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令和3年・2021|問27|民法

意思表示に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 意思表示の相手方が、正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は通常到達すべきであった時に到達したものとみなされ、相手方が通知の受領を拒絶した場合には意思表示の到達が擬制される。これに対して、意思表示を通知する内容証明郵便が不在配達されたが、受取人が不在配達通知に対応しないまま留置期間が経過して差出人に還付され、通知が受領されなかった場合には、意思表示が到達したものと認められることはない。
  2. 契約の取消しの意思表示をしようとする者が、相手方の所在を知ることができない場合、公示の方法によって行うことができる。この場合、当該取消しの意思表示は、最後に官報に掲載した日またはその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に相手方に到達したものとみなされるが、表意者に相手方の所在を知らないことについて過失があった場合には到達の効力は生じない。
  3. 契約の申込みの意思表示に対して承諾の意思表示が郵送でなされた場合、当該意思表示が相手方に到達しなければ意思表示が完成せず契約が成立しないとすると取引の迅速性が損なわれることになるから、当該承諾の意思表示が発信された時点で契約が成立する。
  4. 意思表示は、表意者が通知を発した後に制限行為能力者となった場合でもその影響を受けないが、契約の申込者が契約の申込み後に制限行為能力者となった場合において、契約の相手方がその事実を知りつつ承諾の通知を発したときには、当該制限行為能力者は契約を取り消すことができる。
  5. 意思表示の相手方が、その意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき、または制限行為能力者であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。

>解答と解説はこちら


【答え】:2
【解説】
1.意思表示の相手方が、正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通
知は通常到達すべきであった時に到達したものとみなされ、相手方が通知の受領を拒絶した場合には意思表示の到達が擬制される。これに対して、意思表示を通知する内容証明郵便が不在配達されたが、受取人が不在配達通知に対応しないまま留置期間が経過して差出人に還付され、通知が受領されなかった場合には、意思表示が到達したものと認められることはない。

1・・・妥当ではない

【前半部分】

相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなします(民法97条2項)。

よって、前半部分は妥当です。

【後半部分】

判例(最判平10.6.11)によると

遺留分減殺の意思表示が記載された内容証明郵便が留置期間の経過により差出人に還付された場合において、受取人が、不在配達通知書の記載その他の事情から、その内容が遺留分減殺の意思表示又は少なくともこれを含む遺産分割協議の申入れであることを十分に推知することができ、また、受取人に受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって、さしたる労力、困難を伴うことなく右内容証明郵便を受領することができたなど判示の事情の下においては、右遺留分減殺の意思表示は、社会通念上、受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点受取人に到達したものと認められる

と判示しています。

よって、後半部分の「認められることはない」が妥当ではありません。正しくは「認められることがある」です。

 

2.契約の取消しの意思表示をしようとする者が、相手方の所在を知ることができない場合、公示
の方法によって行うことができる。この場合、当該取消しの意思表示は、最後に官報に掲載した日またはその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に相手方に到達したものとみなされるが、表意者に相手方の所在を知らないことについて過失があった場合には到達の効力は生じない。

2・・・妥当

意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができます(民法98条1項)。

公示による意思表示は、「最後に官報に掲載した日」又は「その掲載に代わる掲示を始めた日」から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなします

ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じません(民法98条3項)。

よって、本問は妥当です。

 

3.契約の申込みの意思表示に対して承諾の意思表示が郵送でなされた場合、当該意思表示が相手
方に到達しなければ意思表示が完成せず契約が成立しないとすると取引の迅速性が損なわれることになるから、当該承諾の意思表示が発信された時点で契約が成立する。

3・・・妥当ではない

意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生じます(民法97条1項)。

よって、承諾の意思表示」も、到達した時点で有効になって契約が成立します。

 

4.意思表示は、表意者が通知を発した後に制限行為能力者となった場合でもその影響を受けない
が、契約の申込者が契約の申込み後に制限行為能力者となった場合において、契約の相手方がその事実を知りつつ承諾の通知を発したときには、当該制限行為能力者は契約を取り消すことができる。

4・・・妥当ではない

【前半部分】

意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられません(民法97条3項)

つまり、通知した後に制限行為能力者になっても、通知は有効なので、前半部分は妥当です。

【後半部分】

しかし、申込者が申込みの通知を発した後に「死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合」において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しません(民法526条)。

そのため、契約の申込者が契約の申込み後に制限行為能力者となった場合において、契約の相手方がその事実を知りつつ承諾の通知を発したとき、契約は成立しないので、取消しもできません。

 

5.意思表示の相手方が、その意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき、または制限行
為能力者であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。

5・・・妥当ではない

意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができません(民法98条の2本文)。

よって、本問は「制限行為能力者」が妥当ではなく、正しくは「未成年者若しくは成年被後見人」です。

詳細解説は、個別指導で行います!しっかり上記内容は理解をしておきましょう!

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令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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