令和6年度(2024年度)過去問

令和6年・2024|問34|民法

不法行為に基づく損害賠償に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
※ 試験センターより「正答肢が二つある」として、全員が正解扱い。よって本問は没問となりました。なので、妥当なものを2つ選びなさい

  1. 不法行為による生命侵害の場合において、被害者の相続人であれば、常に近親者固有の慰謝料請求権が認められる。
  2. 法人が名誉毀損を受けた場合、法人には感情がないので、財産的損害を除き、非財産的損害の賠償は認められない。
  3. 交通事故による被害者が、いわゆる個人会社の唯一の代表取締役であり、被害者には当該会社の機関としての代替性がなく、被害者と当該会社とが経済的に一体をなす等の事情の下では、当該会社は、加害者に対し、被害者の負傷のため営業利益を逸失したことによる賠償を請求することができる。
  4. 不法行為により身体傷害を受けた被害者は、後遺症が残ったため、労働能力の全部または一部の喪失により将来において取得すべき利益を喪失した場合には、その損害について定期金ではなく、一時金による一括賠償しか求めることができない。
  5. 交通事故の被害者が後遺症により労働能力の一部を喪失した場合に、その後に被害者が別原因で死亡したとしても、交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、死亡の事実は逸失利益に関する就労可能期間の認定において考慮されない。

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【答え】:3、5が妥当
【解説】
1.不法行為による生命侵害の場合において、被害者の相続人であれば、常に近親者固有の慰謝料請求権が認められる。

1・・・妥当でない

民法711条は、他人の生命を侵害した者は、被害者の父母・配偶者・子に対して、財産的損害がなくても慰謝料を支払う義務があると定めています(=これが「近親者固有の慰謝料請求権」)。

しかし、それ以外の相続人(たとえば兄弟姉妹など)については、自動的にこの権利が認められるわけではありません

判例(最判昭和33年8月5日)では、711条に書かれていない人でも、被害者と特に強い身分関係があり、深刻な精神的苦痛を受けた場合には、類推適用によって慰謝料請求が認められるとしています。

つまり、「相続人である」という理由だけで、常に固有の慰謝料請求権が認められるわけではないです。

2.法人が名誉毀損を受けた場合、法人には感情がないので、財産的損害を除き、非財産的損害の賠償は認められない。

2・・・妥当でない

たしかに法人には人間のような「感情」はありませんが、法人にも「名誉」はあります。名誉とは、その者が社会から受ける客観的評価のことであり、これは個人だけでなく法人にも認められます。したがって、法人が名誉毀損を受けた場合には、非財産的損害(無形の精神的損害)であっても、金銭で評価できる限り損害賠償の対象になります(最判昭和39年1月28日)。つまり、「感情がないから非財産的損害の賠償は認められない」というのは誤り(妥当ではない)です。

3.交通事故による被害者が、いわゆる個人会社の唯一の代表取締役であり、被害者には当該会社の機関としての代替性がなく、被害者と当該会社とが経済的に一体をなす等の事情の下では、当該会社は、加害者に対し、被害者の負傷のため営業利益を逸失したことによる賠償を請求することができる。

3・・・妥当である

交通事故などで、個人会社の代表者が負傷した場合、その会社の営業がストップして利益を失うことがあります。

このとき、次のような条件がそろっていれば、会社自身が加害者に対して損害賠償を請求できます(最判昭和43年11月15日)。

  • 会社の代表者に代わりがいない(代替性がない)
  • 会社と代表者が経済的に一体関係にある(≒個人会社である)

つまり、事故で代表者が働けず会社の営業が止まり利益を失った場合、会社の損害として加害者に請求できるということです。

4.不法行為により身体傷害を受けた被害者は、後遺症が残ったため、労働能力の全部または一部の喪失により将来において取得すべき利益を喪失した場合には、その損害について定期金ではなく、一時金による一括賠償しか求めることができない。

4・・・妥当でない

被害者が後遺症により将来の収入(逸失利益)を失った場合、その損害は一括の一時金だけでなく、定期金による賠償も認められることがあります。

たとえば、最判令和2年7月9日では、交通事故により高次脳機能障害を負った被害者が、労働能力をすべて失い、長期間にわたって収入を得られないと見込まれる状況で、定期金による支払いが認められました。

つまり、事情によっては被害者側が定期金での賠償を求めることも可能であり、「一括しか求められない」というのは誤りです。

定期金とは?

一定の期間ごとに、決まった金額を継続して支払うお金のことです。
損害賠償の場面では、たとえば毎月○万円ずつ、あるいは年に1回○万円ずつ支払うというような形です。

5.交通事故の被害者が後遺症により労働能力の一部を喪失した場合に、その後に被害者が別原因で死亡したとしても、交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、死亡の事実は逸失利益に関する就労可能期間の認定において考慮されない。

5・・・妥当である

逸失利益とは、後遺障害などで本来得られたはずの収入が得られなくなることによる損害のことです。

この逸失利益を計算する際には、「本来どれだけ働けたか(就労可能期間)」が重要になります。

判例(最判平成8年4月25日)では、交通事故の後に、全く別の原因で被害者が死亡したとしても、次のような特段の事情がなければ、その死亡は逸失利益の計算に影響しないとしました。

  • 事故の時点で死亡の原因となる病気などがすでにあった
  • 近い将来に死亡することが客観的に予測できた

つまり、事故のあとにたまたま別の理由で亡くなった場合でも、事故当時にそうした事情がなければ、「本来の就労可能年齢(たとえば70歳)」まで働けたものとして逸失利益を計算する、ということです。

 


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問33|民法

組合に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1. 組合の業務の決定は、組合契約の定めるところにより、一人または数人の組合員に委任することができるが、第三者に委任することはできない。
  2. 組合の業務の執行は、組合契約の定めるところにより、一人または数人の組合員に委任することができるが、第三者に委任することはできない。
  3. 各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属し、各組合員は、いつでも組合財産の分割を請求することができる。
  4. 組合契約で組合の存続期間を定めた場合であるか、これを定めなかった場合であるかを問わず、各組合員は、いつでも脱退することができる。
  5. 組合契約の定めるところにより一人または数人の組合員に業務の決定および執行を委任した場合、その組合員は、正当な事由があるときに限り、他の組合員の一致によって解任することができる。

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【答え】:5
【解説】
1.組合の業務の決定は、組合契約の定めるところにより、一人または数人の組合員に委任することができるが、第三者に委任することはできない。

1・・・誤り

民法670条2項では、組合の業務の「決定」および「執行」は、組合契約の定めにより、一人または数人の組合員に限らず、第三者にも委任することができると定められています。
したがって、組合の業務の決定を第三者に委任することも可能です。

✅ つまり、組合の業務を誰に任せられるかは「組合契約次第」。組合員だけでなく、外部の第三者に任せることも法律上はOKです!
2.組合の業務の執行は、組合契約の定めるところにより、一人または数人の組合員に委任することができるが、第三者に委任することはできない。

2・・・誤り

民法670条2項により、組合の業務の「執行」についても、組合契約で定めれば、第三者に委任することが可能です。
したがって、「第三者に委任できない」とする本肢の記述は誤りです。

✅ つまり、業務の「決定」だけでなく「執行」も、組合契約の内容しだいで、第三者に委任することができます!
3.各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属し、各組合員は、いつでも組合財産の分割を請求することができる。

3・・・誤り

たしかに、組合財産は総組合員の共有に属する(民法668条)という点は正しいです。
しかし、「各組合員がいつでも分割を請求できる」というのは誤りです。

民法676条3項により、組合の清算前に組合財産の分割を請求することはできません
なぜなら、組合財産は組合の目的を達成するための共通財産であり、途中で自由に分割されてしまうと、組合の運営に支障が出るためです。

✅ つまり、組合財産の分割請求は「清算の段階」になってから。運営中は勝手に分けられません!
4.組合契約で組合の存続期間を定めた場合であるか、これを定めなかった場合であるかを問わず、各組合員は、いつでも脱退することができる。

4・・・誤り

「いつでも脱退することができる」というのは誤りです。
民法678条には、脱退が制限される場合が明確に定められています。

🔹 ①組合の存続期間を定めなかった場合(民法678条1項)

 原則、いつでも脱退できます。
ただし、組合に不利な時期には脱退できない※やむを得ない事由があるときは除く

🔹 ②組合の存続期間を定めた場合(民法678条2項)

 原則として、存続期間中の脱退はできません
ただし、やむを得ない事由があるときは脱退が認められます。

✅ つまり:脱退の自由は無制限ではありません!
状況によって「時期」や「理由」に制限があります!
5.組合契約の定めるところにより一人または数人の組合員に業務の決定および執行を委任した場合、その組合員は、正当な事由があるときに限り、他の組合員の一致によって解任することができる。

5・・・正しい

民法672条2項により、業務の決定および執行を委任された組合員は、正当な事由がある場合に限って、他の組合員全員の一致によって解任することができます
これは、業務を任されている組合員の地位を安定させ、軽率な解任によって組合運営が混乱することを防ぐためです。

また、委任された組合員自身も、正当な事由がなければ辞任できません(民法672条1項)。
したがって、「正当な事由があるときに限り解任できる」とする本肢の記述は正しいです。

✅ つまり、業務を任された組合員の地位は安易に動かせない。解任も辞任も「正当な事由」が必要です!

 


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問32|民法

A所有の動産甲(以下「甲」という)を、BがCに売却する契約(以下「本件契約」という)に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Bが、B自身を売主、Cを買主として本件契約を締結した場合であっても、契約は原則として有効であり、Bは、Aから甲の所有権を取得してCに移転する義務を負うが、本件契約成立の当初からAには甲を他に譲渡する意思のないことが明確であり、甲の所有権をCに移転することができない場合には、本件契約は実現不能な契約として無効である。
  2. Bが、B自身を売主、Cを買主として本件契約を締結した場合であっても、契約は原則として有効であり、Bは、Aから甲の所有権を取得してCに移転する義務を負うところ、本件契約後にBが死亡し、AがBを単独相続した場合においては、Cは当然に甲の所有権を取得する。
  3. Bが、B自身をAの代理人と偽って、Aを売主、Cを買主とする本件契約を締結し、Cに対して甲を現実に引き渡した場合、Cは即時取得により甲の所有権を取得する。
  4. Bが、B自身をAの代理人と偽って、Aを売主、Cを買主として本件契約を締結した場合、Bに本件契約の代理権がないことを知らなかったが、そのことについて過失があるCは、本件契約が無効となった場合であっても、Bに対して履行または損害賠償の請求をすることができない。
  5. Aが法人で、Bがその理事である場合、Aの定款に甲の売却に関しては理事会の承認が必要である旨の定めがあり、Bが、理事会の承認を得ないままにAを売主、Cを買主とする本件契約を締結したとき、Cが、その定款の定めを知っていたとしても、理事会の承認を得ていると過失なく信じていたときは、本件契約は有効である。

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【答え】:5
【解説】
1.Bが、B自身を売主、Cを買主として本件契約を締結した場合であっても、契約は原則として有効であり、Bは、Aから甲の所有権を取得してCに移転する義務を負うが、本件契約成立の当初からAには甲を他に譲渡する意思のないことが明確であり、甲の所有権をCに移転することができない場合には、本件契約は実現不能な契約として無効である。

1・・・妥当でない

本件契約は 有効 であり、「無効」とするのは妥当ではありません。

他人の物の売買は有効(民法561条)
民法561条では、他人の物を売買の目的とする契約も原則として有効とされており、売主はその目的物を取得して買主に引き渡す義務を負うとされています。
つまり、売主がその物の所有者でなくても、売買契約そのものは成立します。

原始的不能でも契約は有効(民法412条の2第2項)
契約締結時点ですでに履行が不能であっても(=原始的不能)、
契約は原則として無効にはなりません
履行不能により損害が発生した場合は、債務不履行責任として損害賠償請求が可能です。

判例(最判昭和25年10月26日)
目的物の真の所有者が、契約当初からその物を譲渡する意思がなくても、
売買契約は有効
とし、売主は買主に対して担保責任を負うと判示しています。

つまり、Aが甲を他人に譲渡する意思が最初からなかったとしても、BとCとの間で成立した売買契約は有効です。
BはAから甲を取得してCに移転する義務を負います。
したがって、「本件契約が無効である」とする記述は妥当でないです。

2.Bが、B自身を売主、Cを買主として本件契約を締結した場合であっても、契約は原則として有効であり、Bは、Aから甲の所有権を取得してCに移転する義務を負うところ、本件契約後にBが死亡し、AがBを単独相続した場合においては、Cは当然に甲の所有権を取得する。

2・・・妥当でない

Cは当然に甲の所有権を取得するわけではない。
したがって、「Cが当然に所有権を取得する」とする記述は妥当ではありません。

他人の物の売買は有効(民法561条)
まず前提として、BがAの所有物(甲)をCに売却した場合、
たとえBが甲の所有者でなくても、契約は有効であり、
BはAから甲を取得してCに移転する義務を負います。

売主の死亡と相続の効果
Bが死亡し、AがBを単独で相続した場合、AはBの売主としての地位(契約上の義務)を承継します。

しかし、ここで重要なのは、

A=所有者(=「権利者」)が、自身の所有権をCに移転する義務を当然に負うわけではない
という点です。

判例の考え方(最大判昭和49年9月4日)

この判例では次のように述べられています。

  • 所有者(A)は、相続によって売主の地位を承継しても、
    自己の意思で目的物の移転を拒否できる自由を持つ
  • 相続によってたまたま売主となったからといって、
    所有者が自動的に売買契約に拘束されることはない。
  • よって、特別な事情(信義則に反するような事情)がない限り
    所有者はその権利の移転を拒むことができる

上記をまとめると、
Bの死亡後、AがBを相続しても、AがCに甲を当然に引き渡さなければならないわけではありません。
Aが売主の地位を承継しても、自己の所有物を引き渡す義務までは負わないというのが判例の立場です。
したがって、本件の「Cが当然に所有権を取得する」とする記述は、誤り=妥当でないです。

3.Bが、B自身をAの代理人と偽って、Aを売主、Cを買主とする本件契約を締結し、Cに対して甲を現実に引き渡した場合、Cは即時取得により甲の所有権を取得する。

3・・・妥当でない

Cは即時取得により甲の所有権を取得するとはいえないので本肢妥当ではないです。

無権代理行為の原則(民法113条)

BはAの代理人と偽って契約を締結しているため、これは無権代理行為です。

民法113条1項により、

無権代理人の行為は、本人が追認しなければ無効であり、
本人(=A)に効果は帰属しません。

つまり、本件契約は原則として無効です。

即時取得(民法192条)の要件

即時取得とは、以下の条件をすべて満たしたときに成立します。

  1. 動産の取引行為により
  2. 平穏・公然に占有を開始し
  3. 善意・無過失であること

ここで問題になるのが「1.取引行為」の要件です。

「取引行為」としての有効性が必要

判例・通説によれば、
即時取得における「取引行為」とは、形式上・実体上の有効な法律行為を意味します。

つまり、契約自体が無効である場合には、「取引行為」に当たらず
即時取得の要件を欠くことになります。

したがって、無権代理による売買契約は、本人の追認がない限り無効である以上、
そのような行為に基づく引渡しによってCが即時取得することはできません。

よって、
Bが無権代理人として契約をした場合、その契約はAの追認がない限り無効であり、
Cへの引渡しがあっても、「取引行為」による占有開始とは認められません。

したがって、Cは即時取得によって所有権を取得することはできず、記述は妥当でないといえます。

4.Bが、B自身をAの代理人と偽って、Aを売主、Cを買主として本件契約を締結した場合、Bに本件契約の代理権がないことを知らなかったが、そのことについて過失があるCは、本件契約が無効となった場合であっても、Bに対して履行または損害賠償の請求をすることができない。

4・・・妥当でない

CはBに対して履行または損害賠償を請求することができる。
よって、「請求できない」とする設問の記述は妥当でない。

無権代理人の責任(民法117条1項)

無権代理人(=B)は、次のいずれかを満たさない限り、相手方(=C)に対して責任を負います。

  • 代理権の存在を証明した場合
  • 本人の追認を得た場合

これらを満たさない場合には、Cは、履行請求または損害賠償請求のいずれかを選べます(民法117条1項)。

例外規定(民法117条2項)

ただし、以下のケースでは、B(無権代理人)は責任を負いません

  • CがBに代理権がないことを知っていたとき
  • Cが過失により知らなかったとき(=過失による善意

つまり、原則として「Cに過失があるとき」は、Bに責任はないことになります。

ただし書の適用(民法117条2項2号ただし書)

しかし、今回のように、Bが自分に代理権がないことを知りつつ、Aの代理人であると偽って契約した場合にはどうなるでしょうか?

この場合は、民法117条2項2号ただし書が適用され、

Cに過失があっても、Bは責任を負う
とされます。

なぜなら、Bの行為は故意による「信頼侵害」といえるため、相手方であるCを保護する必要があるからです。

よって、

  • Bは自分に代理権がないことを知っていた(=故意に無権代理行為をした)
  • Cはそれを知らず、たとえ過失があったとしても、
  • Bは契約責任(履行または損害賠償)を負います。

したがって、「Cは請求できない」とする設問の記述は、誤り(妥当でない)です。

5.Aが法人で、Bがその理事である場合、Aの定款に甲の売却に関しては理事会の承認が必要である旨の定めがあり、Bが、理事会の承認を得ないままにAを売主、Cを買主とする本件契約を締結したとき、Cが、その定款の定めを知っていたとしても、理事会の承認を得ていると過失なく信じていたときは、本件契約は有効である。

5・・・妥当である

法人の代表理事の権限と定款の制限

一般に、法人の代表理事には、対外的に広範な代表権があります。
ただし、定款で内部的に代表権が制限されていることもあり、
本件のように「重要な財産(甲)の売却には理事会の承認が必要」とされることがあります。

表見代理の類推適用(民法110条の趣旨)

問題は、理事会の承認がない場合でも、契約は有効か?という点。

この点に関して、判例(最判昭和60年11月29日)は、

たとえ買主が、定款上の承認の要否を知っていたとしても、実際に承認があったと信じ、かつ、それを信じたことに正当な理由があれば契約は有効となる

と判示しています。

これは、民法110条(代理権の範囲を超えた表見代理)の趣旨を類推適用したものです。

本肢の場合の適用

本肢は、

  • Cは定款で「理事会承認が必要」と知っていた
  • しかし、理事会で承認されたと信じた
  • その信頼に過失がなかった(=信じたことに正当な理由がある)

という要件を満たしており、
判例に従えば、契約は有効に成立します。

したがって、
法人の内部規定である定款の制限があっても、
第三者(C)が承認があったと信じたことに正当な理由がある場合には、
表見代理の考え方が類推され、契約は有効になります。

よって、本肢は妥当です。

 


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問31|民法

Aは、Bから金銭を借り受け、Cが、Aの同貸金債務を保証した。次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. AがBに対し保証人を立てる義務を負う場合において、BがCを指名したときは、Cが弁済をする資力を有しなくなったときでも、Bは、Aに対し、Cに代えて資力を有する保証人を立てることを請求することはできない。
  2. AがBに対し保証人を立てる義務を負う場合において、BがCを指名するときは、Cは、行為能力者でなければならない。
  3. BのAに対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予および更新は、Cに対しても、その効力を生ずる。
  4. Cの保証債務は、Aの債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
  5. Cは、その保証債務についてのみ、違約金または損害賠償の額を約定することができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:2
【解説】
1.AがBに対し保証人を立てる義務を負う場合において、BがCを指名したときは、Cが弁済をする資力を有しなくなったときでも、Bは、Aに対し、Cに代えて資力を有する保証人を立てることを請求することはできない。

1・・・正しい

民法では、債務者が保証人を立てる義務を負っている場合、その保証人には一定の要件が求められます。

民法450条

第1項:保証人は、弁済の資力がある者で、かつ行為能力者でなければならない。

第2項:保証人が弁済前にこれらの要件を欠いた場合、債権者は債務者に対して、別の要件を満たす保証人を立てるよう請求できる。

第3項:ただし、保証人を債権者が指名した場合には、第1項・第2項の規定は適用されない

本肢

保証人Cは、債権者Bが指名しています。このような場合には、たとえCが後に資力を失っても、民法450条1項・2項の適用がないため、BはAに「新たな保証人を立てろ」と請求することはできません。

よって、本問の「Bは、Aに対し、Cに代えて資力を有する保証人を立てることを請求することはできない」という記述は正しいです。

2.AがBに対し保証人を立てる義務を負う場合において、BがCを指名するときは、Cは、行為能力者でなければならない。

2・・・誤り

保証人の条件について、民法は次のように定めています。

450条1項
債務者が保証人を立てる義務を負うとき、その保証人は
弁済する資力があること
行為能力者であること
が必要。

450条2項
保証人が途中でこれらの要件を欠いたときは、債権者は債務者に対し、要件を満たす保証人に代えるよう請求できる。

450条3項
しかし、保証人を債権者が指名した場合には、上記の1項・2項は適用されない。

本肢

保証人Cは、債権者Bが指名しています。このような場合には、民法450条1項・2項の適用がなくなります。よって、Cは行為能力者である必要はないし、資力がなくても構いません。

よって、本肢は「債権者BがCを指名した場合でも、Cは行為能力者でなければならない」としていますが、これは民法450条3項により誤りです。

3.BのAに対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予および更新は、Cに対しても、その効力を生ずる。

3・・・正しい

主たる債務者(この場合はA)に対する以下の行為によって、時効の完成猶予や更新が生じた場合、それは保証人(この場合はC)にも影響します(民法457条1項)。

たとえば…

  • 債権者BがAに請求した
  • Aが一部支払った
  • Aが債務を承認した

こうした場合、保証人Cに対しても、時効の猶予や更新が生じます。

よって、本肢の「主たる債務者に対する時効の猶予・更新が保証人にも効力を生ずる」という記述は、民法457条1項に基づき正しいです。

本肢は周辺知識も重要なので、個別指導で解説します。

4.Cの保証債務は、Aの債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。

4・・・正しい

保証人は、原則として「主たる債務(=Aの債務)」だけでなく、その債務に付随する利息・違約金・損害賠償なども一緒に負担することになります。

これは、民法447条1項に規定されています。

民法447条1項
保証債務は、主たる債務に付随する利息、違約金、損害賠償その他すべての従たるものをも包含する

つまり、Cは単にAの元本だけでなく、それにかかる遅延利息や損害賠償金なども支払う義務を負うのです。

ただし、これは特約がない限りの原則です。
契約で「元本だけを保証する」と明記されていれば、そのような限定も可能です。

5.Cは、その保証債務についてのみ、違約金または損害賠償の額を約定することができる。

5・・・正しい

この問題のポイントは、保証人と債権者との間で「違約金」や「損害賠償の金額」を決めておくことができるか?という点です。

民法では、保証人が自分の保証債務に関して、債権者との間で特別に違約金や損害賠償の額を定める(=約定する)ことができるとされています。

これは民法447条2項に規定されています。

民法447条2項
保証人は、その保証債務についてのみ、債権者と違約金または損害賠償の額をあらかじめ定めることができる

つまり、主たる債務者(A)との契約とは別に、保証人(C)と債権者(B)との間で、

  • 違約金はいくらにするか
  • 損害賠償はどういう場合に発生し、いくらにするか

といった条件を独自に取り決めることができるということです。

 


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問27|民法

失踪の宣告に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 不在者の生死が7年間明らかでない場合において、利害関係人の請求により家庭裁判所が失踪の宣告をしたときは、失踪の宣告を受けた者は、7年間の期間が満了した時に、死亡したものとみなされる。
  2. 失踪の宣告を受けた者が実際には生存しており、不法行為により身体的被害を受けていたとしても、失踪の宣告が取り消されなければ、損害賠償請求権は発生しない。
  3. 失踪の宣告の取消しは、必ず本人の請求によらなければならない。
  4. 失踪の宣告によって失踪者の財産を得た者は、失踪の宣告が取り消されたときは、その受けた利益の全部を返還しなければならない。
  5. 失踪の宣告によって失踪者の所有する甲土地を相続した者が、甲土地を第三者に売却した後に、失踪者の生存が判明し、この者の失踪の宣告が取り消された。この場合において、相続人が失踪者の生存について善意であったときは、第三者が悪意であっても、甲土地の売買契約による所有権移転の効果に影響しない。

>解答と解説はこちら


【答え】:1
【解説】
1.不在者の生死が7年間明らかでない場合において、利害関係人の請求により家庭裁判所が失踪の宣告をしたときは、失踪の宣告を受けた者は、7年間の期間が満了した時に、死亡したものとみなされる。

1・・・妥当である

不在者の生死が 7年間不明 な場合、利害関係人(家族など)は、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることができます(民法30条1項)。

失踪宣告には2種類あります。

普通失踪

長期間(7年)生死がわからない場合
7年が満了した時に死亡したとみなされます。

特別失踪

戦争や災害など、生死に関わる危険(危難)に遭遇した場合。
→ その危難が去った時に死亡とみなされます。

この問題は①の「普通失踪」に関するものであり、内容は正しいです(民法31条)。

2.失踪の宣告を受けた者が実際には生存しており、不法行為により身体的被害を受けていたとしても、失踪の宣告が取り消されなければ、損害賠償請求権は発生しない。

2・・・妥当でない

失踪の宣告を受けた者は、法律上「死亡したもの」とみなされます(民法31条)。
しかし、この「みなし死亡」は、相続など法律関係の清算を目的とした擬制にすぎず、失踪者の権利能力そのものを否定するものではありません。

したがって、失踪宣告後に本人が実際に生存していたことが判明し、たとえば第三者から不法行為による身体的被害を受けていた場合には、たとえ失踪の宣告がまだ取り消されていなかったとしても、本人は損害賠償請求権を有すると解されます。

つまり、損害賠償請求権の発生は、「失踪の宣告の有無」ではなく実際に生存しており、被害を受けた事実に基づいて判断されるべきです。

3.失踪の宣告の取消しは、必ず本人の請求によらなければならない。

3・・・妥当でない

失踪宣告の取消しは、必ずしも本人の請求に限られるものではなく、利害関係人も請求することができます(民法32条1項)。

つまり、たとえば失踪者の配偶者や相続人、関係する契約の相手方など、利害関係を有する第三者が、失踪者の生存または実際の死亡時期が失踪宣告によるみなし死亡時期と異なることを証明すれば、家庭裁判所に対して取消しの請求を行うことが可能です。

したがって、「必ず本人の請求によらなければならない」というのは誤りです。

4.失踪の宣告によって失踪者の財産を得た者は、失踪の宣告が取り消されたときは、その受けた利益の全部を返還しなければならない。

4・・・妥当でない

失踪宣告により財産を取得した者は、その後に失踪宣告が取り消されると、原則としてその財産を返還する義務があります(民法32条2項)。
しかし、返還義務は 「現に利益を受けている限度」 にとどまります。つまり、受けた利益のすべてを返還しなければならないわけではありません

この「現に利益を受けている限度」とは、たとえば受け取った財産がまだ手元にある、または形を変えて残っている場合などを指し、既に消費してしまっている部分には返還義務が生じないこともあります。

判例の例

  • 遊興費として消費した金銭:返還義務なし(大判昭和14年10月26日)
  • 生活費に充てた場合:現存利益ありとされ返還義務がある(大判昭和8年2月23日)
    → これは、「生活費は通常支出すべき費用であり、他の財産を節約できた」という理屈によるもの。

このように、返還義務は「形式的に受け取った財産全額」ではなく、「実質的に残っている利益の範囲」で判断されるため、「全部を返還しなければならない」という記述は妥当ではありません。

5.失踪の宣告によって失踪者の所有する甲土地を相続した者が、甲土地を第三者に売却した後に、失踪者の生存が判明し、この者の失踪の宣告が取り消された。この場合において、相続人が失踪者の生存について善意であったときは、第三者が悪意であっても、甲土地の売買契約による所有権移転の効果に影響しない。

5・・・妥当でない

民法32条1項では、失踪の宣告が取り消された場合であっても、その取消し前に善意でした行為の効力には影響しないとされています。
しかしこの「善意でした行為」として保護されるには、当事者双方(=失踪者から財産を得た者と、譲り受けた第三者)が善意であることが必要です。

したがって、

  • 相続人が失踪者の生存について善意でも、
  • 売却先の第三者が悪意(=失踪者が生きていることを知っていた)であれば、

その所有権移転の効果は否定される可能性があり、失踪者の本来の所有権が回復することになります。

このように、「第三者が悪意であっても効力に影響しない」とするのは誤りであり、両当事者が善意であることが保護の要件です(大判昭和13年2月7日)。

 


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問30|民法

Aが所有する甲建物(以下「甲」という)につき、Bのために抵当権が設定されて抵当権設定登記が行われた後、Cのために賃借権が設定され、Cは使用収益を開始した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. Bの抵当権設定登記後に設定されたCの賃借権はBに対して対抗することができないため、Bは、Cに対して、直ちに抵当権に基づく妨害排除請求として甲の明渡しを求めることができる。
  2. Bの抵当権が実行された場合において、買受人Dは、Cに対して、直ちに所有権に基づく妨害排除請求として甲の明渡しを求めることができる。
  3. AがCに対して有する賃料債権をEに譲渡し、その旨の債権譲渡通知が内容証明郵便によって行われた後、Bが抵当権に基づく物上代位権の行使として当該賃料債権に対して差押えを行った場合、当該賃料債権につきCがいまだEに弁済していないときは、Cは、Bの賃料支払請求を拒むことができない。
  4. Cのための賃借権の設定においてBの抵当権の実行を妨害する目的が認められ、Cの占有により甲の交換価値の実現が妨げられてBの優先弁済権の行使が困難となるような状態がある場合、Aにおいて抵当権に対する侵害が生じないように甲を適切に維持管理することが期待できるときであっても、Bは、Cに対して、抵当権に基づく妨害排除請求として甲の直接自己への明渡しを求めることができる。
  5. CがAの承諾を得て甲をFに転貸借した場合、Bは、特段の事情がない限り、CがFに対して有する転貸賃料債権につき、物上代位権を行使することができる。

>解答と解説はこちら


【答え】:3
【解説】
1.Bの抵当権設定登記後に設定されたCの賃借権はBに対して対抗することができないため、Bは、Cに対して、直ちに抵当権に基づく妨害排除請求として甲の明渡しを求めることができる。

1・・・妥当でない

事案の整理

  • Aが所有する甲建物に、Bのために抵当権が設定され、その抵当権設定登記も完了している。
  • その後、Cが甲建物の賃借権を取得し、使用収益(占有)を開始している。
  • このとき問題となるのは、「Cの賃借権は、Bに対抗できるか?」「Bは、Cに対して明渡しを求められるか?」という点です。

解説

たしかに、Cの賃借権は、Bの抵当権設定登記後に設定されたものなので、原則としてBに対抗できません(物権変動の対抗関係)。

しかし、B(抵当権者)が直ちにCに対して明渡しを請求できるわけではありません。

最判平成17年3月10日の趣旨

抵当権者が占有者に対して妨害排除請求(明渡し請求など)をするには、以下のような特段の事情が必要です。

判例の要点

抵当不動産を占有する者が、抵当権設定登記後に占有権原(この場合は賃借権)を取得している場合でも、

その占有が、

  • 競売手続を妨害する目的によるものであり、
  • 占有により抵当不動産の交換価値の実現(売却代金の確保)が妨げられ、
  • 優先弁済請求権の行使が困難となる

ような事情がある場合には、抵当権に基づく妨害排除請求が認められる。

また、

抵当不動産の所有者が、抵当権の価値を適切に維持できない場合には、抵当権者が直接、明渡しを求めることができる。

したがって、
Cの賃借権がBに対抗できないからといって、直ちに明渡しを請求できるわけではなく、
競売妨害や交換価値の毀損など、特段の事情がある場合に限り、明渡しなどの妨害排除請求が認められます。

よって、抵当権者が占有者(賃借人)に対して明渡しを請求するには、特段の事情が必要であり、「直ちに」明渡し請求できるわけではないから、本肢は妥当ではありません。

2.Bの抵当権が実行された場合において、買受人Dは、Cに対して、直ちに所有権に基づく妨害排除請求として甲の明渡しを求めることができる。

2・・・妥当でない

事案の整理

  • Aが所有する甲建物に、Bの抵当権が設定・登記された。
  • その後、Cが甲建物について賃借権を取得し、使用収益(占有)を開始。
  • そして、Bの抵当権が実行され、甲建物が競売にかけられ、Dが買い受けた。
  • このとき、D(買受人)がC(賃借人)に対して、直ちに明渡しを求められるか?が問われています。

解説

本件のCは、抵当権設定登記後に賃借権を取得した者であり、抵当権者には対抗できない立場にあります。

しかし、それにもかかわらず、Cには一定の保護期間が認められています。

民法395条1項1号(抜粋)

抵当不動産について、抵当権の実行としての売却(競売)により所有権を取得した者は、売却の時にその不動産に居住し、またはこれを営業のために使用していた者に対しては、買受けの時から6ヵ月を経過するまでは、その不動産の引渡しを請求することができない。

つまり、買受人Dは、たとえCの賃借権が対抗力を持たなかったとしても、Cが建物に居住していた、または営業のために使用していた場合には、買受けから6ヵ月間は明渡しを求めることができません。

したがって、民法395条1項1号により、Cが甲建物を居住または営業目的で使用している場合、Dは買受けの時から6ヵ月間は明渡し請求ができません。
したがって、「直ちに明渡し請求ができる」とする記述は妥当でありません。

3.AがCに対して有する賃料債権をEに譲渡し、その旨の債権譲渡通知が内容証明郵便によって行われた後、Bが抵当権に基づく物上代位権の行使として当該賃料債権に対して差押えを行った場合、当該賃料債権につきCがいまだEに弁済していないときは、Cは、Bの賃料支払請求を拒むことができない。

3・・・妥当である

債権譲渡の対抗要件が具備された後であっても、Cがまだ弁済していなければ、Bが差押えをすることで物上代位が可能であり、CはBへの支払を拒めない(最判平成10年1月30日)ので、本肢は妥当です。

事案の整理

  • Aが甲建物の所有者。
  • BはAから抵当権を設定され、抵当権設定登記も済んでいる。
  • その後、AはCに甲建物を賃貸し、Cは賃料を支払っている立場。
  • AはCに対する賃料債権を第三者Eに譲渡し、その通知も内容証明郵便でなされている(対抗要件あり)。
  • その後、Bが抵当権に基づく物上代位権の行使として、この賃料債権を差し押さえた。
  • このとき、Cがまだ賃料をEに支払っていない状況。

解説

物上代位とは?

抵当権は、本来「不動産などの特定物」に効力が及びますが、その目的物が売却・賃貸・滅失等されたことで生じる「金銭債権」にも、抵当権者が差押えをすることで効力が及ぶ制度です(これを「物上代位」といいます)。

※ 物上代位をするには「払渡し・引渡しの前に差押え」が必要。(民法304条1項)

問題のポイント

本問でのポイントは以下の通りです。

  • A→Eへの債権譲渡は、通知により対抗要件も備えられている。
  • にもかかわらず、Bはその後、差押えをして物上代位権を行使した。
  • CはまだEに賃料を支払っていない(=債権の履行が済んでいない)。

判例の立場(最判平成10年1月30日)

このような状況について、判例は以下のように述べています。

抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が具備された後であっても、

その債権が現実に履行される前である限り、差押えによって物上代位権を行使できる。

つまり、たとえ賃料債権がEに譲渡されていても、Cがまだ支払っていないなら、Bが差押えすることで「物上代位」が成立し、Bがその債権を取得するということです。

よって、Cは、すでに支払い済みであれば、当然Bに対抗できますが、支払っていないなら、Bの差押えによって支払先がBに切り替わるということになります。

したがって、Cは、Bによる支払請求を拒むことができません。

4.Cのための賃借権の設定においてBの抵当権の実行を妨害する目的が認められ、Cの占有により甲の交換価値の実現が妨げられてBの優先弁済権の行使が困難となるような状態がある場合、Aにおいて抵当権に対する侵害が生じないように甲を適切に維持管理することが期待できるときであっても、Bは、Cに対して、抵当権に基づく妨害排除請求として甲の直接自己への明渡しを求めることができる。

4・・・妥当でない

「Aが甲を適切に維持管理できる」ときには、抵当権者Bは、Cに対して自己への直接明渡しを求めることはできない(最判平成17年3月10日)ので、本肢は妥当ではありません。

事案の整理

  • A:甲建物の所有者
  • B:甲に対する抵当権者(登記済み)
  • C:Bの抵当権設定登記後に、Aから賃借権を設定され、甲を使用収益している

ここで、以下のような事実関係が加わっています。

  • Cの占有目的が抵当権の実行を妨害する意図による
  • Cの占有によって、甲の交換価値の実現が妨げられ、Bの優先弁済の行使が困難な状態

さらに、

  • Aが甲を適切に維持管理できると期待できる状況

このとき、BがCに対して直接、甲の明渡しを求めることができるか?が問題となっています。

本肢のキーワードは「抵当権者は、直接明渡しを請求できるのはどんなときか?」にあります。

この点についての最高裁判例(平成17年3月10日)は、次のように判断しています。

最判平成17年3月10日

抵当権者が占有者に対して「状態の排除(例:退去)」を求めることができる要件

以下のような事情があれば、「状態の排除請求(一般的な妨害排除請求)」が認められます。

  1. 占有者(C)が抵当権設定登記後に占有権原を得ている
  2. その設定が抵当権実行(競売手続)の妨害を目的としている
  3. 占有により抵当不動産の交換価値が失われ、抵当権の実現が困難になっている

ただし、この場合でも、抵当権者が直接「自己への明渡し」を求めることができるかは、また別の要件になります。

「自己への明渡し」を請求できる追加要件

抵当不動産の所有者(A)において、抵当権侵害が生じないよう適切に維持管理することが期待できないとき」に限り、抵当権者(B)はCに自己への直接明渡しを求めることができる

【本肢の状況との照合

本肢は、Aは「抵当権侵害が生じないよう甲を適切に維持管理できると期待できる」と記述されています。よって、上記要件を満たしていないです。

したがって、BはCに対して直接明渡しを求めることはできないです。

5.CがAの承諾を得て甲をFに転貸借した場合、Bは、特段の事情がない限り、CがFに対して有する転貸賃料債権につき、物上代位権を行使することができる。

5・・・妥当でない

転貸賃料債権は、抵当不動産の所有者(A)のものではなく、賃借人Cのものです。
そのため、賃借人は、抵当不動産に対して担保責任を負う立場にないため、抵当権者Bは物上代位権を行使できません(最判平成12年4月14日)。よって、本肢は妥当ではありません。

事案の整理

  • A:甲建物の所有者
  • B:甲に設定された抵当権者(登記済)
  • C:Bの抵当権設定登記後に甲建物の賃借人となり、使用収益を開始
  • Cは、Aの承諾を得て、甲建物をFに転貸し、Fから転貸賃料を受け取っている
  • このとき、BがCのFに対する転貸賃料債権に物上代位できるか?が問われています。

解説

物上代位の基本(民法372条・304条)

抵当権は、本来不動産などの特定物に対する担保権ですが、それが売却・賃貸・滅失等されたことにより生じた「金銭その他の物」についても、差押えを条件として担保の効力が及ぶ(物上代位)とされています。

民法372条
抵当権の効力は、その目的物の「売却、賃貸、滅失、損傷」によって債務者が受けるべき金銭その他の物にも及ぶ。

つまり、抵当不動産の賃料収入などは物上代位の対象となりえます。

では、転貸賃料債権は?

ここで問題となるのが、Cが受け取る「転貸賃料債権」です。

Cは、所有者Aから甲建物を借りているだけの第三者(賃借人)であり、抵当不動産の所有者ではありません。

判例の立場(最判平成12年4月14日)

この判例は、次のように明確に述べています。

 

抵当権者は、抵当不動産の賃借人が転貸によって取得した転貸賃料債権に対して、物上代位権を行使することはできない。

これは、賃借人が抵当不動産の担保責任を負う立場にないためである。

 

つまり、物上代位の対象となるのは、あくまで抵当不動産の所有者(またはそれに準ずる地位にある者)が得る代替財産であって、賃借人が転貸で得た賃料収入には及ばないという立場です。

よって、本肢は、「抵当権者Bは、賃借人Cが転借人Fに対して有する転貸賃料債権につき、物上代位権を行使することができる」となっているので、妥当ではありません。

 


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問29|民法

甲土地(以下「甲」という)を所有するAが死亡して、その子であるBおよびCについて相続が開始した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 遺産分割が終了していないにもかかわらず、甲につきBが虚偽の登記申請に基づいて単独所有名義で相続登記手続を行った上で、これをDに売却して所有権移転登記手続が行われた場合、Cは、Dに対して、Cの法定相続分に基づく持分権を登記なくして主張することができる。
  2. 遺産分割により甲をCが単独で相続することとなったが、Cが相続登記手続をしないうちに、Bが甲に関する自己の法定相続分に基づく持分権につき相続登記手続を行った上で、これをEに売却して持分権移転登記手続が行われた場合、Cは、Eに対して、Eの持分権が自己に帰属する旨を主張することができない。
  3. Aが甲をCに遺贈していたが、Cが所有権移転登記手続をしないうちに、Bが甲に関する自己の法定相続分に基づく持分権につき相続登記手続きを行った上で、これをFに売却して持分権移転登記手続が行われた場合、Cは、Fに対して、Fの持分権が自己に帰属する旨を主張することができない。
  4. Bが相続を放棄したため、甲はCが単独で相続することとなったが、Cが相続登記手続をしないうちに、Bの債権者であるGが甲に関するBの法定相続分に基づく持分権につき差押えを申し立てた場合、Cは、当該差押えの無効を主張することができない。
  5. Aが「甲をCに相続させる」旨の特定財産承継遺言を行っていたが、Cが相続登記手続をしないうちに、Bが甲に関するBの法定相続分に基づく持分権につき相続登記手続を行った上で、これをHに売却して持分権移転登記手続が行われた場合、民法の規定によれば、Cは、Hに対して、Hの持分権が自己に帰属する旨を主張することができない。

>解答と解説はこちら


【答え】:4
【解説】
1.遺産分割が終了していないにもかかわらず、甲につきBが虚偽の登記申請に基づいて単独所有名義で相続登記手続を行った上で、これをDに売却して所有権移転登記手続が行われた場合、Cは、Dに対して、Cの法定相続分に基づく持分権を登記なくして主張することができる。

1・・・妥当である

この問題の核心は、「共同相続された不動産について、1人の相続人が単独で処分し、それを第三者が取得した場合、他の相続人は登記なしで権利を主張できるかどうか」です。

判例:最判昭和38年2月22日

「共同相続人の一人が単独で所有権移転登記をしても、その者に共有持分を超える権利はなく、他の相続人は自己の持分については登記なくして第三者に対抗できる」

① 共同相続と法定相続分

相続人が複数いる場合、相続開始と同時に相続財産は法定相続分に従って準共有状態となります。遺産分割が終わっていない限り、BとCはそれぞれ法定相続分に応じた持分権を有しています。

② Bの単独登記の効果

Bが単独で相続登記をしたとしても、他の相続人Cの持分まで取得したことにはなりません。つまり、Bは「無権限でCの持分を処分した」にすぎないです。

③ Dの地位(民法177条の第三者にあたるか?)

Dは登記を受けたが、Cの持分についてはBが無権限で処分したものです。このような無権限の譲渡において、Dは民法177条の「第三者」にはあたらず、登記の有無にかかわらずCの持分を取得できません。よって、Cは登記がなくても、Dに自己の持分を対抗できます。

したがって、本肢は妥当です。

2.遺産分割により甲をCが単独で相続することとなったが、Cが相続登記手続をしないうちに、Bが甲に関する自己の法定相続分に基づく持分権につき相続登記手続を行った上で、これをEに売却して持分権移転登記手続が行われた場合、Cは、Eに対して、Eの持分権が自己に帰属する旨を主張することができない。

2・・・妥当である

設問の状況整理

  • Aが死亡し、その子BとCが相続人となった。
  • 遺産分割の結果、甲土地はCが単独で相続することに決まった。
  • しかし、Cはまだ相続登記をしていない段階で、
  • Bが「自分の法定相続分に基づく持分権」について登記をし、さらにその持分をEに売却・移転登記した。
  • このとき、Cは、Eの持分は本来Cに帰属するものであると主張できるか?

結論

Cは、Eに対して「その持分は自分のものである」と主張できないので、本肢は妥当です。

解説

① 遺産分割の効果

遺産分割が成立すると、相続開始時に遡って相続財産の権利が確定します(民法909条)。この場合、甲土地は相続開始時からCの単独所有となります。

② ただし対抗要件が必要(=登記)

ただし、その権利を第三者に主張するためには登記が必要です。

③ 民法899条の2第1項(令和元年改正で新設)

相続によって権利を取得した者は、その権利を第三者に対抗するには登記等が必要であります。つまり、Cが登記をしていない場合、登記を信じて取引したEに対して、「それは私のものだ」と主張しても、民法上対抗できません。

3.Aが甲をCに遺贈していたが、Cが所有権移転登記手続をしないうちに、Bが甲に関する自己の法定相続分に基づく持分権につき相続登記手続きを行った上で、これをFに売却して持分権移転登記手続が行われた場合、Cは、Fに対して、Fの持分権が自己に帰属する旨を主張することができない。

3・・・妥当である

設問の状況整理

  • Aが死亡し、相続人である子BとCに相続が開始。
  • Aは生前にCに甲土地を遺贈していた(遺言に基づく遺贈)。
  • しかし、Cはまだ遺贈による所有権移転登記をしていない段階で、
  • Bが「自己の法定相続分に基づく持分権」について相続登記を行い、その後、Fに売却・移転登記がされた。
  • このとき、Cは、Fに対して「その持分は自分のものだ」と主張できるか?

結論

Cは、Fに対してその持分が自己に帰属すると主張することができないです。よって、本肢は妥当です。

【解説】

① 遺贈による権利取得も「登記が対抗要件」

不動産の遺贈による取得も、「物権の取得」にあたり、民法177条の適用対象です。そして、民法177条では、不動産の物権変動は「登記がなければ第三者に対抗できない」と規定しています。

判例(最判昭和39年3月6日)

「不動産の遺贈による取得についても、登記がなければ第三者に対抗することはできない。」

つまり、遺言によってCに甲土地を遺贈する旨が定められていても、登記をしていない限り、その権利を第三者(F)に対抗することはできない。

② Bによる売却とFの地位

Bは本来、甲土地を相続していません(遺贈によりCが取得するため)。しかし、登記簿上は、Bが持分を取得したように見えます。そのため、その登記に基づいてFが取引を行った場合、Fは「民法177条の第三者」に該当し、保護されます。

よって、CはFに対して持分の帰属を主張できない。

4.Bが相続を放棄したため、甲はCが単独で相続することとなったが、Cが相続登記手続をしないうちに、Bの債権者であるGが甲に関するBの法定相続分に基づく持分権につき差押えを申し立てた場合、Cは、当該差押えの無効を主張することができない。

4・・・妥当でない

設問の状況整理

  • Aが死亡し、その子BとCが相続人。
  • Bは相続を放棄した。
  • 結果として、甲土地はCが単独で相続することになった。
  • しかし、Cがまだ登記をしていない段階で、
  • Bの債権者Gが、Bの法定相続分に基づいて差押えを申し立てた。
  • このとき、Cはその差押えが無効だと主張できるか?

結論

Cは、Gの差押えの無効を主張することができます。よって、本肢は妥当ではありません。

【解説】

① 相続放棄の効果(民法939条)

相続の放棄をした者は、その相続に関して初めから相続人とならなかったものとみなす

つまり、Bは最初から相続人でなかったのと同じ扱いをします。よって、甲土地についてBには何の権利も発生しません。

② 相続放棄の効力は「絶対的効力」

相続放棄は、相続開始時にさかのぼって効力を持ちます。

この効果は、登記の有無にかかわらず、誰に対しても主張できます(=絶対的効力)。

よって、Bの債権者Gが、あたかもBが相続したかのように差押えしても無効です。

最判昭和42年1月20日

相続の放棄をした相続人の債権者が、当該相続人も相続したものとして差押登記を行っても、その差押登記は無効である。
5.Aが「甲をCに相続させる」旨の特定財産承継遺言を行っていたが、Cが相続登記手続をしないうちに、Bが甲に関するBの法定相続分に基づく持分権につき相続登記手続を行った上で、これをHに売却して持分権移転登記手続が行われた場合、民法の規定によれば、Cは、Hに対して、Hの持分権が自己に帰属する旨を主張することができない。

5・・・妥当である

設問の状況整理

  • Aが死亡し、その子BおよびCが相続人となった。
  • Aは遺言により「甲土地をCに相続させる」と指定していた(特定財産承継遺言)。
  • しかし、Cはまだ相続登記をしていない。
  • この間に、Bが甲土地について「自己の法定相続分に基づく相続登記」を行い、さらにその持分をHに売却・移転登記した。
  • このとき、Cは、Hに対して「その持分は自分に帰属する」と主張できるか?

結論

Cは、Hに対して「その持分は自分のものである」と主張することができないので、本肢はだとうです。

【解説】

① 「相続させる」旨の遺言の効果

「相続させる」旨の特定財産承継遺言は、遺贈ではなく相続分の指定と解されます(最判平成3年4月19日)。この場合、CはAの死亡により当然に甲土地の所有権を取得します。しかし、その権利を第三者に主張するには登記が必要です。

■ ② 民法899条の2第1項(令和元年改正)

相続によって権利を取得した者は、その権利を第三者に対抗するには登記等の対抗要件が必要です。

そして、相続による取得であっても、「法定相続分を超える部分」については登記がなければ第三者に対抗できません。

今回のように、Cが甲全部を取得するというのはBの法定相続分を超えるため、このルールが適用されます。

③ Bの行動とHの地位

Bは登記簿上、法定相続分に基づく持分を取得したように見えます。Hはその登記に基づいて不動産を取得しているため、「民法177条の第三者」として保護されます。よって、Cは登記がない限り、Hに対して「その持分は自分のものだ」と主張することができないので、本肢は妥当です。

 


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問28|民法

無効および取消しに関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 贈与契約が無効であるにもかかわらず、既に贈与者の履行が完了している場合、受贈者は受け取った目的物を贈与者に返還しなければならず、それが滅失して返還できないときは、贈与契約が無効であることを知らなかったとしても、その目的物の現存利益の返還では足りない。
  2. 売買契約が無効であるにもかかわらず、既に当事者双方の債務の履行が完了している場合、売主は受け取った金銭を善意で費消していたとしても、その全額を返還しなければならない。
  3. 秘密証書遺言は、法が定める方式に欠けるものであるときは無効であるが、それが自筆証書による遺言の方式を具備しているときは、自筆証書遺言としてその効力を有する。
  4. 未成年者が親権者の同意を得ずに締結した契約について、未成年者本人が、制限行為能力を理由としてこれを取り消す場合、親権者の同意を得る必要はない。
  5. 取り消すことができる契約につき、取消権を有する当事者が、追認をすることができる時以後に、異議をとどめずにその履行を請求した場合、これにより同人は取消権を失う。

>解答と解説はこちら


【答え】:1
【解説】
1.贈与契約が無効であるにもかかわらず、既に贈与者の履行が完了している場合、受贈者は受け取った目的物を贈与者に返還しなければならず、それが滅失して返還できないときは、贈与契約が無効であることを知らなかったとしても、その目的物の現存利益の返還では足りない。

1・・・誤り

贈与契約のような無償行為が無効である場合、民法121条の2第2項が適用されます。

無効な無償行為に基づいて給付を受けた者が、その無効を知らなかった(善意)ときは、現に利益を受けている限度でのみ返還義務を負う。

つまり、受贈者が贈与契約が無効であることを知らず、善意であった場合には、目的物が滅失していたり、すでに使ってしまって手元に残っていなければ、現存利益がない部分についての返還義務は免れることになります。

この規定は、「善意の受贈者に過度な不利益を与えない」ことを目的としており、現に得ている利益の範囲で返還すれば足りるという立場です。
したがって、記述のように「現存利益の返還では足りない」とするのは誤りです。

2.売買契約が無効であるにもかかわらず、既に当事者双方の債務の履行が完了している場合、売主は受け取った金銭を善意で費消していたとしても、その全額を返還しなければならない。

2・・・正しい

売買契約は有償契約であるため、民法121条の2第1項が適用されます。

無効な法律行為に基づいて給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。

つまり、契約が無効であった場合、たとえ受領した者(ここでは売主)がその給付を善意で使ってしまっていたとしても、その金銭は全額返還しなければならないということになります。

これは、有償契約では当事者双方が対価的な給付を受けているため、不当利得が明確に生じるからであり、受領者が善意であったかどうかは返還義務の有無に影響しません。

なお、買主側が目的物をすでに消費または滅失させていた場合には、その価値に見合う金銭の支払義務(価額償還義務)を負うことになります。

3.秘密証書遺言は、法が定める方式に欠けるものであるときは無効であるが、それが自筆証書による遺言の方式を具備しているときは、自筆証書遺言としてその効力を有する。

3・・・正しい

秘密証書遺言は、民法970条に定められた厳格な方式に従わなければなりません。
たとえば封印や、公証人・証人の立会い、封紙への記載といった手続きが必要です。

しかし、仮に秘密証書遺言としての方式(民法970条)を欠いていた場合であっても、その遺言書が自筆証書遺言の方式(民法968条)を満たしていれば、自筆証書遺言として有効になります(民法971条)。

✅ 具体的には

  • 全文・日付・氏名を遺言者が自書している
  • 押印がある

といった自筆証書遺言としての基本的要件を満たしていれば秘密証書遺言としては無効でも、自筆証書遺言として有効になるというわけです。

これは、遺言者の最終意思をできる限り尊重し、形式的な不備だけで無効とするのを避けるための規定です。

4.未成年者が親権者の同意を得ずに締結した契約について、未成年者本人が、制限行為能力を理由としてこれを取り消す場合、親権者の同意を得る必要はない。

4・・・正しい

未成年者が、法定代理人(=親権者)の同意を得ないで契約をした場合、その契約は取り消すことができます(民法5条2項)。

この取消権は、法定代理人だけでなく、未成年者本人も行使できます(民法120条1項)。

そして、取り消すという行為自体は、もともとの契約をなかったことにする行為(=未成年者を保護するための制度)なので、取消しの際に親権者の同意は必要ありません。

つまり、「未成年者が同意を得ないで契約してしまった。でもそれを本人が取り消したい」っといった場合、本人の意思だけで有効に取り消せるのです。

5.取り消すことができる契約につき、取消権を有する当事者が、追認をすることができる時以後に、異議をとどめずにその履行を請求した場合、これにより同人は取消権を失う。

5・・・正しい

取り消すことができる契約は、追認されると、もはや取り消すことはできなくなります(民法122条)。

そして、追認には「明示の追認」だけでなく、行為や態度から黙示的に追認とみなされる場合(法定追認)もあります。
この「法定追認」にあたる行為の一つが、異議をとどめずに履行を請求することです(民法125条2号)。

民法125条
次に掲げる事実があったときは、取り消すことができる行為を追認したものとみなす。
(中略)
二 追認をすることができる時以後に、異議をとどめずにその履行を請求したとき。

つまり、取消権者が「この契約には取消事由がある」とわかっていながら、それに対して何の異議も出さずに履行を求めた場合、追認したものとみなされ取消権を失うことになります。

 


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問26|公文書管理法

公文書管理法 * について説明する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 (注) * 公文書等の管理に関する法律

  1. 公文書管理法に定める「行政文書」とは、同法の定める例外を除き、行政機関の職員が職務上作成しまたは取得した文書で、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして当該行政機関が保有しているものであるとされる。
  2. 公文書管理法は、行政機関の職員に対し、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き文書を作成しなければならないという文書作成義務を定め、違反した職員に対する罰則を定めている。
  3. 行政機関の職員が行政文書を作成・取得したときには、当該行政機関の長は、政令で定めるところにより、当該行政文書について分類し、名称を付するとともに、保存期間および保存期間の満了する日を設定しなければならない。
  4. 行政機関の長は、行政文書の管理が公文書管理法の規定に基づき適正に行われることを確保するため、行政文書の管理に関する定め(行政文書管理規則)を設けなければならない。
  5. 行政機関の長は、行政文書ファイル管理簿の記載状況その他の行政文書の管理の状況について、毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならない。

>解答と解説はこちら


【答え】:2
【解説】
1.公文書管理法に定める「行政文書」とは、同法の定める例外を除き、行政機関の職員が職務上作成しまたは取得した文書で、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして当該行政機関が保有しているものであるとされる。

1・・・正しい

本肢は正しいです。

公文書管理法第2条第4項では、「行政文書」について、以下のように定義されています。

行政機関の職員が職務上作成し、または取得した文書であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。

つまり、以下の3つの条件を満たすものが「行政文書」です。

  1. 職務上作成・取得した文書であること
  2. 組織として利用する目的で作成・取得されたこと
  3. 行政機関が実際に保有していること

ただし、行政文書に該当しないもの

次のようなものは、たとえ行政機関が保有していても「行政文書」には該当しません(除外されます)。

不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの

たとえば以下のような出版物です。

  • 官報
  • 白書
  • 新聞
  • 雑誌
  • 書籍 など

これらは広く一般に販売・配布されるため、行政文書には含まれません。

特定歴史公文書等

国立公文書館などで保存・管理される「特定歴史公文書等」は、既に歴史資料として扱われるものであり、現行の行政活動とは切り離されています。

歴史的・文化的・学術的資料として特別に管理されているもの

政令で定める研究所などの施設で、特別な管理下に置かれている資料は、行政文書にはあたらないとされています。

つまり、行政文書とは、行政機関の職員が職務上作成・取得し、組織的に用いるために保有している文書のことです。
ただし、一般向けに発行される出版物や、歴史的・文化的資料などは除かれます。

2.公文書管理法は、行政機関の職員に対し、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き文書を作成しなければならないという文書作成義務を定め、違反した職員に対する罰則を定めている。

2・・・誤り

本肢は誤りです。

確かに、公文書管理法では、行政機関の職員に対して文書作成義務があると定められています。しかし、違反した場合の罰則は定められていません

公文書管理法第4条第1項では、次のように定められています。

行政機関の職員は、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、
当該行政機関における意思決定の過程および事務・事業の実績を
合理的に跡付け、または検証することができるように文書を作成しなければならない。

つまり、単なる事務記録ではなく、意思決定や実績の記録性・検証可能性が求められているという点が重要です。

文書作成義務の例外(除外される事項)

以下のような事項については、文書作成義務の対象外となります。

  1. 法令の制定・改廃およびその経緯
  2. 閣議、省議、各種会議の決定または了解とその経緯
  3. 複数の行政機関による申合せや、基準の設定等とその経緯
  4. 個人・法人の権利義務に関する得喪とその経緯
  5. 職員の人事に関する事項

これらは政策形成や内部運用に関するもので、すべてについて文書を義務づけると行政運営に過度な負担となるため、除外されています。

3.行政機関の職員が行政文書を作成・取得したときには、当該行政機関の長は、政令で定めるところにより、当該行政文書について分類し、名称を付するとともに、保存期間および保存期間の満了する日を設定しなければならない。

3・・・正しい

この記述は正しいです。

公文書管理法第5条第1項では、行政文書の作成・取得後の適切な管理のため、行政機関の長に次のような義務が課されています。

行政機関の職員が行政文書を作成または取得したときは、当該行政機関の長は政令で定めるところにより、その行政文書について「分類」「名称の付与」「保存期間の設定」「保存期間の満了日の設定」をしなければならない。

この条文の趣旨は、行政文書を後から正確に探し出し、適切に保存・廃棄できるようにするためのルールを定めている点にあります。

4.行政機関の長は、行政文書の管理が公文書管理法の規定に基づき適正に行われることを確保するため、行政文書の管理に関する定め(行政文書管理規則)を設けなければならない。

4・・・正しい

公文書管理法第10条第1項では、行政機関の長に対して、行政文書の管理を適正に行うためのルール(=行政文書管理規則)を策定する義務が課されています。

公文書管理法10条1項
各行政機関の長は、行政文書の管理が
第4条(文書作成義務)から第9条(歴史的文書の移管等)までの規定に基づき
適正に行われることを確保するため、行政文書の管理に関する定め(行政文書管理規則)を設けなければならない。

よって、本肢は正しいです。

「行政文書管理規則」とは?

これは、各行政機関ごとに作成する内部ルールです。
つまり、公文書管理法の内容を踏まえて、各機関が独自に運用できるように整備したルールのことです。

なぜ必要なのか?

行政文書の管理は、公文書の信頼性・保存性・検証可能性を確保するために重要です。
そのため、各機関の実情に即した明確なルールづくりが求められます。

5.行政機関の長は、行政文書ファイル管理簿の記載状況その他の行政文書の管理の状況について、毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならない。

5・・・正しい

公文書管理法第9条第1項では、行政機関の長に対し、行政文書の管理状況に関する年次報告義務が定められています。

公文書管理法9条1項
各行政機関の長は、
行政文書ファイル管理簿の記載状況その他の行政文書の管理の状況について、
毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならない。

よって本肢は正しいです。

「行政文書ファイル管理簿」とは?

これは、各行政機関が保有する行政文書ファイルの一覧表のようなもので、

  • 文書の名称
  • 作成年月日
  • 保存期間
  • 管理部署

などの情報が記録されています。

これを適切に記載・更新しているかどうかが、行政文書管理の透明性を担保する鍵となります。

「その他の管理の状況」とは?

  • 文書の分類・保存・廃棄の手続きが適切に行われているか
  • 保存期間の設定が正確か
  • 移管や廃棄がルールに従って処理されているか

などを指します。

なぜ内閣総理大臣に報告?

報告先が「内閣総理大臣」であるのは、政府全体としての文書管理の統一性と透明性を保つためです。
内閣総理大臣はこの情報をもとに、行政文書管理の実態を把握し、必要に応じて改善措置をとることができます。

 


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問25|行政法

公立学校をめぐる裁判に関する次のア~オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.公立高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分または退学処分を行った場合、裁判所がその処分の適否を審査するにあたっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきである。

イ.教育委員会が、公立学校の教頭で勧奨退職に応じた者を校長に任命した上で同日退職を承認する処分をした場合において、当該処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するものといえないときは、校長としての退職手当の支出決定は財務会計法規上の義務に違反する違法なものにはあたらない。

ウ.公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、当該施設の管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障がない場合であっても、学校施設の目的および用途と当該使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により許可をしないこともできる。

エ.公立高等学校等の教職員に対し、卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の校長の職務命令がなされた場合において、当該職務命令への違反を理由とする懲戒処分の差止めを求める訴えについて、仮に懲戒処分が反復継続的・累積加重的にされる危険があるとしても、訴えの要件である「重大な損害を生ずるおそれ」があるとは認められない。

オ.市立学校教諭が同一市内の他の中学校教諭に転任される処分を受けた場合において、当該処分が客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に不利益を伴うものであるとしても、当該教諭には転任処分の取消しを求める訴えの利益が認められる余地はない。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ

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【答え】:3

【解説】
ア.公立高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分または退学処分を行った場合、裁判所がその処分の適否を審査するにあたっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきである。

ア・・・妥当でない

本肢は、いわゆる「エホバの証人剣道受講拒否事件」(最判平成8年3月8日)に関連するものです。

この事件では、宗教上の理由で剣道の授業を拒否した学生に対して、高等専門学校の校長が原級留置の処分を行ったことが争われました。

この判例で、最高裁は次のように述べています。

  • 学校教育における進級や退学といった処分は、教育上の専門的・技術的判断を含むものであり、校長の合理的な教育的裁量に委ねられるべきである。
  • よって、裁判所がこのような処分の適否を判断するにあたっては、校長と同じ立場に立って、処分すべきかどうかを再判断することは許されない
  • 処分が「全く事実の基礎を欠く」か、「社会観念上著しく妥当性を欠く」など、裁量権の逸脱や濫用が認められる場合に限って違法と判断すべきである。

つまり、裁判所は、校長の判断と「同じ目線」で処分の当否を再評価するわけではなく、裁量権が逸脱・濫用されたかどうかを限定的に審査するにとどまります。

したがって、本肢のように「裁判所が校長と同一の立場に立って判断すべき」とする見解は、判例に反しており妥当でないといえます。

イ.教育委員会が、公立学校の教頭で勧奨退職に応じた者を校長に任命した上で同日退職を承認する処分をした場合において、当該処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するものといえないときは、校長としての退職手当の支出決定は財務会計法規上の義務に違反する違法なものにはあたらない。

イ・・・妥当である

この選択肢は、最判平成4年12月15日の判例(いわゆる「1日校長事件」)に基づく正しい記述です。

事案の概要

ある地方公共団体で、公立学校の教頭が勧奨退職に応じるにあたり、退職前の1日だけ校長に昇任させ、そのうえで退職が承認されました。

これにより、教頭としてではなく校長としての退職手当が支給されることになりました。

この行為について、「形式的に昇格させることで退職手当を水増ししている」として、支出の違法性が争われました。

最高裁の判断

教頭を校長に昇格させ、同日に退職を承認するという処分があったとしても、それが著しく合理性を欠き、予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵があるとまではいえない限り、違法とはならない

よって、地方公共団体の長が校長としての退職手当を支給したとしても、その支出決定が財務会計法規上の義務に違反して違法なものとまではいえない

したがって、本肢は判例に即した正しい記述であり、妥当であると評価できます。

ポイント整理については個別指導で解説します。

ウ.公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、当該施設の管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障がない場合であっても、学校施設の目的および用途と当該使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により許可をしないこともできる。

ウ・・・妥当である

この設問は、最判平成18年2月7日の判例(いわゆる「学校施設使用不許可処分事件」)に基づいたものです。

判例の背景

公立小中学校の教職員で構成される職員団体が、教育研究集会の開催のために学校施設を使いたいと申請したところ、市教育委員会はこれを不許可としました。

この不許可処分の適法性が争われたのが本件です。

裁判所の判断

最高裁は次のような判断基準を示しました。

✅ 原則:学校施設の目的外使用の許可・不許可は、当該施設の管理者の裁量に委ねられる

✅ 許可を拒むことができる場合:学校教育上支障があると判断される場合には、許可をしないことができる

ここでいう「支障」には、以下のような内容も含まれます。

単なる物理的な支障だけでなく、「教育的配慮(例:児童・生徒に精神的悪影響が及ぶおそれ)」「将来の教育上の支障が明白に予見される場合」も含む。

そして本件では、市教育委員会が「妨害行動があるかもしれない」という理由で不許可にしましたが、そのおそれが具体的とはいえなかったこと他に考慮すべき重要な事実を十分に見ていなかったことなどから、最高裁はこの不許可処分を「裁量権の逸脱・濫用で違法」としました。

したがって、本肢の内容は妥当であり、正しいです。

エ.公立高等学校等の教職員に対し、卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の校長の職務命令がなされた場合において、当該職務命令への違反を理由とする懲戒処分の差止めを求める訴えについて、仮に懲戒処分が反復継続的・累積加重的にされる危険があるとしても、訴えの要件である「重大な損害を生ずるおそれ」があるとは認められない。

エ・・・妥当でない

この設問は、最判平成24年2月9日(国旗・国歌訴訟)に関するものです。

事案の概要
東京都立学校の教員が、校長の職務命令に反して卒業式で国歌斉唱の際に起立しなかったとして懲戒処分を受ける可能性があることに対し、処分の差止めを求めた事件です。

問題となったのは、差止訴訟に必要な訴訟要件である「重大な損害を生ずるおそれ」があるかどうかです。

裁判所の判断
最高裁は、以下の点を重視して「重大な損害を生ずるおそれ」があると判断しました。

  • 教員は毎年度の卒業式・入学式等で職務命令に従うことを強いられ、違反すれば懲戒処分を受ける立場にある。
  • 処分は反復継続的かつ累積的に行われるおそれがある。
  • 一度の処分だけであれば取消訴訟などで救済可能かもしれないが、継続的・加重的な処分がなされると、回復が著しく困難になる。

したがって、

「処分がされる前に差止めを命ずる方法でなければ救済を受けることが困難なもの」といえる
として、「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるとしました。

オ.市立学校教諭が同一市内の他の中学校教諭に転任される処分を受けた場合において、当該処分が客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に不利益を伴うものであるとしても、当該教諭には転任処分の取消しを求める訴えの利益が認められる余地はない。

オ・・・妥当でない

この問題は、最判昭和61年10月23日(教員の転任処分取消訴訟)に基づいています。

事案の概要
ある市立中学校の教員が、市内の別の中学校に転任するよう命じられたことに対し、その処分の取消しを求めて訴えを提起しました。

争点は、「このような転任処分について取消訴訟を起こす法律上の利益(訴えの利益)」があるかどうかです。

最高裁の判断
最高裁は、原則として次のように判断しました。

✅ 原則:転任処分は単なる配置換えにすぎず、教員の身分や俸給などの法的地位に影響を及ぼさない。

勤務場所・勤務内容に明確な不利益がない場合には、取消しを求める訴えの利益は認められない。

✅ ただし:「特段の事情」がある場合には、訴えの利益が認められる可能性がある。

つまり、裁判所は「絶対に認められない」とは言っておらず、状況によっては取消訴訟が可能になる余地を残しているのです。

 


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略