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行政不服審査法22条:誤った教示をした場合の救済

行政不服審査法22条の「誤った教示をした場合の救済方法」については、下記3つのパターンがあります。それぞれについて、どのように処理するかを覚えましょう!行政書士試験でも頻出ですし、また、混乱しやすい部分でもあるので、下記具体例を使いながら勉強すると効率的です。出題されたら解けるようにしましょう!

処分庁が誤って審査庁でない行政庁を審査庁として教示した場合

例えば、処分庁A、審査庁Bとします。処分庁Aは、処分相手に対して「審査庁はBです」と教示(教えること)しなければならないにも関わらず、間違って「審査庁はCです」と教示してしまった。

この場合、処分相手(審査請求人)は、Cに対して審査請求をしてしまいます。こういった場合、審査請求を受けたCは、処分庁Aまたは審査庁Bに審査請求書を送付し、その旨を審査請求人に通知しなければなりません。

再調査の請求をすることができないにも関わらず、誤って再調査の請求をすることができる旨を教示した場合

再調査の請求をすることができない処分につき、処分庁が誤って再調査の請求をすることができる旨を教示した場合において、当該処分庁に再調査の請求がされたときは、処分庁は、速やかに、再調査の請求書を審査庁に送付し、かつ、その旨を再調査の請求人に通知しなければなりません。そして、この場合、再調査請求は法律上できないので、初めから審査請求がされたものとみなします

審査請求と再調査の請求の両方ができる場合において、処分庁が誤って審査請求をすることができる旨を教示しなかった場合

上記の場合において、処分相手が、審査請求ができないと勘違いをして、再調査請求をした場合、再調査請求人は、「審査請求に変えてください!」と申立てができます。

もし、審査請求に変えるよう申立てがあった場合、処分庁は、速やかに、再調査の請求書等を審査庁に送付しなければなりません。

そして、送付を受けた審査庁は、速やかに、その旨を「再調査請求人」及び「再調査の請求に参加する者」に通知しなければなりません。

そして、上記申立てがあった場合、初めから審査請求がされたものとみなします

行政庁がすべき教示をしなかった場合(行政不服審査法83条)>>

(誤った教示をした場合の救済)
行政不服審査法第22条 審査請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って審査請求をすべき行政庁でない行政庁を審査請求をすべき行政庁として教示した場合において、その教示された行政庁に書面で審査請求がされたときは、当該行政庁は、速やかに、審査請求書を処分庁又は審査庁となるべき行政庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。
2 前項の規定により処分庁に審査請求書が送付されたときは、処分庁は、速やかに、これを審査庁となるべき行政庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。
3 第一項の処分のうち、再調査の請求をすることができない処分につき、処分庁が誤って再調査の請求をすることができる旨を教示した場合において、当該処分庁に再調査の請求がされたときは、処分庁は、速やかに、再調査の請求書(第61条において読み替えて準用する第19条に規定する再調査の請求書をいう。以下この条において同じ。)又は再調査の請求録取書(第61条において準用する第20条後段の規定により陳述の内容を録取した書面をいう。以下この条において同じ。)を審査庁となるべき行政庁に送付し、かつ、その旨を再調査の請求人に通知しなければならない。
4 再調査の請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って審査請求をすることができる旨を教示しなかった場合において、当該処分庁に再調査の請求がされた場合であって、再調査の請求人から申立てがあったときは、処分庁は、速やかに、再調査の請求書又は再調査の請求録取書及び関係書類その他の物件を審査庁となるべき行政庁に送付しなければならない。この場合において、その送付を受けた行政庁は、速やかに、その旨を再調査の請求人及び第61条において読み替えて準用する第13条第1項又は第2項の規定により当該再調査の請求に参加する者に通知しなければならない。
5 前各項の規定により審査請求書又は再調査の請求書若しくは再調査の請求録取書が審査庁となるべき行政庁に送付されたときは、初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求がされたものとみなす。

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行政不服審査法24条:審理手続を経ないでする却下裁決

行政不服審査法23条の審査請求書の記載内容に不備があり、審査庁が定めた相当期間(補正期間)内に補正をしない場合、審査庁は、審理手続きを行わずに、却下をすることができます。

また、補正をすることができないことが明らかな場合も同様に却下できます。

却下と棄却の違い

この2つの違いについてよく行政書士試験で出題されるので必ず頭に入れておきましょう!

却下 手続の不備など、不適法な場合に、審理をせずに門前払いをすること
棄却 手続の不備はなく適法に行われているため、審理はするが、請求に理由がないとして請求などを退けること

(審理手続を経ないでする却下裁決)
行政不服審査法第24条 前条の場合において、審査請求人が同条の期間内に不備を補正しないときは、審査庁は、次節に規定する審理手続を経ないで、第45条第1項又は第49条第1項の規定に基づき、裁決で、当該審査請求を却下することができる。
2 審査請求が不適法であって補正することができないことが明らかなときも、前項と同様とする。

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行政不服審査法23条:審査請求書の補正

審査請求書が提出されると、書面の記載内容について、記載が欠けていないかを審理します。書き漏らしがあれば、審査請求は不適法となります。この場合、直ちに不適法として却下をするのではなく、審査庁は、相当期間を定めて、補正を命じなければなりません

言い換えると、補正を命ずることなく申立てを却下することはできないということです。

行政手続法と行政不服審査法の補正の違い

行政手続法 補正を命ずるもしくは申請拒否(行政手続法7条
行政不服審査法 相当期間を定め補正を命じなければならない

(審査請求書の補正)
行政不服審査法第23条 審査請求書が第19条の規定に違反する場合には、審査庁は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。

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行政不服審査法21条:処分庁等を経由する審査請求

行政不服審査法21条の「処分庁等を経由する審査請求」については、ポイントが絞られています。下記内容を覚えれば、行政書士試験対策になります。行政書士試験では頻出なので必ず頭に入れましょう!

処分庁と審査庁が異なる場合の審査請求の仕方

処分庁と審査庁が異なる場合、処分庁を経由して審査請求を行うことができます。

上記審査請求を受けた処分庁は、直ちに審査庁に審査請求書等を送付しなければなりません。

そして、審査請求期間の計算方法は、処分庁に審査請求書を提出した時に審査請求があったものとみなします。

(処分庁等を経由する審査請求)
行政不服審査法第21条 審査請求をすべき行政庁が処分庁等と異なる場合における審査請求は、処分庁等を経由してすることができる。この場合において、審査請求人は、処分庁等に審査請求書を提出し、又は処分庁等に対し第19条第2項から第5項までに規定する事項を陳述するものとする。
2 前項の場合には、処分庁等は、直ちに、審査請求書又は審査請求録取書(前条後段の規定により陳述の内容を録取した書面をいう。第29条第一項及び第五十五条において同じ。)を審査庁となるべき行政庁に送付しなければならない。
3 第一項の場合における審査請求期間の計算については、処分庁に審査請求書を提出し、又は処分庁に対し当該事項を陳述した時に、処分についての審査請求があったものとみなす。

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行政不服審査法19条:審査請求書の提出

行政不服審査法19条の「審査請求書の提出」の内容について、行政書士試験で出題されるポイントは、審査請求の仕方です。書面なのか、口頭なのか。この点が出題ポイントです。審査請求書の記載事項については、出題される可能性は低いので飛ばしてもらっても大丈夫です!

審査請求の仕方

審査請求は、原則として、審査請求書という書面を審査庁に提出して行います。

例外として、他の法律口頭で審査請求(不服申立て)ができる旨の定めがある場合、口頭で審査請求ができます。また、条例に基づく処分については、条例で口頭で審査請求(不服申立て)ができる旨の定めがある場合も同様、口頭で審査請求ができます。

原則 審査庁に書面を提出
例外 他の法律に定めがある場合、口頭でもよい
条例に基づく処分については、条例に定めがある場合も同様に口頭でもよい

審査請求書の記載事項

処分における審査請求書の記載内容

①審査請求人の氏名又は名称及び住所又は居所
②審査請求に係る処分の内容
③審査請求に係る処分があったことを知った年月日
④審査請求の趣旨及び理由
⑤処分庁の教示の有無及びその内容
⑥審査請求の年月日

不作為における審査請求書の記載内容

①審査請求人の氏名又は名称及び住所又は居所
②当該不作為に係る処分についての申請の内容及び年月日
③審査請求の年月日

総代や代理人が審査請求を行う場合の記載内容

総代や代理人が審査請求を行う場合、上記記載内容に加えて、「代表者若しくは管理人、総代又は代理人の氏名及び住所又は居所」を記載しなければなりません。

その他の追加の記載事項

  1. 再調査の請求についての決定を経ないで審査請求をする場合、「再調査の請求をした年月日」および「その決定を経ないことについての正当な理由」
  2. 審査請求期間の経過後において審査請求をする場合 行政不服審査法18条第1項ただし書又は第2項ただし書に規定する正当な理由

(審査請求書の提出)
行政不服審査法第19条 審査請求は、他の法律(条例に基づく処分については、条例)に口頭ですることができる旨の定めがある場合を除き、政令で定めるところにより、審査請求書を提出してしなければならない。
2 処分についての審査請求書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 審査請求人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 審査請求に係る処分の内容
三 審査請求に係る処分(当該処分について再調査の請求についての決定を経たときは、当該決定)があったことを知った年月日
四 審査請求の趣旨及び理由
五 処分庁の教示の有無及びその内容
六 審査請求の年月日
3 不作為についての審査請求書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 審査請求人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 当該不作為に係る処分についての申請の内容及び年月日
三 審査請求の年月日
4 審査請求人が、法人その他の社団若しくは財団である場合、総代を互選した場合又は代理人によって審査請求をする場合には、審査請求書には、第二項各号又は前項各号に掲げる事項のほか、その代表者若しくは管理人、総代又は代理人の氏名及び住所又は居所を記載しなければならない。
5 処分についての審査請求書には、第二項及び前項に規定する事項のほか、次の各号に掲げる場合においては、当該各号に定める事項を記載しなければならない。
一 第五条第二項第一号の規定により再調査の請求についての決定を経ないで審査請求をする場合 再調査の請求をした年月日
二 第五条第二項第二号の規定により再調査の請求についての決定を経ないで審査請求をする場合 その決定を経ないことについての正当な理由
三 審査請求期間の経過後において審査請求をする場合 前条第一項ただし書又は第二項ただし書に規定する正当な理由

<<行政不服審査法18条:審査請求期間 | 行政不服審査法20条:口頭による審査請求>>

行政不服審査法18条:審査請求期間

行政不服審査法18条では、「審査請求はいつまで行えるか?」について規定しています。いつまで経っても審査請求ができるというルールだと、10年後に処分の取消しなどが行われたりします。そうなると法律関係が不安定になります。そのため、法律関係を早期に安定させるために、不服申立ての期間(審査請求の期間)を設けています。

そして、この審査請求の期間制限は、処分と不作為の2つに分けて考えます。どちらも行政書士試験では頻出なので、必ず頭に入れましょう!

また、この点は今後勉強する行政事件訴訟法も似た期間制限があるので、対比して覚えるのがコツです。

処分についての審査請求期間

主観的請求期間

処分があったことを知った日の翌日から3か月を経過したとき、審査請求ができなくなります。ただし、正当な理由がるときは、3か月を経過しても審査請求は可能です。

正当な理由とは、例えば、東日本大震災のように交通や通信が途絶えてしまった場合や、審査請求期間の教示(行政庁から教えてらった内容)に誤りがあった場合等があります。

もし、再調査請求をしている場合、再調査の決定があったことを知った日の翌日から1か月を経過したときに審査請求ができなくなります。この場合も、正当な理由がるときは、1か月を経過しても審査請求は可能です。

※「主観的」とは、個人の内面のことで、その人がその処分の存在を知ったかどうかを基準とすることを言います。上記の通り、「処分があったことを知った日の翌日から」という風に、処分を受けた人が、処分の事実を知った場合に、いつまで審査請求ができるかを指します。

客観的請求期間

また、処分があった日の翌日から1年を経過したときも審査請求ができなくなります。ただし、正当な理由がるときは、1年を経過しても審査請求は可能です。

もし、再調査請求をしている場合、再調査の決定があった日の翌日から1年経過したときに審査請求ができなくなります。この場合も、正当な理由がるときは、1年を経過しても審査請求は可能です。

※「客観的」とは、個人の問題ではなく、「処分があった」という客観的な事実を基準とすることを言います。上記の通り「処分があった日」という風に、処分を受けた人が処分の事実を知ったか否かに関わらず、客観的事実から、いつまで審査請求ができるかを指します。

そして、この期間制限については、行政事件訴訟法と異なるので対比して覚えておきましょう!

行政不服審査法 行政事件訴訟法
主観的期間 処分があったことを知った日の翌日から3か月以内 処分または裁決があったことを知った日から6か月以内
客観的期間 処分があった日の翌日から1年以内 処分または裁決があった日から1年以内

不作為についての審査請求

不作為状態が継続している限り、いつでも審査請求をすることができます。

これは、行政事件訴訟法も同じ期間です。

行政不服審査法 行政事件訴訟法
不作為状態が継続している限り、いつでも 不作為状態が継続している限り、いつでも
(不作為の違法確認訴訟)

審査請求書を郵送する場合の日数計算の方法

法律上、郵便や宅急便などで送る場合の送付に要した日数は、算入しません。つまり、審査請求書を11月11日までに提出しなければいけない場合、11月11日の消印有効ということです。11月11日までに審査庁に到達する必要はありません。

(審査請求期間)
行政不服審査法第18条 処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があったことを知った日の翌日から起算して1月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
2 処分についての審査請求は、処分(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定)があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
3 次条に規定する審査請求書を郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律第2条第6項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者による同条第2項に規定する信書便で提出した場合における前2項に規定する期間(以下「審査請求期間」という。)の計算については、送付に要した日数は、算入しない。

<<行政不服審査法17条:審理員となるべき者の名簿 | 行政不服審査法19条:審査請求書の提出>>

行政不服審査法17条:審理員となるべき者の名簿

行政不服審査法17条の審理員となるべき者の名簿については、9条の審理員の指名の部分でも触れた内容です。審査請求があると、審査庁(審査を行う行政庁)は、審査請求の運営を行う担当者(=審理員)を指名します。その指名をする際の名簿が、審理員となるべき者の名簿です。

この名簿の作成は義務ではなく、努力義務です。

そのため、作成しなくてもよいです。

ただし、審理員となるべき者の名簿を作成したときは、審査庁や処分庁の事務所に備え付け、公にすることが義務となります。

(審理員となるべき者の名簿)
行政不服審査法第17条 審査庁となるべき行政庁は、審理員となるべき者の名簿を作成するよう努めるとともに、これを作成したときは、当該審査庁となるべき行政庁及び関係処分庁の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。

<<行政不服審査法16条:標準審理期間 | 行政不服審査法18条:審査請求期間>>

行政不服審査法16条:標準審理期間

行政不服審査法16条では、審査請求が審査庁の事務所に到達してから裁決までに要する期間について定めています。この点については、行政書士試験で出題されるポイントだけ覚えれば大丈夫です!

行政書士試験で重要なポイントを列挙します。

  1. 標準審理期間の起算点は「事務所に到達してから」であり、「受理してから」ではない。
  2. 標準審理期間を定めることは、努力義務なので、必ずしも定める必要はない
  3. 標準審理期間を定めたときは、審査庁及び関係処分庁の事務所における備付け、公にしておかなければならない(義務)。

(標準審理期間)
行政不服審査法第16条 第4条又は他の法律若しくは条例の規定により審査庁となるべき行政庁(以下「審査庁となるべき行政庁」という。)は、審査請求がその事務所に到達してから当該審査請求に対する裁決をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、当該審査庁となるべき行政庁及び関係処分庁(当該審査請求の対象となるべき処分の権限を有する行政庁であって当該審査庁となるべき行政庁以外のものをいう。次条において同じ。)の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。

<<行政不服審査法15条:審理手続の承継 | 行政不服審査法17条:審理員となるべき者の名簿>>

行政不服審査法15条:審理手続の承継

行政不服審査法15条の「審理手続の承継」については、行政書士試験ではあまり出題されない部分です。ただ、内容的には難しくないので、ポイントだけ押さえておけば、万一出題されても解けるでしょう!

審査請求人が死亡したとき

審査請求人が死亡したときは、相続人等は、審査請求人の地位を承継します。

そして、地位を承継した者は、書面でその旨を審査庁に届出が必要です。

届出前に、死亡した者宛にした通知が、相続人に到達したときは、当該通知は、相続人(審査請求人の地位を引き継いだ者)に対する通知としての効力を有します。

また、審査請求人の地位を承継した相続人が2人以上あるときは、その1人に対して通知等をすれば、全員に対して通知されたものとみなします。

審査請求人について合併又は分割があったとき

審査請求人が法人の場合、法人(会社)は合併したり、分割したりします。

そして、合併した場合、合併後存続する法人が審査請求人の地位を承継し、分割した場合、分割により当該権利を承継した法人が、審査請求人の地位を承継します。

そして、地位を承継した者は、書面でその旨を審査庁に届出が必要です。

届出前に、元審査請求人宛にした通知が、新審査請求人(合併後存続する法人または分割により当該権利を承継した法人)に到達したときは、当該通知は、新審査請求人に対する通知としての効力を有します。

審査請求の目的である処分に関する権利が移転した場合

審査請求の目的である処分に係る権利を譲り受けた者は、審査庁の許可を得て、審査請求人の地位を承継することができます。

例えば、甲土地の所有者Aが開発許可の申請をしたが、不許可処分を受けており、その後、Aが開発の不許可処分についての審査請求がなされた。その後、Aが甲土地をBに売却され、開発行為を行う者がAからBに変更となった場合、「審査請求の目的である開発許可に関する権利」をBがAから譲り受けます。

その場合、審査庁の許可を得て、Bが審査請求人の地位を承継します。

(審理手続の承継)
行政不服審査法第15条 審査請求人が死亡したときは、相続人その他法令により審査請求の目的である処分に係る権利を承継した者は、審査請求人の地位を承継する。
2 審査請求人について合併又は分割(審査請求の目的である処分に係る権利を承継させるものに限る。)があったときは、合併後存続する法人その他の社団若しくは財団若しくは合併により設立された法人その他の社団若しくは財団又は分割により当該権利を承継した法人は、審査請求人の地位を承継する。
3 前二項の場合には、審査請求人の地位を承継した相続人その他の者又は法人その他の社団若しくは財団は、書面でその旨を審査庁に届け出なければならない。この場合には、届出書には、死亡若しくは分割による権利の承継又は合併の事実を証する書面を添付しなければならない。
4 第一項又は第二項の場合において、前項の規定による届出がされるまでの間において、死亡者又は合併前の法人その他の社団若しくは財団若しくは分割をした法人に宛ててされた通知が審査請求人の地位を承継した相続人その他の者又は合併後の法人その他の社団若しくは財団若しくは分割により審査請求人の地位を承継した法人に到達したときは、当該通知は、これらの者に対する通知としての効力を有する。
5 第一項の場合において、審査請求人の地位を承継した相続人その他の者が二人以上あるときは、その一人に対する通知その他の行為は、全員に対してされたものとみなす。
6 審査請求の目的である処分に係る権利を譲り受けた者は、審査庁の許可を得て、審査請求人の地位を承継することができる。

<<行政不服審査法14条:行政庁が裁決をする権限を有しなくなった場合の措置 | 行政不服審査法16条:標準審理期間>>

行政不服審査法14条:行政庁が裁決をする権限を有しなくなった場合の措置

行政不服審査法14条は、行政書士試験ではあまり出題されません。なので、さらっと条文を確認しておく程度でよいでしょう!

審査請求をした後に、法改正があり、審査庁Aが裁決する権限がなくなって別の行政庁Bが審査庁となった場合、元審査庁Aは、新審査庁Bに対して、審査請求書などの書類一式を引き継ぎ、新審査庁Bは、審査請求人および参加人に「審査庁が変わった旨」の通知をしなければなりません。

(行政庁が裁決をする権限を有しなくなった場合の措置)
行政不服審査法第14条 行政庁が審査請求がされた後法令の改廃により当該審査請求につき裁決をする権限を有しなくなったときは、当該行政庁は、第十九条に規定する審査請求書又は第二十一条第二項に規定する審査請求録取書及び関係書類その他の物件を新たに当該審査請求につき裁決をする権限を有することとなった行政庁に引き継がなければならない。この場合において、その引継ぎを受けた行政庁は、速やかに、その旨を審査請求人及び参加人に通知しなければならない。

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