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平成26年・2014|問25|行政法

鉄道事業者Xが輸送の安全対策を疎かにして多数の鉄道事故を引き起こしたことから、Y(国土交通大臣)はXに対して鉄道事業法に基づく事業改善命令を行うとともに(法23条)、Xの安全統括管理者(鉄道事業者が、輸送安全に関する業務を統括管理させるため、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にあり、かつ、鉄道事業に関する一定の実務の経験その他の国土交通省令で定める要件を備える者のうちから選任する者をいう)の解任を命じることとした(法18条の3第7項)※ 。この事例に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、鉄道事業法には、行政手続きや訴訟に関する特段の定めはない。

  1. Yが事業改善命令を行うに際して、当該命令が許認可の取消しに相当するほどの重大な損害をXに与える場合には、行政手続法に基づき、Xに対して、聴聞を実施しなければならない。
  2. Yが事業改善命令を行うに際して、公益上、緊急にこれをする必要がある場合には、行政手続法に基づき、Xに対して、聴聞に換えて、より簡易な手続である弁明の機会の付与の手続をとらなければならない。
  3. Yが業務改善命令を行わない旨を決定した場合、それによって安全を脅かされる利用者は、これに対して取消訴訟を提起することができる。
  4. Yが安全統括管理者の解任命令を行った場合、Xの法的地位が侵害されるわけではないから、Xには当該命令に対する取消訴訟を提起する原告適格は認められない。
  5. Yが安全統括管理者の解任命令を行うに際しては、当該命令の許認可の取消しには当たらないものの、行政手続法に基づき、Xに対して、聴聞を実施しなければならない。

(注)※鉄道事業法18条の3第7項
国土交通大臣は、安全統括管理者又は運転管理者がその職務を怠つた場合であつて、当該安全統括管理者又は運転管理者が引き続きその職務を行うことが輸送の安全の確保に著しく支障を及ぼすおそれがあると認められるときは、鉄道事業者に対し、当該安全統括管理者又は運転管理者を解任すべきことを命ずることができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】

1.Yが事業改善命令を行うに際して、当該命令が許認可の取消しに相当するほどの重大な損害をXに与える場合には、行政手続法に基づき、Xに対して、聴聞を実施しなければならない。
1・・・誤り
行政庁は、下記行為を行う場合、聴聞の手続を執らなければなりません(行政手続法13条1項)。
  1. 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。
  2. 1に規定するもののほか、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき。
  3. 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分、名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき。・・・選択肢5の内容
  4. 1から3までに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき。

本肢の「業務改善命令」は、たとえ、許認可の取消しに相当するほどの重大な損害をXに与える場合であっても、上記1~4のどれにも当てはまらないので、聴聞は実施する必要はありません。

2.Yが事業改善命令を行うに際して、公益上、緊急にこれをする必要がある場合には、行政手続法に基づき、Xに対して、聴聞に換えて、より簡易な手続である弁明の機会の付与の手続をとらなければならない。
2・・・誤り
公益上、緊急に不利益処分をする必要がある場合意見陳述のための手続(聴聞および弁明の機会の付与)を執る必要はありません行政手続法13条2項1号)。
したがって、「聴聞に換えて、より簡易な手続である弁明の機会の付与の手続をとらなければならない」という記述も誤りです。
3.Yが業務改善命令を行わない旨を決定した場合、それによって安全を脅かされる利用者は、これに対して取消訴訟を提起することができる。
3・・・誤り
取消訴訟は、処分又は裁決の取消しを求めるにつき「法律上の利益」を有する者に限り、提起することができます(行政事件訴訟法9条1項)。鉄道利用者は業務改善命令を行わない旨を決定についての取消訴訟において、原告適格を有しません。したがって、取消訴訟を行うことはできません。
この点は理解しないといけない部分なので、個別指導で解説します!
よって、本肢は誤り。
4.Yが安全統括管理者の解任命令を行った場合、Xの法的地位が侵害されるわけではないから、Xには当該命令に対する取消訴訟を提起する原告適格は認められない。
4・・・誤り
取消訴訟を提起するためには「法律上の利益」が必要です(行政事件訴訟法9条:原告適格)。そして、「鉄道事業者Xは、当該安全統括管理者又は運転管理者を解任すべきことを命じられた」ということは、Xは「法律上の利益」があります。
したがって、Xは取消訴訟を提起するための原告適格は認められます。
よって、本肢は誤りです。
5.Yが安全統括管理者の解任命令を行うに際しては、当該命令の許認可の取消しには当たらないものの、行政手続法に基づき、Xに対して、聴聞を実施しなければならない。
5・・・正しい
選択肢1の解説の「3」にあたるので、Yが安全統括管理者の解任命令を行うに際して、Xに対して、聴聞を実施しなければなりません。

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平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:債権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 幸福追求権など 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 投票価値の平等 問35 民法:親族
問6 内閣 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政調査 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法等 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政事件訴訟法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・政治
問19 国家賠償法 問49 基礎知識・社会
問20 損失補償 問50 基礎知識・経済
問21 地方自治法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・経済
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 行政法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法 問55 基礎知識・情報通信
問26 行政法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:債権 問60 著作権の関係上省略

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