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株主からの責任追及(株主代表訴訟・差止請求・検査役の調査)

取締役が任務を怠った(任務懈怠)場合、会社が、当該取締役に対して損害賠償の責任を追及することができます。

しかし、会社と取締役の関係上、会社が取締役に対して責任追及をしないことも多いです。そうなると、株主に不利益になるため、会社法では、株主が会社を代表して取締役を訴える「株主代表訴訟(847条)」を規定しています。

株主代表訴訟

株主代表訴訟については、流れをしっかり覚えておくことが重要です。というのも、取締役の任務懈怠により、会社に損害を与えたからと言って、株主がいきなり訴えを起こせる訳ではないからです。

株主代表訴訟の流れ

  1. 6か月から引き続き株式を有する株主は、会社に対して書面等をもって、取締役の責任を追及する訴訟を提起するよう請求する
  2. 株主が請求をしたもかかわらず、会社が60日以内に訴訟を提起しない
  3. 株主は会社の代わりに、自らが原告となって訴訟(株主による責任追及等の訴え:株主代表訴訟)を提起することができる

このような流れになります。

非公開会社の場合は6か月前から持っていなくてもよく、株主であれば株主代表訴訟を提起できます。

2において、会社が訴えを提起した場合は、株主代表訴訟は行えません

株主からの請求に基づいて会社が訴えを提起する場合、原則、代表取締役(指名委員会等設置会社では代表執行役)が会社を代表します(349条1項4項、420条3項)。

ただし、監査役設置会社について取締役の責任を追及する訴えを行う場合、監査役が会社を代表します(386条2項1号)。

単独株主請求権である株主代表訴訟>>

違法行為の差止請求

取締役や執行役が違法行為をした場合、当該取締役等は会社に対して損害賠償責任を負います(423条1項)。

しかし、できれば、違法行為が行われる前にその行為を差止めでできれば、その方がよいです。

そこで、会社法では、一定要件を満たせば、株主は、当該取締役等に対して違法行為の差止めができる権利(差止請求権)を認めています(360条422条)。

株主による差止請求の要件

  1. 6か月から引き続き株式を有する株主であること(非公開会社の場合は6か月前から持っていなくてもよい
  2. 取締役が株式会社の①目的の範囲外の行為や②法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある
  3. 株式会社に著しい損害が生ずるおそれがある(監査役設置会社又は指名委員会等設置会社監査等委員会設置会社の場合、回復することができない損害が生ずるおそれがある)

業務の執行に関する検査役による調査

株式会社の業務の執行に関し、「不正の行為」又は「法令若しくは定款に違反する重大な事実があること」を疑うに足りる事由があるときは、一定要件を満たした株主は、当該株式会社の業務及び財産の状況を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができます(358条)。

検査役の選任の申立てができる株主の要件

下記2つのいずれか一方を満たす株主は、検査役の選任の申立てができます。

  1. 総株主の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主
  2. 発行済株式自己株式を除く)の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主

検査役の役割

ここでいう検査役とは、株式会社の業務や財産状況の調査などを職務とする臨時的な監査機関といったイメージです。

会社の取締役が不正な行為や法令違反行為を行っていることが疑われる場合、株主としては、計算書類・会計帳簿や取締役会議事録を閲覧することによって情報を収集し、取締役に不正・不法な行為があれば、最終的に株主総会や取締役解任の訴えによって当該取締役を解任させることができます。

しかし、実際のところ、計算書類や会計帳簿の閲覧の対象は一定の資料に限定されており、株主であっても、細かい部分まで調べることは難しいです。

そのような場合に、「検査役」を選任して、その検査役に細かく調べてもらい、報告してもらうことができます。

これによって、取締役を解任させることができます。

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指名委員会等設置会社

指名委員会等設置会社には、①指名委員会、②監査委員会、③報酬委員会の3委員会が置かれます。

それぞれの委員会は、委員3人以上で組織されます。この委員は、取締役の中から取締役決議によって選定されます。つまり、委員は全員取締役です。また、各委員会の委員の過半数が社外取締役でなければなりません(400条1項・2項)。


指名委員会

指名委員会は、株主総会に提出する取締役及び会計参与の選任及び解任に関する議案の内容を決定します(404条1項)。

監査委員会

監査委員会は、下記内容を行います(404条2項)。

  1. 執行役等(執行役・取締役・会計参与)の「職務の執行の監査」及び「監査報告の作成」
  2. 「株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任」並びに「会計監査人を再任しないこと」に関する議案の内容の決定

監査委員による調査

 

①監査委員会が選定する監査委員は、いつでも、「執行役・取締役・会計参与」に対し、その職務の執行に関する事項の報告を求め、又は

指名委員会等設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます。(405条1項)

②監査委員会が選定する監査委員は、監査委員会の職務を執行するため必要があるときは、指名委員会等設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又は

その子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。(405条2項)

取締役会への報告義務

監査委員は、①執行役又は取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は②法令若しくは定款に違反する事実若しくは③著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役会に報告しなければなりません(406条

監査委員による執行役等の行為の差止め

監査委員は、執行役又は取締役が指名委員会等設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合で、かつ、当該行為によって当該指名委員会等設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該執行役又は取締役に対し、当該行為をやめることを請求(差止請求)することができます(407条1項)。

報酬委員会

報酬委員会は、「執行役・取締役・会計参与」の個人別の報酬等の内容を決定する権限を有しています(404条3項)。

執行役が指名委員会等設置会社の支配人その他の使用人を兼ねているときは、当該支配人その他の使用人の報酬等の内容についても、同様とする。

執行役

 

指名委員会等設置会社には、1人又は2人以上の執行役を置かなければなりません(402条1項)。また、執行役は、取締役会の決議によって選任します(402条2項)。

執行役の権限

執行役は、①取締役会の決議によって委任を受けた業務の執行の決定と②業務の執行を行います(418条)。

執行役の任期

執行役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結後最初に招集される取締役会の終結の時までです。

ただし、定款によって、その任期を短縮することができます。

指名委員会等設置会社でない取締役の任期は2年です。

執行役の選任・解任

執行役は、取締役会決議によって選任されます(402条2項)。

また、いつでも、取締役会決議によって解任することができます(403条1項)。

執行役の義務

執行役は、3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければなりません。この場合において、執行役は、「他の執行役を代理人」として報告をすることができます。(417条4項)

また、取締役会の要求があった場合、執行役は、取締役会に出席し、取締役会が求めた事項について説明をしなければなりません(417条5項)。

さらに、執行役は、指名委員会等設置会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときは、直ちに、当該事実を監査委員に報告しなければなりません(419条1項)。報告先は取締役会ではないので注意しましょう!

代表執行役

選定と解職

代表執行役は、取締役会が、執行役の中から選定します(420条1項)。

※執行役が1人のときは、その者が代表執行役に選定されたものとします。

また、代表執行役は、いつでも、取締役会の決議によって解職することができます(420条2項)。

代表執行役の権限

代表執行役は、指名委員会等設置会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を有します(420条3項、349条5項)。

この権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することはできません420条3項、349条5項)。

表見代表執行役

指名委員会等設置会社は、代表執行役以外の執行役に「社長、副社長など」といった代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該執行役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負います(421条)。

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監査等委員会設置会社

行政書士の試験においては、監査等委員会については下記の中でも、太文字部分と図の内容からの出題がほとんどです。

権限などは優先順位が低いので、太文字部分と図の内容を覚えていきましょう!

監査等委員会設置会社とは、監査等委員会を置く株式会社です。

そして、この監査等委員会は、取締役会の一機関として、監査役の担ってきた監査業務を行うとともに、一定の権限を持ちます。

そして、この「監査等委員会」は全員取締役(監査等委員という)なのですが、過半数が社外取締役です。

そして、監査等委員は、取締役なので、監査役とは異なり、取締役会での議決権を有しています。


監査等委員会の権限

監査等委員会は、指名委員会等設置会社の監査委員会と同じ権限を有します。

  1. 取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行の監査及び監査報告の作成(指名委員会等設置会社の監査委員会と同様)
  2. 株主総会に提出する「会計監査人の選任及び解任」並びに「会計監査人を再任しないこと」に関する議案の内容の決定
  3. 監査等委員でない取締役の選任・解任・報酬についての意見の決定

監査等委員の選任と解任

監査等委員は全員取締役で、他の取締役とは区別して、株主総会の決議(普通決議)によって選任されます(329条1項・2項)。

解任については、株主総会の特別決議で行う必要があります(309条2項7号)。

監査等委員の任期

監査等委員である取締役の任期は、原則2年です。

一方、監査等委員以外の取締役の任期は、原則1年です。

監査等委員である取締役の任期は、定款や株主総会の決議でも短縮することができず、その身分が保障されています(332条4項)。

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会計監査人

会計監査人は、公認会計士または監査法人しかなれません。つまり、企業会計のプロといったイメージです。

監査役は役員なので、会社の内部の人です(社外の人もますが、、、)。つまり、内部監査です。それでは適正な監査が行われないこともあります。一方、

会計監査人は、会社の外部から、独立して、株式会社の監査を行います。つまり、外部監査です。

会計監査人を設置しなければならない会社

①大会社、②監査等委員会設置会社、③指名委員会等設置会社には、必ず会計監査人を置かなければなりません。

会計監査人の権限

会計監査人と監査役と会計参与の違い

①まず、会計参与が、取締役と共同して計算書類を作成します。

②この計算書類について、初めに会計監査人が監査を行い、会計監査報告を作成します。

③その後、監査役が審査して、監査報告を作成します。

会計監査人の職務

  1. 株式会社の計算書類等の監査
  2. 会計監査報告を作成
  3. 会計帳簿等を閲覧・謄写して、取締役及び会計参与等に対し、会計に関する報告を求めることができる
  4. 必要に応じて、子会社に対して会計に関する報告を求めることができる
  5. 必要に応じて、会計監査人設置会社、または、その子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる

といった内容で、監査役の権限とよく似ています。

会計監査人の選任・解任

会計監査人は、株主総会の決議(普通決議)によって選任・解任しなければなりません(329条1項、339条1項)

※ただし、会計監査人の職務怠慢、非行、心身の故障等がある場合、監査役・監査委員・監査等委員は、当該会計監査人を解任することができます。この場合、監査役全員の同意(監査等委員会設置会社の場合、監査等委員全員の同意)が必要です。

正当な理由なく株主総会決議により解任された会計監査人は、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます(339条2項)。

そして、会計監査人は、株主総会において、会計監査人の選任若しくは解任又は辞任について意見を述べることができます(345条1項5項)。

会計監査人の任期

会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(338条1項)。

上記の通り、「取締役は2年以内」「監査役は4年以内」なので、会計監査人は短く設定されています。しかし、定時株主総会で別段の決議がなければ会計監査人は再任されたものとみなされます338条2項)。

<<監査役会 | 監査等委員会設置会社>>

監査役会

監査役会の構成員は、全員が監査役です(390条1項)。

そして、監査役は3人以上で、その半数が社外監査役でないといけません(335条3項)。

例えば、
監査役が3人の場合、社外監査役が2人以上
監査役が4人の場合、社外監査役が2人以上
監査役が5人の場合、社外監査役が3人以上
といった感じです。

監査役会の職務

監査役会の職務は下記3つです(390条2項)。

  1. 監査報告の作成
  2. 常勤の監査役の選定及び解職
  3. 「①監査の方針」、「②監査役会設置会社の業務」及び「③財産の状況の調査の方法その他の監査役の職務の執行」に関する事項の決定(①~③に関する内容の決定)

監査役会の招集と決議

監査役会は、各監査役が招集します(391条)。

監査役会の決議は、監査役の過半数をもって行います。(393条1項)

監査役会を設置しなければならない会社

監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除く「大会社である公開会社」は、監査役会を設置しなければなりません。

<<監査役 | 会計監査人>>

監査役

監査役の権限

監査役は、取締役の職務の執行を監査する機関です。そして、会計参与設置会社にあっては、取締役だけでなく、会計参与の職務執行についても監査します(381条1項)。

監査役と会計参与の関係

つまり、「取締役や会計参与」の仕事を監査するのが「監査役」です。

監査の内容

監査役は、①会計監査②業務監査の2つを行います。

ただし、非公開会社については、定款で監査役の監査を会計監査に限定することができます。このように監査役の監査の範囲が会計監査に限定されている場合、監査役設置会社には当たらないとされます(389条1項)。

監査役の調査と報告

監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人等に対して事業の報告を求め、又は、業務及び財産の状況の調査をすることができます(381条2項)。

そして、監査役は、上記調査や報告をもとに、監査報告を作成しなければなりません(381条1項)。

監査役による子会社に対する調査

監査役は、その職務を行うため必要があるときは、子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます(381条3項)。
この場合、子会社は、正当な理由があるときは、報告又は調査を拒むことができます(381条4項)。

監査役の取締役への報告義務

監査役は、

①取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は

②法令若しくは定款に違反する事実若しくは③著しく不当な事実があると認めるときは、

遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に報告しなければなりません。(382条

監査役の取締役会への出席義務等

監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならなりません

ただし、監査役が2人以上ある場合において、特別取締役による議決の定めがあるときは、監査役の互選によって、監査役の中から特別取締役による取締役会に出席する監査役を定めることができます。(383条1項)

監査役の株主総会に対する報告義務

監査役は、取締役株主総会に提出しようとする議案、書類等を調査しなければなりません。

そして、この場合において、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を株主総会に報告しなければなりません。(384条1項)

監査役による取締役の行為の差止め

監査役は、取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為、その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合で、かつ、
当該行為によって会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、
当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求(差止請求)することができます(385条1項)。

監査役会への報告

監査役は、監査役会の求めがあるときは、いつでもその職務の執行の状況を監査役会に報告しなければなりません。

監査役の選任

監査役の選任の要件は「取締役の選任の要件」と同じです。

したがって、監査役の選任は、株主総会の専属決議事項とされ(329条)、株主総会でしか決議できません。そして、決議の方法は普通決議です。

取締役の選任要件と異なる点

監査役の選任決議について、定足数について、3分の1に下げることができません

決議要件について、出席した当該株主の議決権の過半数を上回る割合を定款で定めることができる点については、取締役と同じです(341条)。

監査役の解任

監査役の解任については、①株主総会決議による解任と②解任の訴えの2つの場合があります。この点は取締役の解任と同じです。

株主総会決議による監査役の解任

しかし、株主総会による解任決議は、取締役の場合と異なり、特別決議によって、解任することができます(309条2項7号)。

また、上記株主総会の特別決議によれば、いつでも理由の如何に関わらず、監査役を解任することができます。

しかし、正当な理由なく株主総会決議により解任された監査役は、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます(339条2項)。この点は取締役の場合と同じです。

そして、監査役は、株主総会において、監査役の選任若しくは解任又は辞任について意見を述べることができます(345条1項4項)。

監査役の解任の訴え

監査役の解任の訴えは、取締役の解任の訴えと同じ内容です。

監査役の員数

監査役会設置会社でない 監査役は1人でもOK
監査役会設置会社 監査役は3人以上で、
かつ、
半数以上は社外監査役

監査役の任期

監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(336条1項)。

つまり、取締役の任期よりも2年長く設定されています。

そして、定款又は株主総会の決議によっても、その任期を短縮することはできません

この点は、取締役の場合と異なります。(取締役は任期を短縮できる)

非公開会社の場合

非公開株式会社については、定款によって、任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長(延長)することができます(336条2項)。

<<会計参与 | 監査役会>>

会計参与

会計参与の権限

会計参与とは、取締役と共同して、計算書類等を作成することおよび会計参与報告を作成することを職務とする者です(374条1項)。

取締役や監査役と同様、役員に該当します。

会計参与による計算書類等の備置き

会計参与は、下記の書類等を、当該会計参与が定めた場所に備え置かなければなりません(378条1項)。

  1. ①各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書並びに②会計参与報告
  2. ③臨時計算書類及び④会計参与報告
備えおくべき期間
  1. 上記①②については、 定時株主総会の日の1週間前の日から5年間取締役会設置会社にあっては、2週間前の日から5年間
  2. 上記③④については、臨時計算書類を作成した日から5年間

会計参与の義務

会計参与の報告義務

会計参与は、その職務を行うに際して取締役の職務の執行に関し「不正の行為」又は「法令若しくは定款に違反する重大な事実」があることを発見したときは、遅滞なく、これを株主報告しなければならなりません(375条1項)。

※監査役設置会社の場合、会計参与は監査役に報告しなければならない。

取締役会への出席

取締役会設置会社の会計参与は、「計算書類等の承認をする取締役会」に出席しなければなりません。この場合において、会計参与は、必要があると認めるときは、意見を述べなければなりません(376条1項)。

会計参与の報酬

会計参与の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定めます(379条1項)。

つまり、定款に定めてあればそれに従います

<<取締役会の決議・特別取締役 | 監査役>>

取締役会の決議・特別取締役

取締役会の決議の方法

取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行います(369条1項)。

例えば、定款で、「代表取締役の選任については、議決に加わることができる取締役の3分の2以上が出席し、その3分の2以上の多数によって決定する」と定められていた場合、これに従うということです。

定款によって軽減することはできない

特別の利害関係を有する取締役の扱い

上記取締役会の決議について、特別の利害関係を有する取締役は、当該議決に加わることができません369条2項)。

株主総会との違い

株主総会決議では、特別利害関係を有する株主であっても議決権を行使できます

取締役会の書面決議

取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき当該事項について議決に加わることができる取締役の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができます(370条)。

逆をいうと、定款の定めがなければ、書面決議はできないということです。

また、監査役設置会社で、監査役が当該提案について異議を述べたとき書面決議はできません

特別取締役による取締役会決議

上記のように、取締役会決議は、原則、取締役の過半数の出席とその過半数の議決が必要です(369条1項)。

しかし、取締役の専決事項のうち、特に迅速な意思決定が必要と考えられる「1.重要な財産の処分及び譲受け」「2.多額の借財」については、下記要件を満たした場合に、あらかじめ選定した3人以上の特別取締役の中から、決議に参加できる者の過半数が出席し、その過半数をもって行うことができる旨を定めることができます(373条1項)。

特別取締役による取締役会の要件

  1. その会社の取締役の数が6人以上であること
  2. 取締役のうち、1人以上が社外取締役であること

上記の場合、特別取締役による取締役会の決議でも行えます(373条2項)。

この特別取締役による取締役会で、「1.重要な財産の処分及び譲受け」「2.多額の借財」の決議をすれば、他の取締役による取締役会は不要です。

取締役会議事録

取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない(369条3項)。

取締役会の決議に参加した取締役であって上記の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定します(369条5項)。
つまり、もし、ある決議が原因で会社に損害が発生した場合、議事録に異議をとどめなかった取締役や監査役は、任務懈怠として損害賠償責任を問われることがある、ということです。

取締役会議事録の備え付け

取締役会設置会社は、取締役会の日から10年間、取締役会議事録をその本店に備え置かなければなりません(371条1項)。

そして、この取締役会議事録には企業秘密の内容も含まれています。

取締役会議事録の閲覧・謄写

そのため、監査役設置会社監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社については、株主や会社債権者が取締役会議事録を閲覧・謄写するためには裁判所の許可を得る必要があります(371条3項)。

上記以外の株式会社では、株主は、その権利を行使するために必要があるときは、株式会社の営業時間内は、いつでも取締役会議事録の閲覧・謄写の請求をすることができます371条2項)。

<<取締役会の招集 | 会計参与>>

取締役会の招集

取締役会の招集権者

取締役会の招集権者は、下記の者が行えます。

  1. 取締役
  2. 株主
  3. 監査役

取締役による招集

取締役会は、原則、各取締役が招集する。
ただし、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役のみが招集します(366条1項)。

そして、定款や取締役会で、特定の取締役のみを招集権者として定めた場合でも、その特定の取締役が悪いことなどをしていて、自ら取締役会を招集しないことも考えられます。そのような場合は、他の取締役が、上記招集権者である取締役に対して取締役会の招集請求ができます(366条2項)。

株主による招集

監査役設置会社、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除いて
取締役会設置会社の株主は、取締役が「会社の目的の範囲外の行為その他法令・定款に違反する行為をし」、又は「これらの行為をするおそれがあると認める」ときは、取締役会の招集を請求することができます(会社法367条1項)。

これは、株主が、招集権者である取締役に対して「取締役会を招集してください!」と請求するもの

もし、取締役が、請求を受けた日から5日以内に、
請求を受けた日から2週間以内の日程で取締役会の招集を行わない場合
請求を行った株主が自ら取締役会の招集を行うことができます(会社法367条3項)。

監査役による招集

監査役は、「取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき場合」において、必要があると認めるときは、取締役等の招集権者に対し、取締役会の招集を請求することができます(会社法382条2項)。

これは、監査役が、招集権者である取締役に対して「取締役会を招集してください!」と請求するもの

もし、取締役が、請求を受けた日から5日以内に、
請求を受けた日から2週間以内の日程で取締役会の招集を行わない場合
請求を行った監査役が自ら取締役会の招集を行うことができます。

株主総会の招集権者はこちら>>

取締役会の招集手続

取締役会を招集する者は、取締役会の日の1週間前までに、各取締役に対してその通知を発しなければなりません。ただし、定款で1週間を下回る期間を定めた場合は、その期間内に通知すればよいです(368条1項)。

※監査役設置会社にあっては、各取締役だけでなく各監査役にも通知が必要

そして、取締役会は、取締役全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく取締役会を開催することができる(368条1項)。

※監査役設置会社にあっては、取締役だけでなく監査役も含めて全員の同意が必要

<<取締役会の権限 | 取締役会の決議・特別取締役>>

取締役会の権限(取締役会の専決事項)

取締役会は、取締役全員で組織され、下記権限をもつ機関です。

  1. 業務執行の意思決定
  2. 取締役の職務執行の監督
  3. 代表取締役の選定・解職

公開会社、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社は、取締役会を設置しなければなりません(362条1項、327条1項)。

上記1~3は取締役会の権限なのですが、具体的に解説していきます。

業務執行の意思決定

取締役会設置会社においては、取締役は、3人以上でなければなりません(331条5項)。

その3人以上の取締役の合議(話し合い)によって業務執行の意思決定がなされ、その決定に基づいて、代表取締役が「業務執行の代表」となり、また「会社の代表」となります。

上記の通り、取締役会は会社の代表権はないけど、取締役会で定めた一定範囲の業務執行について、業務執行取締役を選定して、業務執行取締役に当該業務執行を行わせることができます(363条1項)。

「取締役の地位と権限」参照

取締役会の決議

取締役会の決議は、原則として、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行います。また、定款で、これを上回る割合を定めることもできます(369条1項)。

ただ、経営判断を迅速に行うために、取締役会は、原則業務執行の決定を代表取締役に委任することもできます。ただし、重要な事項については、委任することができず、取締役会でしか決議できないようにしています。これを取締役会の専決事項と呼びます(362条4項)。

取締役会の専決事項

  1. 重要な財産の処分及び譲受け
  2. 多額の借財
    →例えば、事業拡大のための銀行からの借り入れ
  3. 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
  4. 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
    →例えば、支店の統廃合
  5. 社債募集に関する重要な事項
  6. 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制の整備(内部統制体制の整備
    その他株式会社の業務の適正を確保するために必要な体制の整備
    →取締役の職務執行が法令・定款に適合するように体制(内部統制システム)を整備すること
  7. 定款の定めに基づく役員の任務懈怠の責任免除の承認

※上記「1.重要な財産の処分及び譲受け」「2.多額の借財」については、特別取締役による取締役会の決議でも行える
(注意:指名委員会等設置会社では特別取締役は選任できないので、これはできない!)

取締役の業務執行の監督

取締役会は、取締役の職務の執行を監督する職務を行います(362条2項2号)。

代表取締役や業務執行取締役が不適切な業務執行を行うとき、取締役会は、その行為の違法性だけでなく、妥当性も問うことができます。
つまり、法律違反をしていなくても、その行為が経営判断として妥当かどうかまで監督するわけです。

また、取締役会が、代表取締役や業務執行取締役を監督するために、代表取締役や業務執行取締役は、3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければなりません(363条2項)。そして、この報告は省略できません(372条2項)。

上記3か月に1回以上、取締役会で報告する義務があることから、最低でも3か月に1回は取締役会が開催されることになります。

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代表取締役の選定・解職

取締役会は、代表取締役の選定及び解職する職務を行います(362条2項3号)。

つまり、代表取締役の不当な行為により会社に損害を与えた場合、取締役会で当該代表取締役を解職することができます。

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