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令和3年・2021|問35|民法

Aが死亡し、Aの妻B、A・B間の子CおよびDを共同相続人として相続が開始した。相続財産にはAが亡くなるまでAとBが居住していた甲建物がある。この場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。なお、次の各記述はそれぞれが独立した設例であり相互に関連しない。

ア.Aが、Aの死後、甲建物をBに相続させる旨の遺言をしていたところ、Cが相続開始後、法定相続分を持分とする共同相続登記をしたうえで、自己の持分4分の1を第三者Eに譲渡して登記を了した。この場合、Bは、Eに対し、登記なくして甲建物の全部が自己の属することを対抗することができる。

イ.Aの死後、遺産分割協議が調わない間に、Bが無償で甲建物の単独での居住を継続している場合、CおよびDは自己の持分権に基づき、Bに対して甲建物を明け渡すよう請求することができるとともに、Bの居住による使用利益等について、不当利得返還請求権を有する。

ウ.Aが遺言において、遺産分割協議の結果にかかわらずBには甲建物を無償で使用および収益させることを認めるとしていた場合、Bは、原則として終身にわたり甲建物に無償で居住することができるが、甲建物が相続開始時にAとAの兄Fとの共有であった場合には、Bは配偶者居住権を取得しない。

エ.家庭裁判所に遺産分割の請求がなされた場合において、Bが甲建物に従前通り無償で居住し続けることを望むときには、Bは、家庭裁判所に対し配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出ることができ、裁判所は甲建物の所有者となる者の不利益を考慮してもなおBの生活を維持するために特に必要があると認めるときには、審判によってBに配偶者居住権を与えることができる。

オ.遺産分割の結果、Dが甲建物の所有者と定まった場合において、Bが配偶者居住権を取得したときには、Bは、単独で同権利を登記することができる。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・エ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:4

【解説】
ア.Aが、Aの死後、甲建物をBに相続させる旨の遺言をしていたところ、Cが相続開始後、法定相続分を持分とする共同相続登記をしたうえで、自己の持分4分の1を第三者Eに譲渡して登記を了した。この場合、Bは、Eに対し、登記なくして甲建物の全部が自己の属することを対抗することができる。

ア・・・誤り

相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、法定相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができません(民法899条の2第1項)。

つまり、Bは、遺言の内容の通り、甲建物ついての相続登記がないと、甲建物の全部が自分のものだとEに主張できません。

 

イ.Aの死後、遺産分割協議が調わない間に、Bが無償で甲建物の単独での居住を継続している場合、CおよびDは自己の持分権に基づき、Bに対して甲建物を明け渡すよう請求することができるとともに、Bの居住による使用利益等について、不当利得返還請求権を有する。

イ・・・誤り

配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、一定期間、その居住していた建物(居住建物)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(居住建物取得者)に対し、居住建物について無償で使用する権利(配偶者短期居住権)を有します(民法1037条1項本文)。

そのため、本問の場合、Bは配偶者短期居住権を有しているため、甲建物に一定の期間無料で住み続けることができます。よって、「CとD」は、Bに対して、甲建物の明渡しや不当利得返還請求はできません。

 

ウ.Aが遺言において、遺産分割協議の結果にかかわらずBには甲建物を無償で使用および収益させることを認めるとしていた場合、Bは、原則として終身にわたり甲建物に無償で居住することができるが、甲建物が相続開始時にAとAの兄Fとの共有であった場合には、Bは配偶者居住権を取得しない。

ウ・・・正しい

被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、①遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき、②配偶者居住権が遺贈の目的とされたときは、その居住していた建物(居住建物)の全部について無償で使用及び収益をする権利(配偶者居住権)を取得します(民法1028条1項本文)。

ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、配偶者居住権を取得しません(民法1028条1項ただし書き)。

よって、本問は正しいです。

「甲建物(居住建物)が相続開始時にAとAの兄Fとの共有であった場合」なので、Bは配偶者居住権を取得しません。

 

エ.家庭裁判所に遺産分割の請求がなされた場合において、Bが甲建物に従前通り無償で居住し続けることを望むときには、Bは、家庭裁判所に対し配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出ることができ、裁判所は甲建物の所有者となる者の不利益を考慮してもなおBの生活を維持するために特に必要があると認めるときには、審判によってBに配偶者居住権を与えることができる。

エ・・・正しい

遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、下記①または②に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができます(民法1029条)。

①共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。

配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く。)。

つまり、②の通り、甲建物の所有者になる人の不利益(デメリット)を考慮してもなお、配偶者Bの生活を維持するため特に必要と認める場合、家庭裁判所の審判で配偶者居住権を取得できます。

よって、正しいです。

 

オ.遺産分割の結果、Dが甲建物の所有者と定まった場合において、Bが配偶者居住権を取得したときには、Bは、単独で同権利を登記することができる。

オ・・・誤り

居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います(民法1031条1項)。

つまり、配偶者居住権の設定登記は「登記義務者であるD」と「登記権利者であるB」との共同申請で行います。Bは、単独で配偶者居住権を登記することができないので、誤りです。

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令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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