民法のテキスト

贈与

贈与とは?

贈与とは、贈与者(あげる方)が、受贈者(もらう方)に対して、無料でプレゼントをすることを言い、受贈者が受諾をすること(贈与契約)によって、贈与の効力が生じます(民法549条)。

書面によらない贈与

贈与契約は、口頭(書面によらない贈与)でも有効に成立するのですが、書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができます(民法550条本文)。

ただし、履行の終わった部分については、書面によらない贈与であっても解除できません(民法550条ただし書)。

※「履行が終わった」とは、例えば、受贈者に目的物を引渡しをしたり、受贈者に移転登記をしたりした場合です。

贈与の効力

贈与契約の目的物が「」である場合、贈与者は、贈与の目的物を特定した時の状態で引き渡す義務が生じます。

贈与契約の目的物が「権利」である場合、贈与者は、贈与の目的である権利を移転する義務が生じます(民法551条2項)。

ただし、贈与契約で、上記とは異なる状態での引渡しや移転を約束した場合、その約束に従います。そのためその約束に従わない「物や権利」を「引渡し・移転」した場合、契約不適合責任を負うこととなります。

定期贈与

「定期贈与」とは、一定の時期ごとに無償で財産を与えることを言います。例えば、「毎月2万円、おこずかいをあげる」というのは定期贈与です。

そして、定期贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失います(民法552条)。つまり、

負担付贈与

「負担付贈与」とは、無償でプレゼントする代わりに、受贈者が一定の負担を負う場合の贈与を言います。

例えば、「介護をしてくれたら、この土地を贈与する」という贈与契約は負担付贈与契約です。

負担付き贈与契約は、双務契約に関する規定(同時履行の抗弁権や危険負担)を準用します(民法553条)。

そして、負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任(契約不適合責任)を負います(民法551条2項)。

また、負担付贈与において、受贈者が負担を履行しない場合、贈与者は贈与契約を解除することができます(最判昭53.2.17)。

死因贈与

死因贈与とは、贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与を言い、例えば、贈与者と受贈者の間で、「贈与者が死亡したら、甲土地を受贈者に贈与する」という贈与契約です。

 

死因贈与については、遺贈と似ているので、遺贈に関する規定を準用します(民法554条)。

死因贈与と遺贈の違い

死因贈与はあくまで「贈与」なので、贈与者と受贈者の合意によって成立します。

一方、似たような制度で「遺贈」があります。遺贈は、「遺言」によって財産を与えることを言い、遺言者の単独行為によって行います。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

民法テキストの目次

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参考条文

(贈与)
第549条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

(書面によらない贈与の解除)
第550条 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

(贈与者の引渡義務等)
第551条 贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する。
2 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。

(定期贈与)
第552条 定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。

(負担付贈与)
第553条 負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。

(死因贈与)
第554条 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

契約解除

契約解除とは?

契約をすると、その契約に従って、義務を果たさないといけません。そして、契約解除することで、この義務から解放し、損害を被らないようにすることが目的です。

催告による解除

AB間の契約で、Aが解除する場合を考えます。

Bがその債務を履行しない場合、原則、AがBに対して「相当の期間を定めてその履行の催告」をし、その期間内にBが債務を履行しないときは、Aは、契約の解除をすることができます(民法541条本文)。

上記の通り、債務者の債務不履行は要件となっていません

ただし、例外として、上記相当期間を経過した時における債務不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき(Bの債務不履行が軽微のとき)は、Aは解除ができません(民法541条ただし書)。

つまり、債務不履行があると、債権者Aは原則として解除ができるのですが、債務者Bの不履行が軽微と主張立証されれば、解除できないということです。

催告によらない解除(無催告解除)

下記のいずれかに該当する場合には、債権者は、上記催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができます(民法542条)。

  1. 債務の全部の履行が不能であるとき。
  2. 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
  3. 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
  4. 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
  5. 1~4以外に、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。

各具体例については個別指導で解説します。

解除権の行使の仕方

解除は、当事者の一方が解除の意思表をすることで行います(民法540条1項)。

もし、当事者の一方が数人いる場合には、契約の解除は、その全員からその全員に対して行う必要があります(民法544条1項)。

例えば、「債権者がA・B」、「債務者がCとD」の場合で、AとBから解除をする場合、AとBが共同して、CとDの双方に解除の意思表示をする必要があります。

逆も同じです。

解除の効果

当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、原状回復義務を負います(民法545条1項本文)。

ただし、第三者がいる場合、第三者の権利を害することはできません(民法545条1項ただし書)。

具体例は個別指導で解説します。

上記原状回復義務を履行する際、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければなりません(民法545条2項)。

上記原状回復義務を履行する際、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければなりません(民法545条3項)。

解除権の行使したとしても、損害があれば、損害賠償請求は行えます(民法545条4項)。つまり、契約解除も損害賠償請求も行えます。

理解学習について

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参考条文

(解除権の行使)
第540条 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
2 前項の意思表示は、撤回することができない。

(催告による解除)
第541条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

(催告によらない解除)
第542条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
2 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
一 債務の一部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

(債権者の責めに帰すべき事由による場合)
第543条 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。

(解除権の不可分性)
第544条 当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
2 前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。

(解除の効果)
第545条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3 第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
4 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

相殺

相殺とは?

相殺とは、2人が互いに同種の債権・債務を持っている場合、その債権債務を消滅させること(帳消しにすること)です(民法505条1項)。

そして、相殺は一方的な意思表示によって行うことができます。

自働債権と受働債権

AがBに対して「金銭債権X」を有し、逆に、
BがAに対して「金銭債権Y」を有していた。

ここで、Aから相殺を主張する場合、相殺を主張する側Aの有する金銭債権Xを「自働債権」と呼び
相殺を主張される側Bの有する債権を「受働債権」と呼びます。

相殺ができる要件(相殺適状)

相殺を主張するためには、下記4つの要件を全て満たす必要があります。

  1. お互いが相手方に対して債権を持っている(505条1項本文)
    →例)AがBに対して債権を有し、逆にBもAに対して債権を有している
  2. お互いが有する債権が同種の目的である(505条1項本文)
    →例)AとB、それぞが相手方に有する債権がいずれも金銭債権である
  3. 両債権が弁済期にある(505条1項本文)
    →原則、お互いの債権が弁済期でないといけないが、自働債権(相殺を主張する者が有する債権)が弁済期であれば、受働債権は弁済期が到来していなくてもよい
  4. 債務の性質上相殺が許されている(505条1項ただし書)
    →例)「同時履行の抗弁権がついている場合」や、「受働債権が人の生命又は侵害の侵害による損害賠償債権である場合」等は、相殺が禁止されているため、相殺できません。

ここはしっかり理解した方が良いので、個別指導で具体例を出しながら解説いたします。

相殺禁止の特約をした場合

当事者が相殺を禁止する特約をした場合、第三者が相殺禁止特約を知り(悪意)、又は重大な過失によって知らなかったとき(重過失)に限り、その第三者に対抗することができます=第三者がいても相殺できる(民法505条2項)。

具体例については個別指導で解説します。

相殺ができない場合

下記のいずれかに該当する場合、上記要件を満たしていても相殺をすることができません。

  1. 受働債権が悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権である場合(民法509条1号)
    →「悪意」とは、積極的な意思を持って行った不法行為を指します。
  2. 受働債権が、不法行為や債務不履行に基づく人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権である場合(民法509条2号)
  3. 受働債権が差押禁止の債権である場合(民法510条)
    →例)扶養請求権や賃金債権
  4. 受働債権が差押えられ、その後、反対債権を取得した場合(民法511条)

細かい具体例については個別指導で解説します。

相殺の方法

相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によって行います(民法506条1項前段)。

つまり、相手方の承諾なく、単独で相殺することができます。

また、相殺をする際、条件又は期限を付することができません(民法506条1項後段)。

相殺の効果

相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺適状となった時にさかのぼってその効力を生じます(民法506条2項)。

つまり、相殺適状後の遅延損害金は発生しません。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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参考条文

(相殺の要件等)
第505条 二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。

(相殺の方法及び効力)
第506条 相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。
2 前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。

(履行地の異なる債務の相殺)
第507条 相殺は、双方の債務の履行地が異なるときであっても、することができる。この場合において、相殺をする当事者は、相手方に対し、これによって生じた損害を賠償しなければならない。

(時効により消滅した債権を自働債権とする相殺)
第508条 時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。

(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第509条 次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)

(差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止)
第510条 債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。

(差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第511条 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。
2 前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。

弁済

弁済とは?

弁済とは、債務を履行することです。分かりやすく言えば義務を果たすことをです。弁済をすることで債務は消滅します(民法473条)。

例えば、100万円を借りたのであれば、「100万円を返済すること」が弁済であり、300万円の自動車を購入したのであれば「300万円を支払うこと」が弁済です。

弁済の提供方法(弁済の仕方)

「弁済の提供」とは、債務者が弁済を行うための必要な準備をして、債権者に協力を求めることを言います。

そして、「弁済の提供」の仕方は「現実の提供」と「口頭の提供」の2つがあります。

現実の提供

「現実の提供」とは、現実に弁済して債務を消滅させることです。上記事例でいうと、「現実に100万円債権者に渡すこと」「売主に300万円を支払うこと」です。

原則として、弁済の提供方法は「現実の提供」が必要です(民法493条本文)。

例外的に下記「口頭の提供」があります。

口頭の提供

「口頭の提供」とは、債権者に対して「現実の提供をするのに必要な準備が完了した旨」の通知をして、受領を催告することです。

口頭の提供は、下記2つのいずれかに該当する場合に行えます(民法493条ただし書)。

  1. 債権者があらかじめその受領を拒んでいるとき
  2. 債務の履行について債権者の行為を要するとき

口頭の提供も不要な場合

債務者が口頭の提供をしても、債権者が契約そのものの存在を否定するなど弁済を受領しない意思が明確と認められる場合には、債務者は口頭の提供をしなくても、債務不履行の責任を免れます(最判昭32.6.5)。

弁済の場所

弁済をすべき場所は、原則

  • 特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所
  • その他の弁済は債権者の現在の住所

で行います。

例外として、別段、弁済場所を決めたのであれば、その場所が弁済場所となります(民法484条本文)。

弁済の時間

法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができます(民法484条ただし書)。

弁済の費用

弁済の費用は、原則、債務者の負担です。もっとも、弁済費用ついて別段の定めをした場合は、その定めに従います。

ただし例外として、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする(民法485条)。

具体例は個別指導で解説します。

第三者弁済

原則として、第三者も債務を弁済することができます(民法474条1項)。

弁済をするについて正当な利益を有さない第三者による弁済

弁済をするについて正当な利益を有さない第三者」とは、取引に全く関係のない第三者です。

例えば、保証人は、取引に関係するので「正当な利益を有する第三者」ですが、債務者でない「保証人の親族」は「正当な利益を有さない第三者」となります。

そして、「弁済をするについて正当な利益を有さない第三者」は、原則として、債務者の意思に反して弁済をすることができません(民法474条2項本文)。

ただし例外として、「債務者の意思に反すること」を債権者が知らなかったときは、弁済できます(民法474条2項ただし書)。

さらに、「弁済をするについて正当な利益を有さない第三者」は、債権者の意思に反して弁済をすることができません(民法474条3項本文)。

ただし例外として、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合で、かつ、委託を受けて弁済することを債権者が知っていたときは、弁済できます(民法474条3項ただし書)。

第三者弁済ができない場合

上記民法474条1項~3項の内容に関わらず、下記いずれかに該当する場合、第三者弁済ができません(民法474条4項)。

  1. その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき
  2. 当事者が第三者の弁済を禁止されているとき
  3. 当事者が第三者の弁済を制限する旨の意思表示をしたとき

弁済による代位

第三者が弁済することで、「債権者の有していた一切の権利」が第三者に移転することを「弁済による代位」と言います。

例えば、債権者Aが、債務者Bに100万円を貸し、B所有の土地に抵当権を設定した。CがAに100万円を第三者弁済すると、債権者Aが有していた「100万円の貸金債権」と「抵当権」がCに移ります。

結果として、第三者が債務者Bに100万円を求償することができます。

受領権者としての外観を有する者に対する弁済

「受領権者としての外観を有する者」とは、例えば、「預金通帳と印鑑を持っていた人」「受取証書(本物・偽物を問わない)を持っていた人」等です。

「受領権者としての外観を有する者」に弁済をしてしまった場合、弁済した者が善意無過失の場合、弁済は有効となります(民法478条)。

弁済の充当

債務者が、債権者に対して複数の債務を持っていた場合に、弁済するとき、どの債務の弁済にあてるかを定めることが「弁済の充当」です。

そして「元本・費用(振込手数料等)・利息」がある債務の場合、どの順番で弁済に充てるのか?

当事者の合意がない場合、①費用→②利息→③元本の順で充当されます。

理解学習について

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参考条文

(弁済)
第473条 債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は、消滅する。

(第三者の弁済)
第474条 債務の弁済は、第三者もすることができる。
2 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。
3 前項に規定する第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。
4 前三項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。

(受領権者としての外観を有する者に対する弁済)
第478条 受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。

(受領権者以外の者に対する弁済)
第479条 前条の場合を除き、受領権者以外の者に対してした弁済は、債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ、その効力を有する。

(弁済の場所及び時間)
第484条 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
2 法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができる。

(弁済の費用)
第485条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

(元本、利息及び費用を支払うべき場合の充当)
第489条 債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合(債務者が数個の債務を負担する場合にあっては、同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担するときに限る。)において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。
2 前条の規定は、前項の場合において、費用、利息又は元本のいずれかの全てを消滅させるのに足りない給付をしたときについて準用する。

(弁済の提供の効果)
第492条 債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる。

(弁済の提供の方法)
第493条 弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。

債務引受

債務引受とは?

債務引受(さいむひきうけ)とは、債務をその同一性を失わせないで債務引受人に移転することをいいます。

債務引受には、「免責的債務引受」と「併存的債務引受(重畳的債務引受)」の2種類があります。

併存的債務引受

「併存的債務引受」は「重畳的債務引受(ちょうじょうてき さいむひきうけ)」とも言います。

併存的債務引受の効果

併存的債務引受の場合、引受人が債務者と同一の債務を連帯して負担することとなります(民法470条1項)。また、債務者も従前どおり債務を履行する責任があります。

例えば、債権者A、債務者Bがおり、債務者の債務について、第三者C(引受人という)が併存的債務引受をすると、引受人CもBと同一の債務を負い、BとCが連帯債務を負うことになります。

併存的債務引受の要件

併存的債務引受の要件として、下記3つのパターンがあり、いずれかに該当すれば成立します。

  1. 債権者・債務者・引受人の三者契約
  2. 引受人と債権者の契約(民法470条2項)
    ※債務者の意思に反していても構わない(大判大15.3.25)
  3. 引受人と債務者との契約(470条3項前段)

詳細は個別指導で解説します。

免責的債務引受

免責的債務引受の効果

免責的債務引受とは、債権者に負っている債務を第三者が債務者の代わりに引き受けることです。免責的債務引受がなされると、債務は旧債務者(債務者)から新債務者(引受人)に完全に移転するため、旧債務者の債務は免責されます(民法472条1項)。

免責的債務引受の要件

免責的債務引受の要件として、下記3つのパターンがあり、いずれかに該当すれば成立し、効力が生じます。

  1. 債権者・債務者・引受人の三者契約
  2. 「引受人と債権者の契約」(民法472条2項)かつ、「債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知」(民法472条3項)
  3. 「引受人と債務者との契約」かつ「債権者が引受人となる者に対して承諾」(472条3項前段)

詳細は個別指導で解説します。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

民法テキストの目次

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参考条文

(併存的債務引受の要件及び効果)
第470条 併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。
2 併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。
3 併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。
4 前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。

(併存的債務引受における引受人の抗弁等)
第471条 引受人は、併存的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
2 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(免責的債務引受の要件及び効果)
第472条 免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。
2 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
3 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。

(免責的債務引受における引受人の抗弁等)
第472条の2 引受人は、免責的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
2 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、免責的債務引受がなければこれらの権利の行使によって債務者がその債務を免れることができた限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(免責的債務引受における引受人の求償権)
第472条の3 免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しない。

債権譲渡

債権譲渡とは?

債権を譲渡することを「債権譲渡」と言います。

例えば、AがBに対して100万円の時計を売却したとします。すると、Aは「100万円の代金債権」を持ちます。この代金債権をAは第三者Cに譲渡(売却や贈与)することができます。

債権は自由に譲渡できる

債権譲渡は原則、自由に行えます(民法466条1項)。

譲渡できない債権

例外として、下記債権は譲渡できません。

  1. 債権の性質上譲渡を許さない債権
    例えば、自分の肖像画を描かせる債権
  2. 法律上譲渡が禁止された債権
    例えば、扶養請求権

譲渡禁止特約(譲渡制限)がある場合どうなるか?

「当事者が債権の譲渡を禁止したり、譲渡を制限する旨の意思表示(譲渡禁止特約)」をしたときであっても、債権の譲渡は、有効です(民法466条2項)。

とはいうものの、譲受人その他の第三者が譲渡制限の意思表示がされたことを知り(悪意)、又は重大な過失によって知らなかった(重過失)場合、
債務者は、悪意または重過失の譲受人に対して
その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって譲受人に対抗することができます(民法466条3項)。

しかし、債務者が、悪意または重過失の譲受人に対して債務を履行しない場合、譲受人が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、債務者は、譲受人からの履行請求を拒むことができず、悪意または重過失の譲受人に対して債務を履行しなければなりません。

ここはややこしいので、個別指導で細かく具体例を入れて解説をします。

譲渡禁止特約が付いた債権の差押え

「譲渡禁止特約が付いた債権」も差押えの対象となります。

債権譲渡の対抗要件

債務者に対する対抗要件

債権譲渡された場合、債権の譲受人が債務者に対して対抗するための要件は、下記1、2のいずれかです。

  1. 譲渡人が債務者に通知
  2. 債務者が承諾

※債権の譲渡は、現に発生していない債権の譲渡も含みます。

第三者に対する対抗要件

債権譲渡された場合、債権の譲受人が第三者(例えば、債権の二重譲渡の別の譲受人)に対して対抗するための要件は、下記1、2のいずれかです。

  1. 譲渡人が債務者に「確定日付のある証書」により通知
  2. 債務者が「確定日付のある証書」により承諾

※確定日付のある証書とは、例えば、内容証明郵便や公正証書等です。

債権の二重譲渡における優劣

債権の二重譲渡があった場合、第一譲受人と第二譲受人のどちらが優先するのか?

まず、上記の通り、第三者に対する対抗要件は「確定日付のある証書」による通知・承諾です。

この「通知の到達日」や「承諾日」の早い方が、優先します。

確定日付の早い方ではないので注意しましょう!

具体例は個別指導で解説します。

債権の二重譲渡で確定日付のある証書が同時に到達した場合

第一譲受人・第二譲受人は債務者に対してそれぞれ債権の全額を請求することができ、債務者は第一譲受人から請求を受けた際に第二譲受人がいることを理由に債務の弁済を拒むことはできません(最判55.1.11)。

理解学習について

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参考条文

(債権の譲渡性)
第466条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
4 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。

(債権の譲渡の対抗要件)
第467条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

連帯保証

連帯保証とは?(普通保証との違い)

連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯して保証債務を負うことを言います。ここは、普通保証人との違いを考えると分かりやすいです。

連帯保証に補充性・催告の抗弁権・検索の抗弁権はない

普通保証は、補充性・催告の抗弁権・検索の抗弁権があるのに対して、連帯保証は補充性・催告の抗弁権・検索の抗弁権がありません。

連帯保証に補充性がない

主たる債務者が債務を履行するか否かに関わらず、連帯保証人は履行の責任を負います。

連帯保証人に催告の抗弁権がない

主たる債務者から履行請求があったとき、連帯保証人は、「まず主たる債務者に対して請求してください!」と主張することができません。請求があれば、履行する義務を負います。

連帯保証人に検索の抗弁権がない

連帯保証人が「①主たる債務者に弁済する資力があること」と「②執行が容易であること」を証明したとしても、主たる債務者の財産から先に取り立てをさせることはできません。

連帯保証における絶対効と相対効

主たる債務者に生じた事由は、すべて連帯保証人にその効果が及びます(すべて絶対効)。

一方、連帯保証人に生じた事由は、原則、相対効ですが、「弁済、相殺、混同、更改」は絶対効となります。

細かい具体例等は個別指導で解説します。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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参考条文

(連帯債務者の一人との間の更改)
第438条 連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
(連帯債務者の一人による相殺等)
第439条 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(連帯債務者の一人との間の混同)
第440条 連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。

(相対的効力の原則)
第441条 第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。

(催告の抗弁)
第452条 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

(検索の抗弁)
第453条 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

(連帯保証の場合の特則)
第454条 保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。

(連帯保証人について生じた事由の効力)
第458条 第四百三十八条、第四百三十九条第一項、第四百四十条及び第四百四十一条の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する。

保証債務(保証の基本)

保証人とは?

保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う者を言います(民法446条1項)。

保証債務の成立

保証契約は、書面または電磁的記録(電子的な契約)でしなければ、無効となります(民法446条2項3項)。

保証債務の範囲

保証人が負う債務の範囲、「主たる債務」だけでなく「利息、違約金、損害賠償」等その債務に従たるすべてのものを含みます(民法447条1項)。

さらに、原状回復義務についても保証人は負います(最判昭40.6.30)。

保証債務と主たる債務の関係

保証人の負担が債務の目的又は態様が、主たる債務より重いときは、主たる債務の限度まで減らされます(民法448条1項)

具体例は個別指導で解説します。

また、主たる債務の目的又は態様が、保証契約の締結後に加重された場合、当然には保証人の負担は加重されません(民法448条2項)。保証債務も加重するには、別途保証人と契約が必要です。

保証人の要件

債務者が保証人を立てる義務を負う場合、その保証人は、下記2つの要件を満たす必要があります(民法450条1項)。

  1. 行為能力者であること(制限行為能力者はダメ)
  2. 弁済をする資力を有すること

保証債務の性質(付従性・随伴性・補充性)

付従性(ふじゅうせい)

主たる債務の債務(主債務)が消滅すれば、当然に、保証債務も消滅します。この性質を「付従性」と言います。

随伴性(ずいはんせい)

主たる債務の債務(主債務)が、別の者に移転した時は、保証債務も移転します。この性質を「随伴性」と言います。

具体例は個別指導で解説します。

補充性

主たる債務者が債務を履行しないときにはじめて、保証人は履行の責任を負います。この性質を「補充性」と言います。

保証人の権利(催告の抗弁権と検索の抗弁権)

催告の抗弁権

主たる債務者から履行請求があったとき、保証人は、まず主たる債務者に対して請求してください!と主張できます。これを「催告の抗弁権」と言います。

検索の抗弁権

主たる債務者から履行請求があったとき、保証人が「①主たる債務者に弁済する資力があること」と「②執行が容易であること」を証明した場合、主たる債務者の財産から先に取り立てをさせることができます。これを「検索の抗弁権」と言います。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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参考条文

(保証人の責任等)
第446条 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

(保証債務の範囲)
第447条 保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
2 保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。

(保証人の負担と主たる債務の目的又は態様)
第448条 保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。
2 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。

(保証人の要件)
第450条 債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。
一 行為能力者であること。
二 弁済をする資力を有すること。
2 保証人が前項第二号に掲げる要件を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。
3 前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない。

(他の担保の供与)
第451条 債務者は、前条第一項各号に掲げる要件を具備する保証人を立てることができないときは、他の担保を供してこれに代えることができる。

(催告の抗弁)
第452条 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

(検索の抗弁)
第453条 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

連帯債務

連帯債務とは?

連帯債務とは、数人の債務者が同一の債務を負担し、一人が弁済すれば他の債務者の債務も消滅する債務関係を言います。

例えば、甲土地の売主Aが、買主Bと買主Cに対して1000万円で売却したとします。

この場合、「売主Aが債権者」「買主B・Cは連帯債務者」となります。

そして、買主Bが売主Aに対して1000万円を支払ったら、買主Cは売主Aに対して1円も支払う必要がなくなります。

連帯債務者に対する履行の請求

債権者は、その連帯債務者の「一人」に対し、全部又は一部の履行を請求することができます。

また、「全ての連帯債務者」に対し、「同時にまたは順次に全部又は一部の履行を請求することもできます(民法436条)。

連帯債務における絶対効と相対効

絶対効とは?相対効とは?

絶対効とは、連帯債務者はそれぞれ関連していると考え、連帯債務者の1人に生じた事由が他の債務者に影響することを言います。

相対効とは、連帯債務者はそれぞれ独立していると考え、連帯債務者の1人について生じた事由が他の債務者に影響しないことを言います。

連帯債務における絶対効

「相殺」は絶対効です。

例えば、甲土地の売主Aが、買主Bと買主Cに対して1000万円で売却したとします。そして、買主BがAに対して以前から1000万円を貸しており、返済してもらっていなかった。

ここで、買主Bが相殺を主張すると、買主Bの1000万円の債務は消滅します。

また、これが買主C(他の連帯債務者)にも影響し、買主Cの1000万円の債務も消滅します。

連帯債務における絶対効は「相殺、混同、更改」があります。

各具体例と細かい解説は個別指導で解説します。

連帯債務における相対効

「履行請求」は相対効です。

例えば、甲土地の売主Aが、買主Bと買主Cに対して1000万円で売却したとします。売主Aが買主Bに「1000万円を支払え!」と履行請求したとします。

すると、買主Bの消滅時効の完成が猶予されます。

しかし、履行請求を受けていない買主Cには上記履行請求は影響せず、買主Cの消滅時効の完成は猶予されません。

連帯債務における相対効は「履行請求、免除、時効の完成、債務の承認」等があります。

各具体例と細かい解説は個別指導で解説します。

連帯債務の求償関係

連帯債務者の一人が、弁済をすると、自己の負担部分を超えるかどうかに関わらず、負担割合に応じて求償権を有します(民法442条1項)。

例えば、例えば、甲土地の売主Aが、買主Bと買主Cに対して1000万円で売却したとします(負担部分を1:1とする=負担割合は1/2ずつ)。

ここで、買主Bが600万円を売主Aに対して弁済したら、半分の300万円を買主C(他の連帯債務者)に対して求償できます。

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(連帯債務者に対する履行の請求)
第436条 債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。

(連帯債務者の一人についての法律行為の無効等)
第437条 連帯債務者の一人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない。

(連帯債務者の一人との間の更改)
第438条 連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。

(連帯債務者の一人による相殺等)
第439条 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(連帯債務者の一人との間の混同)
第440条 連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。

(相対的効力の原則)
第441条 第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。

(連帯債務者間の求償権)
第442条 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。
2 前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。

詐害行為取消権(詐害行為取消請求)

詐害行為取消権(詐害行為取消請求)とは?

例えば、①AはBに100万円を貸した(Aは貸金債権を有している)。その後、弁済期が到来したにも関わらず、BはAに100万円を弁済しなかった。Bは唯一の財産である2000万円の甲地を有していたが、そのまま所有し続けると、Aに差し押さえられてしまうので、②Bは甲地をCに売却した。

この状況で、Aを債権者Bを債務者Cを受益者と呼びます。

※受益者は、「その行為によって利益を受けた者」という言い方もします。

ここで、Bが甲地を売却してしまったら、Aは甲地を差し押さえて、100万円を回収するという事ができなくなってしまいます。そこで、民法では、債務者BがAを害することを知ってした行為(Cへの売却)について、債権者Aは、取り消すことができるとしています。

これが「詐害行為取消権・詐害行為取消請求」です。

※「債務者BがAを害することを知ってした行為」を「詐害行為」と言います。

より細かい具体例については個別指導で解説します。

 

詐害行為取消請求ができる要件

詐害行為取消権を行使するためには、下記要件を全て満たす必要があります。

  1. 被保全債権が存在する
  2. 被保全債権は、詐害行為前の原因に基づいて発生
  3. 保全の必要性がある(債務者が無資力
  4. 財産権を目的としていた行為である
  5. 上記行為が債務者が債権者を害する行為である(詐害行為
  6. 債務者が詐害行為時、債権者を害することを知っていた(詐害意思
  7. 受益者や転得者が、債権者を害することを知っていたこと(悪意

詳細は個別指導で解説します。

詐害行為取消請求の方法

詐害行為取消請求は、必ず裁判によって行使しなければなりません(民法424条1項本文)。

裁判外で詐害行為取消請求はできません。

詐害行為取消請求の相手方(訴訟の被告)

原告は、債権者Aですが、被告は、受益者Cまたは転得者です(民法424条の7第1項)。

出訴期間

詐害行為取消請求に係る訴えは、①債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から2年を経過したとき、または②行為の時から10年を経過すると、訴えを提起することができなくなります(民法426条)。

詐害行為取消請求の範囲

債権者の詐害行為取消請求ができる範囲は、債務者がした行為(詐害行為)の目的が可分であるときは、債権者Aの有する被保全債権の額が限度です。

上記事例の通り、売却については可分ではないので、すべてを取消すことができます。

債権者への支払請求・引渡請求

債権者は、詐害行為取消請求によって受益者又は転得者に対して財産の返還を請求する場合、

その返還請求が「金銭の支払又は動産の引渡し」を求めるものであるときは、

受益者に対しては「その支払又は引渡し」を求めることができ、
転得者に対しては「その引渡し」を、自己に対してすることを求めることができます(民法424条の9)。

そして、受益者又は転得者は、債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払又は引渡しをしなくてもよいです。

理解学習について

行政書士試験に合格するためには、膨大な量の知識を頭に入れる必要があります。そのためには「丸暗記で勉強」しても、覚えて忘れての繰り返しで、一向に実力が上がりません。そのため、着実に実力を上げるためには、理解をしながら勉強することが重要です。 もちろんすべてを理解することは難しいですが、理解すべき部分は理解していけば、膨大な量の知識を頭に入れることが可能です。 個別指導では、理解すべき部分を理解していただくために、「具体例や理由」などを入れて、詳しく分かりやすく解説しています。 また、丸暗記でよいものは、語呂合わせを使ったりして、効率的に覚えていただけるようにしています! 令和4年の合格を目指しているのであれば、是非、個別指導で一緒に勉強をしましょう! 個別指導の概要はこちら>>

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(詐害行為取消請求)
第424条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
3 債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
4 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。

(詐害行為の取消しの範囲)
第424条の8 債権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができる。
2 債権者が第四百二十四条の六第一項後段又は第二項後段の規定により価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

(債権者への支払又は引渡し)
第424条の9 債権者は、第四百二十四条の六第一項前段又は第二項前段の規定により受益者又は転得者に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が金銭の支払又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができる。この場合において、受益者又は転得者は、債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払又は引渡しをすることを要しない。
2 債権者が第四百二十四条の六第一項後段又は第二項後段の規定により受益者又は転得者に対して価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

第426条 詐害行為取消請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から二年を経過したときは、提起することができない。行為の時から十年を経過したときも、同様とする。