行政の実効性確保の手段についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 行政上の義務履行の確保に関しては、行政代執行法が一般法とされ、別に法律で定めるところを除いては、この法律の定めるところによる。
- 条例に基づく命令によって課された義務を相手方が履行しない場合には、代執行等の他の手段が存在しない場合に限り、地方公共団体は民事訴訟によりその履行を求めることができる、とするのが判例である。
- 食品衛生法に基づく保健所職員による立入検査に際して、受忍義務に反してこれを拒否する相手方に対しては、職員は、実力を行使して調査を実施することが認められる。
- 法令上の義務に違反した者について、その氏名や違反事実を公表することは、義務違反に対する制裁と解されるので、行政手続法上、聴聞の対象とされている。
- 義務違反に対する課徴金の賦課は、一種の制裁であるから、罰金などの刑罰と併科することは二重処罰の禁止に抵触し、許されない。
【答え】:1【解説】
1.行政上の義務履行の確保に関しては、行政代執行法が一般法とされ、別に法律で定めるところを除いては、この法律の定めるところによる。
1・・・妥当
行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによります(行政代執行法1条)。
つまり、行政上の義務履行の確保に関しては、行政代執行法が一般法で、別に法律がある場合は、その法律が特別法となります。
行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによります(行政代執行法1条)。
つまり、行政上の義務履行の確保に関しては、行政代執行法が一般法で、別に法律がある場合は、その法律が特別法となります。
2.条例に基づく命令によって課された義務を相手方が履行しない場合には、代執行等の他の手段が存在しない場合に限り、地方公共団体は民事訴訟によりその履行を求めることができる、とするのが判例である。
2・・・妥当ではない
条例に基づく命令によって課された義務を相手方が履行しない場合について判例によると
「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許されるものと解される。」
と判示しています。
条例に基づく命令によって課された義務を相手方が履行しない場合について判例によると
「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許されるものと解される。」
と判示しています。
つまり、地方公共団体は、条例に基づく命令違反を理由に原則、民事訴訟を提起することはできません。
法律に特別な規定がある場合に限って、例外的に民事訴訟を提起できます。
よって、本肢は誤りです。
3.食品衛生法に基づく保健所職員による立入検査に際して、受忍義務に反してこれを拒否する相手方に対しては、職員は、実力を行使して調査を実施することが認められる。
3・・・妥当ではない
当該職員の臨検検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、これを50万円以下の罰金に処されます(食品衛生法75条1号)。
食品衛生法において、職員が、実力を行使して調査を実施することを認めた規定はないので妥当ではないです。
当該職員の臨検検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、これを50万円以下の罰金に処されます(食品衛生法75条1号)。
食品衛生法において、職員が、実力を行使して調査を実施することを認めた規定はないので妥当ではないです。
※「受忍義務」とは、拒否したり妨げたりしてはならない義務です!
食品衛生法に基づく立入検査では、事業者や対象者には受忍義務が課されています。
もし、拒否したとしても、職員が実力を行使して強制的に立ち入ることは認められていません。
4.法令上の義務に違反した者について、その氏名や違反事実を公表することは、義務違反に対する制裁と解されるので、行政手続法上、聴聞の対象とされている。
4・・・妥当ではない
行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、意見陳述の手続(聴聞または弁明の機会の付与)を執らなければなりません(行政手続法13条)。本肢の「法令上の義務違反者について、その氏名や違反事実を公表すること」は、行政手続法上の不利益処分には該当しません。
行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、意見陳述の手続(聴聞または弁明の機会の付与)を執らなければなりません(行政手続法13条)。本肢の「法令上の義務違反者について、その氏名や違反事実を公表すること」は、行政手続法上の不利益処分には該当しません。
そのため、聴聞や弁明の機会の付与などの意見陳述の手続きは不要です。
したがって、妥当ではありません。
5.義務違反に対する課徴金の賦課は、一種の制裁であるから、罰金などの刑罰と併科することは二重処罰の禁止に抵触し、許されない。
5・・・妥当ではない
最判平10.10.13の判例によると、
「義務違反者に対する課徴金の賦課」と「刑罰」の併科は、その目的が異なるため、二重処罰の禁止に抵触しない、としています。「義務違反者に対する課徴金の賦課」は「違法に得た利益を行政的に没収することを目的」で、
最判平10.10.13の判例によると、
「義務違反者に対する課徴金の賦課」と「刑罰」の併科は、その目的が異なるため、二重処罰の禁止に抵触しない、としています。「義務違反者に対する課徴金の賦課」は「違法に得た利益を行政的に没収することを目的」で、
「刑罰」は「行政上の義務違反に対する制裁が目的」です。
よって、併科も許されます。
平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 新しい人権 | 問33 | 民法・債権 |
問4 | 参政権 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 精神的自由 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 国会 | 問36 | 商法 |
問7 | 法の下の平等 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 法改正により削除 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・経済 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 行政法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |