土地収用に伴う土地所有者に対する損害補償について、妥当な記述はどれか。
- 土地収用に伴う損失補償は、「相当な補償」で足るものとされており、その額については、収用委員会の広範な裁量に委ねられている。
- 土地収用に伴う損失補償を受けるのは、土地所有者等、収用の対象となる土地について権利を有するものに限られ、隣地の所有者等の第三者が補償を受けることはない。
- 収用委員会の収用裁決によって決定された補償額に起業者が不服のある場合には、土地所有者を被告として、その減額を求める訴訟を提起すべきこととされている。
- 土地収用に伴う土地所有者に対する補償は、その土地の市場価格に相当する額に限られ、移転に伴う営業利益の損失などは、補償の対象とされることはない。
- 土地収用に関しては、土地所有者の保護の見地から、金銭による補償が義務付けられており、代替地の提供によって金銭による補償を免れるといった方法は認められない。
【解説】
1.土地収用に伴う損失補償は、「相当な補償」で足るものとされており、その額については、収用委員会の広範な裁量に委ねられている。
1・・・妥当ではない
判例によると
「土地収用法による補償金の額は、「相当な価格」(同法七一条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。」
と判示しています。
つまり、収用委員会の広範な裁量に委ねられてないので、本肢は妥当ではありません。
判例によると
「土地収用法による補償金の額は、「相当な価格」(同法七一条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。」
と判示しています。
つまり、収用委員会の広範な裁量に委ねられてないので、本肢は妥当ではありません。
土地収用法71条(土地等に対する補償金の額)
収用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とする。
2.土地収用に伴う損失補償を受けるのは、土地所有者等、収用の対象となる土地について権利を有するものに限られ、隣地の所有者等の第三者が補償を受けることはない。
2・・・妥当ではない
土地を収用し、又は使用して、その土地を事業の用に供することにより、当該土地及び残地以外の土地について、通路、溝、垣、さくその他の工作物を新築し、改築し、増築し、若しくは修繕し、又は盛土若しくは切土をする必要があると認められるときは、起業者は、これらの工事をすることを必要とする者の請求により、これに要する費用の全部又は一部を補償しなければなりません(土地収用法93条1項)。
したがって、「隣地の所有者等の第三者」も保証を受けることができるので、本肢は妥当ではありません。
土地を収用し、又は使用して、その土地を事業の用に供することにより、当該土地及び残地以外の土地について、通路、溝、垣、さくその他の工作物を新築し、改築し、増築し、若しくは修繕し、又は盛土若しくは切土をする必要があると認められるときは、起業者は、これらの工事をすることを必要とする者の請求により、これに要する費用の全部又は一部を補償しなければなりません(土地収用法93条1項)。
したがって、「隣地の所有者等の第三者」も保証を受けることができるので、本肢は妥当ではありません。
3.収用委員会の収用裁決によって決定された補償額に起業者が不服のある場合には、土地所有者を被告として、その減額を求める訴訟を提起すべきこととされている。
3・・・妥当
損失の補償に関する訴えについて、
損失の補償に関する訴えについて、
- 訴えを提起した者が起業者であるときは、土地所有者又は関係人を被告として
- 訴えを提起した者が土地所有者又は関係人であるときは、起業者を被告として
訴えを提起しなければなりません(土地収用法133条3項)。
よって、本肢は妥当です。
ちなみに本件訴訟を「形式的当事者訴訟」と言います。
4.土地収用に伴う土地所有者に対する補償は、その土地の市場価格に相当する額に限られ、移転に伴う営業利益の損失などは、補償の対象とされることはない。
4・・・妥当ではない
損失補償については、「土地の収用に対する補償」のほか、「離作料、営業上の損失、建物の移転による賃貸料の損失その他土地を収用し、又は使用することによって土地所有者又は関係人が通常受ける損失」は、補償しなければなりません(土地収用法88条)。
したがって、「移転に伴う営業利益の損失などは、補償の対象とされることはない」は妥当ではありません。
損失補償については、「土地の収用に対する補償」のほか、「離作料、営業上の損失、建物の移転による賃貸料の損失その他土地を収用し、又は使用することによって土地所有者又は関係人が通常受ける損失」は、補償しなければなりません(土地収用法88条)。
したがって、「移転に伴う営業利益の損失などは、補償の対象とされることはない」は妥当ではありません。
5.土地収用に関しては、土地所有者の保護の見地から、金銭による補償が義務付けられており、代替地の提供によって金銭による補償を免れるといった方法は認められない。
5・・・妥当ではない
損失の補償は、原則、金銭をもって行います。ただし、収用委員会の裁決があった場合は、代替地の提供その他補償の方法によって行ってもよいです(土地収用法70条)。
よって、本肢の「代替地の提供によって金銭による補償を免れるといった方法は認められない」は妥当ではありません。
損失の補償は、原則、金銭をもって行います。ただし、収用委員会の裁決があった場合は、代替地の提供その他補償の方法によって行ってもよいです(土地収用法70条)。
よって、本肢の「代替地の提供によって金銭による補償を免れるといった方法は認められない」は妥当ではありません。
平成26年度(2014年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
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問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 幸福追求権など | 問33 | 民法:債権 |
問4 | 経済的自由 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 投票価値の平等 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 内閣 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政調査 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法等 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 損失補償 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・経済 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 行政法 | 問54 | 基礎知識・社会 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・情報通信 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・情報通信 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・個人情報保護 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |