判例

マクリーン事件をわかりやすく解説|外国人の人権・判旨【行政書士試験】

論点

  1. 外国人の在留期間の更新について法務大臣の裁量権が認められるか?
  2. 外国人にも人権の保障が及ぶか?
  3. 外国人にも政治活動の自由の保障が及ぶか?

事案

外国籍のマクリーン(X)は、在留期間を1年とする許可を得て、日本に入国した。

その後、Xは、法務大臣Yに対して、在留期間延長の申請をした。

しかし、「無断転職」および「政治活動(※)」を理由に、120日の更新しか認められず、その後、更新は不許可となった。

※ベトナム戦争の反対運動、日米安保条約の反対運動などを行っていた。

そこで、XはYの更新不許可処分を不服として、その取消しを求めて出訴した。

判決

1.外国人の在留期間の更新について法務大臣の裁量権が認められるか?

認められる

出入国管理令では、「在留期間の更新については、法務大臣がこれを適当と認めるに足りる相当の理由があると判断した場合に限り許可できる」としています。

そのため、更新事由の判断を、法務大臣の裁量に任せて、その裁量権の範囲を広汎なものとする趣旨であると解されます。

したがって、外国人の在留期間の更新について法務大臣の裁量権が認められます。

ただし、その裁量について、裁量権の範囲を超え又はその濫用があった場合、違法となります

そして、今回、法務大臣が、外国人の政治活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断し、更新不許可の処分を下したわけですが、

今回の事案では、「裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものということはできない」として、違法ではないとした。

※ 斟酌(しんしゃく)相手の事情や心情をよくくみとること

2.外国人にも人権の保障が及ぶか?

原則、外国人にも人権の保障は及ぶ

例外として、外国人在留制度の枠を超える部分は、人権保障が及ばない

判例では、「基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべき」としているので、原則、外国人にも人権保障が及びます。

しかし、外国人の人権保障は、外国人在留制度の枠内で与えられているにすぎず、外国人在留制度の枠を超える部分は、人権保障が及ばないとしています。

具体例が下記一定の政治活動の自由です。

「外国人在留制度の枠」については、個別指導で解説します!

3.外国人にも政治活動の自由の保障が及ぶか?

原則、外国人にも政治活動の自由を認めている

例外として、わが国の政治的意思決定または、その実施に影響を及ぼす活動などは、政治活動の自由の保障は及ばない

政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定または、その実施に影響を及ぼす活動など、外国人の地位にかんがみて、これを認めることが相当でないと解されるものを除いて、その保障が及びます

そして、今回の事案では、外国人Xの事実に対する法務大臣の不許可処分は、「明白に合理性に欠き、その判断が社会通念上著しく妥当性に欠くことが明らかである」とはいえないので、在留中の政治活動を理由に更新を不許可としたことは違憲ではない、とした。

※ かんがみる(鑑みる):先例や規範に照らし合わせる。他を参考にして考える

砂川事件をわかりやすく解説|統治行為論・判旨・争点【行政書士試験】

論点

  1. 安全保障条約に司法審査が及ぶか?

事案

国は、米軍立川飛行場の拡張計画を考えていたが、当該計画に反対した砂川町の住民が反対運動をした。それにもかかわらず、国が拡張のための測量を開始したので、1000名以上の集団が境界柵の外側に集合し、その中の一部の者が境界柵を破壊した。破壊された境界柵から立ち入り禁止場所に入ったところ、この行為が法律に違反するとして、起訴された。

判決

安全保障条約に司法審査が及ぶか?

→及ばない

本件安全保障条約は、主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであって、安全保障条約の内容が違憲か否かの法的判断は、その条約を締結した内閣およびこれを承認した国会の高度の政治的ないし自由裁量的判断と表裏をなす。

れ故、右違憲か否かの法的判断は、司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものである

そして、本件安全保障条約は、違憲無効であることが一見きわめて明白であるとは到底認められないため、司法審査は及ばない。

朝日訴訟をわかりやすく解説|判旨・争点・プログラム規定説【行政書士試験】

朝日訴訟とは?

朝日訴訟(最大判昭42.5.24)とは、生活保護基準の合憲性が争われた憲法25条(生存権)に関するリーディングケースです。原告の朝日茂氏が、月額600円の生活扶助では「健康で文化的な最低限度の生活」を維持できないとして厚生大臣を相手に提訴しました。最高裁は、憲法25条は国の責務を宣言したものであり、直接個々の国民に具体的権利を賦与したものではないと判示し、いわゆるプログラム規定説の立場を採用した判決として知られています。行政書士試験では、生存権の法的性質・厚生大臣の裁量権・保護受給権の一身専属性の3点がくり返し出題されています。

朝日訴訟と堀木訴訟の比較表

比較項目 朝日訴訟(最大判昭42.5.24) 堀木訴訟(最大判昭57.7.7)
争点 生活保護基準(月600円)は憲法25条に違反しないか 障害福祉年金と児童扶養手当の併給禁止は憲法25条に違反しないか
25条の解釈 プログラム規定説を採用し、具体的権利性を否定 立法府の広い裁量を認め、明らかに合理性を欠く場合のみ違憲(広い立法裁量論)
裁量の範囲 厚生大臣の合目的的裁量に委ねられる 立法府の広範な裁量に委ねられる
違憲・違法となる基準 裁量権の逸脱・濫用がある場合 著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用がある場合
結論 原告死亡により訴訟終了(本案判断は傍論) 併給禁止規定は合憲
試験での頻出ポイント 保護受給権の一身専属性・プログラム規定説 立法裁量論・25条1項と2項の区別

論点

  1. 生活保護受給権に相続性はあるか?
  2. 生存権に法的権利性はあるか?
  3. どのような場合に違法な行為として司法審査の対象となるか?

事案

X(朝日茂氏)は、肺結核患者として、療養所に入所し、厚生大臣の認定した生活扶助基準で定められた最高金額である「月600円の日用品費の生活扶助」と「現物による給食付医療扶助」とを受けていた。

ところが、Xは、実兄から、毎月1500円の送金を受けるようになったため、市の社会福祉事務所長は、月600円の生活扶助を打ち切り、上記送金額から日用品費を控除した残額900円を医療費の一部としてXに負担させる旨の保護変更の決定をした。

それに対して、Xは、厚生大臣を被告として600円の基準金額が生活保護法の規定する「健康で文化的な最低限度の生活水準」を維持するに足りないものであると主張して、訴えを提起した。

判決

生活保護受給権に相続性はあるか?

→ない

生活保護法に基づく保護受給権は、法的権利である。

しかし、この権利は、被保護者個人に与えられた一身専属の権利である。

したがって、本件訴訟は、Xの死亡と同時に終了し、相続人が保護受給権を承継する余地はない。

生存権に法的権利性はあるか?

→ない

憲法25条1項はすべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に具体的権利を賦与したものではない。

具体的権利としては、生活保護法によりはじめて与えられる。

※つまり、「生存権自体は法的権利性はないが、生活保護法で規定されることで、法的権利性が与えられる」ということです。

25条の法的権利性を否定している点では、プログラム規定説を採用しているといえる。

どのような場合に違法な行為として司法審査の対象となるか?

憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界をこえた場合または裁量権を濫用した場合

何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう、厚生大臣の合目的的な裁量に委されている。

そして、その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあっても、直ちに違法の問題を生ずることはない。

ただ、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、①法律によって与えられた裁量権の限界をこえた場合または②裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となる。

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関連ページ

>>関連判例:最大判昭57.7.7:堀木訴訟(障害年金と児童扶養手当の併給禁止が生存権に違反しないか)

>>生存権(憲法25条)プログラム規定説・抽象的権

最判昭60.11.21:在宅投票制度廃止事件

論点

  1. 立法行為の不作為は、違憲審査の対象となるか?
  2. 在宅投票制度を廃止して、その後復活しなかった不作為は、国賠法上違法か?

事案

Xは、屋根の雪下ろし作業中に転落事故を起こし、脊髄を損傷した。そのことが原因で、寝たきり状態になり、昭和28年頃から投票所へ出向くことができなくなった。

ところが、昭和27年の公職選挙法の一部改正により、「投票所に行かずにその現在の場所において投票用紙に投票の記載をして投票することができる制度(在宅投票制度)」が廃止された。廃止された原因は、昭和26年の統一地方選挙により、在宅投票制度が悪用され、多くの選挙違反が続出したからである。そのため、その後も在宅投票制度を設けるための立法を行わなかった。

このため、合計8回の公職選挙の投票をすることができなかったXは、選挙権の行使に身体上の欠陥等の原因で差別を受け、精神的損害を被ったとして、在宅投票制度の復活を採らない国に対し、国家賠償法(国賠法)1条1項に基づく慰謝料80万円の賠償を求めて訴えを提起した。

国家賠償法第1条1項
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

判決

立法行為の不作為は、違憲審査の対象となるか?

→対象となる

立法行為(不作為も含む)の内容にわたるものは、これを議員各自の政治的判断に任せ、その当否は終局的に国民の自由な言論及び選挙による政治的評価にゆだねるのが相当である。

また、憲法51条が、「両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。」と規定し、国会議員の発言・表決につきその法的責任を免除しているのも、国会議員の立法過程における行動は政治的責任の対象とするにとどめるという趣旨とである。

よって、国会議員は、立法に関しては、原則として、国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないというべきである。

また、国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けないものといわなければならない。

■上記の通り、国会議員の立法行為(不作為も含む)について違法かどうかを審査しているので、立法行為の不作為は、違憲審査の対象といえる。

在宅投票制度を廃止して、その後復活しなかった不作為は、国賠法上違法か?

→違法ではない

憲法には在宅投票制度の設置を積極的に命ずる明文の規定は存在しない。

また、憲法47条は「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。」と規定しており、これは、投票の方法その他選挙に関する事項の具体的決定を原則として立法府である国会の裁量的権限に任せる趣旨である。

そうすると、在宅投票制度を廃止しその後復活しなかった本件立法不作為は、上記の例外的場合に当たらず、違法ではない

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最大判昭62.4.22:森林法事件

論点

  1. 憲法29条1項は何を保障しているか?
  2. 森林法186条は憲法29条2項に違反するか?

事案

X、Yの兄弟は、父からそれぞれ山林の2分の1の持分を生前贈与され、共有登記をしていた。しかし、弟Xの反対を押し切って、兄Yが森林の一部を伐採したことから争いになった。

XはYを被告として、持分に応じた山林の分割等を請求する訴えを提起した。

判決

憲法29条1項は何を保障しているか?

私有財産制度のみならず、国民の個々の財産権についても保障している

憲法29条は、1項において「財産権は、これを侵してはならない。」と規定し、私有財産制度を保障しているのみでなく、社会的経済的活動の基礎をなす国民の個々の財産権につきこれを基本的人権として保障する。

森林法186条は憲法29条2項に違反するか?

違反する(違憲)

憲法29条2項では、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」と規定されている。

財産権に対する規制は、財産権の種類、性質等が多種多様であり、また、財産権に対し規制を要求する社会的理由ないし目的も、社会政策及び経済政策上の積極的なものから、社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なものに至るまで多岐にわたるため、種々様々でありうるのである。

したがって、財産権に対して加えられる規制が憲法29条2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によつて制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して決すべきものである。

また、裁判所としては、立法府がした右比較考量に基づく判断を尊重すべきものである。

そこで、裁判所としては、①立法の規制目的が、公共の福祉に合致しないことが明らかであるか、又は規制手段が目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが明らかであって、そのため立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合に限り、当該規制立法が憲法29条2項に違反すると解するのが相当である。

■そして、森林法186条(森林の共有者は、持分の過半数を有さない場合、分割請求ができない。)の立法目的は、森林の細分化を防止することによって森林経営の安定を図り、もつて国民経済の発展に資することにあると解すべきである。

この目的は、公共の福祉に合致しないことが明らかとはいえない。

ただし、共有者間に紛争が生じたときは、各共有者は、共有森林につき、保存行為を行うことができず、管理又は変更の行為を適法にすることができないこととなり、ひいては当該森林の荒廃という事態を招来することとなる。

また、一律に現物分割を認めないとすることは、同条の立法目的を達成する規制手段として合理性に欠け、必要な限度を超えるものというべきである

また、共有森林につき現物分割をしても直ちにその細分化を来すものとはいえないし、また、民法258条2項は、競売による代金分割の方法をも規定しているのであり、この方法により一括競売がされるときは、当該共有森林の細分化という結果は生じないのである。したがって、森林法186条は、目的を達成するについて必要な限度を超えた不必要な規制というべきである。

したがって、森林法186条の規制手段は、同条の立法目的との関係で合理性と必要性のいずれも肯定できないことが明らかなので、憲法29条2項に違反し無効である。

最判平22.6.3:国家賠償請求訴訟と取消訴訟

論点

  1. 国家賠償請求訴訟は、取消訴訟の手続きを経ていなくても提起できるか?

事案

倉庫業等を営む法人Xは、倉庫を昭和54年に建築し、現在も所有している。

Y市長は、昭和55年度以降、本件倉庫を「一般用の倉庫」に該当するものと評価してその価格(登録価格、評価額)を決定し、

Y市長の権限の委任を受けていたY市のA区長は、昭和62年~平成13年まで、上記価格に基づいて、固定資産税等の賦課決定を行っていた。

また、Xは、その評価額をもとに、固定資産税を納付していた。

しかし、A区長は、平成18年にXに対し、本件倉庫は「冷凍倉庫等」に該当するとした上、平成14年~18年までの登録価格を修正した旨の通知をし、固定資産税等の減額更正をした。

Xは、平成19年に国家賠償法1条1項に基づき、未還付となっていた、昭和62年~平成13年分までの固定資産税等の過納金相当額の支払を求めて提訴した。

なお、Xは、本件倉庫の登録価格について、地方税法432条1項に基づく固定資産評価委員会に対する審査の申出を行ったことはない。

地方税法432条1項
固定資産税の納税者は、その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合においては、文書をもって、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる。

判決

国家賠償請求訴訟は、取消訴訟の手続きを経ていなくても提起できるか?

→できる

地方税法では、「固定資産評価審査委員会に審査を申し出ることができる事項について、不服がある納税者は、同委員会に対する審査の申出およびその決定に対する取消しの訴えによってのみ争うことができる」と規定している。

しかし、同規定は、固定資産課税台帳に登録された価格自体の修正を求める手続きに関するものであって、当該価格の決定が公務員の職務上の法的義務に違背してなされた場合における国家賠償責任を否定するものではない。

また、行政処分が違法であることを理由として国家賠償請求をするについて、あらかじめ当該行政処分について取消しまたは無効確認の判決を得る必要はない

したがって、地方税法上の手続き(審査の申出)を経なくとも、国家賠償請求訴訟を提起することはできる。

最判平21.12.17:建築確認の取消訴訟における安全認定の違法主張

論点

  1. 建築確認の取消訴訟において、安全認定の違法を主張できるか?

事案

株式会社Aは、自ら建築主とする建築物の建築を計画した。

東京都の安全条例4条1項によると、「敷地面積が約2800㎡の敷地は、前面道路に8m以上設置していなければならない」という接道要件があった。

また、同条例4条3項では「安全認定を受ければ、この接道要件の規定は適用されない」こととなっていた(1項の例外)。

そして、Aは、上記3項の安全認定の申請を行い、新宿区長は、安全認定をした。

その後、Aは建築基準法に基づく建築確認申請を行い、新宿区Yは建築確認をした。

本件建築物の周辺住民Xらは、安全認定、建築確認を不服として建築審査会に対し審査請求をしたが、却下または棄却の裁決を受けた。

そこで、Xらは、新宿区Yを被告として、本件安全認定の取消しおよび本件建築確認の取消しを求めて訴えを提起した。

判決

建築確認の取消訴訟において、安全認定の違法を主張できるか?

→できる

安全条例4条3項に基づく安全認定は、同条1項所定の接道要件を満たしていない建築物の計画について、同項を適用しないこととし、建築主に対し、建築確認申請手続において同項所定の接道義務の違反がないものとして扱われるという地位を与えるものである。

また、「①建築確認における接道要件充足の有無の判断」と、「②安全認定における安全上の支障の有無の判断」は、異なる機関がそれぞれの権限に基づき行うこととされているが、もともとは一体的に行われていたものであり、避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものである。

そして、前記のとおり、安全認定は、建築主に対し建築確認申請手続における一定の地位を与えるものであり、建築確認と結合して初めてその効果を発揮するのである。

手続き上の観点からすると、安全認定があっても、これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず、建築確認があるまでは工事が行われることもないから、周辺住民等これを争おうとする者がその存在(安全認定の存在)を速やかに知ることができるとは限らない

そうすると、安全認定について、その適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。

したがって、安全認定が行われた上で建築確認がされている場合、安全認定が取り消されていなくても、建築確認の取消訴訟において、安全認定に違反があると主張することは許される

最判平21.11.26:保育所廃止条例の制定行為

論点

  1. 市の設置する特定の保育所で保育を受けている児童・保護者は、保育を受けることを期待しうる法的地位を有するか?
  2. 上記保育所を廃止する条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

事案

横浜市Yは、自らが設置する保育所のうち4つの保育所を平成16年3月31日かぎりで廃止する旨の条例を制定した。

本件改正条例の施行によって、当該保育所は廃止され、社会福祉法人が当該保育所の運営を引き継いだ。

これに対して保育所で保育を受けていた児童およびその保護者であるXらは、当該改正条例の制定行為は、「自らが選択した保育所において保育を受ける権利」を違法に侵害すると主張して、本件制定行為の取消訴訟を提起した。

判例

市の設置する特定の保育所で保育を受けている児童・保護者は、保育を受けることを期待しうる法的地位を有するか?

→有する

市町村は、児童の保護者から入所を希望する保育所等を記載した申込書を提出しての申込みがあったときは、やむを得ない事由がある場合を除いて、その児童を当該保育所において保育しなければならないとされている(児童福祉法24条1項~3項)。

こうした仕組みを採用したのは、女性の社会進出や就労形態の多様化に伴って、その保育所の受入れ能力がある限り、希望どおりの入所を図らなければならないこととして、保護者の選択を制度上保障したものと解される。

そして、Xらにおいては、保育所への入所承諾の際に、保育の実施期間が指定されることになっている。

したがって、特定の保育所で現に保育を受けている児童及びその保護者は、保育の実施期間が満了するまでの間は当該保育所における保育を受けることを期待し得る法的地位を有するものということができる。

上記保育所を廃止する条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

→あたる

条例の制定は、普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属するから、一般的には、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものでないことはいうまでもない。

しかし本件改正条例は、本件各保育所の廃止のみを内容とするものであって、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるものである。

そのため、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視することができる

また、市町村の設置する保育所で保育を受けている児童又はその保護者が、当該保育所を廃止する条例の効力を争って、当該市町村を相手に当事者訴訟ないし民事訴訟を提起し、勝訴判決や保全命令を得たとしても、これらは訴訟の当事者である当該児童又はその保護者と当該市町村との間でのみ効力を生ずるにすぎないから、これらを受けた市町村としては当該保育所を存続させるかどうかについての実際の対応に困難を来すことにもなる。

他方、処分の取消判決や執行停止の決定に第三者効(行政事件訴訟法32条)が認められている取消訴訟において当該条例の制定行為の適法性を争い得るとすることには合理性がある

以上によれば、本件改正条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解するのが相当である。

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最判平21.10.15:場外車券発売施設設置許可処分

論点

  1. 場外車券発売施設の周辺において「①居住する者、②事業者、③医療施設の利用者」は、設置許可の取消訴訟の原告適格を有するか?
  2. 場外車券発売施設の周辺において、「医療施設を開設する者」は、設置許可の取消訴訟の原告適格を有するか?

事案

経済産業大臣は自転車競技法4条2項に基づき、株式会社Aに対し、場外車券販売施設(競輪の賭けができる施設)の設置の許可をした。

これに対して、本件施設から1000m以内において病院や診療所を開設する医師Xらが、本件許可は、場外車券発売施設の設置要件をみたさないと主張して、国Yを被告として、許可の取消訴訟を提起した。

(競輪場)
自転車競技法第4条
競輪の用に供する競走場を設置し又は移転しようとする者は、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。
2 経済産業大臣は、前項の許可をしようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、あらかじめ、関係都道府県知事の意見を聴かなければならない。
(許可の基準)
自転車競技法施行規則第15条
法第5条第2項の経済産業省令で定める基準(払戻金又は返還金の交付のみの用に供する施設の基準を除く。)は、次のとおりとする。
一 位置は、文教上又は保健衛生上著しい支障を来すおそれがない場所であること

判決

場外車券発売施設の周辺において「①居住する者、②事業者、③医療施設の利用者」は、設置許可の取消訴訟の原告適格を有するか?

原告適格を有さない

一般的に、場外施設が設置、運営された場合に周辺住民等が被る可能性のある被害は、交通、風紀、教育など広い意味での生活環境の悪化であって、その設置、運営により、直ちに周辺住民等の生命、身体の安全や健康が脅かされたり、その財産に著しい被害が生じたりすることまでは想定し難いところである。

そして、このような生活環境に関する利益は、基本的には公益に属する利益というべきであって、法令に手掛りとなることが明らかな規定がないにもかかわらず、当然に、法が周辺住民等において上記のような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むと解するのは困難といわざるを得ない。

位置基準は、場外施設が医療施設等から相当の距離を有し、当該場外施設において車券の発売等の営業が行われた場合に文教上又は保健衛生上著しい支障を来すおそれがないことを、その設置許可要件の一つとして定めるものである。

場外施設が設置、運営されることに伴う上記の支障は、基本的には、その周辺に所在する医療施設等を利用する児童、生徒、患者等の不特定多数者に生じ得るものであって、かつ、それらの支障を除去することは、心身共に健康な青少年の育成や公衆衛生の向上及び増進といった公益的な理念ないし要請と強くかかわるものである。

そして、当該場外施設の設置、運営に伴う上記の支障が著しいものといえるか否かは、単に個々の医療施設等に着目して判断されるべきものではなく、総合的に判断されるべき事柄である。

規則が、場外施設の設置許可申請書に、敷地の周辺から1000m以内の地域にある医療施設等の位置及び名称を記載した見取図のほか、場外施設を中心とする交通の状況図及び場外施設の配置図を添付することを義務付けたのも、このような公益的見地からする総合的判断を行う上での基礎資料を提出させることにより、上記の判断をより的確に行うことができるようにするところに重要な意義があるものと解される。

このように、法及び規則が位置基準によって保護しようとしているのは、第一次的には、上記のような不特定多数者の利益であるところ、それは、性質上、一般的公益に属する利益であって、原告適格を基礎付けるには足りないものであるといわざるを得ない。

したがって、場外施設の周辺において居住し又は事業(医療施設等に係る事業を除く。)を営むにすぎない者や、医療施設等の利用者は、位置基準を根拠として場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有しないものと解される。

場外車券発売施設の周辺において、「医療施設を開設する者」は、設置許可の取消訴訟の原告適格を有するか?

原告適格を有する

場外施設は、多数の来場者が参集することによってその周辺に享楽的な雰囲気等といった環境をもたらすものであるから、位置基準は、そのような環境の変化によって周辺の医療施設等の開設者が被る文教又は保健衛生にかかわる業務上の支障について、特に国民の生活に及ぼす影響が大きいものとして、その支障が著しいものである場合に当該場外施設の設置を禁止し当該医療施設等の開設者の行う業務を保護する趣旨をも含む規定であると解することができる。

したがって、仮に当該場外施設が設置、運営されることに伴い、その周辺に所在する特定の医療施設等に上記のような著しい支障が生ずるおそれが具体的に認められる場合には、当該場外施設の設置許可が違法とされることもあることとなる。

このように、位置基準は、一般的公益を保護する趣旨に加えて、上記のような業務上の支障が具体的に生ずるおそれのある医療施設等の開設者において、健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益を、個々の開設者の個別的利益として保護する趣旨をも含む規定であるというべきである。

したがって、当該場外施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者は、位置基準を根拠として当該場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有するものと解される。

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最判平21.7.10:公害防止協定と廃棄物処理法

論点

  1. 産業廃棄物最終処分場の使用期限を定めた公害防止協定の条項は、廃棄物処理法の趣旨に反し、法的拘束力が否定されるか?

事案

Yは産業廃棄物処理業を営む事業者である。

Yは、福岡県X町において、産業廃棄物の最終処分場の建設・使用していたが、施設を拡張することにより、Xとの間で公害防止協定を締結した。

当該協定の中には、使用期限が設定されており、この使用期限を超えて当該最終処分場を利用してはならないとなっていた。

しかし、Yは前記条項を無視して、最終処分場を使用していたため、XはYに対して、最終処分場の使用の差止めを求めて民事訴訟を提起した。

判決

産業廃棄物最終処分場の使用期限を定めた公害防止協定の条項は、廃棄物処理法の趣旨に反し、法的拘束力が否定されるか?

法的拘束力は否定されない(法的拘束力はある)

廃棄物処理法は、廃棄物の排出の抑制、適正な再生、処分等を行い、生活環境を清潔にすることによって、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とし(1条)、その目的を達成するために廃棄物の処理に関する規制等を定めるものである。

そして、廃棄物処理法の規定は、知事が、処分業者としての適格性や処理施設の要件適合性を判断し、産業廃棄物の処分事業が廃棄物処理法の目的に沿うものとなるように適切に規制できるようにするために設けられたものである。

したがって、知事の許可が、処分業者に対し、許可が効力を有する限り事業や処理施設の使用を継続すべき義務を課すものではないことは明らかである。(知事は許可したからといって、知事が、使用継続を許す義務を負うわけではない)

また、処分業者(Y)が、公害防止協定において、協定の相手方(X)に対し、その事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは、処分業者自身の自由な判断で行えることであり(民法における契約自由の原則、私法上の契約)、その結果、許可が効力を有する期間内に事業や処理施設が廃止されることがあったとしても、同法に何ら抵触するものではない。

したがって、当該期限の条項が廃棄物処理法の趣旨に反するということはできないし、本件期限条項が本件協定が締結された当時の廃棄物処理法の趣旨に反するということもできない。

よって、本件期限条項の法的拘束力を否定することはできない(法的拘束力はある)

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