行政事件訴訟法

取消訴訟の判決の種類と効力

取消訴訟の判決の種類

取消訴訟の判決には、却下判決、認容判決、棄却判決の3つがあります。そして、棄却判決の特殊な形態として事情判決があります。

却下判決 訴えが訴訟要件を欠き、不適法な場合に、本案審理に入ることなく訴えを排斥する判決
審理することなく門前払いをするイメージです。
認容判決 原告の請求に理由があることを認めて、処分を取り消す判決
通常、取消判決と言います。
棄却判決 原告の請求に理由なしとして請求を排斥する判決
却下判決と異なり、審理はするものの、行政庁が行った処分が正しいということで、処分は取り消されない判決です。

事情判決

棄却判決の一種に、事情判決があります。

通常、処分または裁決が違法の場合、取消判決を行わないといけません。

しかし、処分や裁決を取り消すと、公の利益に著しい障害を生ずる場合公共の福祉に適合しないと認める場合)、処分を取り消すことなく、原告の請求を棄却することができます。

これを事情判決と言います。

この事情判決をする場合、判決の主文で、処分または裁決が違法であることを宣言しなければなりません。

例えば、土地区画整理事業で、複数の土地について公共施設を整備改善しようとしていたとします。その土地の所有者の一人が、土地区画整理事業の認定は違法だと認定の取り消しの訴えを提起したとします。工事も進んでおり、ここで取り消しをすると、他の土地所有者にも大きな影響を及ぼすことがあると、公共の利益を維持するために事情判決を下したりします。

また、衆議院議員定数不均衡事件では、事情判決が直接適用されたわけではありませんが、事情判決の法理が適用されました。いわゆる一票の格差の話です。

衆議院議員の総選挙について各選挙区間の議員1人あたりの有権者分布差比率は最大4.99対1に及んでおり、平等選挙を要請した憲法(14条1項)に違反すると判断した。(衆議院議員定数不均衡事件:最判昭51.4.14)
しかし、違憲ではあるが、混乱を避けるために、事情判決のルールを使って、その選挙を無効とはしないとした。

判決の効力

判決の効力には、既判力、形成力、拘束力の3つがあります。

既判力 当事者及び裁判所は判決の内容に対して、矛盾する主張や判断が出来なくなるという効力(蒸し返しができない)
形成力 取消判決の確定によって、処分または裁決は、当然に処分時または裁決時にさかのぼって効力を失うという効力
拘束力 処分または裁決をした行政庁・関係行政庁は取消判決に拘束され、同一処分の理由では変更出来なくなる効力

既判力

既判力 当事者及び裁判所は判決の内容に対して、矛盾する主張や判断が出来なくなるという効力(蒸し返しができない)

判決が確定すると、同一事項が別の訴訟で問題となった場合、訴訟当事者は、判決内容に反する主張はできず裁判所は、判決内容に反した判断をすることができなくなります。これを既判力と言います。

例えば、A建設会社がマンション建設のために、甲県の建築主事から建築確認を受けた。その後、近隣住民が当該建築確認処分は違法だとして、甲県に対して処分の取り消しの訴えを提起した。

そして、判決の結果、建築確認は適法として棄却判決が下された場合、近隣住民は再度同一訴えを提起することはできません(蒸し返しはできない)。

形成力、第三者効

形成力 取消判決の確定によって、処分または裁決は、当然に処分時または裁決時にさかのぼって効力を失うという効力

取消判決が確定すると、処分または裁決は、行政庁が取消しをするまでもなく当然に、効力を失い、処分または裁決がなかったことになります(遡及する)。

例えば、A建設会社がマンション建設のために、甲県の建築主事から建築確認を受け、その後、近隣住民が当該建築確認処分は違法だとして、甲県に対して処分の取り消しの訴えを提起した。審理の結果、建築確認が違法として取消判決を受けた場合、初めから建築確認はなかったことになります(建築確認は初めから無効)。

そして、この形成力には第三者にも及びます。上記取消訴訟については、原告が近隣住民、被告が甲県ですが、第三者であるA建設会社にも取消判決の効力が及ぶため、A建設会社はマンション建設ができなくなります。これを第三者効と言います。

拘束力

拘束力 処分または裁決をした行政庁・関係行政庁は取消判決に拘束され、同一処分の理由では変更出来なくなる効力

確定した取消判決は、その事件について、処分または裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束します。この効力を拘束力と言います。

この拘束力は、下記2つの効果をもたらします。

  1. 取消しされた行政処分と同一事情のもとで、同一理由同一内容の処分を行うことを禁止する
  2. 行政庁はあらためて措置を執る義務を負う

例えば、A建設会社がマンション建設のために、甲県の建築主事から建築確認を受けた(建築確認申請を認めた)。その後、近隣住民が当該建築確認処分は違法だとして、甲県に対して処分の取り消しの訴えを提起した。審理の結果、建築確認が違法として取消判決を受けた場合、初めから建築確認はなかったことになります。ここまでは形成力の話です。

その後、A建設会社が、同一のマンション建設について建築確認の申請を行った場合、行政庁は、以前の処分と同じように、建築確認を認める処分を下すことができないということです。これが上記1の効果です。

上記2の効果については、例えば、A建設会社がマンション建設のために、甲県の建築主事に建築確認申請をし、拒否処分を受けたとします。A建設会社が当該拒否処分は違法だとして、取消訴訟を提起した。その結果、取消判決(認容判決)がなされた場合、甲県の建築主事は、再度建築確認申請について、審査をして処分をやり直さなおす義務を負います。

<<執行停止(取消訴訟) | 行政事件訴訟法における教示>>

執行停止(取消訴訟)

取消訴訟を提起してから判決が出るまで、数か月かかる場合もあります。そうなると、判決が出るまでに、不利益が生じる場合もあります。そのような場合に、裁判所は、処分の効力や処分の執行などを行わないようにすることができます。これを執行停止と言います。

執行不停止の原則

行政不服審査法でも勉強した執行停止と同様に、処分の取消しの訴えが提起されても、処分の効力、処分の執行または手続きの続行は妨げられません(停止しない)。これを執行不停止の原則と言います。

例えば、A社が甲県知事から土地の開発許可を受け、造成工事に着手したとします。その近隣住民が、当該造成工事をすることで、がけ崩れなどが起こる可能性があると考え、開発許可処分の取消しの訴えをしました。しかし上記執行不停止の原則の通り、訴訟提起しても、工事は続行されます。そして、造成工事が完了してしまうと、開発許可処分取消しの訴えの利益がなくなり、取消の訴えは却下されてしまいます。そのような事態を防ぐために、仮の救済策として、執行停止があります。

ただし、どんな場合でも執行停止されるかというとそうではありません。要件があります。

執行停止の要件

執行停止の要件は下記2つです。どちらも満たす必要があります。

  1. 処分の取消しの訴えの提起があること
  2. 処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があること

上記を言い換えると、取消しの訴えを提起していない場合、執行停止はされません。また、重大な損害を避けることについて緊急ではない場合も執行停止されません。

上記の場合、執行停止の申立てにより、裁判所は、決定をもって、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(執行停止)をすることができます。

ただし、処分の執行又は手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、処分の効力の停止はできません

この点は個別指導で解説します。

また、上記要件を満たす場合でも、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるとき(原告が勝訴する見込みがないとき)は、執行停止することができません。

即時抗告

執行停止の申立てに対する決定に対して、不服がある者は即時抗告ができます。

事情変更による執行停止の取消し

執行停止の決定を行った後に、執行停止をする理由が消滅したり、その他の事情が変更したときは、裁判所は、行政庁(相手方)の申立てにより、決定をもって、執行停止の決定を取り消すことができます。

内閣総理大臣の異議

執行停止の申立てがあったとき、内閣総理大臣は、やむを得ない場合には、執行停止しない理由を付けて、裁判所に対して「執行停止をするな!」と異議を述べることができます。

この異議は、執行停止の決定があった後でも述べることができます。

そして、内閣総理大臣が異議を述べた場合、裁判所は、その異議に従う義務があります。つまり、
執行停止の決定前であれば、執行停止をすることができず
執行停止の決定後であれば、執行停止の決定を取り消さなければなりません

<<訴訟参加 | 取消訴訟の判決の種類と効力却下判決、認容判決、棄却判決事情判決既判力形成力・第三者効拘束力>>

訴えの変更

訴えの変更とは、訴訟の係属中に、原告が請求の趣旨請求の原因を変更することです。

国又は公共団体に対する請求への訴えの変更

そして、この訴えの変更にはいくつかルールがありますので、それを列挙します。

  1. 訴えの変更は、原告の申立てにより行う。(裁判所の職権で行うことはできない)
  2. 訴えの変更は、口頭弁論の終結に至るまでに行うこと。
  3. 訴えの変更をするにしても、請求の基礎に変更がないことが要件。
  4. 訴えの変更を認める場合、裁判所決定をもって行う
  5. 訴えの変更を許す決定をするには、裁判所は、あらかじめ被告の意見をきかなければならない
  6. 訴えの変更を許す決定に対しては、即時抗告をすることができる。
  7. 訴えの変更を許さない決定に対しては、不服を申し立てることができない

請求の基礎とは?

訴訟を行う場合、ある事実があり、その事実に対して何らかの請求を行います。その事実自体が同じ場合、「請求の基礎に変更がない」と言います。

例えば、Aが営業停止処分を受けて、Aが営業停止処分の取消しの訴えをしたとします。その後、営業停止期間に100万円の損害があったとして、「処分の取消しの訴え」から「損賠償請求の訴え」に変更することがあります。

この2つの訴えについて、「Aが営業停止処分を受けた」という事実から発生した訴えです。こういったものが請求の基礎に変更がないということです。

裁判資料(証拠書類等)については、処分取消の訴えのものを使って、損害賠償請求の訴えを行うことができるため、裁判の効率性も保たれます。

<<関連請求の併合 | 訴訟参加>>

訴訟参加

訴訟が行われた場合に、その訴訟に参加できる者として「訴訟の結果により権利を害される第三者」および「処分又は裁決をした行政庁以外の行政庁」を挙げることができます。訴訟に参加する「第三者」と「行政庁」を分けて解説していきます。

第三者の訴訟参加

  • 訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは、当事者若しくはその第三者の申立てにより又は職権で、裁判所の決定によって、その第三者を訴訟に参加させることができます。
  • 上記第三者の参加の決定をするには、裁判所は、あらかじめ当事者及び第三者の意見をきかなければなりません。

訴訟の結果により権利を害される第三者

訴訟の結果により権利を害される第三者とは、例えば、A建設会社がマンションの建築のために、甲県の建築主事から建築確認を受けた。近隣住民が、日当たりが悪くなるということで、甲県に対して、建築確認処分の取消しを行った。この場合、近隣住民が原告、甲県が被告となるのですが、A建設会社は、この建築確認が取り消されると、マンションを建築できる権利を害されます。そのため、A建設会社が「訴訟の結果により権利を害される第三者」となります。

行政庁の訴訟参加

  • 裁判所は、処分又は裁決をした行政庁以外の行政庁を訴訟に参加させることが必要であると認めるときは、当事者若しくはその行政庁の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その行政庁を訴訟に参加させることができる。
  • 上記行政庁の参加の決定をするには、裁判所は、あらかじめ当事者及び当該行政庁の意見をきかなければなりません。

<<訴えの変更 | 執行停止(取消訴訟)>>

取消訴訟の手続きの流れ

取消訴訟の手続きの流れ

取消訴訟の流れについては、原告が処分や裁決について取消訴訟を提起します。そして、裁判に必要な事実と証拠を集めて、事実関係を精査します。その事実関係に対して法律を適用して、裁判所が判決を下します。

上記流れをもう少し細かく見ていきます。

審理の対象

取消訴訟を含む行政事件訴訟や民事訴訟は、違法かどうかを裁判所に審理してもらうものです。不当かどうかは判断しません。当・不当については不服申立て(審査請求等)で審理できます。

処分権主義

まず、訴えを提起するか、しないか、また訴えを提起する場合、誰を被告として、何について、どのような裁判を行うかは、原告が自由に決めることができます。

また、訴えをいつ終了させるかも原告が自由に決めることができます。

これを処分権主義と言います。

簡単にまとめて、訴えを起こすかどうかを原告が自由に決めることができることを処分権主義と考えてもらっても行政書士の試験勉強であれば問題ございません。

要件審理

取消訴訟が提起されると、裁判所は訴訟要件の有無について審理(要件審理)します。

これは、前回までに勉強した訴訟要件の部分に関連してきます。

下記6つの要件の一つでも満たさないものがあると、不適法として却下されます。

全ての要件を満たすと、実際の処分に違法があるかどうかを審理していきます。

  1. 処分性
  2. 原告適格
  3. 訴えの利益(狭義)
  4. 被告適格
  5. 出訴期間
  6. 管轄裁判所

弁論主義

取消訴訟の審理手続きは弁論主義が採用されます。

裁判の基本は「事実」と「証拠」である。事実と証拠をもとに、裁判所は判決を下します。そして、取消訴訟(民事訴訟も同様)の場合では、この「事実」と「証拠」は当事者が集めて裁判所に提出すべきものとされている。このように、裁判の基礎となる訴訟資料の収集と提出を当事者の権能および責任とする原則を「弁論主義」と言います。

職権探知主義

弁論主義の対義語が「職権探知主義」です。裁判所が判断を下すための証拠資料を自ら収集するという原則を言います。訴訟要件のうちでも公益性の高い事項については、弁論主義ではなく、職権探知主義が採用されます。

また、行政不服審査法においては、審理員が職権で物件の提出要求参考人の陳述及び鑑定の要求審理関係人への質問をすることができるため、職権探知主義が採用されています。

職権証拠調べ

職権探知主義とよく似た言葉に職権証拠調べという言葉があります。

職権証拠調べとは、裁判所が、必要があると認めるときは、職権で、証拠を調べることができることを言います。

職権探知主義のように、裁判所が証拠書類を探しに行く(収集する)のではなく、提出された証拠書類を調べることが職権証拠調べです。

そして、上記証拠調べの結果について、当事者の意見をきかなければなりません。

行政事件訴訟法では、訴訟の結果が公共の福祉に影響するところが少くないため,裁判所が必要があると認めるときは,補充的に職権で証拠調べをすることができます

職権探知 職権証拠調べ
不服申立て
(行政不服審査法)
行政事件訴訟
(行政事件訴訟法)
×

<<取消訴訟の管轄裁判所 | 関連請求の併合>>

取消訴訟の管轄裁判所

裁判管轄の基本

取消訴訟は、原則、地方裁判所が第一審の裁判管轄を有します。

第一審の判決に不服がある当事者は高等裁判所に控訴することができます。

高等裁判所の判決に不服がある当事者は最高裁判所に上告することができます。

上記の通り、合計3回までの審理を受けることができる制度を「三審制」と言います。

行政事件訴訟法における管轄裁判所

管轄裁判所とは、取消訴訟を提起する場合、どこの裁判所に対して、訴訟を提起すればよいかということです。

管轄裁判所に取消訴訟を提起すれば、管轄裁判所の要件を満たし、管轄裁判所以外の裁判所に対して訴えを提起した場合、却下判決が下されます。

原則 被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所」または「処分・裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所」
例外 国が被告となる場合、原告の普通裁判所籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所(特定管轄裁判所

普通裁判籍とは?

裁判籍とは、ある事件がどの区域の裁判所の管轄に属するかということで、「被告の普通裁判籍の所在地」とは、簡単に言えば、被告の住所地です。また、「原告の普通裁判所籍の所在地」とは、原告の住所地です。

<<取消訴訟の出訴期間 | 取消訴訟の手続きの流れ>>

取消訴訟の被告適格

行政書士では、「国または公共団体を被告とする」とするくらいで十分です。これが行政書士試験のポイントとなります。具体例についても記述していますので具体例で考えてもよいでしょう!

被告適格

被告適格とは、誰を被告として、取消訴訟を提起するのか?ということです。

被告適格となる行政庁を被告として、取消訴訟を提起した場合、被告適格の要件を満たします。

一方、被告適格に該当しない行政庁を被告として、取消訴訟を提起した場合、被告適格を満たさないため、却下判決が下されます。

1.処分・裁決した行政庁が行政主体に所属する場合

取消訴訟は、原則として、処分または裁決をした行政庁の所属する行政主体(国または公共団体)を被告として提起しなければなりません。

例えば、税務署長が行った所得税の課税処分の取消訴訟を提起する場合、被告はです。

また、甲県知事が行った営業許可の処分の取消訴訟を提起する場合、甲県知事ではなく、甲県(行政主体)を被告として訴訟を提起する必要があります。

被告となる行政主体とは?

被告となる行政主体には、国、都道府県、市町村、弁護士会等です。

2.処分・裁決した行政庁がいずれの行政主体にも所属しない場合

もっとも、処分又は裁決をした行政庁がいずれの行政主体にも所属しない場合には、当該行政庁を被告として提起しなければなりません。

例えば、指定確認検査機関が行った建築確認の取消訴訟の被告は、当該指定確認検査機関となります。

3.被告とすべき国若しくは公共団体又は行政庁がない場合

上記1、2に該当しない場合、つまり、被告とすべき「国、公共団体、行政庁」がない場合には、取消訴訟は、当該処分または裁決に係る事務の帰属する国または公共団体を被告として提起しなければなりません。

これは、行政庁の統廃合や移管等があって元の処分や裁決をした行政庁が廃止された場合の話です。そのような場合、現在、当該事務を行っている国や公共団体を被告として取消訴訟を起こします。

<<取消訴訟の訴えの利益(狭義) | 取消訴訟の出訴期間>>

取消訴訟の出訴期間

出訴期間とは、取消訴訟を提起できる期間のことです。

出訴期間内であれば、要件を満たしますが、出訴期間を経過した後に取消訴訟を提起しても、却下判決が下されます。

取消訴訟の出訴期間

下記いずれかの期間を経過すると、取消訴訟を提起することができなくなります。

主観的期間 処分または裁決があったことを知った日から6か月を経過したとき
例外として正当な理由があるときは、6か月経過後でも取消訴訟を行える
客観的期間 処分または裁決の日から1年を経過したとき
例外として正当な理由があるときは、1年経過後でも取消訴訟を行える

処分または裁決があったことを知った日とは?

当事者が書類の交付、口頭の告知その他の方法により処分・決定の存在を現実に知った日を指します。(最判昭27.11.20)

審査請求を行った場合の取消訴訟の出訴期間

上記「処分または裁決があったことを知った日から6か月を経過したとき」「処分または裁決の日から1年を経過したとき」という風に「または裁決」となっています。

これは審査請求を行った場合の出訴期間についてです。審査請求を行った場合、処分の時を基準にはせず、裁決の時を基準とします。

審査請求前置主義の場合に審査請求を経ないで取消訴訟を行った場合どうなるか?

取消訴訟の出訴期間は、上記のとおりですが、上記期間内に取消訴訟を行ったとしても、却下される場合があります。

それは、審査請求前置主義にもかかわらず、審査請求の裁決を経る前に取消訴訟を提起した場合です。

この場合、不適法となるので、却下判決が下されます。

ただし、例外として、下記の場合は、審査請求前置主義でも、審査請求の裁決を経ないで処分の取消しの訴えを提起できます。

  1. 審査請求があった日から3か月を経過しても裁決がないとき
  2. 処分、処分の執行または手続きの続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき
  3. その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき

審査庁が誤って却下した場合

審査請求前置主義の場合において、間違えて審査請求を不適法として却下した場合、この却下は「審査の決定にあたる」として、取消訴訟の訴えを提起できます。(最判昭36.7.21)

<<取消訴訟の被告適格 | 取消訴訟の管轄裁判所>>

取消訴訟の処分性

処分性とは、取消訴訟の対象となる行政庁の処分とはどんな処分か?ということです。

取消訴訟の対象となる行政庁の処分であれば、「処分性あり」として処分性の要件を満たします。

一方、取消訴訟の対象外の行政庁の処分であれば、「処分性なし」として、処分性の要件を満たさず、却下判決が下されます。

取消訴訟の対象となるのは「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」を指します。

行政庁の処分・公権力の行使に当たる行為とは?

結論からいうと、①公権力であること、②個別・具体的な法的地位の変動(特定の者に対して権利義務が生じる)の2つを満たすと処分性を有することとなります。難しい感じがしますが、申請に対する処分や不利益処分等の行政処分が、処分性を有する処分とイメージできれば大丈夫です。

行政書士の試験で重要な部分は、処分性を有するか否かの判例です。

処分性を有するとされた判例

  1. 輸入禁止の製品に該当する旨の通知(最判昭54.12.25)
  2. 第二種市街地再開発事業計画(最判平4.11.26)
  3. 二項道路の一括指定の告示(最判平14.1.17)
  4. 労災就学援護費の支給決定(最判平15.9.4)
  5. 食品衛生法に基づく違反通知(最判平16.4.26)
  6. 病院開設の中止勧告(最判平17.7.15)
  7. 土地区画整理事業計画の決定(最判平20.9.10)
  8. 保育所廃止条例の制定行為(最判平21.11.26)

輸入禁止の製品に該当する旨の通知(最判昭54.12.25)

Aさんが輸入しようとしている書籍は輸入禁制品にあたりますよ」という税関長の通知に対して、取消訴訟を行えるか?という点について、判例では、上記通知を行うことにより、Aさんは適法に輸入できなくなるという個別具体的な法律上の効果を及ぼすため、上記通知は処分性があるとされました。

「最判昭54.12.25:輸入禁止の製品に該当する旨の通知」の詳細はこちら>>

第二種市街地再開発事業計画(最判平4.11.26)

第2種市街地再開発事業計画は、事業計画が決まり、公告された段階で、事業認定と同じ法律効果が生じます。そのため、その地域に住んでいる人たちは立ち退きなどを求められる可能性が大きい(所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼす)ので、計画自体が住民の権利義務に大きな影響を及ぼします。そのため、処分性があって抗告訴訟の対象になります。

「最判平4.11.26:第二種市街地再開発事業計画の決定」の詳細はこちら>>

二項道路の一括指定の告示(最判平14.1.17)

2項道路の指定の告示によって、2項道路が前面道路となる敷地所有者は、その道路内の建築等が制限され(建築基準法44条)、私道の変更又は廃止が制限される(建築基準法45条)等の具体的な私権の制限を受けることになります。そうすると,特定行政庁による2項道路の指定は、それが一括指定の方法でされた場合であっても、個別の土地について、具体的な私権制限を発生させるものであり、個人の権利義務に対して直接影響を与えるものです。そのため、2項道路の指定の告示は処分性があり、抗告訴訟の対象になります。

「最判平14.1.17:二項道路の一括指定の告示」の詳細はこちら>>

労災就学援護費の支給決定(最判平15.9.4)

被災労働者又はその遺族が、労災就学援護費の支給を受けるためには一定の要件を満たす必要があります。そして、その要件は、「労災就学等援護費支給要綱」において規定されており、労災就学援護費の支給を受けようとする者は、労災就学等援護費支給申請書を業務災害に係る事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に提出しなければならず、同署長は、同申請書を受け取ったときは、支給、不支給等を決定し、その旨を申請者に通知しなければならないこととされています。

つまり、具体的に支給を受けるためには、労働基準監督署長に申請し、所定の支給要件を具備していることの確認を受けなければならず、労働基準監督署長の支給決定によって初めて、具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するものといわなければならないです。

よって、労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる(処分性を有する)ものと解するのが相当。

「最判平15.9.4:労災就学援護費の支給決定」の詳細はこちら>>

食品衛生法に基づく違反通知(最判平16.4.26)

ある食品が食品衛生法違反である旨の通知によって、①関税法上の確認および輸入の許可も受けられなくなり(税関の「検査完了確認」を受けられなくなり)、②輸入申告書を提出しても受理されないという法的効力を有し、処分性が認められるとしています。

病院開設の中止勧告(最判平17.7.15)

病院開設中止の勧告は、医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導ではあるけれども、この勧告に従わない場合には、ほとんどの場合、病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。

そして、日本では、国民皆保険制度が採用されていて、健康保険、国民健康保険等を利用しないで病院で受診する者はほとんどなく、保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院がほとんど存在せず、保険医療機関の指定を受けることができない場合には、実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになる。

そのため、病院開設中止の勧告は、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たると解するのが相当である。(=処分性を有する

「最判平17.7.15:病院開設の中止勧告」の詳細はこちら>>

土地区画整理事業計画の決定(最判平20.9.10)

市町村は、土地区画整理事業を施行しようとする場合においては、施行規程及び事業計画を定めなければならず、事業計画が定められた場合においては、市町村長は、遅滞なく、施行者の名称、事業施行期間、施行地区等の一定事項を公告しなければならない。

そして、この公告がされると、換地処分の公告がある日まで、施行地区内において、建築制限が課せられるなど、施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって、抗告訴訟の対象とするに足りる法的効果を有するものということができ、実効的な権利救済を図るという観点から見ても、これを対象とした抗告訴訟の提起を認めるのが合理的である。

つまり、土地区画整理事業の決定は、処分性があるとされています。

「最判平20.9.10:土地区画整理事業計画の決定」の詳細はこちら>>

保育所廃止条例の制定行為(最判平21.11.26)

市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為は、現に保育を受けている児童及びその保護者は当該保育所において保育の実施期間が満了するまでの間保育を受けることを期待し得る法的地位(保育を受けることができること)を有すること、同条例が、他に行政庁の処分を待つことなくその施行により当該保育所廃止の効果を発生させ、入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、上記法的地位を奪う(保育を受けることができなくなる)結果を生じさせるものであることなど判示の事情の下では、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。(処分性を有する)

「最判平21.11.26:保育所廃止条例の制定行為」の詳細はこちら>>

処分性を有さないとされた判例

  1. 墓地・埋葬に関する通達(最判昭43.12.24)
  2. 日本鉄道建設公団の実施計画に対する認可(最判昭53.12.8)
  3. 簡易水道事業条例の制定(最判平18.7.14)
  4. 工業地域指定の決定(最判昭57.4.22)

墓地・埋葬に関する通達(最判昭43.12.24)

通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであり、このような通達は行政機関および職員に対する行政組織内部における命令にすぎないから、これらのものがその通達に拘束されることはあっても、一般の国民は直接これに拘束されるものではない
そのため、通達は、処分性を有しないため、取消訴訟の対象にはならない。

日本鉄道建設公団の実施計画に対する認可(最判昭53.12.8)

新幹線を作るために、日本鉄道建設公団が工事実施計画を作成した。
この工事実施計画に対して行う国土交通大臣の認可は、いわば「日本鉄道建設公団の上級行政機関(国土交通大臣)」が、「下級行政機関(日本鉄道建設公団)」に対し、一定の審査をするという監督手段としての承認の性質を有するもので、行政機関相互の行為と同視すべきものであり、行政行為として外部に対する効力を有するものではなく、また、これによって直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する効果を伴うものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらない(処分性を有しない)

簡易水道事業条例の制定(最判平18.7.14)

普通地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金を改定する条例の制定行為は、同条例が上記水道料金を一般的に改定するものであって、限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく、同条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできないという事情の下では、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない

=限られた特定の者ではないので、個別・具体的な法的地位の変動(特定の者に対して権利義務が生じるとは言えないから処分性はないということ

「最判平18.7.14:水道料金を改訂する条例制定行為」の詳細はこちら>>

工業地域指定の決定(最判昭57.4.22)

工業地域の指定の決定による効果は、当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったとは言えない

したがって、「当該工業地域の指定の決定」は、抗告訴訟の対象となる行政処分とは言えない。(個別具体的な処分とは言えないので、処分性を有しない

「最判昭57.4.22:工業地域指定の決定」の詳細はこちら>>

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取消訴訟の原告適格

原告適格とは、取消訴訟を提起した者が「処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」であるかどうか?ということです。

処分の相手方は、もちろん取消訴訟を行えますが、「処分の相手方以外の第三者」についても、取消訴訟を行うことができます。この「処分の相手方以外の第三者」が法律上の利益を有していれば、原告適格の要件を満たします。

一方、「処分の相手方以外の第三者」が法律上の利益を有していないのであれば、原告適格の要件を満たさず、却下判決が下されます。

法律上の利益を有する者とは?

法律上の利益を有する者」とは、「処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害されるおそれのある者」と判例では言っています。

そして、「法律上保護された利益」とは、行政法規(法令)で私人の個人的利益が保護されているものを言います。

反射的な利益をもつに過ぎない者は、「法律上保護された利益」を持つとは言えず、原告適格を有する者と認められません。

この点については、下記「主婦連ジュース不当表示事件」で詳しく解説します。

主婦連ジュース不当表示事件(最判昭53.3.14)

商品の表示方法に問題があったとして、消費者(主婦連合会)が訴えたが、景表法はあくまでも一般的抽象的な「公益」を保護しているのであって、「個々人の具体的利益」を保護しているわけではありません。もちろん、公益保護を目的として商品の表示方法について制限を加えた結果、消費者も利益を受けることとなるが、それは、反射的利益なので、「法律上保護された利益」とは言えないということです。

つまり、個別の法令で
公益利益のみを保護している場合、原告適格なし
個人の個別的利益も保護している場合、原告適格あり
ということです。

「最判昭53.3.14:主婦連ジュース事件」の詳細はこちら>>

原告適格を肯定した判例

  1. 公衆浴場法に基づく営業許可処分(最判昭37.1.19)
  2. 森林法に基づく保安林指定解除処分(最判昭57.9.9)
  3. 航空法に基づく定期航空運送事業免許処分(最判平元.2.17)
  4. 原子炉等規制法に基づく原子炉設置許可処分(最判平4.9.22)
  5. 都市計画法29条に基づく開発許可処分(最判平9.1.28)
  6. 場外車券発売施設設置許可処分における「医療施設の開設者」(最判平21.10.15)

公衆浴場法に基づく営業許可処分(最判昭37.1.19)

公衆浴場は、多数の国民の日常生活に必要不可欠な公共性を伴う厚生施設です。
そして、公衆浴場の設立を業者の自由に委せて、濫立することにより、浴場経営に無用の競争を生じさせ
結果として「浴場の衛生設備の低下」等の影響をきたすことも考えられます。
公衆浴場の性質に鑑み、国民保健及び環境衛生の上から、濫立を防止することが望まく、
公衆浴場法では、公衆浴場を設置する場合、都道府県知事等の許可を受ける必要があるとしています。
つまり、公衆浴場法では、①「国民保健及び環境衛生」という公共の福祉と、②既存業者の経営の不合理化を防止することを目的としているわけです。
したがって、既存業者の営業上の利益は、単なる事実上の反射的利益というにとどまらず公衆浴場法によって保護せられる法的利益と解するのが相当なので、既存業者は、原告適格の要件を満たします。
よって、ある業者に対する公衆浴場の営業許可処分に対して、既存の業者が営業許可の取消訴訟を提起することができます。

「最判昭37.1.19:公衆浴場既存経営者の原告適格」の詳細はこちら>>

森林法に基づく保安林指定解除処分(最判昭57.9.9)

森林法における保安林は、農業用水の確保や、洪水の予防・飲料水の確保を目的としたものです。そして、この保安林によって利益は、公益だけでなく、一定範囲の者の利益(個別的利益)も保護すべき利益と捉えています。
そのため、保安林が指定を解除されたことで、洪水の緩和や水不足の予防に関して直接影響を受ける一定範囲の地域住民は、森林法の「直接の利害関係を有する者」として、保安林の指定解除処分に関する取消訴訟の原告適格があります

航空法に基づく定期航空運送事業免許処分(最判平元.2.17)

定期航空運送事業の免許により、周辺住民は騒音被害を受けることになります。
そして、定期航空運送事業免許の審査において、航空機の騒音による障害の防止の観点から、
航空機の航行による騒音障害の有無及び程度も審査基準とされています。
これは、単に飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、
「飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によって著しい障害を受けないという利益」を周辺住民の個別的利益としても保護すべきとする趣旨を含むものと解することができるので、騒音による障害が著しい程度に至った周辺住民については、原告適格があるとしています。

「最判平元.2.17:航空法に基づく定期航空運送事業免許処分」の詳細はこちら>>

原子炉等規制法に基づく原子炉設置許可処分(最判平4.9.22)

原子炉等規制法は、単に公衆の生命、身体の安全、環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、住民の生命、身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきとあります。
つまり、原子炉の設置により重大な被害を受けることが想定される範囲の周辺住民について、原告適格を認めています。

「最判平4.9.22:原子炉設置許可処分と原告適格」の詳細はこちら>>

都市計画法29条に基づく開発許可処分(最判平9.1.28)

大規模な土地の工事を行う許可が開発許可です。そして、都市計画法33条1項7号は、この開発許可によって、がけ崩れなどによる被害が直接的に及ぶことが想定される開発区域内外の一定範囲の住民の生命、身体の安全等を、個々人の個別具体的な利益として保護する趣旨を含みます。
よって、近隣住民は、法律上の利益を有する者として、原告適格を認めています

場外車券発売施設設置許可処分における「医療施設の開設者」(最判平21.10.15)

位置基準は、一般的公益を保護する趣旨に加えて、上記のような業務上の支障が具体的に生ずるおそれのある医療施設等の開設者において、健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益を、個々の開設者の個別的利益として保護する趣旨をも含む規定であるというべきである。

したがって、当該場外施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者は、位置基準を根拠として当該場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有するものと解される。

「最判平21.10.15:場外車券発売施設設置許可処分」の詳細はこちら>>

原告適格を否定した判例

  1. 主婦連ジュース不当表示事件(最判昭53.3.14)
  2. 町名変更決定(最判昭48.1.19)
  3. 特急料金決定認可処分(最判平元.4.13)
  4. 場外車券発売施設設置許可処分における周辺住民、事業者、医療施設の利用者(最判平21.10.15)

町名変更決定(最判昭48.1.19)

町名は、住民の日常生活にとって密接な関係を持つものであるが、利益・不利益は事実上のものであるにすぎず、「現在の町名をみだりに変更されない」という利益が法的に保障されているわけではないので、当該区域内の住民に原告適格は認められない

特急料金決定認可処分(最判平元.4.13)

地方鉄道法21条では、地方鉄道における運賃、料金の定め、変更につき監督官庁の認可を受けさせることとしているが、同条の趣旨は公共の利益を確保することにあるのであって、当該地方鉄道の利用者の個別的な権利利益を保護することにあるのではなく、他に同条が当該地方鉄道の利用者の個別的な権利利益を保護することを目的として認可権の行使に制約を課していると解すべき根拠はない
そのため、地方鉄道の路線の周辺に居住し、通勤定期券を購入するなどして日常的に特急列車を利用している者であっても、特急料金の改定(値上げ)の認可処分について、その取消しを求める原告適格は認められない

「最判平元.4.13:特急料金改定の認可処分」の詳細はこちら>>

場外車券発売施設設置許可処分における周辺住民、事業者、医療施設の利用者(最判平21.10.15)

自転車競技法及び規則が位置基準によって保護しようとしているのは、第一次的には、上記のような不特定多数者の利益であるところ、それは、性質上、一般的公益に属する利益であって、原告適格を基礎付けるには足りないものであるといわざるを得ない。

したがって、場外施設の周辺において居住し又は事業(医療施設等に係る事業を除く。)を営むにすぎない者や、医療施設等の利用者は、位置基準を根拠として場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有しないものと解される。

「最判平21.10.15:場外車券発売施設設置許可処分」の詳細はこちら>>

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