令和3年度(2021年度)過去問

令和3年・2021|問14|行政不服審査法

行政不服審査法が定める執行停止に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 審査請求人の申立てがあった場合において、処分、処分の執行または手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、本案について理由がないとみえるときでも、審査庁は、執行停止をしなければならない。
  2. 審査庁は、いったんその必要性を認めて執行停止をした以上、その後の事情の変更を理由として、当該執行停止を取り消すことはできない。
  3. 審理員は執行停止をすべき旨の意見書を審査庁に提出することができ、提出を受けた当該審査庁は、速やかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない。
  4. 再調査の請求は、処分庁自身が簡易な手続で事実関係の調査をする手続であるから、再調査の請求において、請求人は執行停止を申し立てることはできない。
  5. 審査庁が処分庁または処分庁の上級行政庁のいずれでもない場合には、審査庁は、審査請求人の申立てにより執行停止を行うことはできない。

>解答と解説はこちら


【答え】:3
【解説】
1.審査請求人の申立てがあった場合において、処分、処分の執行または手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、本案について理由がないとみえるときでも、審査庁は、執行停止をしなければならない。

1・・・誤り

処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより又は職権で、「処分の効力、処分の執行又は手続の続行」の全部又は一部の停止その他の措置(執行停止)をとることができます(行政不服審査法25条2項)。

そして、審査請求人の申立てがあった場合において、「処分、処分の執行又は手続の続行」により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査庁は、執行停止をしなければならない
ただし、「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」、又は「本案について理由がないとみえるとき」は、執行停止をしなくてもよいです(行政不服審査法25条4項)。

つまり、「本案について理由がないとみえるときでも、審査庁は、執行停止をしなければならない」は誤りです。「本案について理由がないとみえるとき(審査請求で棄却裁決が出る場合)」は、執行停止をしなくてもよいので誤りです。

 

2.審査庁は、いったんその必要性を認めて執行停止をした以上、その後の事情の変更を理由として、当該執行停止を取り消すことはできない。

2・・・誤り

執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができます(行政不服審査法26条)。

つまり、審査庁は、執行停止をした後に、その後の事情の変更を理由として、当該執行停止を取り消すことも可能なので誤りです。

 

3.審理員は執行停止をすべき旨の意見書を審査庁に提出することができ、提出を受けた当該審査庁は、速やかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない。

3・・・正しい

「執行停止の申立てがあったとき」、又は「審理員から執行停止をすべき旨の意見書が提出されたとき」は、審査庁は、速やかに、執行停止をするかどうかを決定しなければなりません(行政手続法25条7項)。

よって、本問は正しいです。

 

4.再調査の請求は、処分庁自身が簡易な手続で事実関係の調査をする手続であるから、再調査の請求において、請求人は執行停止を申し立てることはできない。

4・・・誤り

処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより又は職権で、「処分の効力、処分の執行又は手続の続行」の全部又は一部の停止その他の措置(執行停止)をとることができます(行政不服審査法25条2項)。

第25条(第3項を除く。)の規定は、再調査の請求について準用する(行政不服審査法61条)ので、再調査請求の請求人は執行停止を申し立てることはできます。

よって、誤りです。

 

5.審査庁が処分庁または処分庁の上級行政庁のいずれでもない場合には、審査庁は、審査請求人の申立てにより執行停止を行うことはできない。

5・・・誤り

処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴取した上、執行停止をすることができます

ただし、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止以外の措置をとることはできません(行政不服審査法25条3項)。

つまり、審査庁が処分庁または処分庁の上級行政庁のいずれでもない場合でも、審査庁は、審査請求人の申立てにより執行停止を行うことはできるので、誤りです。

ただし書きの部分については、理解が必要なので個別指導で解説します!

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令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問15|行政不服審査法

再調査の請求について定める行政不服審査法の規定に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合に審査請求を行ったときは、法律に再調査の請求ができる旨の規定がある場合でも、審査請求人は、当該処分について再調査の請求を行うことができない。
  2. 行政庁の処分につき処分庁に対して再調査の請求を行ったときでも、法律に審査請求ができる旨の規定がある場合には、再調査の請求人は、当該再調査の請求と並行して、審査請求もすることができる。
  3. 法令に基づく処分についての申請に対して、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁が何らの処分をもしない場合、申請者は当該不作為につき再調査の請求を行うことができる。
  4. 再調査の請求については、審理員による審理または行政不服審査会等への諮問は必要ないが、処分庁は決定を行った後に、行政不服審査会等への報告を行う必要がある。
  5. 再調査の請求においては、請求人または参加人が口頭で意見を述べる機会を与えられるのは、処分庁がこれを必要と認めた場合に限られる。

>解答と解説はこちら


【答え】:1
【解説】
1.行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合に審査請求を行ったときは、法律に再調査の請求ができる旨の規定がある場合でも、審査請求人は、当該処分について再調査の請求を行うことができない。

1・・・正しい

行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができます。

ただし、当該処分について審査請求をしたときは、再調査の請求をすることはできなくなります(行政不服審査法5条1項)。

よって、本問は正しいです。

 

2.行政庁の処分につき処分庁に対して再調査の請求を行ったときでも、法律に審査請求ができる旨の規定がある場合には、再調査の請求人は、当該再調査の請求と並行して、審査請求もすることができる。

2・・・誤り

再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定を経た後でなければ審査請求をすることができません行政不服審査法5条2項本文)。

よって、本問のように「再調査の請求と並行して、審査請求をすること」はできないので誤りです。

関連ポイントについては、個別指導で解説します!

 

3・・・誤り

行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができます(行政不服審査法5条1項本文)。

つまり、再調査の請求ができるのは「処分」があった場合であり、処分がなされていない「不作為」の場合、再調査の請求はできません

 

4.再調査の請求については、審理員による審理または行政不服審査会等への諮問は必要ないが、処分庁は決定を行った後に、行政不服審査会等への報告を行う必要がある。

4・・・誤り

【前半部分】 再調査の請求については、審理員に関する規定(行政不服審査法9条1~3項)、行政不服審査会等への諮問に関する規定(行政不服審査法43条)は準用されていません(行政不服審査法61条)。よって、「再調査の請求については、審理員による審理または行政不服審査会等への諮問は必要ない」は正しいです。

【後半部分】 「処分庁は決定を行った後に、行政不服審査会等への報告を行う必要がある」というのは条文にないので、誤りです。

再調査の請求に対する決定を出した後に、行政不服審査会等に報告する必要はありません。

 

5.再調査の請求においては、請求人または参加人が口頭で意見を述べる機会を与えられるのは、処分庁がこれを必要と認めた場合に限られる。

5・・・誤り

審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審理員は、当該申立てをした者に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、意見を述べる機会を与えなくてもよいです(行政不服審査法31条1項)。

この規定は再調査請求にも準用されています(行政不服審査法61条)。

つまり、再調査の請求においては、請求人または参加人が口頭で意見を述べる機会を与えられるのは、請求人または参加人が口頭で意見を述べる機会を与えてください!と申立をした場合です(原則)。

よって、「処分庁がこれを必要と認めた場合に限られる」は、誤りです。

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令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問13|行政手続法

行政指導についての行政手続法の規定に関する次のア~エの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア.行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならないとされているが、その定めが適用されるのは当該行政指導の根拠規定が法律に置かれているものに限られる。

イ.行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、行政手続法が定める事項を示さなければならず、当該行政指導が口頭でされた場合において、これら各事項を記載した書面の交付をその相手方から求められたときは、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。

ウ.行政指導をすることを求める申出が、当該行政指導をする権限を有する行政機関に対して適法になされたものであったとしても、当該行政機関は、当該申出に対して諾否の応答をすべきものとされているわけではない。

エ.地方公共団体の機関がする行政指導については、その根拠となる規定が法律に置かれているものであれば、行政指導について定める行政手続法の規定は適用される。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

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【答え】:3(イウが正しい)

【解説】
ア.行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならないとされているが、その定めが適用されるのは当該行政指導の根拠規定が法律に置かれているものに限られる。

ア・・・誤り

行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはなりません(行政手続法32条2項)。

上記の通り「行政指導」について、「根拠が法律にある行政指導に限定する」旨の規定はないので、すべての行政指導に適用されます。

よって、誤りです。

 

イ.行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、行政手続法が定める事項を示さなければならず、当該行政指導が口頭でされた場合において、これら各事項を記載した書面の交付をその相手方から求められたときは、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。

イ・・・正しい

行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、一定事項を示さなければなりません行政手続法35条2項)。

そして、行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならりません行政手続法35条3項)。

よって、本肢は正しいです。

 

ウ.行政指導をすることを求める申出が、当該行政指導をする権限を有する行政機関に対して適法になされたものであったとしても、当該行政機関は、当該申出に対して諾否の応答をすべきものとされているわけではない。

ウ・・・正しい

行政庁又は行政機関は、行政指導をすることを求める申出があったときは、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、当該処分又は行政指導をしなければなりません行政手続法36条の3第3項)。

つまり、「処分や行政指導」を行えばよいだけであり、当該申出に対して「諾否の応答」はしなくてもよいです。

よって正しいです。

この点は理解が必要ですし、かつ、関連ポイントも頭に入れた方がよいので、個別指導で解説します!

エ・・・誤り

下記4つについては、行政手続法は適用除外です(行政手続法3条3項)。

  1. 地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。
  2. 地方公共団体の機関がする行政指導
  3. 地方公共団体の機関に対する届出(根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)
  4. 地方公共団体の機関が命令等を定める行為

行政手続法3条3項2号の通り、地方公共団体の機関がする行政指導は、根拠が法律にあるものに限らず、すべての行政指導について行政手続法の適用除外です。よって、誤りです。

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令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問12|行政手続法

理由の提示に関する次の記述のうち、行政手続法の規定または最高裁判所の判例に照らし、妥当なものは
どれか。

  1. 行政庁は、申請により求められた許認可等の処分をする場合、当該申請をした者以外の当該処分につき利害関係を有するものと認められる者から請求があったときは、当該処分の理由を示さなければならない。
  2. 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合でも、当該申請が法令に定められた形式上の要件に適合しないことを理由とするときは、申請者に対して当該処分の理由を示す必要はない。
  3. 行政庁は、理由を示さないで不利益処分をすべき差し迫った必要がある場合であれば、処分と同時にその理由を示す必要はなく、それが困難である場合を除き、当該処分後の相当の期間内にこれを示せば足りる。
  4. 公文書の非開示決定に付記すべき理由については、当該公文書の内容を秘匿する必要があるため、非開示の根拠規定を示すだけで足りる。
  5. 旅券法に基づく一般旅券の発給拒否通知書に付記すべき理由については、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して拒否されたかに関し、その申請者が事前に了知しうる事情の下であれば、単に発給拒否の根拠規定を示すだけで足りる。

>解答と解説はこちら


【答え】:3
【解説】
1.行政庁は、申請により求められた許認可等の処分をする場合、当該申請をした者以外の当該処分につき利害関係を有するものと認められる者から請求があったときは、当該処分の理由を示さなければならない。

1・・・妥当ではない

行政庁は、申請により求められた許認可等の処分をする場合、許認可処分をする理由について、利害関係人から請求があったとしても示す必要はありません。本問のような内容は条文に規定されていません。

よって、妥当ではありません。

 

2.行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合でも、当該申請が法令に定められた形式上の要件に適合しないことを理由とするときは、申請者に対して当該処分の理由を示す必要はない。

2・・・妥当ではない

行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければなりません

ただし、(例外として)「法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合」であって、「当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるとき」は、申請者の求めがあったときにこれを示せば足ります(行政手続法8条1項)。

よって、本問の場合、理由を示す必要がある場合もあるので妥当ではありません。

この問題は問題文と解説の理解ができないと、答えまで導けないので、問題文と解説の理解の仕方については個別指導で解説します!

 

3.行政庁は、理由を示さないで不利益処分をすべき差し迫った必要がある場合であれば、処分と同時にその理由を示す必要はなく、それが困難である場合を除き、当該処分後の相当の期間内にこれを示せば足りる。

3・・・妥当

行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、同時に理由を示す必要はありませんが、「当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き」、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければなりません。よって、本問は妥当です!

 

4.公文書の非開示決定に付記すべき理由については、当該公文書の内容を秘匿する必要があるため、非開示の根拠規定を示すだけで足りる。

4・・・妥当ではない

判例(最判平4.12.10)によると

『公文書の非開示決定通知書に付記すべき理由としては、開示請求者において、本条例九条各号所定の非開示事由のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得る(分かる)ものでなければならず

単に非開示の根拠規定を示すだけでは、当該公文書の種類、性質等とあいまって開示請求者がそれらを当然知り得るような場合は別として、・・・理由付記としては十分でないといわなければならない。』

としています。

つまり、「公文書の非開示決定に付記すべき理由」は、開示請求者が、非開示事由の条文のどこに該当して非開示なのか理解できることが必要、単に非開示の根拠条文を示すだけでは、原則、理由の付記としては不十分ということです。

 

5.旅券法に基づく一般旅券の発給拒否通知書に付記すべき理由については、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して拒否されたかに関し、その申請者が事前に了知しうる事情の下であれば、単に発給拒否の根拠規定を示すだけで足りる。

5・・・妥当ではない

判例(最判昭60.1.22)によると

『一般旅券(パスポート)発給拒否通知書に付記すべき理由としては、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して一般旅券の発給が拒否されたかを、申請者においてその記載自体から了知しうる(分かる)ものでなければならず

単に発給拒否の根拠規定を示すだけでは、それによつて当該規定の適用の基礎となつた事実関係をも当然知りうるような場合を別として、旅券法の要求する理由付記として十分でないといわなければならない。』

としています。

つまり、「一般旅券(パスポート)発給拒否通知書に付記すべき理由」は、通知を受けた者が、「どのような事実」において、「どのような法令を適用」して、一般旅券(パスポート)の発給が拒否されたかを、通知内容から理解できることが必要、単に根拠条文を示すだけでは、原則、理由の付記としては不十分ということです。考え方としては、選択肢4と同じです!

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令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問11|行政手続法

行政手続法が定める意見公募手続に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案およびこれに関連する資料をあらかじめ公示して、広く一般の意見を求めなければならない。
  2. 命令等制定機関は、定めようとする命令等が、他の行政機関が意見公募手続を実施して定めた命令等と実質的に同一の命令等であったとしても、自らが意見公募手続を実施しなければならない。
  3. 命令等制定機関は、命令等を定める根拠となる法令の規定の削除に伴い当然必要とされる当該命令等の廃止をしようとするときでも、意見公募手続を実施しなければならない。
  4. 命令等制定機関は、意見公募手続の実施後に命令等を定めるときには所定の事項を公示する必要があるが、意見公募手続の実施後に命令等を定めないこととした場合には、その旨につき特段の公示を行う必要はない。
  5. 命令等制定機関は、所定の事由に該当することを理由として意見公募手続を実施しないで命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、命令等の題名及び趣旨について公示しなければならないが、意見公募手続を実施しなかった理由については公示する必要はない。

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【答え】:1
【解説】
1.命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案およびこれに関連する資料をあらかじめ公示して、広く一般の意見を求めなければならない。

1・・・正しい

命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見(情報を含む。以下同じ。)の提出先及び意見の提出のための期間を定めて広く一般の意見を求めなければなりません(行政手続法39条1項)。

よって、本問は正しいです!

 

2.命令等制定機関は、定めようとする命令等が、他の行政機関が意見公募手続を実施して定めた命令等と実質的に同一の命令等であったとしても、自らが意見公募手続を実施しなければならない。

2・・・誤り

命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、原則、意見公募手続が必要です(行政手続法39条1項)。

ただし、例外として、他の行政機関が意見公募手続を実施して定めた命令等と実質的に同一の命令等を定めようとするときは、意見公募手続が不要です(行政手続法39条4項5号)。

理由については、個別指導で解説いたします!

 

3.命令等制定機関は、命令等を定める根拠となる法令の規定の削除に伴い当然必要とされる当該命令等の廃止をしようとするときでも、意見公募手続を実施しなければならない。

3・・・誤り

命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、原則、意見公募手続が必要です(行政手続法39条1項)。

ただし、例外として、命令等を定める根拠となる法令の規定の削除に伴い当然必要とされる当該命令等の廃止をしようとするときは、意見公募手続が不要です(行政手続法39条4項5号)。

理由については、個別指導で解説いたします!

 

4.命令等制定機関は、意見公募手続の実施後に命令等を定めるときには所定の事項を公示する必要があるが、意見公募手続の実施後に命令等を定めないこととした場合には、その旨につき特段の公示を行う必要はない。

4・・・誤り

命令等制定機関は、意見公募手続を実施したにもかかわらず命令等を定めないこととした場合には、「命令等を定めない旨」並びに「命令等の題名」及び「命令等の案の公示の日」を速やかに公示しなければなりません(行政手続法43条4項)。

よって、「その旨(命令等を定めなかった旨)につき特段の公示を行う必要はない」というのは誤りです。

 

5.命令等制定機関は、所定の事由に該当することを理由として意見公募手続を実施しないで命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、命令等の題名及び趣旨について公示しなければならないが、意見公募手続を実施しなかった理由については公示する必要はない。

5・・・誤り

命令等制定機関は、例外に該当することにより意見公募手続を実施しないで命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、「命令等の題名及び趣旨」「意見公募手続を実施しなかった旨及びその理由」を公示しなければなりません(行政手続法43条5項本文)。

よって、「意見公募手続を実施しなかった理由については公示する必要はない」は誤りです!

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令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問10|行政法・行政立法

行政立法についての最高裁判所の判決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 国家公務員の退職共済年金受給に伴う退職一時金の利子相当額の返還について定める国家公務員共済組合法の規定において、その利子の利率を政令で定めるよう委任をしていることは、直接に国民の権利義務に変更を生じさせる利子の利率の決定という、本来法律で定めるべき事項を政令に委任するものであり、当該委任は憲法41条に反し許されない。
  2. 監獄法(当時)の委任を受けて定められた同法施行規則(省令)において、原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないと定めていることは、事物を弁別する能力のない幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、法律によらないで被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該施行規則の規定は無効である。
  3. 薬事法(当時)の委任を受けて、同法施行規則(省令)において一部の医薬品について郵便等販売をしてはならないと定めることについて、当該施行規則の規定が法律の委任の範囲を逸脱したものではないというためには、もっぱら法律中の根拠規定それ自体から、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が明確に読み取れることを要するものというべきであり、その判断において立法過程における議論を考慮したり、根拠規定以外の諸規定を参照して判断をすることは許されない。
  4. 児童扶養手当法の委任を受けて定められた同法施行令(政令)の規定において、支給対象となる婚姻外懐胎児童について「(父から認知された児童を除く。)」という括弧書きが設けられていることについては、憲法に違反するものでもなく、父の不存在を指標として児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲を画することはそれなりに合理的なものともいえるから、それを設けたことは、政令制定者の裁量の範囲内に属するものであり、違憲、違法ではない。
  5. 銃砲刀剣類所持等取締法が、銃砲刀剣類の所持を原則として禁止した上で、美術品として価値のある刀剣類の所持を認めるための登録の方法や鑑定基準等を定めることを銃砲刀剣類登録規則(省令)に委任している場合に、当該登録規則において登録の対象を日本刀に限定したことについては、法律によらないで美術品の所有の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該登録規則の規定は無効である。

>解答と解説はこちら


【答え】:2
【解説】
1.国家公務員の退職共済年金受給に伴う退職一時金の利子相当額の返還について
定める国家公務員共済組合法の規定において、その利子の利率を政令で定めるよう委任をしていることは、直接に国民の権利義務に変更を生じさせる利子の利率の決定という、本来法律で定めるべき事項を政令に委任するものであり、当該委任は憲法41条に反し許されない。

1・・・妥当ではない

判例(最判平27.12.14)によると

『国公共済法附則12条の12は、同一の組合員期間に対する退職一時金と退職共済年金等との重複支給を避けるための調整措置として、従来の年金額からの控除という方法を改め、財政の均衡を保つ見地から、脱退一時金の金額の算定方法に準じ、退職一時金にその予定運用収入に相当する額を付加して返還させる方法を採用したものと解される。

このような同条の趣旨等に照らすと、同条4項は、退職一時金に付加して返還すべき利子の利率について、予定運用収入に係る利率との均衡を考慮して定められる利率とする趣旨でこれを政令に委任したものと理解することができる

中略

したがって、国公共済法附則12条の12第4項及び厚年法改正法附則30条1項は、退職一時金に付加して返還すべき利子の利率の定めを白地で包括的に政令に委任するものということはできず憲法41条及び73条6号に違反するものではないと解するのが相当である。』

と判示しています。よって、本肢は「その利子の利率を政令で定めるよう委任をしていることは、直接に国民の権利義務に変更を生じさせる利子の利率の決定という、本来法律で定めるべき事項を政令に委任するものであり、当該委任は憲法41条に反し許されない。」が妥当ではありません。本問の政令に委任したことは、憲法に違反しません。

この点は、分かりづらい内容なので、個別指導で解説します!

 

2.監獄法(当時)の委任を受けて定められた同法施行規則(省令)において、原
則として被勾留者と幼年者との接見を許さないと定めていることは、事物を弁別する能力のない幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、法律によらないで被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該施行規則の規定は無効である。

2・・・妥当

判例(最判平3.7.9)によると

『旧監獄法50条は、「接見の立ち合い、信書の検閲その他接見及び信書に関する制限は法務省令をもって定める」と規定し、命令(法務省令)をもって、面会の立会、場所、時間、回数等、面会の態様についてのみ必要な制限をすることができる旨を定めている。

そして、命令によって接見許可の基準そのものを変更することは許されない。

ところが、規則120条は、「14歳末満の者には在監者と接見することを許さない」と規定し、旧監獄法施行規則124条は「所長において処遇上その他必要があると認めるときは旧監獄法施行規則120条の制限を免除できる」と規定している。

これによれば、規則120条が原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないこととする一方で、規則124条がその例外として限られた場合に監獄の長の裁量によりこれを許すこととしていることが明らかである。

しかし、これらの規定は、たとえ事物を弁別する能力の未発達な幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、それ自体、法律によらないで、被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、法50条の委任の範囲を超えるものといわなければならない。』

と判示しており、「法の委任の範囲を超えるものといえ、当該施行規則の規定は無効」です。

よって、本問は妥当です。

 

3.薬事法(当時)の委任を受けて、同法施行規則(省令)において一部の医薬品
について郵便等販売をしてはならないと定めることについて、当該施行規則の規定が法律の委任の範囲を逸脱したものではないというためには、もっぱら法律中の根拠規定それ自体から、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が明確に読み取れることを要するものというべきであり、その判断において立法過程における議論を考慮したり、根拠規定以外の諸規定を参照して判断をすることは許されない。

3・・・妥当ではない

判例(最判平25.1.11)によると

『旧薬事法の下では違法とされていなかった郵便等販売に対する新たな規制は,郵便等販売(医薬品のネット販売)をその事業の柱としてきた者の職業活動の自由を相当程度制約するものであることが明らかである。これらの事情の下で,厚生労働大臣が制定した郵便等販売を規制する新施行規則の規定が,これを定める根拠となる新薬事法の趣旨に適合するもの(行政手続法38条1項)であり,その委任の範囲を逸脱したものではないというためには立法過程における議論をもしんしゃくした上で,新薬事法36条の5及び36条の6を始めとする新薬事法中の諸規定を見て,そこから,郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が,上記規制の範囲や程度等に応じて明確に読み取れることを要するものというべきである。』

と判示しています。

よって、本問の「その判断において立法過程における議論を考慮したり、根拠規定以外の諸規定を参照して判断をすることは許されない」というのは妥当ではありません。

正しくは「その判断において立法過程における議論を考慮した上で判断する」です。

 

4.児童扶養手当法の委任を受けて定められた同法施行令(政令)の規定において、支給対象となる婚姻外懐胎児童について「(父から認知された児童を除く。)」という括弧書きが設けられていることについては、憲法に違反するものでもなく、父の不存在を指標として児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲を画することはそれなりに合理的なものともいえるから、それを設けたことは、政令制定者の裁量の範囲内に属するものであり、違憲、違法ではない。

4・・・妥当ではない

判例(最判平14.1.31)によると

『施行令1条の2第3号が「父から認知された婚姻外懐胎児童」を本件括弧書により児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲から除外したことは、法の委任の趣旨に反し本件括弧書は法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効と解すべきである。そうすると,その余の点について判断するまでもなく、本件括弧書を根拠としてされた本件処分は違法といわざるを得ない。』

と判示しています。

よって、本問は『児童扶養手当法の委任を受けて定められた同法施行令(政令)の規定において、支給対象となる婚姻外懐胎児童について「(父から認知された児童を除く。)」という括弧書きが設けられていることについては、憲法に違反ものでもなく』となっており、妥当ではないです。憲法違反です。

 

5.銃砲刀剣類所持等取締法が、銃砲刀剣類の所持を原則として禁止した上で、美
術品として価値のある刀剣類の所持を認めるための登録の方法や鑑定基準等を定めることを銃砲刀剣類登録規則(省令)に委任している場合に、当該登録規則において登録の対象を日本刀に限定したことについては、法律によらないで美術品の所有の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該登録規則の規定は無効である。

5・・・妥当ではない

判例(最判平2.2.1)によると

『規則が文化財的価値のある刀剣類の鑑定基準として、前記のとおり美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定め、この基準に合致するもののみを我が国において前記の価値を有するものとして登録の対象にすべきものとしたことは、法一四条一項の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱する無効のものということはできない。』

と判示しています。

よって、本問は「法律によらないで美術品の所有の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該登録規則の規定は無効である」は妥当ではありません。

正しくは「法律の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱する無効のものということはできない。」です。

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令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問8|行政法

法の一般原則に関わる最高裁判所の判決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 地方公共団体が、将来にわたって継続すべき一定内容の施策を決定した場合、その後社会情勢が変動したとしても、当該施策を変更することは住民や関係者の信頼保護の観点から許されないから、当該施策の変更は、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして、それにより損害を被る者との関係においては、違法となる。
  2. 租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、租税法規に適合する課税処分について、法の一般原則である信義則の法理の適用がなされることはなく、租税法規の適用における納税者の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合であっても、課税処分が信義則の法理に反するものとして違法となることはない。
  3. 法の一般原則として権利濫用の禁止が行政上の法律関係において例外的に適用されることがあるとしても、その適用は慎重であるべきであるから、町からの申請に基づき知事がなした児童遊園設置認可処分が行政権の著しい濫用によるものであっても、それが、地域環境を守るという公益上の要請から生じたものである場合には、当該処分が違法とされることはない。
  4. 地方自治法により、金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利につきその時効消滅については援用を要しないとされているのは、当該権利の性質上、法令に従い適正かつ画一的にこれを処理することが地方公共団体の事務処理上の便宜および住民の平等的取扱の理念に資するものであり、当該権利について時効援用の制度を適用する必要がないと判断されたことによるものと解されるから、普通地方公共団体に対する債権に関する消滅時効の主張が信義則に反し許されないとされる場合は、極めて限定されるものというべきである。
  5. 国家公務員の雇傭関係は、私人間の関係とは異なる特別の法律関係において結ばれるものであり、国には、公務の管理にあたって公務員の生命および健康等を危険から保護するよう配慮する義務が認められるとしても、それは一般的かつ抽象的なものにとどまるものであって、国家公務員の公務上の死亡について、国は、法律に規定された補償等の支給を行うことで足り、それ以上に、上記の配慮義務違反に基づく損害賠償義務を負うことはない。

>解答と解説はこちら


【答え】:4
【解説】
1.地方公共団体が、将来にわたって継続すべき一定内容の施策を決定した場合、その後社会情勢が変動したとしても、当該施策を変更することは住民や関係者の信頼保護の観点から許されないから、当該施策の変更は、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして、それにより損害を被る者との関係においては、違法となる。

1・・・妥当ではない

判例(最判昭56.1.27:宜野座工場誘致事件)によると
『地方公共団体の施策を住民の意思に基づいて行うべきものとするいわゆる住民自治の原則は地方公共団体の組織及び運営に関する基本原則であり、また、地方公共団体のような行政主体が一定内容の将来にわたつて継続すべき施策を決定した場合でも、右施策が社会情勢の変動等に伴つて変更されることがあることはもとより当然であつて、地方公共団体は原則として右決定に拘束されるものではない。』
としています。

つまり、問題文の「施策を変更することは住民や関係者の信頼保護の観点から許されない」が妥当ではありません。

詳細解説は個別指導で解説します!

 

2.租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、租税法規に適合
する課税処分について、法の一般原則である信義則の法理の適用がなされることはなく、租税法規の適用における納税者の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合であっても、課税処分が信義則の法理に反するものとして違法となることはない。

2・・・妥当ではない

判例(最判昭62.10.30)によると

『租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義則の法理の適用により、右課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、右法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである。』

よって、問題文の後半部分「租税法規の適用における納税者の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合であっても、課税処分が信義則の法理に反するものとして違法となることはない。」が妥当ではありません。

正しくは「租税法規の適用における納税者の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合、課税処分が信義則の法理に反するものとして違法となることがある」です。

 

3.法の一般原則として権利濫用の禁止が行政上の法律関係において例外的に適用
されることがあるとしても、その適用は慎重であるべきであるから、町からの申請に基づき知事がなした児童遊園設置認可処分が行政権の著しい濫用によるものであっても、それが、地域環境を守るという公益上の要請から生じたものである場合には、当該処分が違法とされることはない。

3・・・妥当ではない

「トルコぶろ」とは、いわゆる「ソープランド」です。

判例(最判昭和53.6.16)によると

『本来、児童遊園は、児童に健全な遊びを与えてその健康を増進し、情操をゆたか
にすることを目的とする施設なのであるから、児童遊園設置の認可申請、同認可処分もその趣旨に沿つてなされるべきものであつて、前記のような、被告会社のトルコぶろ営業の規制を主たる動機、目的とするa町のb児童遊園設置の認可申請を容れた本件認可処分は、行政権の濫用に相当する違法性があり、被告会社のトルコぶろ営業に対しこれを規制しうる効力を有しないといわざるをえない』として児童遊園設置認可処分は違法とされました。

つまり、本問の「町からの申請に基づき知事がなした児童遊園設置認可処分が行政権の著しい濫用によるものであっても、それが、地域環境を守るという公益上の要請から生じたものである場合には、当該処分が違法とされることはない。」は妥当ではありません。

正しくは下記の通りです。

「町からの申請に基づき知事がなした児童遊園設置認可処分が行政権の著しい濫用によるものである場合当該処分が違法とされる。」

 

4.地方自治法により、金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利につきそ
の時効消滅については援用を要しないとされているのは、当該権利の性質上、法令に従い適正かつ画一的にこれを処理することが地方公共団体の事務処理上の便宜および住民の平等的取扱の理念に資するものであり、当該権利について時効援用の制度を適用する必要がないと判断されたことによるものと解されるから、普通地方公共団体に対する債権に関する消滅時効の主張が信義則に反し許されないとされる場合は、極めて限定されるものというべきである。

4・・・妥当

「健康管理手当の支給認定を受けた被爆者」が、外国へ出国したことに伴いその支給を打ち切られたため未支給の健康管理手当の支払を求めた事案において、

判例では、「支給義務者が地方自治法236条所定の消滅時効(5年で時効消滅すること)を主張することが信義則に反し許されない」と判示しました。

判例(最判平19.2.6)によると

『権利の時効消滅につき当該普通地方公共団体による援用を要しないこととしたのは,上記権利については,その性質上,法令に従い適正かつ画一的にこれを処理することが,当該普通地方公共団体の事務処理上の便宜及び住民の平等的取扱いの理念(同法10条2項参照)に資することから,時効援用の制度(民法145条)を適用する必要がないと判断されたことによるものと解される。このような趣旨にかんがみると,普通地方公共団体に対する債権に関する消滅時効の主張が信義則に反し許されないとされる場合は,極めて限定されるものというべきである。』

よって、本肢は妥当です。

この点は理解が必要なので、個別指導で解説します!

5・・・妥当ではない

判例(最判昭50.2.25)によると

『国と国家公務員(以下「公務員」という。)との間における主要な義務として、法は、「公務員が職務に専念すべき義務」並びに「法令及び上司の命令に従うべき義務」を負い、

国がこれに対応して公務員に対し「給与支払義務」を負うことを定めているが、国の義務は右の給付義務にとどまらず、国は、公務員に対し、・・・「安全配慮義務」を負つているものと解すべきである。』

つまり、本問は後半部分が妥当ではなく、正しくは「国家公務員の公務上の死亡について、国は、法律に規定された補償等の支給を行うことで足りず、それ以上に、上記の配慮義務違反に基づく損害賠償義務を負うこともある。」です。

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令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問9|行政法

行政裁量に関する次のア~オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.教科書検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの観点から行われる学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣(当時)の合理的な裁量に委ねられる。

イ.国家公務員に対する懲戒処分において、処分要件にかかる処分対象者の行為に関する事実は、平素から庁内の事情に通暁し、配下職員の指揮監督の衝にあたる者が最もよく把握しうるところであるから、懲戒処分の司法審査にあたり、裁判所は懲戒権者が当該処分に当たって行った事実認定に拘束される。

ウ.公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定は、水俣病の罹患の有無という現在または過去の確定した客観的事実を確認する行為であって、この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではない。

エ.生活保護法に基づく保護基準が前提とする「最低限度の生活」は、専門的、技術的な見地から客観的に定まるものであるから、保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否かを判断するに当たって、厚生労働大臣に政策的な見地からの裁量権は認められない。

オ.学校施設の目的外使用を許可するか否かについては、原則として、管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、集会の開催を目的とする使用申請で、そのような支障がないものについては、集会の自由の保障の趣旨に鑑み、これを許可しなければならない。

  1. ア・ウ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】
ア.教科書検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの観点から行われる学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣(当時)の合理的な裁量に委ねられる。

ア・・・妥当

判例(最判平5.3.16)によると

『(教科書)検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの様々な観点から多角的に行われるもので、学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣の合理的な裁量に委ねられるものというべきである。』

と判示しています。

よって、妥当です。

 

イ.国家公務員に対する懲戒処分において、処分要件にかかる処分対象者の行為に関する事実は、平素から庁内の事情に通暁し、配下職員の指揮監督の衝にあたる者が最もよく把握しうるところであるから、懲戒処分の司法審査にあたり、裁判所は懲戒権者が当該処分に当たって行った事実認定に拘束される。

イ・・・妥当ではない

判例(最判昭52.12.20)によると

『公務員につき、国公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきである。

・・・中略・・・、懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。

したがつて、裁判所が右の処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場に立つて懲戒処分をすべきであつたかどうか又はいかなる処分を選択すべきであつたかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである。』

と判示しています。

よって、本問は「懲戒処分の司法審査にあたり、裁判所は懲戒権者が当該処分に当たって行った事実認定に拘束される」という部分が妥当ではないです。

「関連ポイント」や「分かりやすい解説」は個別指導で解説いたします!

 

ウ.公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定は、水俣病の罹患の有無という現在または過去の確定した客観的事実を確認する行為であって、この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではない。

ウ・・・妥当

判例(最判平25.4.16)によると

『上記の認定(水俣病の認定)自体は,・・・客観的事象としての水俣病のり患の有無という現在又は過去の確定した客観的事実を確認する行為であって,この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではないというべきであり・・』

としています。

つまり、本問の「水俣病の認定は、水俣病の罹患の有無という現在または過去の確定した客観的事実を確認する行為であって、この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではない。」という内容は妥当です。

 

エ.生活保護法に基づく保護基準が前提とする「最低限度の生活」は、専門的、技術的な見地から客観的に定まるものであるから、保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否かを判断するに当たって、厚生労働大臣に政策的な見地からの裁量権は認められない。

エ・・・妥当ではない

判例(最判平24.2.28)によると

『生活保護法3条によれば,同法により保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないところ,同法8条2項によれば,保護基準は,要保護者(保護を必要とする者)の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これを超えないものでなければならない。

そうすると,仮に,老齢加算の一部又は全部についてその支給の根拠となっていた高齢者の特別な需要が認められないというのであれば,老齢加算の減額又は廃止をすることは,同項の規定に沿うところであるということができる。

もっとも,これらの規定にいう最低限度の生活は,抽象的かつ相対的な概念であって,その具体的な内容は,その時々における経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり,これを保護基準において具体化するに当たっては,高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである

したがって,保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し,最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否か及び高齢者に係る改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては,厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである。』

と判示しています。

よって、『「最低限度の生活」は、専門的、技術的な見地から客観的に定まるものであるから、・・・最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否かを判断するに当たって、厚生労働大臣に政策的な見地からの裁量権は認められない。』は妥当ではありません。

正しくは『「最低限度の生活」は、専門的、技術的な見地から客観的に定まるものではないから、・・・最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否かを判断するに当たって、厚生労働大臣に政策的な見地からの裁量権は認められる。』です。

 

オ.学校施設の目的外使用を許可するか否かについては、原則として、管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、集会の開催を目的とする使用申請で、そのような支障がないものについては、集会の自由の保障の趣旨に鑑み、これを許可しなければならない。

オ・・・妥当ではない

判例(最判平18.2.7)によると

学校施設は、一般公衆の共同使用に供することを主たる目的とする道路や公民館等の施設とは異なり、本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されていることからすれば、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。

すなわち、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。』

と判示しています。

よって、「集会の開催を目的とする使用申請で、そのような支障がないものについては、集会の自由の保障の趣旨に鑑み、これを許可しなければならない。」は妥当ではありません。

正しくは「集会の開催を目的とする使用申請で、そのような支障がないものについても、申請を拒否することができる。」です。

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令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問7|憲法

次の文章の空欄[ ア ]~[ オ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

国民投票制には種々の方法があるが、普通にこれを[ ア ]、[ イ ]及び[ ウ ]の三種に大別する。[ ア ]という言葉は、通俗には広く国民投票一般を意味するもののようにも用いられているが、その語の本来の意義は、代表者たる議会が一度議決した事柄を、主権者たる国民が確認又は否認して終局的に決定するということであって、国民表決という訳語も必ずしも正確ではない。・・・(中略)・・・。[ ア ]が議会の為したことの過誤を是正する手段であるのに対して、[ イ ]は議会が為さないことの怠慢を補完する方法である。即ち議会が国民の要望を採り上げないで、必要な立法を怠っている場合に、国民自ら法律案を提出し国民の投票によってその可否を決する制度である。・・・(中略)・・・。[ ウ ]即ち公務員を国民の投票によって罷免する制度は、元来選挙と表裏を成して人の問題を決定するもので、[ エ ]を前提とするものであるから、厳密な意味における[ オ ]ではないけれども、その思想及び制度の歴史に於いて他の国民投票制と形影相伴って発達して来たのみならず、その実行の方法に於いても、概ね共通しているから、通常やはり国民投票制の一種として取り扱われている。

(出典 河村又介「新憲法と民主主義」1948年から<原文の表記の一部を改めた。>」

  1. ア:レファレンダム イ:国民発案 ウ:国民拒否 エ:命令委任 オ:プレビシット
  2. ア:イニシアティブ イ:国民拒否 ウ:不信任投票 エ:直接民主制 オ:代議制
  3. ア:レファレンダム イ:国民発案 ウ:国民拒否 エ:代議制 オ:直接民主制
  4. ア:イニシアティブ イ:国民拒否 ウ:解職投票 エ:プレビシット オ:命令委任
  5. ア:レファレンダム イ:国民発案 ウ:解職投票 エ:代議制 オ:直接民主制

>解答と解説はこちら


【答え】:5

【解説】
ア.[ ア ]という言葉は、通俗には広く国民投票一般を意味するもののようにも用いられているが、その語の本来の意義は、代表者たる議会が一度議決した事柄を、主権者たる国民が確認又は否認して終局的に決定するということであって、国民表決という訳語も必ずしも正確ではない。

ア・・・レファレンダム
「国民投票」を意味する語句として正しいものは「レファレンダム」です。
「レファレンダム」とは、 憲法改正や法律の制定など重大な事項を定めるに際して、直接に国民投票によって賛否を求める制度。直接民主制の一形態で、日本では、憲法改正の際の国民投票や、地方自治特別法についての住民投票がレファレンダムに当たります。

政治における「イニシアチブ(国民発案ともいう)」とは、「国家・住民の発案権」を言います。

国や地方自治体の政治で、国民または住民の発言を認めることが「イニシアチブ」です。

イ.[ イ ]は議会が為さないことの怠慢を補完する方法である。即ち議会が国民の要望を採り上げないで、必要な立法を怠っている場合に、国民自ら法律案を提出し国民の投票によってその可否を決する制度である。
イ・・・国民発案
必要な立法を怠っている場合に、国民自ら法律案を提出することを「イニシアチブ(国民発案ともいう)」と言います。つまり、イには「国民発案」が入ります。

議会が仕事をしない(立法を作らない)といった、怠慢の状況の際に、国民自らが「このような法律を作るのはどうでしょうか?」と法律案を提出して、国民投票によってその可否を決する制度が「国民発案」です。

ウ.[ ウ ]即ち公務員を国民の投票によって罷免する制度

ウ・・・ 解職投票
「公務員を国民の投票によって罷免する制度」は「解職投票」です。

「不信任投票」新たに選出される候補者の信任を問うものです。
一方、解職投票は、既に任命されている者の解職を問うものである点で異なります。

エ.[ ウ:解職投票 ]即ち公務員を国民の投票によって罷免する制度は、元来選挙と表裏を成して人の問題を決定するもので、[ エ ]を前提とするものであるから、厳密な意味における[ オ ]ではないけれども、その思想及び制度の歴史に於いて他の国民投票制と形影相伴って発達して来たのみならず、その実行の方法に於いても、概ね共通しているから、通常やはり国民投票制の一種として取り扱われている。

エ・・・代議制
「代議制」は、選挙によって選ばれた代表者が国民の代表として政治を行うシステムです。ここで、選ばれた代表者を国民が罷免(やめさせる)のが「解職投票」です。

つまり、解職制度は、代議制を前提とするものと言えます。

分かりやすく言えば、「代議制で代表者を選んで → 解職投票で、選んだ代表者をやめさせる」という関係です。

オ.[ ウ:解職投票 ]即ち公務員を国民の投票によって罷免する制度は、元来選挙と表裏を成して人の問題を決定するもので、[ エ:代議制 ]を前提とするものであるから、厳密な意味における[ オ ]ではないけれども、その思想及び制度の歴史に於いて他の国民投票制と形影相伴って発達して来たのみならず、その実行の方法に於いても、概ね共通しているから、通常やはり国民投票制の一種として取り扱われている。

オ・・・直接民主
「解職投票は代議制を前提とするものであるため、厳密な意味における[ オ ]ではない。」と言っています。

代議制とは、国民が政治を行う代表者を選んで、その代表者が政治の意思決定を行います。

一方、直接民主制は、国民が自ら政治の意思決定を行います。例えば、国民投票や住民投票です。

つまり、「解職投票は代議制を前提とするものであるため、厳密な意味における[ オ:直接民主制 ]ではない。」ということです。

【参考知識】

「プレビシット」とは国民投票のことですが「レファレンダム(国民投票)」と少し異なる部分があります。

プレビシットは、政府や立法府がある政策を採用する前に、国民の意見を問い合わせる手段です。

一方、レファレンダムは、政府や立法府がある政策を採用した後に、国民による投票を行うことで、その政策の承認を得るかどうかを決定する手段です。

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令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和3年・2021|問6|憲法,国会

次の文章の空欄[ ア ]・[ イ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

憲法で、国会が国の「唯一の」立法機関であるとされるのは、憲法自身が定める例外を除き、[ ア ]、かつ、[ イ ]を意味すると解されている。
  1. ア:内閣の法案提出権を否定し(国会中心立法の原則) イ:議員立法の活性化を求めること(国会単独立法の原則)
  2. ア:国権の最高機関は国会であり(国会中心立法の原則) イ:内閣の独立命令は禁止されること(国会単独立法の原則)
  3. ア:法律は国会の議決のみで成立し(国会単独立法の原則) イ:天皇による公布を要しないこと(国会中心立法の原則)
  4. ア:国会が立法権を独占し(国会中心立法の原則) イ:法律は国会の議決のみで成立すること(国会単独立法の原則)
  5. ア:国権の最高機関は国会であり(国会中心立法の原則) イ:立法権の委任は禁止されること(国会単独立法の原則)

>解答と解説はこちら


【答え】:4
【解説】
憲法で、国会が国の「唯一の」立法機関であるとされるのは、憲法自身が定める例外を除き、[ア:国会が立法権を独占し(国会中心立法の原則)]、かつ、[イ:法律は国会の議決のみで成立すること(国会単独立法の原則)]を意味すると解されている。

本問は、「国会中心立法の原則」と「国会単独立法の原則」の内容を問う問題です。

国会中心立法の原則

「国会中心立法の原則」は、憲法によって特別定められたものを除いて、原則として国会を通して立法を行わなければならないという意味です。
例外として、両議院の規則制定権、内閣の政令制定権、裁判所の規則制定権、地方自治体の条例制定権は、国会を通さずに立法を行っているので、例外です。

国会単独立法の原則

「国会単独立法の原則」は、立法は国会だけで行い、国会以外の機関等は参加せずに、国会の議決だけで法律が成立するという原則をいいます。
例外としては、「①一の地方公共団体のみに適用される特別法への住民投票(95条)」「②憲法改正の国民投票(96条)」「③内閣の法案提出権」などがあり、①は、住民投票は、住民が参加しないと成立しない点で例外ですし、②は国民が参加しないと成立しない点で例外です。また、③については、法律の成立に内閣(行政機関)が参加している点で、例外といえます。

1.ア:内閣の法案提出権を否定し(国会中心立法の原則) イ:議員立法の活性化を求めること(国会単独立法の原則)

1・・・妥当ではない
「内閣の法案提出権」を否定しているのは、「国会単独立法の原則」です。よって、この点が妥当ではありません。

また、「議員立法の活性化を求めること」は、「国会単独立法の原則」を意味していないので、この点も妥当ではありません。

2.国権の最高機関は国会であり(国会中心立法の原則) イ:内閣の独立命令は禁止されること(国会単独立法の原則)

2・・・妥当ではない
「国権の最高機関は国会であり」というのは、「国会中心立法の原則」の意味ではありません。
憲法41条にある「国会は、国権の最高機関であって」の「最高機関」とは、国会議員が「国民」によって、直接選任され、その点で国会は国民に連結しており、国会は、国政の中心的地位を占める機関であることを強調する「ほめ言葉」のような意味で使われていて、法的な意味はありません。

「内閣の独立命令は禁止されること」は、「国会単独立法の原則」の意味ではありません。
「内閣の独立命令」とは、法律を無視して内閣が制定する政令のことですが、これは憲法73条6号本文「この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。」の中の「憲法及び法律の規定を実施するために」について、「法律」を無視して「憲法の規定を実施するために」と考えているため、憲法にさえ沿っていれば法律に違反していても政令が下せるという解釈の下にある命令です。しかし、現在は認められていません。

3.ア:法律は国会の議決のみで成立し(国会単独立法の原則) イ:天皇による公布を要しないこと(国会中心立法の原則)

3・・・妥当ではない
「法律は国会の議決のみで成立し」とは、「国会単独立法の原則」ですが、イの「天皇による公布を要しないこと」は、「国会中心立法の原則」ではないので、妥当ではありません。

4.ア:国会が立法権を独占し(国会中心立法の原則) イ:法律は国会の議決のみで成立すること(国会単独立法の原則)

4・・・妥当
「国会が立法権を独占している」とは、「国会を通して立法を行わなければならない」「立法する場合、国会を通す必要がある」ということなので「国会中心立法の原則」です。

また、「法律は国会の議決のみで成立する」ことは、「国会単独立法の原則」を意味します。

よって、妥当です。

5.ア:国権の最高機関は国会であり(国会中心立法の原則) イ:立法権の委任は禁止されること(国会単独立法の原則)

5・・・妥当ではない
「国権の最高機関は国会であり」とは「国会中心立法の原則」を意味するものではありません。(選択肢2の解説参照)

また、「立法権の委任は禁止されること」は、「国会単独立法の原則」の意味ではありません。
そして、「国会単独立法の原則」は、立法権の委任は禁止してはいません。

この点は理解するのが難しい部分なので、個別指導で解説します!

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令和3年(2021年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政手続法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 基礎知識
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 行政法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略