判例

最判平21.2.27:「優良運転者である旨の記載の有無」と「訴えの利益」

論点

  1. 一般運転者として運転免許証の更新処分を受けた者が、優良運転者である旨の記載を求めて提訴した更新処分取消訴訟において、訴えの利益を有するか?

事案

Xは、運転免許証の更新の申請手続きをした際、過去に違反行為があったとして、優良運転者でなく、一般運転者に該当するものと扱われ、Y県公安委員会から優良運転者である旨の記載のない更新処分を受けた。

そこで、Xは違反行為を否認し、優良運転者にあたると主張し、本件更新処分の中の「Xが一般運転者とする部分」の取消訴訟、および、優良運転者である旨の記載がある運転免許の更新処分の義務付け訴訟を提起した。

なお、当該更新があった当時、優良運転者も一般運転者もどちらも免許証の有効期間は5年であった。

判決

一般運転者として運転免許証の更新処分を受けた者が、優良運転者である旨の記載を求めて提訴した更新処分取消訴訟において、訴えの利益を有するか?

訴えの利益を有する

道路交通法は、優良運転者の実績を賞揚し、優良な運転へと免許証保有者を誘導して交通事故の防止を図る目的で、優良運転者であることを免許証に記載して公に明らかにすることとするとともに、優良運転者に対し更新手続上の優遇措置を講じているのである。

このことに、優良運転者の制度の沿革等を併せて考慮すれば、同法は、客観的に優良運転者の要件を満たす者に対しては優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して更新処分を行うということを、単なる事実上の措置にとどめず、その者の法律上の地位として保障するとの立法政策を、交通事故の防止を図るという制度の目的を全うするため、特に採用したものと解するのが相当である。

確かに、免許証の更新処分において交付される免許証が優良運転者である旨の記載のある免許証であるかそれのないものであるかによって、当該免許証の有効期間等が左右されるものではない。

また、上記記載のある免許証を交付して更新処分を行うことは、免許証の更新の申請の内容を成す事項ではない。

しかしながら、上記のとおり、客観的に優良運転者の要件を満たす者であれば優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して行う更新処分を受ける法律上の地位を有することが肯定される以上、一般運転者として扱われ上記記載のない免許証を交付されて免許証の更新処分を受けた者は、上記の法律上の地位を否定されたことを理由として、これを回復するため、同更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するというべきものである。

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最判平20.9.10:土地区画整理事業計画の決定

論点

  1. 都市計画事業の事業計画の決定に処分性は認められるか?

事案

Y市は、A鉄道の立体交差事業の一環として、上島駅の高架化と併せて、駅周辺の公共施設の整備改善等を図るため、土地区画整理事業を計画した。

そして、Y市は、知事Bに対して、事業計画の認可申請をし、Bからその認可を受けた。
(市町村が土地区画整理事業を行う場合、知事の認可が必要)

そして、Y市は、本件事業計画が決定した旨の公告を行った。

本件事業の施行地区内に土地を所有するXらは、本件事業は公共施設の整備改善および宅地の増進という土地区画法の事業目的を欠くものであると主張して、当該事業計画の決定の取消しを求めて提訴した。

判決

都市計画事業の事業計画の決定に処分性は認められるか?

→認められる

事業計画が決定されると、当該土地区画整理事業の施行によって施行地区内の宅地所有者等の権利にいかなる影響が及ぶかについて、一定の限度で具体的に予測することが可能になるのである。

そして、土地区画整理事業の事業計画については、いったんその決定がされると、特段の事情のない限り、その事業計画に定められたところに従って具体的な事業がそのまま進められ、その後の手続として、施行地区内の宅地について換地処分が当然に行われることになる。

そうすると、施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることによって、前記のような規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ、その意味で、その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきであり、事業計画の決定に伴う法的効果が一般的、抽象的なものにすぎないということはできない。

また、換地処分を受けた宅地所有者等やその前に仮換地の指定を受けた宅地所有者等は、当該換地処分等を対象として取消訴訟を提起することができる。

しかし、換地処分等がされた段階では、実際上、既に工事等も進ちょくし、換地計画も具体的に定められるなどしており、その時点で事業計画の違法を理由として当該換地処分等を取り消した場合には、事業全体に著しい混乱をもたらすことになりかねない。

それゆえ、換地処分等の取消訴訟において、宅地所有者等が事業計画の違法を主張し、その主張が認められたとしても、当該換地処分等を取り消すことは公共の福祉に適合しないとして事情判決行政事件訴訟法31条1項)がされる可能性が相当程度あるのであり、換地処分等がされた段階でこれを対象として取消訴訟を提起することができるとしても、宅地所有者等の被る権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難い

そうすると、事業計画の適否が争われる場合、実効的な権利救済を図るためには、事業計画の決定がされた段階で、これを対象とした取消訴訟の提起を認めることに合理性があるというべきである。

以上によれば、市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は、施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって、抗告訴訟の対象とするに足りる法的効果を有するものということができ、実効的な権利救済を図るという観点から見ても、これを対象とした抗告訴訟の提起を認めるのが合理的である。

したがって、上記事業計画の決定は、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たると解するのが相当である。(処分性を有する

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最判平18.11.2:都市計画の決定における行政庁の裁量

論点

  1. 都市計画の決定における行政庁の裁量の範囲は?
  2. 行政庁の判断は、どのような場合に、裁量権の逸脱・濫用として無効となるか?

事案

建設大臣(現、国土交通大臣)は、平成6年、東京都に対して、「小田急小田原線のある区間を高架式により連続立体交差化する内容の都市計画事業の認可」と、「同区間に沿って付属街路を設置することを内容の都市計画事業の認可」をした。

同区間の沿線住民Xらは、事業の方式につき優れた代替案である地下式を理由もなく不採用とし、その結果、Xらに甚大な被害を与える高架式で同事業を実施しようとする点で、事業の前提となる都市計画決定の事業方式の選定には違法があるなどを主張して、建設大臣の事業承継者である関東地方整備局長Yに対し、上記2つの認可の取消しを求めた。

判決

都市計画の決定における行政庁の裁量の範囲は?

→広範な裁量が認められる

都市計画法では、都市施設について、土地利用、交通等の現状及び将来の見通しを勘案して、適切な規模で必要な位置に配置することにより、円滑な都市活動を確保し、良好な都市環境を保持するように定めることとしている。

このような基準に従って都市施設の規模、配置等に関する事項を定めるに当たっては、当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で、政策的、技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。

そうすると、このような判断は、これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられているというべきである。

行政庁の判断は、どのような場合に、裁量権の逸脱・濫用として無効となるか?

重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、または、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となる

上記の通り、都市施設の設置に関する決定については、決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられており、

裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては、当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として、

その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により①重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、

又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等により②その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、

裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である。

最判平18.2.7:公立学校施設の目的外使用と管理者の裁量権

論点

  1. 公立学校施設の目的外使用の許可・不許可の判断はどのような場合に違法となるか?

事案

広島県教職員組合Xが、毎年開催している県教育研究集会の会場として、広島県呉市立A中学校の学校施設を使用の申出をしたところ、呉市教育委員会Bは、「Xによる集会が原因で、右翼団体による妨害活動の恐れがあり、周辺の学校や地域に混乱を招き、児童生徒に教育上悪影響を与え、学校教育に支障をきたすことが予想される」として、不許可とした。

このため、Xは別の公共施設を会場として開催することとなった。

そこで、Xは、Bに不当に学校施設の使用を拒否されたとして、呉市Yに対し、国家賠償法に基づく損害賠償請求を求めた。

判決

公立学校施設の目的外使用の許可・不許可の判断はどのような場合に違法となるか?

裁量権行使の判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となる

学校施設は、一般公衆の共同使用に供することを主たる目的とする道路や公民館等の施設とは異なり、本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されている。

したがって、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。

すなわち、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。

そして、管理者の裁量判断は、諸般の事情を総合考慮してされるものであり、その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となる。

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最判平17.11.1:「都市計画法の建築制限」と「憲法29条3項に基づく損失補償」

論点

  1. 都市計画決定により長期にわたって建築制限を受けた土地所有者は、憲法29条3項に基づいて損失補償請求できるか?

事案

Xらが所有する土地は、昭和13年になされた都市計画の決定によって、都市計画道路の路線区域内とされ、60年以上にわたって、建築制限を受けた。

Xらは、マンションや病院などの建設を計画したが、いずれも建築制限のために断念していた。

そこで、長期にわたる制限は、都市計画法3条に違反するとして、都市計画決定の取消しと、国家賠償法1条に基づく損害賠償請求、予備的に憲法29条3項に基づく損失補償を求めて、盛岡市Yに対して訴えを提起した。

都市計画法第3条(国、地方公共団体及び住民の責務)
国及び地方公共団体は、都市の整備、開発その他都市計画の適切な遂行に努めなければならない。

憲法第29条3項
私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

判決

都市計画決定により長期にわたって建築制限を受けた土地所有者は、憲法29条3項に基づいて損失補償請求できるか?

→損失補償請求できない

原審の適法に確定した事実関係の下においては、Xらが受けた上記の損失は、一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということがいまだ困難である。

したがって、Xらは、直接憲法29条3項を根拠として上記の損失につき補償請求をすることはできないものというべきである。

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最判平18.7.14:水道料金を改訂する条例制定行為

論点

  1. 水道料金を規定する条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

事案

Xらは、山梨県旧高根町Yに別荘を所有しており、Yとの間で給水契約を締結していた。

その後、旧高根町簡易水道事業給水条例が改訂されると、住民基本台帳に登録していないXらの水道料金が大幅に値上げされ、基本料金について別荘所有者以外の給水契約者との間に差が生じた。

つまり、基本料金について、地元住民は安く、別荘所有者は高いということ。

これに対して、Xらは、本件水道料金の定めが別荘給水契約者を不当に差別するものであると主張し、本件定めについて、行政事件訴訟法3条4項の無効等確認の訴えを提起した。

判決

水道料金を規定する条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

→当たらない

抗告訴訟の対象となる行政処分とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいうものである。

本件改正条例は、旧高根町が営む簡易水道事業の水道料金を一般的に改定するものであって、そもそも限られた特定の者に対してのみ適用されるものではない

したがって、本件改正条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできないから、本件改正条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらなというべきである。

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行政書士におけるポイント

  • 抗告訴訟の対象となる行政処分とは、①公権力であること、②個別・具体的な法的地位の変動(特定の者に対して権利義務が生じる)の2つを満たす必要がある。
    本件、「限られた特定の者を対象としていない」ことから、②個別・具体的という要件を満たさないので、抗告訴訟訴訟の対象となる行政処分には当たらない
    つまり、水道料金の改定条例の制定行為は、処分性を有さない、ということ。

最判平17.9.14:在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件

論点

  1. 在外日本人が、国政選挙において、在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を求める訴えは適法か?
  2. 国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用を受けるか?

事案

平成10年の公職選挙法改正前は、「選挙人名簿に登録されていない者」は投票することができない、とされていた。

そして、選挙人名簿への登録は、3か月以上の当該市町村の住民基本台帳に記録されている者について行うとされていたため、在外日本人は選挙人名簿への登録がなされず、国政選挙において、一切投票することができなかった。

その後、平成10年に同法が改正され、在外日本人も在外選挙人名簿に登録されていれば投票が可能となる在外選挙制が創設された。

しかし、対象となる選挙は、当分の間、衆議院・参議院の「比例代表選出議員」の選挙に限られていた。

そこで、平成8年の衆議院議員の総選挙において投票することができなかったXらは、国Yを被告として、選挙権の行使の機会を保障しないことは、憲法14条1項(法の下の平等)に違反すると主張し、改正前の公職選挙法の違法確認を、予備的に、Xらが「衆議院小選挙区選出議員および参議院選挙区選出の選挙」において選挙権を行使する権利を有することとの確認を求めて提訴した。

判決

在外日本人が、国政選挙において、在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を求める訴えは適法か?

→適法である

本件の予備的確認請求に係る訴えは、公法上の当事者訴訟のうち公法上の法律関係に関する確認の訴えと解することができる。

そして、その内容をみると、公職選挙法の改正がされないと、在外国民であるXらが、今後直近に実施されることになる「衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙」において投票をすることができず、選挙権を行使する権利を侵害されることになるので、

そのような事態になることを防止するために、Xらが、改正前の公職選挙法の規定が違憲無効であるとして、当該各選挙につき選挙権を行使する権利を有することの確認をあらかじめ求める訴えであると解することができる。

選挙権は、これを行使することができなければ意味がないものといわざるを得ず、侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができない性質のものである。

したがって、その権利の重要性にかんがみると、具体的な選挙につき選挙権を行使する権利の有無につき争いがある場合にこれを有することの確認を求める訴えについては、それが有効適切な手段であると認められる限り、確認の利益を肯定すべきものである。

そして、本件の予備的確認請求に係る訴えは、公法上の法律関係に関する確認の訴えとして、上記の内容に照らし、確認の利益を肯定することができるものに当たるというべきである。

なお、この訴えが法律上の争訟に当たることは論をまたない(当然である)。

そうすると、本件の予備的確認請求に係る訴えについては、引き続き在外国民であるXらが、次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において、在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を請求する趣旨のものとして適法な訴えということができる

国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用を受けるか?

→適用を受ける

国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものである。(国家賠償法1条1項の解説はこちら>>

したがって、国会議員の立法行為又は立法不作為が同項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって、当該立法の内容又は立法不作為の違憲性の問題とは区別されるべきである。

仮に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反するものであるとしても、そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに違法の評価を受けるものではない

しかしながら、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべきである。

上記内容から、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用を受けることが分かる。

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最判平17.7.15:病院開設の中止勧告

論点

  1. 病院開設中止の勧告は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

事案

Xは病院の開設を計画し、Y知事に対して、医療法7条1項の許可(病院開設の許可)の申請をした。

Yは、Xに対し、医療法30条の7の規定に基づき、「当該病院開設予定の地域内の必要病床数が達していること」を理由に、病院の開設の中止を勧告したが、Xはこの勧告を拒否した。

これを受けてYは、Xあてに「中止勧告にも関わらず、病院を開設した場合、保険医療機関の指定の拒否をする」旨の文書を送付した(通告)。

そこで、Xは、Yに対して、勧告の取消し、または本件通告処分の取消しを求めて出訴した。

判決

病院開設中止の勧告は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

→あたる

病院開設中止の勧告は、医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められている。

しかし、当該勧告を受けた者に対し、これに従わない場合には、相当程度の確実さをもって、病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。

そして、いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては、健康保険、国民健康保険等を利用しないで病院で受診する者はほとんどなく、保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院がほとんど存在しないことは公知の事実であるから、保険医療機関の指定を受けることができない場合には、実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになる

このような医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告の保険医療機関の指定に及ぼす効果及び病院経営における保険医療機関の指定の持つ意義を併せ考えると、この勧告は、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たると解するのが相当である。(つまり、処分性を有する

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最判平16.1.15 :法令解釈の誤りと過失(外国人の国民健康保険)

論点

  1. 日本に不法残留している外国人は、国民健康保険法5条所定の「住所を有する者」に該当するか?
  2. 法律解釈を伴う行政処分が違法とされた場合に、直ちに公務員に過失があるといえるか?

事案

韓国籍のXは昭和51年に、許可を得て、日本に入国し、当該許可の失効後も残留した。

翌年Xは結婚し、2人の子供ももうけ、昭和60年から横浜市港北区において居住を開始した。

平成9年には外国人登録をして、同時に国民健康保険被保険者証の交付の申請をしたが、拒否された。

平成10年、Xの長男の脳腫瘍が判明したため、再度の申請をしたが、これも区長に拒否された(本件処分という)。

国民健康保険法5条では、「市町村の区域内に住所を有する者」が被保険者の要件とされており、この要件につき、厚生省(現厚生労働省)からは、1年以上の在留期間を認められた者に限られる旨等の通知(本件通知という)が発せられ、在留資格を有しない外国人は国民健康保険の適用外とされていた。このため、再度の申請に対して、区長は本件処分をしたものである。

これに対して、Xは、本件通知および本件処分が違法なものであり、これに起因して過分の治療費を負担したことを損害として、国Y1と横浜市Y2に対して国家賠償請求を提起した。

判決

日本に不法残留している外国人は、国民健康保険法5条所定の「住所を有する者」に該当するか?

当該外国人が、当該市町村を居住地とする外国人登録をして、入管法50条所定の在留特別許可を求めており、入国の経緯、入国時の在留資格の有無及び在留期間、その後における在留資格の更新又は変更の経緯、配偶者や子の有無及びその国籍等を含む家族に関する事情、我が国における滞在期間、生活状況等に照らし、当該市町村の区域内で安定した生活を継続的に営み、将来にわたってこれを維持し続ける蓋然性が高いと認められる場合、「住所を有する者」に該当する。

国民健康保険法5条にいう「住所を有する者」は、市町村の区域内に継続的に生活の本拠を有する者をいうものと解するのが相当である。

そして、外国人が法5条所定の「住所を有する者」に該当するかどうかを判断する際には、当該外国人が在留資格を有するかどうか、その者の有する在留資格及び在留期間がどのようなものであるかが重要な考慮要素となるものというべきである。

そして、在留資格を有しない外国人は、入管法上、退去強制の対象とされているため、その居住関係は不安定なものとなりやすく、将来にわたって国内に安定した居住関係を継続的に維持し得る可能性も低いのである。

したがって、在留資格を有しない外国人が法5条所定の「住所を有する者」に該当するというためには、単に市町村の区域内に居住しているという事実だけでは足りず、少なくとも、当該外国人が、当該市町村を居住地とする外国人登録をして、入管法50条所定の在留特別許可を求めており入国の経緯、入国時の在留資格の有無及び在留期間、その後における在留資格の更新又は変更の経緯、配偶者や子の有無及びその国籍等を含む家族に関する事情、我が国における滞在期間、生活状況等に照らし当該市町村の区域内で安定した生活を継続的に営み、将来にわたってこれを維持し続ける蓋然性が高いと認められることが必要である。

そして、本件について照らして考えると、Xは、「住所を有する者」にがいとうするというべきである。

そうすると、本件処分は違法であるというべきである。

法律解釈を伴う行政処分が違法とされた場合に、直ちに公務員に過失があるといえるか?

→直ちに過失があるとはいえない

上記の通り、本件処分は違法ではあるが、

ある事項に関する法律解釈につき異なる見解が対立し、実務上の取扱いも分かれていて、そのいずれについても相当の根拠が認められる場合に、公務員がその一方の見解を正当と解しこれに立脚して公務を遂行したときは、後にその執行が違法と判断されたからといって、直ちに上記公務員に過失があったものとすることは相当ではない

本件についてみると、本件処分は、厚生省の通知に従って行われたものであり、社会保障制度を外国人に適用する場合には、そのよって立つ社会連帯と相互扶助の理念から、国内に適法な居住関係を有する者のみを対象者とするのが一応の原則であると解されていることに照らせば、本件各通知には相当の根拠が認められるというべきである。

そして、事実関係等によれば、在留資格を有しない外国人が国民健康保険の適用対象となるかどうかについては、定説がない。

また、法5条の解釈につき本件各通知と異なる見解に立つ裁判例はなかったというのであるから、本件処分をした横浜市の担当者及び本件各通知を発した国の担当者に過失があったということはできない。

そうすると、Xの国家賠償責任は認められない。

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最判平15.9.4:労災就学援護費の支給決定

論点

  1. 労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

事案

Xは、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金受給者であり、その子Aのために労災就学援護費の支給を受けていた。

そして、Aが外国のB大学に進学したため、Xは、中央労働基準監督署長Yに、Aの学資にかかる労災就学援護費の支給申請をした。

これに対して、Yは、B大学が学校教育法1条所定の学校でないとの理由で、援護費を支給しない旨の決定をした。

そこで、Xは、当該決定の取消訴訟を提起した。

判決

労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

→あたる

働者災害補償保険法23条1項2号は、政府は、労働福祉事業として、遺族の就学の援護等、被災労働者及びその遺族の援護を図るために必要な事業を行うことができると規定し、同条2項は、労働福祉事業の実施に関して必要な基準は労働省令で定めると規定している。

これを受けて、労働者災害補償保険法施行規則1条3項は、労災就学援護費の支給に関する事務は、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長が行うと規定している。

そして、「労災就学援護費の支給について」と題する労働省労働基準局長通達は、労災就学援護費は法23条の労働福祉事業として設けられたものであることを明らかにした上、その別添「労災就学等援護費支給要綱」において、労災就学援護費の支給対象者、支給額、支給期間、欠格事由、支給手続等を定めており、所定の要件を具備する者に対し、所定額の労災就学援護費を支給すること、労災就学援護費の支給を受けようとする者は、労災就学等援護費支給申請書を業務災害に係る事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に提出しなければならず、同署長は、同申請書を受け取ったときは、支給、不支給等を決定し、その旨を申請者に通知しなければならないこととされている。

このような労災就学援護費に関する制度の仕組みにかんがみれば、法は、労働者が業務災害等を被った場合に、政府が、保険給付を補完するために、労働福祉事業として、保険給付と同様の手続により、被災労働者又はその遺族に対して労災就学援護費を支給することができる旨を規定しているものと解するのが相当である。

そして、被災労働者又はその遺族は、具体的に支給を受けるためには、労働基準監督署長に申請し、所定の支給要件を具備していることの確認を受けなければならず、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するものといわなければならない。

そうすると、労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解するのが相当である。(処分性を有する)

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