令和6年度(2024年度)過去問

令和6年・2024|問45|民法・40字

Aは、海外からコーヒー豆を輸入して国内の卸売業者に販売する事業を営んでいる。Aは、卸売業者Bにコーヒー豆1トン(以下「甲」という)を販売し、甲は、B所有の倉庫内に第三者に転売されることなくそのまま保管されている。Aは、Bに対し、甲の売買代金について、その支払期限経過後、支払って欲しい旨を伝えたが、Bは、経営不振を理由に、いまだAに支払っていない。BにはA以外にも一般債権者がいる。この場合に、Aは、甲についていかなる権利に基づき、どのような形で売買代金を確保することができるか。民法の規定に照らし、40字程度で記述しなさい。

>解答と解説はこちら


【答え】:Aは、動産売買の先取特権に基づき、甲を競売し、一般債権者に先立って、売買代金を確保できる。(45字)
Aは、動産売買の先取特権に基づき、甲を競売して代金を確保できる。(40字)


【解説】

<問題の要点>

  • Aは売主、Bは買主で、コーヒー豆(甲)はすでに引き渡され、Bの倉庫内に保管中。
  • 売買代金の支払期限は過ぎており、Bは未払い。
  • 他にも一般債権者が存在する。
  • このような状況で、Aが売買代金を優先的に確保できる法的手段を問う問題。

<1. Aの権利の根拠:動産売買の先取特権>

民法311条5号は、売買により発生した債権について、売主が目的物に先取特権を有することを規定しています。
これを「動産売買の先取特権」といいます。

要件

  1. 売買の目的物(今回はコーヒー豆)が、買主のもとで第三者に転売されずに現存していること(民法333条)。
  2. 所有権の留保がなくてもOK(無条件で発生)。
  3. 先取特権は法定担保物権であり、他の一般債権者に優先して弁済を受けることができる。

    <2. 行使の方法:競売申立て>

    動産売買先取特権に基づいて、Aは甲を差し押さえて競売に付し、その売却代金から優先的に弁済を受けることができる(物上代位、民法304条)。

    つまり、動産を返してもらうのではなく、換価(お金に替える)することで代金を確保。

    まとめると、

    • Aが有するのは動産売買の先取特権(民法311条5号)。
    • Aはこの権利に基づき、甲を競売にかけることで、他の債権者に優先して売買代金を確保することができる。

    よって、上記をまとめると、

    Aは、動産売買の先取特権に基づき、甲を競売し、一般債権者に先立って、売買代金を確保できる。(45字)

     


    令和6年(2024年)過去問

    問1 基礎法学 問31 民法
    問2 基礎法学 問32 民法
    問3 憲法 問33 民法
    問4 憲法 問34 民法
    問5 憲法 問35 民法
    問6 憲法 問36 商法
    問7 憲法 問37 会社法
    問8 行政法 問38 会社法
    問9 行政法 問39 会社法
    問10 行政法 問40 会社法
    問11 行政手続法 問41 多肢選択
    問12 行政手続法 問42 多肢選択
    問13 行政手続法 問43 多肢選択
    問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
    問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
    問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
    問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
    問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
    問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
    問20 国家賠償法 問50 基礎知識
    問21 国家賠償法 問51 基礎知識
    問22 地方自治法 問52 行政書士法
    問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
    問24 地方自治法 問54 基礎知識
    問25 行政法 問55 基礎知識
    問26 公文書管理法 問56 基礎知識
    問27 民法 問57 個人情報保護法
    問28 民法 問58 著作権の関係上省略
    問29 民法 問59 著作権の関係上省略
    問30 民法 問60 著作権の関係上省略

    令和6年・2024|問44|行政法・40字

    総務大臣Yは、新たなテレビ放送局の開設を目的として、電波法に基づく無線局開設免許を1社のみに付与することを表明した。これを受けて、テレビ放送局を開設しようとする会社XがYに開設免許の申請をしたところ、Yは、その他の競願者の申請を含めて審査を実施し、会社Aに対しては免許を付与する処分(免許処分)をし、Xに対しては申請を棄却する処分(拒否処分)をした。 これに対し、Xは取消訴訟を提起して裁判上の救済を求めたいと考えている。競願関係をめぐる最高裁判所の判例の考え方に照らし、Xは誰を被告として、どのような処分に対する取消訴訟を提起できるか。なお、現行の電波法は、審査請求前置や裁決主義の規定を置いているが、それらは度外視して、直接に処分取消訴訟ができるものとして考え、40字程度で記述しなさい。

    >解答と解説はこちら


    【答え】:Xは国を被告として、免許処分または拒否処分の取消訴訟を提起できる。(40字)
    Xは国を被告として、免許処分に対する取消訴訟または拒否処分に対する取消訴訟を提起できる。(44字)


    【解説】

    <問題のポイント>

    競願関係(=複数の申請者がいて、その中から1社のみ選ばれる)にある許認可処分に関し、不許可処分を受けた者(X)が取消訴訟を提起したい。

    1. 取消訴訟で争える処分は何か?
    2. 被告とすべき相手は誰か?

    <1. 被告について>

    行政事件訴訟法11条1項1号により、処分をした行政庁が国に所属する場合、被告は「国」です。

    今回、処分をしたのは総務大臣(行政庁)なので、Xは「国」を被告として訴訟を提起することになります。

    <2. 争える処分について>

    競願関係にある場合、以下の2つの処分のいずれか、または両方について取消訴訟を提起可能。

    1. 自己に対する拒否処分(Xに対する免許の不許可
      自分の申請を不許可にされたという処分に対して、Xは原告適格を有する。
    2. 他者に対する免許処分(Aへの免許付与
      自分がそのポストを争っていた立場(競願)である以上、「他人の処分の取消し」でも法律上の利益があるとされる(最判昭和43年12月24日)。

    よって、Aへの免許処分の取消しを求める訴訟も可能。

    <まとめると>

    Xは、
    自己の拒否処分に対して取消訴訟を提起することができ、
    競願関係にある他社(A)への免許処分に対しても取消訴訟を提起することができます。

    両方を併せて提起することも可能です。

    よって、上記を40字程度でまとめると

    Xは国を被告として、免許処分に対する取消訴訟または拒否処分に対する取消訴訟を提起できる。(44字)

     


    令和6年(2024年)過去問

    問1 基礎法学 問31 民法
    問2 基礎法学 問32 民法
    問3 憲法 問33 民法
    問4 憲法 問34 民法
    問5 憲法 問35 民法
    問6 憲法 問36 商法
    問7 憲法 問37 会社法
    問8 行政法 問38 会社法
    問9 行政法 問39 会社法
    問10 行政法 問40 会社法
    問11 行政手続法 問41 多肢選択
    問12 行政手続法 問42 多肢選択
    問13 行政手続法 問43 多肢選択
    問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
    問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
    問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
    問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
    問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
    問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
    問20 国家賠償法 問50 基礎知識
    問21 国家賠償法 問51 基礎知識
    問22 地方自治法 問52 行政書士法
    問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
    問24 地方自治法 問54 基礎知識
    問25 行政法 問55 基礎知識
    問26 公文書管理法 問56 基礎知識
    問27 民法 問57 個人情報保護法
    問28 民法 問58 著作権の関係上省略
    問29 民法 問59 著作権の関係上省略
    問30 民法 問60 著作権の関係上省略

    令和6年・2024|問43|多肢選択

    次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]にあてはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

    参議院の総議員の1/4以上である72名の議員は、平成29年6月22日、憲法53条後段の規定により、内閣に対し、国会の臨時会の召集を決定すること(以下「臨時会召集決定」という)を要求した。内閣は、同年9月22日、臨時会を同月28日に召集することを決定した。同日、第194回国会が召集されたが、その冒頭で衆議院が解散され、参議院は同時に閉会となった。本件は、上記の要求をした参議院議員の一人である上告人(原告)が、被上告人(国)に対し、主位的に、上告人が次に参議院の総議員の1/4以上の議員の一人として臨時会召集決定の要求(以下「臨時会召集要求」という)をした場合に、内閣において、20日以内に臨時会が召集されるよう臨時会召集決定をする義務を負うことの確認を、予備的に、上記場合に、上告人が20日以内に臨時会の召集を受けられる地位を有することの確認を求める(以下、これらの請求に係る訴えを「本件各確認の訴え」という)事案である。 本件各確認の訴えは、上告人が、個々の国会議員が臨時会召集要求に係る権利を有するという憲法53条後段の解釈を前提に、[ ア ]に関する確認の訴えとして、上告人を含む参議院議員が同条後段の規定により上記権利を行使した場合に被上告人が上告人に対して負う法的義務または上告人が被上告人との間で有する法律上の地位の確認を求める訴えであると解されるから、当事者間の具体的な権利義務または法律関係の存否に関する紛争であって、法令の適用によって終局的に解決することができるものであるということができる。そうすると、本件各確認の訴えは、[ イ ]にあたるというべきであり、これと異なる原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない。 もっとも、本件各確認の訴えは、将来、上告人を含む参議院議員が憲法53条後段の規定により臨時会召集要求をした場合における臨時会召集決定の遅滞によって上告人自身に生ずる不利益を防止することを目的とする訴えであると解されるところ、将来、上告人を含む参議院の総議員の1/4以上により臨時会召集要求がされるか否かや、それがされた場合に臨時会召集決定がいつされるかは現時点では明らかでないといわざるを得ない。 そうすると、上告人に上記不利益が生ずる[ ウ ]があるとはいえず、本件各確認の訴えは、[ エ ]を欠き、不適法であるというべきであるから、これを却下すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができる。 (最三小判令和5年9月12日民集77巻6号1515頁<文章を一部修正した>)
    1.法律上保護された利益  2.予見可能性  3.確認の利益  4.統治行為  5.合理的な理由  6.公権力の行使に関する不服の訴訟  7.法律上の争訟  8.国権の発動  9.処分たる性格  10.相当の蓋然性  11.制度上の障害  12.国会議員の資格  13.現実の危険  14.確認の対象  15.被告適格  16.公法上の法律関係  17.機関相互間における権限の存否またはその行使  18.当事者間の法律関係を確認しまたは形成する処分または裁決に関する訴訟  19.自己の法律上の利益にかかわる資格で提起する訴訟  20.国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟

    >解答と解説はこちら


    【答え】:ア:公法上の法律関係、イ:法律上の争訟、ウ:現実の危険、エ:確認の利益
    【解説】
    本件各確認の訴えは、上告人が、個々の国会議員が臨時会召集要求に係る権利を有するという憲法53条後段の解釈を前提に、[ ア ]に関する確認の訴えとして、上告人を含む参議院議員が同条後段の規定により上記権利を行使した場合に被上告人が上告人に対して負う法的義務または上告人が被上告人との間で有する法律上の地位の確認を求める訴えである

    ア・・・公法上の法律関係

    上記を要約すると、
    本件各確認の訴えは、憲法53条後段の解釈を前提に、上告人を含む参議院議員が行使した権利について、被上告人が負う法的義務や法律上の地位の確認を求めるものである。

    ここでは、「訴えの性質」が問われています。つまり、これは私人間の民法上の関係ではなく、議員と国家(内閣)という公的主体間の法的関係です。

    キーワード

    • 憲法に基づく請求
    • 国会議員と内閣との関係(→公的関係)
    • 法律上の地位の確認

    よって、「公法上の法律関係」が最も適切です。

    当事者間の具体的な権利義務または法律関係の存否に関する紛争であって、法令の適用によって終局的に解決することができるものであるということができる。そうすると、本件各確認の訴えは、[ イ ]にあたるというべきであり、これと異なる原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない。

    イ・・・法律上の争訟

    上記を要約すると、
    法令の適用によって終局的に解決することができる争いだから、これは◯◯◯である。

    これは、「裁判所が取り扱える争い」=裁判審査の対象になるかどうか、という判断です。

    キーワード

    • 当事者間の具体的な権利義務や法律関係の存否
    • 法令の適用により終局的に解決可能

    上記は、判例上明確に「法律上の争訟」と定義されています。
    選択肢の中にまさにこの語句があるので、それを選びます。

    将来、上告人を含む参議院の総議員の1/4以上により臨時会召集要求がされるか否かや、それがされた場合に臨時会召集決定がいつされるかは現時点では明らかでないといわざるを得ない。 そうすると、上告人に上記不利益が生ずる[ ウ ]があるとはいえず、

    ウ・・・現実の危険

    上記を要約すると、
    将来、臨時会召集の要求がされるか、または内閣がどう対応するかは現時点では不明確であり、上告人に不利益が生じる◯◯◯があるとはいえない。

    これは「確認訴訟における訴えの適法性(現在性・具体性)」に関わるところです。

    キーワード

    • 将来の事態が確定していない
    • 不利益が生じるかどうかが不確実
      → 抽象的・仮定的であり、訴訟の条件を欠く

    このような文脈での典型的な判断基準は「現実の危険(real and immediate danger)」の有無」です。
    それがないと、裁判所としては判断を避ける傾向にあります。

    そうすると、上告人に上記不利益が生ずる[ ウ:現実の危険 ]があるとはいえず、本件各確認の訴えは、[ エ ]を欠き、不適法であるというべきであるから、これを却下すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができる。

    エ・・・確認の利益

    現実の危険がない以上、訴えは◯◯◯を欠き不適法である。

    これは確認訴訟でのキーワードです。

    確認訴訟とは、一定の法律関係や権利義務の有無について、裁判所にその存否を確定してもらうことを目的とする訴訟です。

    たとえば…

    • 「私にはこの財産に対する所有権があることを確認してほしい」
    • 「この行政処分が無効であることを確認してほしい」

    といった請求をします。

    確認訴訟の要件

    判例・学説を踏まえると、確認訴訟が適法に成立するには次の3つの要件が必要です。

    1. 確認の対象が適切であること
      単なる事実ではなく、「具体的な法律関係・権利義務」が確認の対象でなければなりません。
      例:
      〇「Aに金銭債権があること」
      ✕「事故が起きたことの確認」←単なる事実確認はNG
    2. 現在の法律関係であること
      将来の不確定な事態に備えて確認を求めるだけでは足りません。
      今現在、法的に問題になっている関係である必要があります。
      今回の事案では: → 「将来、臨時国会の召集要求がされるか不確定」 → 「不利益が現実に生じる危険がない」 → よって「確認の利益」がない=不適法
    3. 確認の利益があること
      確認の利益とは、確認を求めることによって、現実に法的地位をめぐる不安を解消し、意味がある結果を得られる必要がある
      つまり、単に「気になるから確認してほしい」というレベルではダメで、裁判を通じて具体的・実質的な意味があるかどうかが問われます。

    今回の判例でも、次のように判断されました。

    • 内閣が召集を遅らせたことに対し、議員が将来のために確認を求めた
    • でもその「不利益」が将来発生するか不確定
    • よって、「確認の利益」がない→訴えは不適法

     

    令和6年(2024年)過去問

    問1 基礎法学 問31 民法
    問2 基礎法学 問32 民法
    問3 憲法 問33 民法
    問4 憲法 問34 民法
    問5 憲法 問35 民法
    問6 憲法 問36 商法
    問7 憲法 問37 会社法
    問8 行政法 問38 会社法
    問9 行政法 問39 会社法
    問10 行政法 問40 会社法
    問11 行政手続法 問41 多肢選択
    問12 行政手続法 問42 多肢選択
    問13 行政手続法 問43 多肢選択
    問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
    問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
    問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
    問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
    問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
    問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
    問20 国家賠償法 問50 基礎知識
    問21 国家賠償法 問51 基礎知識
    問22 地方自治法 問52 行政書士法
    問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
    問24 地方自治法 問54 基礎知識
    問25 行政法 問55 基礎知識
    問26 公文書管理法 問56 基礎知識
    問27 民法 問57 個人情報保護法
    問28 民法 問58 著作権の関係上省略
    問29 民法 問59 著作権の関係上省略
    問30 民法 問60 著作権の関係上省略

    令和6年・2024|問41|多肢選択

    次の文章は、婚外子の法定相続分を嫡出である子の1/2と定めていた民法規定(以下「本件規定」という)を違憲とした最高裁判所の決定の一部である。空欄[ ア ]~[ エ ]にあてはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

    本件規定は、国民生活や身分関係の基本法である民法の一部を構成し、相続という日常的な現象を規律する規定であって、〔問題となった相続が開始した〕平成13年7月から既に約12年もの期間が経過していることからすると、その間に、本件規定の合憲性を前提として、多くの遺産の分割が行われ、更にそれを基に新たな権利関係が形成される事態が広く生じてきていることが容易に推察される。取り分け、本決定の違憲判断は、長期にわたる社会状況の変化に照らし、本件規定がその合理性を失ったことを理由として、その違憲性を当裁判所として初めて明らかにするものである。それにもかかわらず、本決定の違憲判断が、[ ア ]としての[ イ ]という形で既に行われた遺産の分割等の効力にも影響し、いわば解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは、著しく[ ウ ]を害することになる。[ ウ ]は法に内在する普遍的な要請であり、当裁判所の違憲判断も、その[ ア ]としての[ イ ]を限定し、[ ウ ]の確保との調和を図ることが求められているといわなければならず、このことは、裁判において本件規定を違憲と判断することの適否という点からも問題となり得るところといえる。 以上の観点からすると、既に関係者間において裁判、合意等により[ エ ]なものとなったといえる法律関係までをも現時点で覆すことは相当ではないが、関係者間の法律関係がそのような段階に至っていない事案であれば、本決定により違憲無効とされた本件規定の適用を排除した上で法律関係を[ エ ]なものとするのが相当であるといえる。 (最大決平成25年9月4日民集67巻6号1320頁<文章を一部変更した。>)
    1.公権力  2.事実上の拘束性  3.影響力の行使  4.法的安定性  5.衡平  6.暫定的  7.対話  8.先例  9.法令審査  10.確定的  11.具体的  12.家族法秩序  13.終審裁判所  14.既判力  15.司法積極主義  16.遡及的  17.実質的正義  18.蓋然的  19.公益  20.裁量統制

    >解答と解説はこちら


    【答え】:ア:先例、イ:事実上の拘束性、ウ:法的安定性、エ:確定的
    【解説】
    本件規定は、国民生活や身分関係の基本法である民法の一部を構成し、相続という日常的な現象を規律する規定であって、〔問題となった相続が開始した〕平成13年7月から既に約12年もの期間が経過していることからすると、その間に、本件規定の合憲性を前提として、多くの遺産の分割が行われ、更にそれを基に新たな権利関係が形成される事態が広く生じてきていることが容易に推察される。取り分け、本決定の違憲判断は、長期にわたる社会状況の変化に照らし、本件規定がその合理性を失ったことを理由として、その違憲性を当裁判所として初めて明らかにするものである。それにもかかわらず、本決定の違憲判断が、[ア:先例]としての[イ:事実上の拘束性]という形で既に行われた遺産の分割等の効力にも影響し、いわば解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは、著しく[ウ:法的安定性]を害することになる。[ウ:法的安定性]は法に内在する普遍的な要請であり、当裁判所の違憲判断も、その[ア:先例]としての[イ:事実上の拘束性]を限定し、[ウ:法的安定性]の確保との調和を図ることが求められているといわなければならず、このことは、裁判において本件規定を違憲と判断することの適否という点からも問題となり得るところといえる。 以上の観点からすると、既に関係者間において裁判、合意等により[エ:確定的]なものとなったといえる法律関係までをも現時点で覆すことは相当ではないが、関係者間の法律関係がそのような段階に至っていない事案であれば、本決定により違憲無効とされた本件規定の適用を排除した上で法律関係を[エ:確定的]なものとするのが相当であるといえる。
    違憲判断は、長期にわたる社会状況の変化に照らし、本件規定がその合理性を失ったことを理由として、その違憲性を当裁判所として初めて明らかにするものである。それにもかかわらず、本決定の違憲判断が、[ ア ]としての[ イ ]という形で既に行われた遺産の分割等の効力にも影響し、いわば解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは、著しく[ ウ ]を害することになる。

    ア・・・先例

    「違憲判断が〇〇としての△△という形で…」という表現から、裁判所の判断が将来の判断に影響を与えるという文脈が読み取れます。

    このような性質をもつのは、「先例(判例)」です。特に最高裁の違憲判断は、それ以降の裁判や実務に大きな影響を及ぼします。

    ❌間違いやすい選択肢でいうと、「公権力」や「裁量統制」がありますが、これらは文意に合いません(違憲判断が“公権力”になるわけではない)。

    本決定の違憲判断が、[ ア:先例 ]としての[ イ ]という形で既に行われた遺産の分割等の効力にも影響し、

    イ・・・事実上の拘束性

    判例は厳密には法源ではありませんが、「実務上非常に強い影響力(拘束力)」を持ちます。

    特に最高裁判所の判例には、下級審に対して「事実上の拘束力」があると言われます。

    よって、「事実上の拘束性」が自然に当てはまります。

    間違いやすい選択肢として、「法令審査」や「影響力の行使」などがありますが意味は近いですが文脈に適合しません。

    解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは、著しく[ ウ ]を害することになる。

    ウ・・・法的安定性

    解決済みの遺産分割に遡って影響が及ぶとすると、「法律関係が不安定になる」という文脈です。

    このとき重視される法的価値は「法的安定性」です。

    判例の変更や違憲判断がある場合、「法的安定性」と「実質的正義(衡平)」のバランスが常に問題になります。

    間違いやすい選択肢として、「衡平」や「実質的正義」があります。「衡平」や「実質的正義」も価値判断ですが、この文脈では「安定性」を重視しているので不適切です。

    既に関係者間において裁判、合意等により[ エ ]なものとなったといえる法律関係までをも現時点で覆すことは相当ではないが、関係者間の法律関係がそのような段階に至っていない事案であれば、本決定により違憲無効とされた本件規定の適用を排除した上で法律関係を[ エ ]なものとするのが相当であるといえる。

    エ・・・確定的

    ここでは、「すでに確定している法律関係」と「未確定な法律関係」を区別しています。

    つまり、「すでに協議や裁判で最終的に決着がついているか」が分かれ目です。

    よって「確定的」が最も適切です。

    間違いやすい選択肢として「具体的」「終審裁判所」などがありますが、これらを入れると意味が合いません。

     

    令和6年(2024年)過去問

    問1 基礎法学 問31 民法
    問2 基礎法学 問32 民法
    問3 憲法 問33 民法
    問4 憲法 問34 民法
    問5 憲法 問35 民法
    問6 憲法 問36 商法
    問7 憲法 問37 会社法
    問8 行政法 問38 会社法
    問9 行政法 問39 会社法
    問10 行政法 問40 会社法
    問11 行政手続法 問41 多肢選択
    問12 行政手続法 問42 多肢選択
    問13 行政手続法 問43 多肢選択
    問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
    問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
    問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
    問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
    問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
    問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
    問20 国家賠償法 問50 基礎知識
    問21 国家賠償法 問51 基礎知識
    問22 地方自治法 問52 行政書士法
    問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
    問24 地方自治法 問54 基礎知識
    問25 行政法 問55 基礎知識
    問26 公文書管理法 問56 基礎知識
    問27 民法 問57 個人情報保護法
    問28 民法 問58 著作権の関係上省略
    問29 民法 問59 著作権の関係上省略
    問30 民法 問60 著作権の関係上省略

    令和6年・2024|問42|多肢選択

    次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]にあてはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

    特定の公益事業の用に供するために、私人の特定の財産権を強制的に取得し、または消滅させることを、[ ア ]といい、これについて定めた代表的な法律として土地収用法が存在する。 土地収用法は、土地収用の手続および補償について定めるが、補償の要否および範囲をめぐって訴訟が提起されることがある。同法88条は、他の条文で規定する損失に加えて、その他土地を収用し、または使用することによって発生する土地所有者または関係人の「[ イ ]損失」を補償する旨定めているが、この規定をめぐって、いわゆる輪中堤の文化財的価値が損失補償の対象となるか否かが争われた事案がある。 昭和63年1月21日の最高裁判決は、同条にいう「[ イ ]損失」とは、客観的社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的・[ ウ ]な損失をいうと解するのが相当であって、経済的価値でない特殊な価値については補償の対象とならないとした。そして、由緒ある書画、刀剣、工芸品等のように、その美術性・歴史性などのいわゆる文化財的価値なるものが、当該物件の取引価格に反映し、その[ エ ]を形成する一要素となる場合には、かかる文化財的価値を反映した[ エ ]がその物件の補償されるべき相当な価格となるが、他方で、貝塚、古戦場、関跡などにみられるような、主としてそれによって国の歴史を理解し往時の生活・文化等を知り得るという意味での歴史的・学術的な価値は、特段の事情のない限り、当該土地の不動産としての経済的・[ ウ ]価値を何ら高めるものではなく、その[ エ ]の形成に影響を与えることはないから、このような意味での文化財的価値は、それ自体経済的評価になじまないものとして、土地収用法上損失補償の対象とはなり得ないと判示し、輪中堤の文化財的価値に対する損失補償を否定した。
    1.強制徴収  2.特殊利益  3.受忍限度内の  4.財産的  5.適正な  6.社会通念  7.特別の犠牲  8.都市計画  9.合理的  10.市場価格  11.法律により保護された  12.絶対的  13.公用収用  14.所有権  15.反射的  16.権利利益  17.国家補償  18.通常受ける  19.精神的  20.行政上の強制執行

    >解答と解説はこちら


    【答え】:ア:公用収用、イ:通常受ける、ウ:財産的、エ:市場価格
    【解説】
    特定の公益事業の用に供するために、私人の特定の財産権を強制的に取得し、または消滅させることを、[ア:公用収用]といい、これについて定めた代表的な法律として土地収用法が存在する。 土地収用法は、土地収用の手続および補償について定めるが、補償の要否および範囲をめぐって訴訟が提起されることがある。同法88条は、他の条文で規定する損失に加えて、その他土地を収用し、または使用することによって発生する土地所有者または関係人の「[イ:通常受ける]損失」を補償する旨定めているが、この規定をめぐって、いわゆる輪中堤の文化財的価値が損失補償の対象となるか否かが争われた事案がある。 昭和63年1月21日の最高裁判決は、同条にいう「[イ:通常受ける]損失」とは、客観的社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的・[ウ:財産的]な損失をいうと解するのが相当であって、経済的価値でない特殊な価値については補償の対象とならないとした。そして、由緒ある書画、刀剣、工芸品等のように、その美術性・歴史性などのいわゆる文化財的価値なるものが、当該物件の取引価格に反映し、その[エ:市場価格]を形成する一要素となる場合には、かかる文化財的価値を反映した[エ:市場価格]がその物件の補償されるべき相当な価格となるが、他方で、貝塚、古戦場、関跡などにみられるような、主としてそれによって国の歴史を理解し往時の生活・文化等を知り得るという意味での歴史的・学術的な価値は、特段の事情のない限り、当該土地の不動産としての経済的・[ウ:財産的]価値を何ら高めるものではなく、その[エ:市場価格]の形成に影響を与えることはないから、このような意味での文化財的価値は、それ自体経済的評価になじまないものとして、土地収用法上損失補償の対象とはなり得ないと判示し、輪中堤の文化財的価値に対する損失補償を否定した。
    特定の公益事業の用に供するために、私人の特定の財産権を強制的に取得し、または消滅させることを、[ ア ]といい

    ア・・・公用収用

    「私人の特定の財産権を強制的に取得」「特定の公益事業の用に供するため」などのキーワードが出てきます。

    このように個人の財産を公共の目的のために強制的に取得する制度を指す法律用語は「公用収用」です。

    他の選択肢(強制徴収、行政上の強制執行など)は税や義務の履行に関する文脈で使われるので不適切です。

    土地収用法は、土地収用の手続および補償について定めるが、補償の要否および範囲をめぐって訴訟が提起されることがある。同法88条は、他の条文で規定する損失に加えて、その他土地を収用し、または使用することによって発生する土地所有者または関係人の「[ イ ]損失」を補償する旨定めている

    イ・・・通常受ける

    キーワードは「その他土地を収用し、または使用することによって発生する損失」です。

    土地収用法88条では、「通常生ずべき損失」、つまり「当然に受けるであろうと考えられる損失」に対して補償すると定めています。

    判例でも「通常受ける損失」という文言が使われています。

    「特別の犠牲」「特殊利益」など似たような語句もありますが、それらは憲法上の議論や別の補償原則に使われる用語なので不適切です。

    同条にいう「[ イ:通常受ける ]損失」とは、客観的社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的・[ ウ ]な損失をいうと解するのが相当であって、経済的価値でない特殊な価値については補償の対象とならないとした。

    ウ・・・財産的

    直前に「経済的」とあるので、それに続くものは同じく「金銭的価値」を表す単語です。

    「精神的」だと補償の対象としてなじまないし、「合理的」「社会通念」などは形容詞的で合わないです。
    判例の言い回しで「経済的・財産的損失」とワンセットで出るので、ここは「財産的」で確定します。

    由緒ある書画、刀剣、工芸品等のように、その美術性・歴史性などのいわゆる文化財的価値なるものが、当該物件の取引価格に反映し、その[ エ ]を形成する一要素となる場合には、かかる文化財的価値を反映した[ エ ]がその物件の補償されるべき相当な価格となる

    エ・・・市場価格

    文脈は、「文化財的価値が取引価格に反映するかどうか」という話です。

    土地や財産の補償を考えるときに、「相当な価格」というのは結局「市場で取引される価格」によって決まります。

    「市場価格」は経済的価値を表す代表的な用語です。

    他の選択肢(適正な、絶対的など)は抽象的すぎたり、法的用語としてはふさわしくないです。

     

    令和6年(2024年)過去問

    問1 基礎法学 問31 民法
    問2 基礎法学 問32 民法
    問3 憲法 問33 民法
    問4 憲法 問34 民法
    問5 憲法 問35 民法
    問6 憲法 問36 商法
    問7 憲法 問37 会社法
    問8 行政法 問38 会社法
    問9 行政法 問39 会社法
    問10 行政法 問40 会社法
    問11 行政手続法 問41 多肢選択
    問12 行政手続法 問42 多肢選択
    問13 行政手続法 問43 多肢選択
    問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
    問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
    問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
    問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
    問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
    問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
    問20 国家賠償法 問50 基礎知識
    問21 国家賠償法 問51 基礎知識
    問22 地方自治法 問52 行政書士法
    問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
    問24 地方自治法 問54 基礎知識
    問25 行政法 問55 基礎知識
    問26 公文書管理法 問56 基礎知識
    問27 民法 問57 個人情報保護法
    問28 民法 問58 著作権の関係上省略
    問29 民法 問59 著作権の関係上省略
    問30 民法 問60 著作権の関係上省略

    令和6年・2024|問40|会社法

    会社訴訟に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。なお、定款に別段の定めがないものとする。

    1. 株主総会の決議の内容が法令に違反するときは、当該株主総会決議の日から3ヵ月以内に、訴えをもってのみ当該決議の取消しを請求することができる。
    2. 会社の設立無効は、会社の成立の日から2年以内に、訴えをもってのみ主張できる。
    3. 新株発行無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされた行為は、将来に向かってその効力を失う。
    4. 6ヵ月前から引き続き株式を有する株主は、公開会社に対し、役員等の責任を追及する訴えの提起を請求することができる。
    5. 株式会社の役員の解任の訴えは、当該株式会社および当該解任を請求された役員を被告とする。

    >解答と解説はこちら


    【答え】:1
    【解説】
    1.株主総会の決議の内容が法令に違反するときは、当該株主総会決議の日から3ヵ月以内に、訴えをもってのみ当該決議の取消しを請求することができる。

    1・・・誤り

    株主総会の決議法令に違反している場合、その決議は無効となります(会社法830条2項)。
    無効な決議に対しては、取消しの訴えを提起する必要はなく、期間の制限もありません。つまり、いつでも・誰でも・どのような手続きでも無効を主張することができます。

    一方、株主総会の決議が定款に違反している場合は、「取消しの訴え」によって対応する必要があり、この場合は決議の日から3ヵ月以内に訴えを提起しなければなりません(会社法831条1項2号)。

    • 法令違反の決議 → 無効(期間制限なし)
    • 定款違反の決議 → 取消し(3ヵ月以内に訴え)
    2.会社の設立無効は、会社の成立の日から2年以内に、訴えをもってのみ主張できる。

    2・・・正しい

    会社が設立された後、その設立に重大な瑕疵があったとしても、いつまでも無効を主張できるようにしてしまうと、会社や関係者の法律関係が不安定になります。

    そこで会社法は、設立の無効については、成立の日から2年以内に「設立無効の訴え」を提起することでしか主張できないと定めています(会社法828条1項1号、2項1号)。

    つまり、一般の法律行為と違って、
    「いつでも・誰でも・どのようにでも」無効を主張できるわけではありません。
    会社の安定性と取引の安全を確保するため、期間制限と訴訟手続による限定が設けられているのです。

    3.新株発行無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされた行為は、将来に向かってその効力を失う。

    3・・・正しい

    新株発行無効の訴え」において、裁判所が発行を無効と判断し、その判決が確定した場合でも、すでに成立した法律関係をさかのぼって消すことはしません。つまり、その判決には遡及効(過去にさかのぼる効力)がないのです(会社法839条)。

    このようにして、株式を取得した第三者との間の法律関係や市場の安定性を守るのが目的です。
    したがって、確定判決によって新株発行が無効になったとしても、その効力は将来に向かってのみ発生します。

    本肢は理解した方が良いので、理解すべき部分は個別指導で解説します。

    4.6ヵ月前から引き続き株式を有する株主は、公開会社に対し、役員等の責任を追及する訴えの提起を請求することができる。

    4・・・正しい

    株式会社に損害を与えた役員等に対して、本来その責任を追及すべきなのは会社自身です。
    しかし、会社を代表して訴訟を起こすのは役員自身であるため、その役員が関与している場合、責任追及が行われないおそれがあります。

    そこで会社法は、一定の条件を満たした株主に、代わりに会社へ「責任追及訴訟を起こすよう請求する権利(提訴請求権)」を認めています(会社法847条1項)。

    請求できる株主の条件(公開会社の場合)

    • 6ヵ月前から引き続き株式を保有していること

    この要件を満たす株主であれば、会社に対し、役員等の責任追及訴訟を起こすよう請求できます。
    これにより、会社の内部統制が働かない場合でも、株主によって健全な経営が確保される仕組みになっています。

    5.株式会社の役員の解任の訴えは、当該株式会社および当該解任を請求された役員を被告とする。

    5・・・正しい

    株式会社の役員(取締役・監査役など)は、原則として株主総会の決議によって解任されます(会社法339条1項など)。
    しかし、解任すべき事情があるにもかかわらず、株主総会で解任決議が否決された場合、株主によるコントロールが効かなくなってしまいます。

    そこで、一定の要件を満たす少数株主には、「役員解任の訴え」を提起する権利が認められています(会社法854条)。

    誰を被告にするのか?

    この「役員解任の訴え」は、以下の2者を被告として提起する必要があります(会社法855条)。

    1. 当該株式会社(=会社自身)
    2. 解任を求める対象の役員(=その役員個人)

    これは、役員の地位に関する法的争いであると同時に、会社の機関構成に影響する問題でもあるため、会社と役員の両方が利害関係者になるからです。

     


    令和6年(2024年)過去問

    問1 基礎法学 問31 民法
    問2 基礎法学 問32 民法
    問3 憲法 問33 民法
    問4 憲法 問34 民法
    問5 憲法 問35 民法
    問6 憲法 問36 商法
    問7 憲法 問37 会社法
    問8 行政法 問38 会社法
    問9 行政法 問39 会社法
    問10 行政法 問40 会社法
    問11 行政手続法 問41 多肢選択
    問12 行政手続法 問42 多肢選択
    問13 行政手続法 問43 多肢選択
    問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
    問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
    問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
    問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
    問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
    問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
    問20 国家賠償法 問50 基礎知識
    問21 国家賠償法 問51 基礎知識
    問22 地方自治法 問52 行政書士法
    問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
    問24 地方自治法 問54 基礎知識
    問25 行政法 問55 基礎知識
    問26 公文書管理法 問56 基礎知識
    問27 民法 問57 個人情報保護法
    問28 民法 問58 著作権の関係上省略
    問29 民法 問59 著作権の関係上省略
    問30 民法 問60 著作権の関係上省略

    令和6年・2024|問39|会社法

    株式交換に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。

    1. 株式交換完全親会社は、株式会社でなければならない。
    2. 株式交換完全親会社は、株式交換完全子会社の発行済株式の一部のみを取得することとなる株式交換を行うことができる。
    3. 株式交換完全親会社は、株式交換完全子会社の株主に対し、当該株式交換完全親会社の株式に代わる金銭等を交付することができる。
    4. 株式交換完全親会社の反対株主は、当該株式交換完全親会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することはできない。
    5. 株式交換契約新株予約権が付された、株式交換完全子会社の新株予約権付社債の社債権者は、当該株式交換完全子会社に対し、株式交換について異議を述べることはできない。

    >解答と解説はこちら


    【答え】:3
    【解説】
    1.株式交換完全親会社は、株式会社でなければならない。

    1・・・誤り

    株式交換とは、ある会社(完全子会社となる会社)がその発行済株式のすべてを、他の会社(完全親会社)に取得させる制度です(会社法2条31号)。

    このとき、株式交換完全親会社になれるのは、株式会社だけではなく、合同会社も含まれます。
    つまり、合同会社も株式交換完全親会社になることが可能です(会社法767条 かっこ書き)。

    2.株式交換完全親会社は、株式交換完全子会社の発行済株式の一部のみを取得することとなる株式交換を行うことができる。

    2・・・誤り

    株式交換とは、ある会社が他の会社の発行済株式「すべて」を取得して、その会社を完全子会社にする制度です(会社法2条31号。肢1の解説も参照)。

    したがって、株式の「一部のみ」を取得する形での株式交換は認められていません。

    会社法769条1項でも、株式交換完全親会社は、株式交換の効力発生日に完全子会社の発行済株式「すべて」を取得すると定められています。

    つまり、株式交換は“全部取得”が原則であり、一部取得では成立しません

    3.株式交換完全親会社は、株式交換完全子会社の株主に対し、当該株式交換完全親会社の株式に代わる金銭等を交付することができる。

    3・・・正しい

    株式交換では、通常、完全子会社となる会社の株主に対して、完全親会社の「株式」を交付します。
    しかし、会社法768条1項2号により、親会社の株式に代えて「金銭・社債・新株予約権」などの他の財産を交付することも認められています。

    このように、対価の内容を柔軟に選べるようになったことを、平成29年の会社法改正では「対価の柔軟化」と呼びます。

    したがって、本肢の内容は正しいといえます。

    4.株式交換完全親会社の反対株主は、当該株式交換完全親会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することはできない。

    4・・・誤り

    株式交換は、株主総会で特別決議(議決権の2/3以上)によって決定されれば、株主が反対していても実施される強制力のある制度です。

    そのため、少数株主の保護のために、「反対株主には株式の買取請求権」が認められています(会社法797条)。
    つまり、反対する株主は、株式交換完全親会社に対し、自分の株式を公正な価格で買い取るよう請求することができます。

    このような制度は、少数派株主の権利保護として重要な役割を果たしています。

    5.株式交換契約新株予約権が付された、株式交換完全子会社の新株予約権付社債の社債権者は、当該株式交換完全子会社に対し、株式交換について異議を述べることはできない。

    5・・・誤り

    株式交換では、対象となるのは株式だけでなく、新株予約権新株予約権付社債も含まれることがあります。
    これは、新株予約権が残っていると、それを行使することで新たな株主が生まれ、完全子会社の状態が崩れてしまう可能性があるためです。

    そのため、新株予約権付社債についても、株式交換完全親会社がそれを引き継ぐことになり、結果として債務者が変更されることになります。

    このような債務者変更によって、社債権者に不利益が生じるおそれがあるため、会社法789条1項3号により、社債権者には「異議を述べる権利」が認められています

    よって、本肢の「異議を述べることはできない」という記述は誤りです。

     


    令和6年(2024年)過去問

    問1 基礎法学 問31 民法
    問2 基礎法学 問32 民法
    問3 憲法 問33 民法
    問4 憲法 問34 民法
    問5 憲法 問35 民法
    問6 憲法 問36 商法
    問7 憲法 問37 会社法
    問8 行政法 問38 会社法
    問9 行政法 問39 会社法
    問10 行政法 問40 会社法
    問11 行政手続法 問41 多肢選択
    問12 行政手続法 問42 多肢選択
    問13 行政手続法 問43 多肢選択
    問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
    問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
    問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
    問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
    問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
    問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
    問20 国家賠償法 問50 基礎知識
    問21 国家賠償法 問51 基礎知識
    問22 地方自治法 問52 行政書士法
    問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
    問24 地方自治法 問54 基礎知識
    問25 行政法 問55 基礎知識
    問26 公文書管理法 問56 基礎知識
    問27 民法 問57 個人情報保護法
    問28 民法 問58 著作権の関係上省略
    問29 民法 問59 著作権の関係上省略
    問30 民法 問60 著作権の関係上省略

    令和6年・2024|問38|会社法

    監査等委員会設置会社の取締役の報酬等に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

    1. 取締役の報酬等に関する事項は、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別して定めなければならない。
    2. 監査等委員である取締役は、株主総会において、監査等委員である取締役の報酬等について意見を述べることができる。
    3. 監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の報酬等について監査等委員会の意見を述べることができる。
    4. 監査等委員である各取締役の報酬等について定款の定めまたは株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、株主総会で決議された取締役の報酬等の範囲内において、監査等委員である取締役の多数決によって定める。
    5. 監査等委員である取締役を除く取締役の個人別の報酬等の内容が定款または株主総会の決議により定められている場合を除き、当該取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を取締役会で決定しなければならない。

    >解答と解説はこちら


    【答え】:4
    【解説】
    1.取締役の報酬等に関する事項は、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別して定めなければならない。

    1・・・正しい

    監査等委員会設置会社においては、取締役の報酬等(報酬、賞与、退職慰労金など)を決定する場合、
    以下のように 取締役を2つの区分に分けて定める必要があります。

    1. 監査等委員である取締役(監査等委員会のメンバー)
    2. それ以外の取締役(業務執行を行う取締役など)

    これは、監査等委員である取締役が、会社の監督機能を担う立場にあるため、
    報酬の内容や決定方法についても、明確に分けることが求められるためです。

    具体的には、会社法361条2項において、

    監査等委員である取締役と、それ以外の取締役の報酬等の決定は区別して定めなければならない

    と規定されています。

    2.監査等委員である取締役は、株主総会において、監査等委員である取締役の報酬等について意見を述べることができる。

    2・・・正しい

    監査等委員である取締役は、自身の報酬等(報酬・賞与・退職慰労金など)について、株主総会で意見を述べることができます

    これは、会社法361条5項に明記されています。

    この制度は、監査等委員が会社の業務執行を監督する立場にあることを踏まえ、その独立性と中立性を確保するために設けられています。

    本肢は、周辺知識も重要なので、個別指導で解説します。

    3.監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の報酬等について監査等委員会の意見を述べることができる。

    3・・・正しい

    会社法361条6項により、監査等委員会があらかじめ選定した監査等委員は、
    株主総会において、監査等委員でない取締役(=業務執行を行う取締役など)の報酬等に関する議案に対し、
    監査等委員会としての意見を述べることができます

    これは、監査等委員会設置会社において、取締役の報酬等に対しても監督機能を発揮できるようにするための制度です。

    4.監査等委員である各取締役の報酬等について定款の定めまたは株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、株主総会で決議された取締役の報酬等の範囲内において、監査等委員である取締役の多数決によって定める。

    4・・・誤り

    本肢は、「監査等委員である取締役の多数決によって定める」という部分が誤りです。

    実際には、会社法361条3項により、
    監査等委員である各取締役の報酬等について、定款や株主総会の決議で個別に定めがない場合は、監査等委員間の「協議」により決定するとされています。

    本肢は理解すべき部分が重要なので、個別指導で解説します。

    5.監査等委員である取締役を除く取締役の個人別の報酬等の内容が定款または株主総会の決議により定められている場合を除き、当該取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を取締役会で決定しなければならない。

    5・・・正しい

    会社法361条7項により、監査等委員でない取締役の個人別の報酬等の内容については、以下のように定められています。

    定款または株主総会の決議により個別に定められていない場合  → その報酬等をどう決めるかという「決定方針」を、取締役会で定めなければならないとされています。

    この方針の策定は、取締役の報酬が「お手盛り」にならないようにし、ガバナンス(企業統治)を強化する目的で導入されています。

    本肢は関連ポイントが重要なので、個別指導で解説します。

     


    令和6年(2024年)過去問

    問1 基礎法学 問31 民法
    問2 基礎法学 問32 民法
    問3 憲法 問33 民法
    問4 憲法 問34 民法
    問5 憲法 問35 民法
    問6 憲法 問36 商法
    問7 憲法 問37 会社法
    問8 行政法 問38 会社法
    問9 行政法 問39 会社法
    問10 行政法 問40 会社法
    問11 行政手続法 問41 多肢選択
    問12 行政手続法 問42 多肢選択
    問13 行政手続法 問43 多肢選択
    問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
    問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
    問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
    問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
    問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
    問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
    問20 国家賠償法 問50 基礎知識
    問21 国家賠償法 問51 基礎知識
    問22 地方自治法 問52 行政書士法
    問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
    問24 地方自治法 問54 基礎知識
    問25 行政法 問55 基礎知識
    問26 公文書管理法 問56 基礎知識
    問27 民法 問57 個人情報保護法
    問28 民法 問58 著作権の関係上省略
    問29 民法 問59 著作権の関係上省略
    問30 民法 問60 著作権の関係上省略

    令和6年・2024|問37|会社法

    株主の議決権に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。

    ア.株主総会における議決権の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を生じない。

    イ.株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。

    ウ.取締役候補者である株主は、自らの取締役選任決議について特別の利害関係を有する者として議決に加わることができない。

    エ.監査役を選任し、または解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。

    オ.役員等がその任務を怠ったために株式会社に生じた損害を賠償する責任を負うこととなった場合に、当該責任を免除するには、議決権のない株主を含めた総株主の同意がなければならない。

    1. ア・ウ
    2. ア・エ
    3. イ・エ
    4. イ・オ
    5. ウ・オ

    >解答と解説はこちら


    【答え】:4(イとオが正しい)

    【解説】
    ア.株主総会における議決権の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を生じない。

    ア・・・誤り

    会社法では、株主総会における議決権を制限した種類株式を発行することが認められています。

    具体的には、会社法第108条第1項第3号により、「株主総会における議決権の制限(全部または一部)」を内容とする種類株式を発行することができます。これは、たとえば配当目的で株式を保有しているだけで、会社運営に口を出す意思のない株主に対して、議決権を与えないようにする制度です。

    また、会社法第105条により、種類株式を発行する場合には、定款にその内容を定める必要があります。したがって、「議決権の全部を与えない」種類株式を定款で定めることは、適法であり有効です。

    注意点

    ただし、注意すべきは、会社法第105条第2項により、「剰余金の配当を受ける権利」および「残余財産の分配を受ける権利」の両方を有しない株式を発行する旨の定款の定めは無効となる点です。これは、株主としての経済的利益を全く認めないような株式の発行は認められないという趣旨です。
    イ.株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。

    イ・・・正しい

    会社法第308条第2項により、株式会社は自己株式について議決権を行使することはできません

    自己株式とは、会社が自ら発行した株式を取得して保有している状態の株式のことです。このような株式に議決権を認めてしまうと、会社が自分で自分の意思決定に影響を与えることができてしまい、経営の公正さ・透明性が損なわれるおそれがあります。

    また、株式会社においては「所有と経営の分離」が基本原則とされており、株主が会社経営に対して監督・意思決定を行うという仕組みになっています。自己株式に議決権を認めてしまうと、会社自身が経営に介入することになってしまい、この原則が形骸化することになります。

    したがって、自己株式には議決権が認められず、その効力を持たないとされています。

    ウ.取締役候補者である株主は、自らの取締役選任決議について特別の利害関係を有する者として議決に加わることができない。

    ウ・・・誤り

    会社法では、株主総会においては「特別の利害関係」を有する株主であっても、原則として議決権を行使することが認められています(会社法831条1項3号)。したがって、取締役に選任される予定の株主本人であっても、自らの選任に関する決議に議決権を行使することができます。

    つまり、「自分を取締役にするかどうか」の決議に自分自身が加わっても違法ではありません。ただし、その議決が著しく不当である場合には、株主がその決議の取消しを請求できるにとどまります。

    混乱しやすい部分

    一方、混同しやすいのが取締役会における決議です。こちらでは、会社法第369条第2項により、特別の利害関係を有する取締役は、その議決に加わることができません。たとえば、取締役が会社と取引を行う場合や、利益相反のおそれがある場合などが該当します。

    また、日本の中小企業では株主=取締役であることが多く、このようなケースで「自分の選任について議決に加われない」とすると、現実的に株主総会の運営が成り立たなくなるため、法律上もそのような制限は設けられていません。

    エ.監査役を選任し、または解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。

    エ・・・誤り

    この記述は監査役の「選任」については正しいですが、「解任」についての要件が誤っています。

    ✅【監査役の選任

    監査役の選任は、会社法第341条により普通決議で行われます。
    普通決議とは、会社法第309条第1項に定められた要件で、

    • 議決権を行使できる株主の過半数が出席し、
    • その出席株主の議決権の過半数の賛成で可決されるものです。

      したがって、選任に関する記述は正確です。

      ❌【監査役の解任

      一方、監査役の解任は、会社法第339条第1項・第309条第2項第7号により、特別決議が必要です。

      特別決議の要件は以下のとおり。

      • 議決権を行使できる株主の過半数が出席し、
      • その出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要

        つまり、「出席株主の議決権の過半数」ではなく「3分の2以上」が要件であるため、本肢は誤りです。

        関連ポイントが重要なので関連ポイントは個別指導で解説します。

        オ.役員等がその任務を怠ったために株式会社に生じた損害を賠償する責任を負うこととなった場合に、当該責任を免除するには、議決権のない株主を含めた総株主の同意がなければならない。

        オ・・・正しい

        会社法第423条第1項により、役員等(取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人)は、その任務を怠ったことによって株式会社に損害を与えた場合、会社に対して損害賠償責任を負います。

        これは、会社の経営を担う者が法令や定款、善管注意義務に違反して損害を与えた場合に、その責任を明確にするためのルールです。

        免除には「総株主の同意」が必要

        この損害賠償責任は、会社法第424条により、総株主の同意がない限り、免除することができません

        ここでの「総株主」とは、議決権の有無にかかわらず、すべての株主を指します。つまり、議決権のない株主の同意も含まれるという点が非常に重要です。

        本肢は理解すべき内容なので、個別指導で解説します。

         


        令和6年(2024年)過去問

        問1 基礎法学 問31 民法
        問2 基礎法学 問32 民法
        問3 憲法 問33 民法
        問4 憲法 問34 民法
        問5 憲法 問35 民法
        問6 憲法 問36 商法
        問7 憲法 問37 会社法
        問8 行政法 問38 会社法
        問9 行政法 問39 会社法
        問10 行政法 問40 会社法
        問11 行政手続法 問41 多肢選択
        問12 行政手続法 問42 多肢選択
        問13 行政手続法 問43 多肢選択
        問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
        問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
        問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
        問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
        問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
        問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
        問20 国家賠償法 問50 基礎知識
        問21 国家賠償法 問51 基礎知識
        問22 地方自治法 問52 行政書士法
        問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
        問24 地方自治法 問54 基礎知識
        問25 行政法 問55 基礎知識
        問26 公文書管理法 問56 基礎知識
        問27 民法 問57 個人情報保護法
        問28 民法 問58 著作権の関係上省略
        問29 民法 問59 著作権の関係上省略
        問30 民法 問60 著作権の関係上省略

        令和6年・2024|問35|民法

        共同相続における遺産分割に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

        1. 共同相続人中の特定の1人に相続財産中の不動産の所有権を取得させる一方で当該相続人が老親介護を負担する義務を負う内容の遺産分割協議がなされた場合において、当該相続人が遺産分割協議に定められた介護を行わない場合には、他の共同相続人は債務不履行を理由として遺産分割協議自体を解除することができる。
        2. 被相続人が、相続財産中の特定の銀行預金を共同相続人中の特定の1人に相続させる旨の遺言をしていた場合、当該預金債権の価額が当該相続人の法定相続分の価額を超えるときには、当該預金債権の承継に関する債権譲渡の対抗要件を備えなければ、当該預金債権の承継を第三者に対抗できない。
        3. 共同相続人の1人が、相続開始後遺産分割の前に、被相続人が自宅に保管していた現金を自己のために費消した場合であっても、遺産分割の対象となる財産は、遺産分割時に現存する相続財産のみである。
        4. 共同相続人は、原則としていつでも協議によって遺産の全部または一部の分割をすることができ、協議が調わないときは、家庭裁判所に調停または審判の申立てをすることができるが、相続開始から10年以上放置されていた遺産の分割については、家庭裁判所に対して調停または審判の申立てを行うことができない。
        5. 相続財産中に銀行預金が含まれる場合、当該預金は遺産分割の対象となるから、相続開始後遺産分割の前に、当該預金口座から預金の一部を引き出すためには共同相続人の全員の同意が必要であり、目的、金額のいかんを問わず相続人の1人が単独で行うことは許されない。

        >解答と解説はこちら


        【答え】:2
        【解説】
        1.共同相続人中の特定の1人に相続財産中の不動産の所有権を取得させる一方で当該相続人が老親介護を負担する義務を負う内容の遺産分割協議がなされた場合において、当該相続人が遺産分割協議に定められた介護を行わない場合には、他の共同相続人は債務不履行を理由として遺産分割協議自体を解除することができる。

        1・・・妥当でない

        このような遺産分割協議において、特定の相続人に不動産を取得させ、その代わりに介護の負担を義務づけることは、協議内容として可能です。しかし、その義務(介護)を履行しないからといって、遺産分割協議そのものを解除することはできません

        これは、次の最高裁判例(最判平成元年2月9日)に基づきます。

        共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が他の相続人に対して協議において負担した債務を履行しないときであっても、他の相続人は民法541条(債務不履行による解除)によって遺産分割協議を解除することができない。

        まず、遺産分割協議は、一度成立すれば、その効力は相続開始時に遡って確定(民法909条)します。

        協議成立後は、債務を負担した相続人と、その履行を期待する他の相続人との債権債務関係が残るのみとなります。

        もし解除を認めると、分割がなかったことになり、法的安定性を害する再分割が必要になってしまうため、解除は認められません。

        したがって、介護義務を怠ったからといって、遺産分割協議そのものを解除することはできず、介護義務については別途債務不履行として損害賠償請求などの対応を検討することになります。

        2.被相続人が、相続財産中の特定の銀行預金を共同相続人中の特定の1人に相続させる旨の遺言をしていた場合、当該預金債権の価額が当該相続人の法定相続分の価額を超えるときには、当該預金債権の承継に関する債権譲渡の対抗要件を備えなければ、当該預金債権の承継を第三者に対抗できない。

        2・・・妥当である

        この問題は、遺言によって特定の相続人に銀行預金などの可分債権を承継させる場合に、その承継の対外的効力(対抗要件)が必要かどうかが問われています。

        民法899条の2第1項
        相続による権利の承継は、遺産の分割によるものであるか否かを問わず、法定相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

        つまり、被相続人が「○○銀行の預金を全部、長男に相続させる」といった内容の遺言をした場合でも、その金額が長男の法定相続分を超える部分については、他の共同相続人や第三者に対して預金の権利を主張するには、債権譲渡と同様の対抗要件(たとえば銀行への通知や承諾など)を備える必要があります

        債権譲渡の対抗要件(民法467条)

        • 債務者(=ここでは銀行)に対する通知(確定日付があるもの)
          または
        • 債務者の承諾(確定日付がある証書による)

        が必要となります。

        よって、預金債権の承継においてその価額が法定相続分を超える場合には、債権譲渡と同様の対抗要件を備えなければ、第三者に対してその承継を主張することはできません。

        本肢は妥当であるといえます。

        3.共同相続人の1人が、相続開始後遺産分割の前に、被相続人が自宅に保管していた現金を自己のために費消した場合であっても、遺産分割の対象となる財産は、遺産分割時に現存する相続財産のみである。

        3・・・妥当でない

        遺産分割の対象となる財産については、原則として「相続開始時に被相続人に属していた財産」が対象です(民法898条)。

        ただし、相続開始後に相続人の1人が遺産(たとえば現金など)を処分してしまったとしても、その財産が「すでにない」からといって、絶対に分割の対象外になるわけではありません

        ここで重要になるのが、次の条文です。

        民法906条の2第1項(遺産の範囲の調整):
        相続人全員の同意があるときは、既に処分された財産その他現存しない財産を、遺産分割時に現存するものとみなして遺産分割の対象とすることができる。

        つまり、他の相続人全員が同意すれば、処分された現金なども「あるもの」とみなして分割の対象にできるのです。

        したがって、「遺産分割の対象は、現存する財産のみ」というのは妥当でないといえます。

        このような制度があるのは、処分された財産についても相続人間で公平な分割がなされるようにするためです。

        よって、処分された現金であっても、相続人全員の同意があれば遺産分割の対象とすることができるため、
        「遺産分割の対象は現存する財産に限る」という本肢の内容は妥当でないといえます。

        4.共同相続人は、原則としていつでも協議によって遺産の全部または一部の分割をすることができ、協議が調わないときは、家庭裁判所に調停または審判の申立てをすることができるが、相続開始から10年以上放置されていた遺産の分割については、家庭裁判所に対して調停または審判の申立てを行うことができない。

        4・・・妥当でない

        この問題は、遺産分割の申立てがいつまでできるのか、つまり「時効のような制限があるか?」という点を問うものです。

        結論から言えば、遺産分割に申立期間の制限はありません。

        民法907条(遺産の分割)

        • 共同相続人は、いつでも協議によって、遺産の全部または一部の分割をすることができる。
        • 協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人は、家庭裁判所に対してその分割を請求することができる。

        つまり、相続開始から10年、20年、あるいはそれ以上経っていても遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に調停や審判の申立てをすることが可能です。

        特に「法定の期限」や「時効」のような制限は設けられていません。

        したがって、本肢の内容は妥当でないです。

        本肢は、関連ポイントが重要なので、個別指導で解説します。

        5.相続財産中に銀行預金が含まれる場合、当該預金は遺産分割の対象となるから、相続開始後遺産分割の前に、当該預金口座から預金の一部を引き出すためには共同相続人の全員の同意が必要であり、目的、金額のいかんを問わず相続人の1人が単独で行うことは許されない。

        5・・・妥当でない

        まず原則として、銀行預金(預貯金債権)は、可分債権であるにもかかわらず、遺産分割の対象とされます(最高裁平成28年12月19日判決など)。
        そのため、遺産分割が完了するまでは、相続人が勝手に自分の法定相続分に応じた金額を引き出すことは原則としてできません。

        しかし、例外として、相続人が単独で一定額まで引き出すことを可能とする制度が設けられています。

        民法909条の2(預貯金の一部払戻制度):
        各共同相続人は、相続開始時の預貯金債権のうち、
        債権額の1/3 × 当該相続人の法定相続分」に相当する額まで、
        一定の上限を超えない範囲内で、家庭裁判所の関与なしに単独で引き出すことができる

        この制度は、葬儀費用や生活資金といった当面の資金需要に対応するために設けられたものです。

        なお、具体的な上限額は法務省令により定められており、銀行ごとに150万円が上限(令和5年3月現在)とされています。

        よって、預金は遺産分割の対象となるため、原則として相続人単独で引き出すことはできませんが、
        一定の金額までは例外的に単独で引き出すことが可能です。
        よって「目的・金額のいかんを問わず、単独で行うことは許されない」とする本肢の内容は妥当でないです。

         


        令和6年(2024年)過去問

        問1 基礎法学 問31 民法
        問2 基礎法学 問32 民法
        問3 憲法 問33 民法
        問4 憲法 問34 民法
        問5 憲法 問35 民法
        問6 憲法 問36 商法
        問7 憲法 問37 会社法
        問8 行政法 問38 会社法
        問9 行政法 問39 会社法
        問10 行政法 問40 会社法
        問11 行政手続法 問41 多肢選択
        問12 行政手続法 問42 多肢選択
        問13 行政手続法 問43 多肢選択
        問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
        問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
        問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
        問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
        問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
        問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
        問20 国家賠償法 問50 基礎知識
        問21 国家賠償法 問51 基礎知識
        問22 地方自治法 問52 行政書士法
        問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
        問24 地方自治法 問54 基礎知識
        問25 行政法 問55 基礎知識
        問26 公文書管理法 問56 基礎知識
        問27 民法 問57 個人情報保護法
        問28 民法 問58 著作権の関係上省略
        問29 民法 問59 著作権の関係上省略
        問30 民法 問60 著作権の関係上省略