて人となるべき者に書面(弁明書)の提出または口頭による弁明の機会を与える手続です(行政手続法29条)。聴聞よりも簡易な手続として位置づけられています。

2.不利益処分の名宛人となるべき者として弁明の機会の付与の通知を受けた者は、行政庁に対し、弁明を記載した書面(弁明書)を提出する時までの間、当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。

2.妥当でない

文書等の閲覧に関する規定(行政手続法18条)は、弁明の機会の付与には準用されていません(31条参照)。

聴聞においては、当事者は弁明書提出前に「不利益処分の原因となる事実を証する資料」の閲覧を行政庁に求めることができます(18条1項)。しかし、弁明の機会の付与に準用されているのは15条3項と16条のみであるため、弁明の機会の付与では資料の閲覧は認められていません

これは、弁明手続の迅速性・簡便性を重視した立法政策上の判断によるものです。

3.弁明を記載した書面(弁明書)が提出された後、当該不利益処分に利害関係を有する者が当該弁明書の閲覧を求めた場合、行政庁は、正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むことができない。

3.妥当でない

聴聞においては、利害関係人が聴聞への参加を許可された場合、一定の文書等の閲覧が認められますが(行政手続法17条・18条)、これらの規定は弁明の機会の付与には準用されていません(31条参照)。

したがって、利害関係人が弁明書の閲覧を求めることは認められず、行政庁がこれを拒んでも行政手続法上は問題ありません。弁明手続は名あて人本人の弁明の機会を保障することに主眼があり、第三者の参加・閲覧まで認める手続ではありません。

4.弁明を記載した書面(弁明書)の提出を受けた行政庁は、当該弁明についての調書および報告書を作成しなければならない。

4.妥当でない

聴聞においては、主宰者が調書および報告書を作成し、これが不利益処分の決定に際して考慮されます(行政手続法24条・26条)。これは聴聞の実質的な権利保障を担保するための重要な規定です。

しかし、調書・報告書の作成に関する規定は弁明の機会の付与に準用されていません(31条参照)。行政庁は弁明書の提出を受けても調書および報告書を作成する義務はなく、この点が聴聞と弁明の機会の付与の大きな手続的差異の一つです。

5.行政庁は、弁明を記載した書面(弁明書)が提出された後に新たな事情が生じたときは、弁明書を提出した者に対しその再提出を求めなければならない。

5.妥当でない

聴聞においては、聴聞の終結後に生じた事情によって必要があると認めるとき、主宰者が聴聞の再開を命じることができます(行政手続法25条)。しかし、この規定も弁明の機会の付与には準用されていません(31条参照)。

弁明書提出後に新たな事情が生じた場合であっても、行政庁は弁明書の再提出を求める義務はありません。簡易手続である弁明の機会の付与に再開・再提出の仕組みを設けないのは、手続の迅速な完結を優先する趣旨です。

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問12|個人情報保護法

個人情報保護法* によれば、個人情報保護委員会は、個人情報取扱事業者が同法の定める一定の規定に違反した場合において個人の権利利益を保護するため必要があると認めるときは、当該事業者に対し、必要な措置をとるべき旨を勧告することができ(個人情報保護法148条1項)、そして、当該事業者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において個人の重大な権利利益の侵害が切迫していると認めるときは、当該事業者等に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずること(以下「命令」という)ができる(個人情報保護法148条2項)。 上記の勧告と命令に関する次のア~エの記述のうち、行政手続法の定めに照らし、妥当なものの組合せはどれか。なお、上記勧告は処分(行政手続法2条2号)ではなく行政指導であり(行政手続法2条6号)、命令は処分であることを前提にする。 (注)* 個人情報の保護に関する法律

ア.勧告は、命令を行う前に執られる弁明の機会の付与のための通知に該当する。

イ.勧告に携わる者は、その相手方に対し、勧告の趣旨および内容並びに責任者を明確に示さなければならない。

ウ.勧告を受けた者は、これに続く命令が個人情報保護法に規定する要件に適合しないと思料する場合、個人情報保護委員会に対し、行政手続法の定めに従って、当該命令をしないよう求めることができる。

エ.個人情報保護委員会は、命令をする場合、その名宛人に対し、原則として、同時にその理由を示さなければならない。

  1. ア・ウ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

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【答え】:4

【解説】
ア.勧告は、命令を行う前に執られる弁明の機会の付与のための通知に該当する。

ア.妥当でない

弁明の機会の付与のための通知は、行政手続法30条が定めるもので、行政庁が不利益処分をしようとする場合に、その名あて人となるべき者に対して行われるものです。

本問の勧告は行政指導(行政手続法2条6号)であり、弁明の機会の付与のための「通知」ではありません。行政指導は相手方の任意の協力を前提とするものであり、不利益処分の前置手続である弁明通知とは法的性質が全く異なります。

勧告(行政指導)を受けた者がそれに従わなくても、直ちに不利益を受けることはなく、命令(処分)は勧告とは別個の行為として行われます。

※「弁明の機会の付与」とは、不利益処分をしようとする場合に、相手方に口頭または書面で意見を述べる機会を与える手続のことです(行政手続法29条・30条)。聴聞よりも簡易な手続として位置づけられています。

イ.勧告に携わる者は、その相手方に対し、勧告の趣旨および内容並びに責任者を明確に示さなければならない。

イ.妥当である

行政手続法35条1項は、「行政指導に携わる者は、その相手方に対し、当該行政指導の趣旨および内容並びに責任者を明確に示さなければならない」と定めています。

本問において勧告は行政指導と前提されていることから、この規定が直接適用されます。行政指導の相手方が不当な不利益を被らないよう、何のために・何を求める指導なのか・誰が責任者なのかを明示することが義務づけられています。本肢の記述は35条1項と合致しており、妥当です。

ウ.勧告を受けた者は、これに続く命令が個人情報保護法に規定する要件に適合しないと思料する場合、個人情報保護委員会に対し、行政手続法の定めに従って、当該命令をしないよう求めることができる。

ウ.妥当でない

行政指導の相手方が求めることができるのは、行政指導の「中止その他必要な措置をとること」です(行政手続法36条の2第1項)。すなわち、現在受けている行政指導(勧告)自体をやめるよう求めることはできますが、処分(命令)をしないよう求める制度は行政手続法に規定されていません

36条の2は行政指導の相手方保護のための規定であり、将来の処分の差止めを求める手続ではありません。処分の差止めを求める場合は行政事件訴訟法上の差止訴訟(37条の4)によることになります。

※「行政手続法36条の2」の申出ができるのは、「法令に違反する行為の是正を求める行政指導」の相手方に限られ、かつ当該行政指導が法律の要件に適合しないと思料する場合に限られます。

エ.個人情報保護委員会は、命令をする場合、その名宛人に対し、原則として、同時にその理由を示さなければならない。

エ.妥当である

命令は処分であるとの前提から、それが不利益処分(行政手続法2条4号)に該当するか検討します。命令は「勧告に係る措置をとるべきことを命ずる」ものであり、相手方に義務を課す処分として不利益処分にあたります。

行政手続法14条1項は、「行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない」と定めています。

ただし、同項ただし書きにより、理由を同時に示すことができない相当の理由があるときは、処分後「相当の期間内に示す」ことも認められています。したがって、原則として同時に理由を示す義務があるという本肢の記述は妥当です。

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問13|行政手続法

行政手続法が定める申請に対する処分に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 行政庁は、申請を拒否する処分については申請者に対し当該処分の理由を示さなければならないが、それは申請者からの求めがあった場合に限られ、当該申請者の求める形で行えば足りる。
  2. 行政庁は、申請者に対し、当該申請にかかる審査の進行状況および当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならないが、それは申請者の求めに応じて行えば足りる。
  3. 行政庁は、申請に対する処分について処分基準を定めなければならないが、その処分基準を定めるにあたっては、処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
  4. 行政庁は、申請を拒否する処分をしようとする場合には、当該申請者について意見陳述のための手続を執らなければならないが、その手続は原則として弁明の機会の付与で足りる。
  5. 行政庁は、申請がその形式上の要件に適合しない場合には、速やかに、当該申請者に対し相当の期間を定めてその補正を求めなければならず、補正を求めることなく許認可等を拒否してはならない。

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【答え】:2
【解説】
1.行政庁は、申請を拒否する処分については申請者に対し当該処分の理由を示さなければならないが、それは申請者からの求めがあった場合に限られ、当該申請者の求める形で行えば足りる。

1.妥当でない

申請拒否処分における理由提示について、行政手続法8条1項は、原則として申請者に対し同時に理由を示さなければならないと定めており、「申請者からの求めがあった場合に限られる」という本肢の記述は誤りです。

ただし例外として、審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、申請がこれに適合しないことが申請書等の内容から明らかなときは、申請者の求めがあったときに示せば足りるとされています(同条1項ただし書き)。

また、処分を書面でするときは、理由も書面によって示さなければなりません(同条2項)。「申請者の求める形で行えば足りる」という記述もこの点で誤りです。

2.行政庁は、申請者に対し、当該申請にかかる審査の進行状況および当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならないが、それは申請者の求めに応じて行えば足りる。

2.妥当である

行政手続法9条1項は、行政庁は申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況および当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならないと定めています。

ポイントは、①申請者の求めがあった場合に限られる(自発的な開示は不要)、②努力義務である(必ず示す義務ではない)という2点です。本肢の記述はこれと合致しており、妥当です。

3.行政庁は、申請に対する処分について処分基準を定めなければならないが、その処分基準を定めるにあたっては、処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。

3.妥当でない

申請に対する処分に関して行政庁が定めなければならないのは「審査基準」行政手続法5条)であり、「処分基準」ではありません。

「処分基準」は不利益処分に関する基準であり(12条)、申請に対する処分とは適用される条文が異なります。両者の対比は頻出事項です。

基準の種類 根拠条文 対象 設定・公表義務
審査基準 5条 申請に対する処分 設定義務あり・公表義務あり
処分基準 12条 不利益処分 設定・公表ともに努力義務
4.行政庁は、申請を拒否する処分をしようとする場合には、当該申請者について意見陳述のための手続を執らなければならないが、その手続は原則として弁明の機会の付与で足りる。

4.妥当でない

意見陳述のための手続(聴聞・弁明の機会の付与)は、不利益処分をしようとする場合に課される手続です(行政手続法13条)。

しかし、申請により求められた許認可等を拒否する処分は「不利益処分」に含まれません行政手続法2条4号ロ)。申請拒否は申請者が求めた結果に応じないだけであり、行政庁側から一方的に義務を課したり権利を制限したりするものではないからです。

したがって、申請拒否処分に際して意見陳述手続を執る必要はなく、本肢は妥当ではありません。

※「不利益処分」とは、行政庁が法令に基づき、特定の者を名あて人として直接に義務を課しまたはその権利を制限する処分をいいます(2条4号本文)。申請に対する拒否処分のほか、法令上の要件に適合しないことを理由とする拒否処分も除外されます。

5.行政庁は、申請がその形式上の要件に適合しない場合には、速やかに、当該申請者に対し相当の期間を定めてその補正を求めなければならず、補正を求めることなく許認可等を拒否してはならない。

5.妥当でない

行政手続法7条は、形式上の要件に適合しない申請に対し、行政庁は「相当の期間を定めて補正を求め、または当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない」と定めています。

つまり、補正を求めることと拒否することは選択的(どちらかを採ればよい)であり、「補正を求めることなく拒否してはならない」とは規定されていません。行政庁は補正を求めずに直ちに拒否することもできます。

なお、申請が形式上の要件に適合している場合(内容審査の結果として拒否する場合)は、8条の理由提示義務の問題となります。形式審査(7条)と内容審査(8条)を区別して覚えておきましょう。

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問14|行政不服審査法

行政不服審査法の規定に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 法人でない社団または財団で代表者または管理人の定めがあるものは、その名で審査請求をすることができる。
  2. 審査庁は、必要があると認めるときは審査請求人の代理人の選任を命じることができるが、選任された代理人は、審査請求人のために、取下げを含めた当該審査請求に関する一切の行為をすることができる。
  3. 審査庁となるべき行政庁は、審理員となるべき者の名簿を作成しなければならないが、当該名簿を公にする必要はない。
  4. 処分についての審査請求は、複数人が共同してすることはできず、各自がそれぞれ審査請求をする必要がある。
  5. 処分の申請に対する不作為について審査請求をすることができる者は、申請者に限られることはなく、当該処分がなされることにつき法律上の利益を有する者も含まれる。

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【答え】:1
【解説】
1.法人でない社団または財団で代表者または管理人の定めがあるものは、その名で審査請求をすることができる。

1.妥当である

行政不服審査法10条は、法人でない社団または財団であっても、代表者または管理人の定めがあるものは、その名で審査請求をすることができると定めています。

法人格がなければ権利能力も認められないのが原則ですが、行政不服審査法は、実態として団体としての活動を行っている社団・財団を保護するため、法人でなくても審査請求の当事者能力を認めています。民事訴訟法29条(権利能力なき社団の当事者能力)と同趣旨の規定です。

2.審査庁は、必要があると認めるときは審査請求人の代理人の選任を命じることができるが、選任された代理人は、審査請求人のために、取下げを含めた当該審査請求に関する一切の行為をすることができる。

2.妥当でない

行政不服審査法には、審査庁が代理人の選任を命じることができるという規定は存在しません

代理人に関しては13条が定めていますが、これは審査請求人が自ら代理人を選任できるという規定であり、審査庁が選任を「命じる」ものではありません。

なお、本肢が混同している可能性がある規定として、行政不服審査法11条2項があります。これは多数人が共同して審査請求をした場合に、審査庁が「総代の互選」を命じることができるという規定であり、代理人の選任とは別物です。

また、代理人は「取下げを含めた一切の行為をすることができる」とありますが(13条2項)、この記述自体は正しいものの、前段「審査庁が選任を命じることができる」が誤りである以上、本肢全体として妥当ではありません。

※「総代」とは、多数の審査請求人が共同審査請求をする場合に互選する代表者のことで、3人を超えることができません(11条1項)。

3.審査庁となるべき行政庁は、審理員となるべき者の名簿を作成しなければならないが、当該名簿を公にする必要はない。

3.妥当でない

審理員の名簿について定める行政不服審査法17条は、審査庁となるべき行政庁に対し名簿の作成を努力義務(「作成するよう努めるものとする」)として規定しています。

また、名簿を作成した場合は公にしなければなりません(同条)。本肢は「公にする必要はない」と述べており、この点が誤りです。

整理すると、①名簿の作成=努力義務(義務ではない)②作成した場合の公表=義務、という二段構えの規定になっています。

※「審理員」とは、審査請求の審理を担当する行政庁の職員で、処分に関与していない者から指名されます(9条1項)。審理の公正性を確保するための制度です。

4.処分についての審査請求は、複数人が共同してすることはできず、各自がそれぞれ審査請求をする必要がある。

4.妥当でない

行政不服審査法11条1項は、「多数人が共同して審査請求をしようとするときは、3人を超えない総代を互選することができる」と定めています。

この規定は、共同での審査請求が認められることを前提としており、複数人が共同して審査請求をすること自体は適法です。本肢の「共同してすることはできず、各自がそれぞれ審査請求をする必要がある」という記述は、11条1項の規定に反し誤りです。

5.処分の申請に対する不作為について審査請求をすることができる者は、申請者に限られることはなく、当該処分がなされることにつき法律上の利益を有する者も含まれる。

5.妥当でない

不作為についての審査請求を提起できる者について、行政不服審査法3条は「法令に基づく申請をした者」と明示しています。

すなわち、申請者に限られ、「当該処分がなされることにつき法律上の利益を有する者」は含まれません。

これは、不作為は申請に対する応答がない状態であるため、申請をした者以外に不服を申し立てる地位を認める必要がないという趣旨です。処分の取消しに係る審査請求(「法律上の利益を有する者」が請求できる:2条・4条)と混同しやすいため注意が必要です。

※「不作為」とは、法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らの処分もされないことをいいます(行政不服審査法3条)。

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問15|行政不服審査法

審査請求と再調査の請求との関係に関する次の会話の下線部(ア)~(エ)のうち、妥当なものの組合せはどれか。

.学生A:今日は行政不服審査法の定める審査請求と再調査の請求との関係について学んでいこう。

.学生B:再調査の請求は、処分庁自身がその処分の適否を再度見直すための仕組みだね。

.学生A:まず、行政処分について、(ア)処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合には、処分庁に対して再調査の請求を当然にすることができる。

.学生B:なるほど、実際には、租税や年金分野において多く提起されているようだね。

.学生A:そして、(イ)再調査の請求は任意的なものであるので、再調査の請求ができる場合でも、直ちに審査請求を提起することもできる。

.学生B:じゃあ、再調査の請求と審査請求の両方を同時に提起できるのかな?

.学生A:ちょっと待って・・・。どうやら、(ウ)再調査の請求をすると、原則として、その決定を経た後でなければ審査請求はできないことになっている。

.学生B:それでは、再調査の請求をしても、決定が出るのが遅れた場合にはどうなるのだろう?

.学生A:その場合でも、決定を経ることなく、審査請求をすることができる。(エ)このような場合、行政不服審査法では、再調査の請求が棄却されたとみなされることになっている。

.学生B:なかなか複雑な仕組みだね。正しく覚えておこう。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

>解答と解説はこちら


【答え】:3(イ・ウ)

【解説】
(ア)処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合には、処分庁に対して再調査の請求を当然にすることができる。

ア・・・妥当でない

行政不服審査法5条1項は、処分庁に対する再調査の請求について、「法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるとき」に限り認めています。

つまり、審査請求ができる場合であっても、再調査の請求ができるかどうかは別問題であり、個別の法律(租税関係法・社会保険関係法など)に根拠規定がある場合のみ再調査の請求が認められます。「当然にすることができる」という記述は誤りです。

※「再調査の請求」とは、処分庁自身に対して処分の適否の再考を求める申立てで、簡易・迅速な権利救済を目的としたものです(旧法の「異議申立て」に相当)。

(イ)再調査の請求は任意的なものであるので、再調査の請求ができる場合でも、直ちに審査請求を提起することもできる。

イ・・・妥当である

行政不服審査法5条1項は、再調査の請求をすることが「できる」と規定しており、これは任意的手続であることを意味します。

したがって、再調査の請求が法律上認められている場合であっても、当該処分に不服がある者は、再調査の請求を経ることなく、直接審査請求を提起することができます。ただし、審査請求を先にした場合は、もはや再調査の請求はできません(同条1項ただし書き)。

(ウ)再調査の請求をすると、原則として、その決定を経た後でなければ審査請求はできないことになっている。

ウ・・・妥当である

一度再調査の請求を選択した場合、行政不服審査法5条2項本文により、当該再調査の請求についての決定を経た後でなければ審査請求をすることができないのが原則です。

これは、再調査の請求と審査請求を同時並行で提起することを防ぎ、手続の重複による混乱を避けるための規定です。再調査の請求を選んだ以上、まずその結論を待つ必要があります。

(エ)このような場合、行政不服審査法では、再調査の請求が棄却されたとみなされることになっている。

エ・・・妥当でない

再調査の請求をした日(または不備補正日)から3か月を経過しても決定がない場合など正当な理由がある場合には、決定を待たずに審査請求ができます(行政不服審査法5条2項ただし書き)。

この場合、再調査の請求は「取り下げられたものとみなされる」のであり(行政不服審査法56条)、本肢の「棄却されたものとみなされる」という記述は誤りです。「棄却」と「取下げ」は全く異なる概念であり、試験頻出の引っかけポイントです。

※「棄却」とは、申立ての内容が認められない旨の判断のことで、審査の結果として下されるものです。

※「取下げ」とは、申立人自らが申立てを撤回することで、審査の前提が消滅するものです。この場合は審判を経ることなく手続が終了します。

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問16|行政不服審査法

行政不服審査法が定める教示に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 行政庁は、利害関係人から、当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうかや不服申立期間等につき教示を求められても、利害関係人は処分の相手方以外の者であることから、当該事項等を教示する必要はない。
  2. 行政庁は、審査請求もしくは再調査の請求または他の法令に基づく不服申立てをすることができる処分を書面でする場合、当該処分の相手方に対し、不服申立てができること、不服申立てをすべき行政庁、不服申立てができる期間について、教示をしなければならないが、口頭による教示も認められている。
  3. 行政庁は、利害関係人から、当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうかや不服申立期間等につき書面による教示を求められた場合であっても、これに代えて口頭により教示をすることができる。
  4. 処分庁により審査請求をすべき行政庁について誤った行政庁が教示された場合、誤って教示された行政庁に書面で審査請求がなされたときは、当該行政庁は、審査庁となるべき行政庁を改めて教示し、審査請求人に審査請求書を返送しなければならない。
  5. 処分庁が不服申立てをすべき行政庁につき教示を怠った場合、当該処分に不服がある者は、処分庁に審査請求書を提出することができ、処分庁以外の行政庁に審査請求ができる処分であるときは、処分庁は、審査請求書を当該行政庁に送付しなければならず、送付された場合、初めから当該行政庁に審査請求がされたものとみなされる。

>解答と解説はこちら


【答え】:5
【解説】
1.行政庁は、利害関係人から、当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうかや不服申立期間等につき教示を求められても、利害関係人は処分の相手方以外の者であることから、当該事項等を教示する必要はない。

1.妥当でない

行政不服審査法82条2項は、利害関係人からの教示請求に関する規定を明確に置いています。

同項によれば、行政庁は、利害関係人から「当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうか」「不服申立てをすべき行政庁」「不服申立てができる期間」について教示を求められたときは、当該事項を教示しなければなりません

処分の相手方以外の者(利害関係人)であることは、教示義務を免除する理由にはなりません。本肢は「利害関係人には教示する必要はない」と述べており、妥当ではありません。

※「教示」とは、行政庁が処分をする際に、不服申立てができる旨・申立先・期間などを相手方等に知らせる制度のことです。

※「利害関係人」とは、処分の相手方以外の者で、当該処分について利害関係を有する者をいいます。

2.行政庁は、審査請求もしくは再調査の請求または他の法令に基づく不服申立てをすることができる処分を書面でする場合、当該処分の相手方に対し、不服申立てができること、不服申立てをすべき行政庁、不服申立てができる期間について、教示をしなければならないが、口頭による教示も認められている。

2.妥当でない

行政不服審査法82条1項は、不服申立てができる処分を書面でする場合には、処分の相手方に対して教示を書面でしなければならないと定めています。

本肢は「口頭による教示も認められている」と述べていますが、処分を書面でする場合の教示は書面による教示が義務づけられており、口頭での代替は認められていません

口頭による処分の場合は、そもそも書面教示の義務自体が生じない(口頭処分には82条1項の適用がない)ことと混同しないよう注意が必要です。

※「審査請求」とは、処分に不服がある者が、処分庁の上級行政庁等(審査庁)に対して審査を求める申立てのことです。

3.行政庁は、利害関係人から、当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうかや不服申立期間等につき書面による教示を求められた場合であっても、これに代えて口頭により教示をすることができる。

3.妥当でない

利害関係人からの教示請求(行政不服審査法82条2項)について、同条3項は「書面による教示を求められたときは、書面によって教示しなければならない」と明定しています。

つまり、利害関係人が口頭での教示請求をした場合は口頭で応じることもできますが、書面による教示を求めた場合は必ず書面で教示しなければならず、これに代えて口頭で教示することはできません。

本肢は「書面による教示を求められた場合であっても口頭で教示できる」と述べており、82条3項に反し、妥当ではありません。

4.処分庁により審査請求をすべき行政庁について誤った行政庁が教示された場合、誤って教示された行政庁に書面で審査請求がなされたときは、当該行政庁は、審査庁となるべき行政庁を改めて教示し、審査請求人に審査請求書を返送しなければならない。

4.妥当でない

行政不服審査法22条1項は、審査請求をすることができる行政庁が誤って教示された場合において、誤った行政庁に書面で審査請求がされたときの取扱いを定めています。

同項によれば、誤った教示を受けた行政庁は、速やかに審査請求書を処分庁または審査庁となるべき行政庁に「送付」し、かつその旨を審査請求人に「通知」しなければなりません。

本肢は「審査庁となるべき行政庁を改めて教示し、審査請求書を審査請求人に返送しなければならない」と述べていますが、正しくは審査庁等への「送付」であり「返送」ではありません。審査請求人への対応も「通知」であって、書類を返すものではない点に注意が必要です。

5.処分庁が不服申立てをすべき行政庁につき教示を怠った場合、当該処分に不服がある者は、処分庁に審査請求書を提出することができ、処分庁以外の行政庁に審査請求ができる処分であるときは、処分庁は、審査請求書を当該行政庁に送付しなければならず、送付された場合、初めから当該行政庁に審査請求がされたものとみなされる。

5.妥当である

行政不服審査法83条は、行政庁が不服申立先の教示を怠った場合の救済規定です。

同条1項によれば、行政庁が不服申立てができる旨を教示したにもかかわらず、不服申立てをすべき行政庁を教示しなかった場合、当該処分に不服がある者は処分庁に不服申立書を提出することができます

そして、提出を受けた処分庁は、処分庁以外の行政庁に審査請求できる処分であるときは、速やかに審査請求書を審査庁となるべき行政庁に送付し、その旨を審査請求人に通知しなければなりません(同条2項)。

さらに同条3項により、送付された場合には初めから当該行政庁に審査請求がされたものとみなされます(審査請求期間の計算においても審査請求書提出時を基準にするという保護が図られています)。本肢の記述はこれらの規定と合致しており、妥当です。

※「処分庁」とは、当該処分を行った行政庁のことです。

※「審査庁」とは、審査請求を受理して審査を行う行政庁(通常は処分庁の上級行政庁等)のことです。

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問17|行政事件訴訟法

抗告訴訟の対象に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 関税定率法(当時)の規定に基づく輸入禁制品に該当する貨物と認めるのに相当の理由がある旨の税関長による通知は、いわゆる観念の通知と見るべきものであるが、当該通知があった場合には、輸入申告者は貨物を適法に輸入する道を閉ざされるのであって、これは当該通知によって生ずるに至った法律上の効果と見るのが相当であり、当該通知は行政処分にあたる。
  2. 交通反則金の納付の通告は、通告を受けた者において通告に係る反則金を納付すべき法律上の義務を生じさせるものであるから、行政処分にあたる。
  3. 地方公共団体の水道事業において、水道料金を条例の適用範囲全域につき一律に値上げすることを内容とする水道給水条例が制定された場合、水道の利用者はかかる条例の施行によって値上げされた水道料金の支払義務を負うこととなるため、当該条例の制定行為は行政処分にあたる。
  4. 登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が、登記機関に対して税務署長への還付通知を行うように登録免許税法に基づいて請求した場合、当該通知を拒否する旨の登記機関による通知は、登記等を受けた者の手続上の地位を否定する法的効果を有さないため、行政処分にあたらない。
  5. 都市計画法に基づく都市計画決定としてなされる工業地域指定は、これによって当該地域内において、建築物の建築を制限する法的効果が土地所有者等に対して生じることとなるため、具体的な権利侵害を伴うものであるから、行政処分にあたる。

>解答と解説はこちら


【答え】:1
【解説】
1.関税定率法(当時)の規定に基づく輸入禁制品に該当する貨物と認めるのに相当の理由がある旨の税関長による通知は、いわゆる観念の通知と見るべきものであるが、当該通知があった場合には、輸入申告者は貨物を適法に輸入する道を閉ざされるのであって、これは当該通知によって生ずるに至った法律上の効果と見るのが相当であり、当該通知は行政処分にあたる。

1.妥当である

税関長による「輸入禁制品に該当する相当の理由がある旨の通知」は、通知があると輸入申告者が適法に輸入できなくなるという法律上の効果を直接発生させます。判例は、このような通知は単なる観念の通知にとどまらず、法律上の効果をもたらすものとして行政処分にあたると判示しています。通知の性質を形式ではなく法的効果の有無で判断するという処分性判断の基本的考え方が示された事例です。

2.交通反則金の納付の通告は、通告を受けた者において通告に係る反則金を納付すべき法律上の義務を生じさせるものであるから、行政処分にあたる。

2.妥当でない

交通反則金の納付通告は行政処分にあたりません(最判昭和57年7月15日)。通告を受けた者は、反則金を納付するか、納付しないで刑事手続に委ねるかを選択できる立場にあります。反則金の納付は任意であり、通告によって法律上の義務が確定的に生じるわけではないため、処分性が否定されます。「支払義務を生じさせるから処分にあたる」という論理が誤りです。

※「処分性」とは、抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為」(行政事件訴訟法3条2項)に該当するかどうかの問題です。

3.地方公共団体の水道事業において、水道料金を条例の適用範囲全域につき一律に値上げすることを内容とする水道給水条例が制定された場合、水道の利用者はかかる条例の施行によって値上げされた水道料金の支払義務を負うこととなるため、当該条例の制定行為は行政処分にあたる。

3.妥当でない

水道料金を一律に値上げする条例の制定行為は、特定の個人に向けた処分ではなく一般的・抽象的なルールの制定であり、処分性が否定されます(最判平成18年7月14日)。条例制定は「行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視できない」とされ、抗告訴訟の対象となる行政処分にはあたりません。支払義務が発生しても、その根拠が法規の制定である場合は処分性が認められない点を押さえましょう。

4.登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が、登記機関に対して税務署長への還付通知を行うように登録免許税法に基づいて請求した場合、当該通知を拒否する旨の登記機関による通知は、登記等を受けた者の手続上の地位を否定する法的効果を有さないため、行政処分にあたらない。

4.妥当でない

登録免許税の過大納付者が還付通知を求めたにもかかわらず、登記機関がこれを拒否した場合、判例(最判平成17年4月14日)は当該拒否通知は抗告訴訟の対象となる行政処分にあたると判示しています。拒否通知は申請者が法的手続を通じて還付を受けるための手続上の地位を否定する法的効果を有するため、処分性が肯定されます。「法的効果を有さないため処分にあたらない」という記述が誤りです。

5.都市計画法に基づく都市計画決定としてなされる工業地域指定は、これによって当該地域内において、建築物の建築を制限する法的効果が土地所有者等に対して生じることとなるため、具体的な権利侵害を伴うものであるから、行政処分にあたる。

5.妥当でない

都市計画における用途地域の指定は、土地の利用制限という法的効果を生じさせますが、特定の個人に向けた具体的な法律関係の変動ではなく、地域一般に対する抽象的・一般的な規制であるため、処分性が否定されます。判例は用途地域指定を抗告訴訟の対象となる行政処分にはあたらないとしています。具体的な権利侵害があっても、その発生原因が一般的規制の設定である場合は処分性が認められない点が重要です。

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問18|行政事件訴訟法

処分取消訴訟の出訴期間について定めた下記の規定に関する次の記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。 行政事件訴訟法(行訴法)14条1項「取消訴訟は、処分・・・があったことを知った日から6ヵ月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。」 なお、本問では「処分・・・があったことを知った日」を「基準日」という。

  1. 行訴法は、行訴法14条1項のほかに、処分の日から一定期間を経過したときは、取消訴訟を提起することができない旨の定めを置いているが、この定めには「正当な理由があるときは、この限りでない。」とのただし書きは付されていない。
  2. 個人情報保護条例(当時)に基づく保有個人情報の一部開示決定に対する取消訴訟について、開示文書の内容の詳細や不利益性を認識した時が基準日となることから、基準日は、当該決定の通知書が到達した日ではなく、当該開示文書が到達した日とされる。
  3. 行訴法14条1項が定める出訴期間の定めは、無効等確認訴訟の他、形式的当事者訴訟にも準用されることが行訴法において規定されている。
  4. 審査請求をすることができる処分についてそれがなされた場合、当該処分に係る取消訴訟は、当該審査請求をした者については、行訴法14条1項の規定にかかわらず、当該審査請求を行った日が基準日とされる。
  5. 都市計画法における都市計画事業の認可のように、処分が個別の通知ではなく告示をもって多数の関係権利者等に画一的に告知される場合には、当該告示があった日が基準日とされる。

>解答と解説はこちら


【答え】:5
【解説】
1.行訴法は、行訴法14条1項のほかに、処分の日から一定期間を経過したときは、取消訴訟を提起することができない旨の定めを置いているが、この定めには「正当な理由があるときは、この限りでない。」とのただし書きは付されていない。

1.妥当でない

行政事件訴訟法14条には主観的出訴期間(1項・処分を知った日から6か月)と客観的出訴期間(2項・処分の日から1年)の両方が規定されており、どちらにも「正当な理由があるときはこの限りでない」というただし書きが付されています。「客観的出訴期間にはただし書きがない」という記述が誤りです。両方の期間にただし書きがある点を正確に覚えておきましょう。

※「主観的出訴期間」とは、当事者が処分を知った日を起算点とする期間制限(6か月)です。「客観的出訴期間」とは、処分の日そのものを起算点とする絶対的な期間制限(1年)です。

2.個人情報保護条例(当時)に基づく保有個人情報の一部開示決定に対する取消訴訟について、開示文書の内容の詳細や不利益性を認識した時が基準日となることから、基準日は、当該決定の通知書が到達した日ではなく、当該開示文書が到達した日とされる。

2.妥当でない

判例(最判平成28年3月10日)は、「処分があったことを知った日」とは処分があったことを現実に知った日をいい、処分内容の詳細や不利益性等の認識までは不要と判示しています。一部開示決定のような処分が個別に通知される場合は、通知書が到達した時点で処分の効力が生じ、その到達日が基準日となります。開示文書の到達日ではなく、通知書の到達日が基準日となる点が重要です。

3.行訴法14条1項が定める出訴期間の定めは、無効等確認訴訟の他、形式的当事者訴訟にも準用されることが行訴法において規定されている。

3.妥当でない

出訴期間を定めた行政事件訴訟法14条は、無効等確認訴訟には準用されていません(行政事件訴訟法38条1項)。無効等確認の訴えは、処分が重大かつ明白な瑕疵により無効であることを主張するものであり、出訴期間の制限なくいつでも提起できます。また、形式的当事者訴訟(行政事件訴訟法41条)にも14条は準用されておらず、「形式的当事者訴訟に準用される」という記述も誤りです。

4.審査請求をすることができる処分についてそれがなされた場合、当該処分に係る取消訴訟は、当該審査請求をした者については、行訴法14条1項の規定にかかわらず、当該審査請求を行った日が基準日とされる。

4.妥当でない

審査請求をした者について出訴期間の起算点は、「審査請求をした日」ではなく、「裁決があったことを知った日から6か月」または「裁決の日から1年」のいずれか早い日です(行政事件訴訟法14条3項)。審査請求後は裁決を待って訴訟を提起することになるため、出訴期間の起算点は審査請求日ではなく裁決に関する日を基準とする点を正確に覚えておきましょう。

5.都市計画法における都市計画事業の認可のように、処分が個別の通知ではなく告示をもって多数の関係権利者等に画一的に告知される場合には、当該告示があった日が基準日とされる。

5.妥当である

都市計画事業の認可のように、個別通知ではなく告示によって多数の関係権利者等に画一的に告知される処分については、告示があった日が「処分があったことを知った日(基準日)」となります(最判平成14年10月24日)。個別通知の場合と異なり、告示による場合は告示日を起算点として出訴期間が計算されます。通知方法(個別通知か告示か)によって基準日の考え方が異なる点を整理しておきましょう。

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和7年・2025|問19|行政事件訴訟法

処分差止めの訴えに関する次のア~オの記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.処分差止めの訴えは、一定の処分がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるときに限り提起することができる。

イ.処分差止めの訴えは、対象となる処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができないときに提起することができるとするのが判例である。

ウ.処分差止めの訴えは、義務付けの訴えと同様、申請に対する処分を対象にする場合とそれ以外の処分を対象にする場合に区分され、訴訟要件と本案勝訴要件につき、それぞれ別個の定めが置かれている。

エ.取消しの訴えについては、処分または裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する旨の規定が置かれているが、この規定は、処分差止めの訴えには準用されていない。

オ.仮の差止めは、処分差止めの訴えを提起する前においても申し立てることができるが、本案について理由がないとみえるときは、仮の差止めの決定をすることができない。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・エ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:3

【解説】
ア.処分差止めの訴えは、一定の処分がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるときに限り提起することができる。

ア.妥当でない

差止めの訴えの要件として「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるとき」という基準は誤りです。差止めの訴えの要件は「重大な損害を生ずるおそれ」があり、かつ「その損害を避けるため他に適当な方法がないとき」です(行政事件訴訟法37条の4第1項)。「償うことのできない損害」と「緊急の必要」という基準は、差止めの訴えではなく仮の差止め(行政事件訴訟法37条の5第2項)の要件です。

※「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分または裁決をしてはならない旨を命じることを求める訴訟類型です(行政事件訴訟法3条7項)。

イ.処分差止めの訴えは、対象となる処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができないときに提起することができるとするのが判例である。

イ.妥当である

差止めの訴えの「他に適当な方法がないとき」という要件は、処分がされた後に取消訴訟を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができない場合を意味します(行政事件訴訟法37条の4第1項)。すなわち、事後的救済(取消訴訟+執行停止)では不十分な場合に限り差止めの訴えが認められるという補充性の原則が求められています。これは本条の趣旨を適切に表した記述です。

ウ.処分差止めの訴えは、義務付けの訴えと同様、申請に対する処分を対象にする場合とそれ以外の処分を対象にする場合に区分され、訴訟要件と本案勝訴要件につき、それぞれ別個の定めが置かれている。

ウ.妥当でない

義務付けの訴えは申請型と非申請型(直接型)の2種類に区分されていますが(行政事件訴訟法37条の2・37条の3)、差止めの訴えにはそのような区分はありません(行政事件訴訟法37条の4)。差止めの訴えは単一の訴訟類型として規定されており、申請の有無による類型分けはされていません。義務付けの訴えとの違いを正確に区別して覚えましょう。

エ.取消しの訴えについては、処分または裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する旨の規定が置かれているが、この規定は、処分差止めの訴えには準用されていない。

エ.妥当である

取消判決の第三者効を定めた規定(行政事件訴訟法32条1項)は、差止めの訴えには準用されていません(行政事件訴訟法38条1項)。差止めの訴えには判決の拘束力(行政事件訴訟法33条)の規定は準用されますが、取消判決の第三者効の規定は準用対象から除かれています。差止めの訴えについてどの規定が準用されどの規定が準用されないかを整理しておきましょう。

※「取消判決の第三者効」とは、処分・裁決の取消判決がその訴訟の当事者以外の第三者に対しても効力を有するという原則です(行政事件訴訟法32条1項)。対世効ともいいます。

オ.仮の差止めは、処分差止めの訴えを提起する前においても申し立てることができるが、本案について理由がないとみえるときは、仮の差止めの決定をすることができない。

オ.妥当でない

仮の差止めは、差止めの訴えを提起した後でなければ申し立てることができません(行政事件訴訟法37条の5第2項)。「提起する前においても申し立てることができる」という記述が誤りです。また、本案について理由がないとみえるときは仮の差止めの決定をすることができない(同条3項)という要件は正しい内容です。仮の差止めは「差止めの訴えの提起があった場合において」と明文で定められている点を押さえましょう。

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略