テキスト

内閣総理大臣の権能

内閣総理大臣の権能は下記6つあります。

  1. 他の国務大臣を任命し、罷免すること(68条
  2. 内閣を代表して、議案を国会に提出し、一般国務および外交関係について国会に報告すること(72条
  3. 内閣を代表して行政各部を指揮監督する。(72条
  4. 国務大臣に対する訴追に対して同意すること(75条
  5. 法律および政令に主任の国務大臣とともに連署すること(74条
  6. 議案について発言をするため議院に出席すること(63条

国務大臣の任命権

憲法第68条
内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

内閣総理大臣は、国務大臣を任命することもできるし、国務大臣を罷免(やめさせること)もできます

そして、任命も罷免も、閣議にかける必要はなく、内閣総理大臣の独断で決めることができます。これは、内閣総理大臣自身を中心に、自分の政策に近い者を国務大臣にすることで統一的な内閣の組織を作り、運営するためです。

内閣を代表して議案提出・国務報告・行政指揮監督を行う

憲法第72条
内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

内閣総理大臣の行政各部への指揮監督は、閣議によって決定された方針をもとに行われます。(内閣法6条

内閣総理大臣の権能に関する判例

「内閣総理大臣が行政各部に対し、指揮監督権を行使するためには、閣議にかけて決定した方針が存在することを要するが、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても、内閣総理大臣の右のような地位及び権限に照らすと、流動的で多様な行政需要に遅滞なく対応するため、内閣総理大臣は、少なくとも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有するものと解するのが相当である。」として、閣議にかけて決定した方針でなくても、内閣の意思に反しない限り、総理は行政各部に指示をする権限を有するとしました。(最大判平7.2.22:ロッキード事件

国務大臣の訴追に対する同意

憲法第75条
国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。

在任中の国務大臣の訴追には、内閣総理大臣の同意が必要です。これは、内閣の一体性を確保することと、内閣総理大臣の長としての地位を強化するためです。

しかし、上記ルールは、在任中は訴追されないだけで、在任期間が過ぎれば、訴追されることはあります。

これは、上記「訴追の権利は害されない」という部分です。

訴追の権利は害されないとは?

犯罪が終わった時から一定期間を経過すると、その後起訴することができなくなります。これを公訴時効と言います。そして、「訴追の権利は害されない」とは在任中に公訴時効の期間が進まないだけで、起訴ができなくなるわけではないということです。起訴する権利自体は残るということです。

法律・政令に連署

憲法第74条
法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

内閣総理大臣は、主任の大臣が署名した法律や政令に連署(一緒に署名)します。

これは、法律や政令の執行責任を明確にするためのものです。

そして、連署は、形式上のものなので、連署がなかったとしても、法律の効力には関係ないので、連署のない法律や政令であっても効力を有します

発言のために議院出席

憲法第63条
内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

内閣総理大臣および国務大臣は、いつでも議案について発言するため議院に出席することができます。つまり、議院からの呼び出しがなくても、自らの意思で議院に出席できるということです。

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内閣の組織

憲法第66条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。 2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
内閣は、内閣総理大臣とその他の大臣(国務大臣という)で組織される合議体です。 合議体とは、複数の者が集まって意思決定をする組織を言います。 国務大臣の人数は原則14人以内で、特別必要がある場合は17人以内です。(内閣法2条2項) 内閣総理大臣と国務大臣は「文民」でなければならないのですが、文民とは、分かりやすく言えば、軍人でない人・自衛官でない人です。 そして、内閣総理大臣が国務大臣を選び国務大臣の過半数は国会議員でなければならないです。(68条 <<内閣と国会の関係(議院内閣制と内閣総辞職) | 内閣総理大臣の権能>>

国会議員の特権

国会議員は、すべての国民の代表として国会の仕事をこなさなければなりません。そこで、国会で自由に仕事をし、また、仕事中に邪魔されないように3つの特権が与えれています。

  1. 不逮捕特権(50条)
  2. 免責特権(51条)
  3. 歳費受領権(49条)

不逮捕特権

憲法第50条
両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

国会議員は、原則として、国会の会期中は逮捕されません。そして、会期前に逮捕された場合には、議院の要求によって釈放されます。

ただし、例外として、下記2ついずれかの場合は、会期中でも逮捕されます

  1. 議院外における現行犯逮捕の場合
  2. 議院の承諾がある場合

免責特権

憲法第51条
両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

院外で責任を問われないとは、「刑事上の処分」や「民事上の賠償請求」を受けないという意味です。

また、国会議員は、弁護士法上の懲戒責任や公務員の懲戒責任を問われません。

免責特権に関する判例

国会議員Xの委員会での発言により、民間人Yが自殺した。Yの妻がXに対して損害賠償を求めて争われた。
この点について最高裁は、「発言がXの故意又は過失による違法な行為であるとしても、国会議員X個人は、Yに対してその責任を負わないと解すべきである」として、国会議員は責任を問われないとした。
また、「国会議員が国会の質疑、演説、討論等の中でした個別の国民の名誉又は信用を低下させる発言につき、国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が肯定されるためには、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とする。」として、国会議員が国会で行った質疑等において、個別の国民の名誉や信用を低下させる発言があったとしても、これによって当然に国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が生ずるものではないとした。

(最判平9.9.9:国会議員名誉毀損発言事件)

歳費受領権

憲法第49条
両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

歳費とは、分かりやすく言えば、給料です。これは、国庫から支払われています。

そして、国会議員の歳費については、在任中に減額されることもあります

一方、裁判官の報酬(給料)は、在任中に減額されることはありません。(80条2項

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議院の権能(議院自律権と国政調査権)

これから、議院の権能を学ぶのですが、議院の権能とは、各議院が行えることです。 議院の権能として「議院の自律権」と「国政調査権」の2つがあります。

議院の自律権

衆議院と参議院それぞれの自立性を尊重するために、各議院の自律権を認めて、内部的なことは、各議院が自主的に決定できるようにしています。 具体的にどのような内容について自主的に決定できるのか、下記4つがあります。
  1. 議員の資格争訟裁判(55条)
  2. 役員の選任(58条1項)
  3. 議院の懲罰(58条2項)
  4. 議院規則の制定(58条2項)

議員の資格争訟裁判

憲法第55条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
資格訴訟裁判とは、衆議院議員や参議院議員が、国会議員となる資格を有しているか(例えば、公務員と兼務していないか)を審議する裁判です。 ここで、国会議員の議席を失われるためには、出席議員の3分の2以上の賛成が必要です。 これは、衆議院は衆議院議員の資格に関する争訟を裁判でき、参議院は参議院議員の資格に関する資格の争訟の裁判ができます。

役員の選任

憲法第58条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
役員とは、副議長、常任委員長(内閣委員長、総務委員長、法務委員長など)、特別委員長(災害対策特別委員長等)、憲法審査会会長等があります。これらの役員を衆議院、参議院で選任します。 ※役員の解任については、国会法第30条の2で「各議院において特に必要があるときは、その院の議決をもって、常任委員長を解任することができる。」と規定されています。

議員の懲罰

憲法第58条 2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
院内の秩序を乱した議員については、「戒告・陳謝・登院禁止・除名」といった懲罰をすることができます。そして、懲罰の中でも「除名」については、一番重い処分なので、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要としています。

議院規則の制定

これも、上記憲法58条2項に規定されています。 議院規則は、議会の各議院が、各々単独の議決により、会議その他の手続及び内部の規律に関して定める規則です。議院規則であり、議員規則ではないので注意しましょう! 具体的にどのような内容か知りたい方は下記からご確認ください! >>衆議院規則 >>参議院規則

国政調査権

憲法第62条 両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
国政調査権とは、国会の持つ立法権や行政権が適切に行使されているかを監視・調査を行う権利です。これは、各議院それぞれに与えられています。 そして、各議院に国政調査権があるといっても、その権利には一定の限界があります(国政調査権の限界)。 どのような限界かは下記の通りです。

司法権と議院の国政調査権との関係

司法権に対しては、特にその独立性が憲法上強く保障されているため、裁判内容を批判するための調査は許されません。 現に裁判で係争中の問題に関して、裁判所と異なる目的であれば、議院が独自に並行的に調査することが許されます

検察権と国政調査権との関係

検察事務は、本来行政作用であるから、犯罪捜査、公訴提起、不起訴処分など検察事務の運営方法についてその妥当性を調査することは、原則として国政調査権の内容となります。ただし、裁判と密接に関連するため、司法権に対するのと同じように、慎重な配慮が要請されます。具体的には、下記3つについては、違法または不当調査となります。
  1. 起訴・不起訴について、検察権の行使に政治的圧力を加えることが「目的」と考えられる調査
  2. 起訴事件に直接関係する事項(対象)の調査
  3. 捜査の続行に重大な支障を及ぼす「方法」による調査

一般行政権と国政調査権との関係

国政調査権は上記検察事務以外の行政活動に対しては、民主的コントロールの必要性から広く行えます。従って、各省庁の監督下の公益法人(独立行政法人も含む)の活動に対しても、調査権を行使することができます。

人権と国政調査権との関係

国民の権利・自由を侵害するような手段・方法で国政調査権を行使してはならない<<国会の権能 | 国会議員の特権>>

国会の権能

国会の権能とは、国会が何をすることができるかということです。

具体的に国会は、下記8つのことを行うことができます。

国会の7つの権能

  1. 憲法改正を発議する(96条1項)
  2. 法律を議決する(59条1項)
  3. 内閣総理大臣を指名する(67条1項前段)
  4. 弾劾裁判所を設置する(64条1項)
  5. 財政を監督する(86条、90条等)
  6. 皇室の財産事項を議決する(8条)
  7. 条約を承認する73条3号
    条約の締結内閣の権能(仕事)なので注意!

弾劾裁判所の設置

弾劾裁判とは、裁判官に非行があった場合に、その裁判官を辞めさせるかどうかを判断する裁判です。そして、弾劾裁判所は、国会内に設置され、参議院・衆議院の両議院から選ばれた(選挙された)各7名(合計14名)の国会議員が裁判員となり、裁判をします。

財政の監督

財政監督については、下記条文を確認していただければ、どのような内容かはある程度イメージできると思います。だいたい、こんなことをするのかと分かれば大丈夫です。

憲法第83条
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。

憲法第84条
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

憲法第85条
国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。

憲法第86条
内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。

憲法第87条
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

憲法第88条
すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。

憲法第89条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

憲法第90条
国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

憲法第91条
内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

<<衆議院の優越 | 議院の権能>>

天皇(国事行為・皇室の財産)

行政書士の試験において、「天皇」について重要なポイントは、天皇の国事行為になってくるので

天皇の地位

憲法第2条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
世襲(せしゅう)とは、特定の地位や職業、財産等を、子孫が代々承継することです。つまり、皇位(天皇の地位)は、子孫に継承されます。 また、天皇の地位については、「皇室典範」に従って継承が行われます。具体的には、皇室典範の第1章の「皇位継承」で規定しています。その中の第1条に「皇統に属する男系の男子」が皇位を継承するものと定めているため、女性天皇の是非についてが問題になっています。

天皇の国事行為

憲法第3条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。 憲法第4条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
天皇の国事行為とは、天皇が行うものとして日本国憲法に規定された行為のことです。 日本国憲法第1条に基づき天皇の地位が象徴とされたことから、天皇が行う行為について、天皇が責任を負うのではなく、内閣が責任を負うものとし、そのために天皇の国事行為が内閣の助言と承認に基づいてなされるべきものであることを明らかにしています(3条)。 また、天皇は、象徴にすぎないので、国政について、何かしら決定することは行いません(4条)。行うことは、形式的・儀礼的行為です。つまり、天皇は、形だけの、儀式的な行為を行うということです。これは下記国事行為の内容を見ると分かります。 例えば、1番の「天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する」天皇は、内閣総理大臣を任命するのですが、実際には、国会で決まった者を、任命するだけなので、天皇が総理大臣を決めているわけではありません。あくまでも形式的儀礼的に任命行為を行っているだけです。 憲法で規定された天皇の国事行為は、下記の通り12あります。
  1. 国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命すること。(6条1項)
  2. 内閣の指名に基づいて,最高裁判所の長たる裁判官を任命すること。(6条2項)
  3. 憲法改正法律政令及び条約公布すること。(7条1号) ※憲法改正を公布することも含む(96条2項) ※予算、条例の公布は含まない
  4. 国会を召集すること。 (7条2号) ※参議院の緊急集会は含まない
  5. 衆議院を解散すること。 (7条3号) ※内閣が衆議院の解散を決定する
  6. 国会議員の総選挙の施行を公示すること。 (7条4号) ※補欠選挙は含まれない
  7. 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること(7条5号)
  8. 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権認証すること。(7条6号) ※決定は内閣が行う
  9. 栄典を授与すること。(7条7号)
  10. 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。(7条8号)
  11. 外国の大使及び公使を接受すること。(7条9号)
  12. 儀式を行ふこと。 (7条10号)

皇室の財産関係

下記条文が、皇室の財産に関する条文です。ここからも分かるように、皇室の財産は、国に帰属し、皇室の財産を売却する場合は、国会の議決が必要で、皇室が使うについては、予算に組みれておく必要があるということです。
憲法第8条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。 憲法第88条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。
<<権力分立 | 国会>>

権力分立

権力分立とは、国家権力をその性質に応じて各権力に区別し、異なる機関に担当させることです。1つの機関に担当させると、その機関が絶対的に支配をしてしまい、独裁国家になってしまいます。それを防ぐため(人権保障のため)、国家権力を分散させ、相互に均衡と抑制を保たせる制度が権力分立です。

例えば、「国会・内閣・裁判所」や「中央政府・地方政府」が権力分立の事例です。

三権分立

権力分立が、現代国家において、それぞれの権力が大きくなってきています。

  1. 行政国家現象(行政権が大きくなる)
  2. 政党国家現象(国会を組織する政党の力が大きくなる)
  3. 司法国家現象(司法権が大きくなる)

行政国家現象

19世紀半ば以降、資本主義が急速に発達しましたが、そのことにより、貧富の格差、労働問題が深刻化し、その結果、国民に人間らしい生活を保障するために、様々な行政サービスを提供することとなり、役人の増加や新行政部門創設など、次第に行政権が大きくなり、結果として、法の執行機関である行政府が、国の基本政策の決定・実施における中心的な役割を担う現象

政党国家現象

国民と議会の媒介組織である政党が発達し、国家意思の形成において政党が事実上の主導的役割を演じることです。議会と政府の関係が伝統的でしたが、今は政府・与党と野党の対抗関係へと変化しています。分かりやすくいうと、内閣総理大臣(行政のトップ)は国会(立法府)が指名するのですが、現実的には、総理は与党が選ぶ形になり、結果として、行政も立法も与党が主導する形になるわけです。これが政党国家現象です。

司法国家現象

裁判所による違憲審査制が導入され、司法権が議会、政府の活動をコントロールするという現象です。法治国家として裁判所が非常に重要な役割を果たすようになったことのあらわれになります。

<<国民主権(憲法1条) | 天皇(国事行為・皇室の財産)>>

労働基本権(憲法28条)

憲法第28条
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

憲法28条で、労働基本権を保障しているのですが、これは、国民一般としての権利ではなく、勤労者の立場にある者だけに保証される権利です。

そして、労働者が使用者と対等な立場で労働条件を決定するために、下記3つの権利が認められています。

  1. 団結権:労働組合を結成する権利
  2. 団体交渉権:労働組合と使用者の間で勤務条件などを交渉する権利
  3. 団体行動権:ストライキなどをする権利

これらの3つ併せて労働基本権と言います。

そして、この28条(労働基本権)の規定は、私人にも直接適用されます。例えば、労働者がストライキをした場合、労働者は働く義務を負っているにも関わらず、働いていないので、債務不履行により、使用者から損害賠償請求される可能性があります。しかし、この28条の労働基本権を直接使って、団体行動権を主張できるので、債務不履行に問われる心配もないわけです。

労働基本権に関する重要判例

  1. 「憲法第28条の労働基本権の保障は公務員に対して及ぶが、公務員の地位の特殊性職務の公共性から、一般企業とは異なる制約を受ける。」として、公務員の争議行為は国民の利益に重大な影響を及ぼすので、規制されてもやむを得ず、国家公務員法第110条第1項第17号(あおり行為等の罪)の規定は憲法に違反しない。(最大判昭48.4.25:全農林警職法事件

<<教育を受ける権利(憲法26条) | 国民主権(憲法1条)>>

職業選択の自由(憲法22条)消極目的規制と積極目的規制

憲法第22条
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

職業選択の自由とは、「自己が従事する職業を決定する自由」だけでなく、「選択した職業を遂行する自由」すなわち営業の自由も含まれます。選択した職業を遂行する自由を保障しなければ、選択の自由が無意味になるからです。

消極目的規制と積極目的規制

職業選択の自由、営業の自由といっても、誰でも医者やパイロットになれるわけではないように、公共の福祉による規制を受けます。つまり、誰でも医師になれたり、パイロットになれたら、人が死亡するリスクが高くなるので、国の法律によって一定の制限を加えることは許されるということです。

そして、この制限には、規制目的に応じて、2つの規制があります。

消極目的規制

消極目的規制とは、国民の生命や健康に対する危険を防止・除去・緩和するために課せられる規制です。分かりやすくいえば、国民の命や健康を守るために必要な規制です。

例えば、医師になるためには、医師免許が必要です。この医師免許は国民の命を守るために必要な規制と言えます。

規制については、最小限の規制で目的を達成させるように努める必要があります。

そのため、規制の審査基準はおのずと厳しくなります。(裁判所のチェックは厳しい)

積極目的規制

積極目的規制とは、福祉国家の理念に基づいて、経済の調和のとれた発展を確保し、特に社会的・経済的弱者を保護するためになされる規制です。

例えば、電気・ガス・鉄道・バス事業の特許制です。これらの内容は、日常生活に直結することで、誰でも営業できるようにして値段が上がってしまうと経済的弱者が困ってしまいます。そのため特許制にして、事業参入に一定の規制をかけているわけです。

社会的・経済的弱者のための規制ということは、社会的・経済的弱者を救うための政策とも言えます。そのため、積極目的規制については、審査基準は緩いです。(裁判所のチェックは緩い)

そのため、著しく不合理でない限り合憲となります。

職業選択の自由に関する重要判例

  • 小売市場を開設するためには、許可が必要であり、その許可基準に「小売市場間に700mの距離制限」を設けていました。つまり、開設しようとする小売市場の半径700mに別の小売市場があった場合、不許可になるわけです。そこで、この規制は、職業選択の自由(営業の自由)を制限するため違憲ではないかと争われた。
    この点について最高裁は、「小売市場間の距離規制は、小売市場の乱設に伴う小売商相互間の過当競争によつて招来されるであろう小売商の共倒れから小売商を保護するためにとられた措置であると認められ、一般消費者の利益を犠牲にして、小売商に対し積極的に流通市場における独占的利益を付与するためのものでないことが明らかである」として、積極目的規制であることを示した。その上で、「上記距離規制の手段・態様においても、それが著しく不合理であることが明白であるとは認められない」として、小売市場の距離規制は憲法22条1項に違反しないとした(合憲)。(最大判昭47.11.22:小売市場距離制限事件
  • Xは、新たに薬局を開設するために知事に許可申請を行ったが、知事は薬事法が定める距離制限に抵触するとして不許可処分をした。
    そのため、薬事法の距離制限は憲法22条に違反するのではないかと争われた。
    この点について最高裁は、「薬事法の距離制限の目的は国民の生命や健康上の危険を防止する」として消極的、警察的目的の規制であることを示した。その上で、その手段として距離制限を設けることは、必要かつ合理的な規制とはいえない。よって違憲であるとした。(最大判昭50.4.30:薬事法距離制限事件
  • 公衆浴場法2条に公衆浴場の開設するためには、他の公衆浴場から一定距離は離さなければならないという適性配置の制限(距離制限)がある。これについて、憲法22条に違反するのではないかと争われた。
    この点について最高裁は、「公衆浴場の配置の距離制限の規制の目的は、国民保健と衛生の確保という消極目的規制と、自宅に風呂を持たない国民にとって必要不可欠な厚生施設の確保(経営困難による転廃業を防止)という積極目的規制の2つの目的を有する」としました。そして、本規定は、目的を達成するための必要かつ、合理的な範囲内の手段として、公衆浴場法の距離制限の規定は合憲とされた。(最判平元.3.7:公衆浴場距離制限事件)
  • 酒類販売業を営もうとするXが、税務署長に対して、酒類販売業の免許申請をしたが、酒税法10条の「その経営基盤が薄弱であると認められる場合」に該当するものとして、この免許処分の拒否処分をしました。これに対してXは、酒類販売業の免許制を定めた酒税法10条10号の規定が憲法22条1項に違反するのではないかと争われた。
    これに対して最高裁は、「酒税法が酒類販売業につき免許制を採用したのは、納税義務者である酒類製造者に酒類の販売代金を確実に回収させ、最終的な担税者である消費者に対する税負担の円滑な転嫁を実現することを目的として、これを阻害するおそれのある酒類販売業者の酒類の流通過程への参入を抑制し、酒税の適正かつ確実な賦課徴収という重要な公共の利益を図ろうとしたもので、酒税の徴収のため酒類販売業免許制を存置させていたことが、立法府の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であるとまで断定することはできない」として、合憲と判断しました。(最判平4.12.15:酒類販売の免許制

<<居住・移転の自由、海外渡航の自由、国籍離脱の自由(憲法22条) | 生存権(憲法25条)>>

学問の自由(憲法23条)

憲法第23条
学問の自由は、これを保障する。

明治憲法の時代には学問の自由が国家権力によって侵害されていました。これを踏まえて日本国憲法では、学問の自由を条文に規定して保障しております。

学問の自由の内容

  1. 学問研究の自由
  2. 研究発表の自由
  3. 教授の自由

学問研究の自由

何を研究するかは自由である。ただし、核物質の研究やヒトの遺伝子操作の研究等、反倫理的な内容について一定の制限があると考えられています。

そして、日本では、「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」によって、罰則を設けて、一部の研究活動を規制しています。

研究発表の自由

研究の成果は発表されることによって初めて価値を持ち、発表できなければ無意味です。したがって、研究発表の自由も当然に認められます。

教授の自由

分かりやすく言えば「教師が教える自由」です。そして、ここでいう教授の自由は、大学における教授の自由を指し、小学校、中学校、高校において教師に教授の自由が認められるかが問題となります。この点については、旭川学力テスト事件の判例を参考にしてください。

大学の自治

学問は、大学で発展してきたことから、大学における学問研究の自主性確保のために、特に大学の自治が認められています。

大学の自治とは、①大学の人事②大学の施設・学生の管理といった大学の内部行政については、大学の自主的な決定に任せ国による干渉は許されないということです。

そして、大学の自治に関する「東大ポポロ事件」の判例が重要なので、下記で確認しておきましょう。

学問の自由に関する重要判例

  • 文部省の指示によって全国の中学2年、3年生を対象に一斉学力調査(学力テスト)が行われた。これに反対する教師が、学力テストの反対運動を行い、この行為が「教授の自由」として、保障されているかが争われた。
    この点について最高裁は「①小中高校においても、一定の範囲における教授の自由が保障されるべき」としつつも「②教育の機会均等をはかる上からも全国的に一定の水準を確保すべき強い要請があること等を考慮すると、小中高校(普通教育)における教師に完全な教授の自由を認めることは、とうてい許されない」とした。(最大判昭51.5.21:旭川学力テスト事件
  • 東京大学の学生団体「ポポロ劇団」が松川事件を題材とする演劇を行っていた。この松川事件とは、国鉄の労働組合が、国鉄への反発として、機関車を脱線させた事件で、社会的な事件と言えます。このようなテーマを題材として演劇を行っているため、警察は、大学の正式な許可を得て大学の教室内で客としてみていた。この演劇を発表している際、観客の中に私服警官がいるのを学生が発見し、学生が警官の身柄を拘束し、警察手帳を奪いました。学生は、大学の自治を主張して争われた。これに対して最高裁は、「演劇発表会が学問研究のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動であり、かつ公開の集会またはこれに準じるものであつて、大学の学問の自由と自治は、これを享受しない」として、集会に警察官が立ち入ったことは、「大学の学問の自由」と「大学の自治」を侵害する行為ではないとしました。(最大判昭38.5.22:東大ポポロ事件

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