わが国の裁判制度に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- わが国の裁判制度は、三審制を採用していることから、高等裁判所が第一審裁判所になることはない。
- 民事訴訟または刑事訴訟のいずれであっても、第一審裁判所が簡易裁判所である場合には、控訴裁判所は地方裁判所となり、上告裁判所は高等裁判所となる。
- 裁判官が合議制により裁判を行う場合には、最高裁判所の裁判を除いて、裁判官の意見が一致しないときであっても、少数意見を付すことはできない。
- 刑事訴訟においては、有罪判決が確定した場合であっても、あらたに証拠が発見されるなど重大な理由があるときには、有罪判決を受けた者の利益のために再審を行うことができるが、民事訴訟においては、再審の制度は認められていない。
- 家庭裁判所は、家庭に関する事件の審判および調停ならびに少年保護事件の審判など、民事訴訟や刑事訴訟になじまない事件について権限を有するものとされ、訴訟事件は取り扱わない。
【答え】:3
【解説】
1.わが国の裁判制度は、三審制を採用していることから、高等裁判所が第一審裁判所になることはない。
1・・・妥当ではない
日本の裁判制度は、原則、三審制を採用しています。ただし、例外もあります。例えば、刑法77条や79条の罪(国の統治機構を破壊するような内乱を起こした罪)に係る訴訟の第一審は高等裁判所で行います(裁判所法16条4号)。よって、「高等裁判所が第一審裁判所になることはない」は妥当ではないです。
日本の裁判制度は、原則、三審制を採用しています。ただし、例外もあります。例えば、刑法77条や79条の罪(国の統治機構を破壊するような内乱を起こした罪)に係る訴訟の第一審は高等裁判所で行います(裁判所法16条4号)。よって、「高等裁判所が第一審裁判所になることはない」は妥当ではないです。
2.民事訴訟または刑事訴訟のいずれであっても、第一審裁判所が簡易裁判所である場合には、控訴裁判所は地方裁判所となり、上告裁判所は高等裁判所となる。
2・・・妥当ではない
刑事訴訟では、「第一審裁判所が簡易裁判所」の場合、「控訴裁判所は高等裁判所」となり、「上告裁判所は最高裁」となります(裁判所法16条1号、7条号)。
よって、妥当ではありません。民事訴訟では、「第一審裁判所が簡易裁判所」の場合、「控訴裁判所は地方裁判所」となり、「上告裁判所は高等裁判所」となります(裁判所法16条1号、24条3号、16条3号)。
この点は妥当です。
刑事訴訟では、「第一審裁判所が簡易裁判所」の場合、「控訴裁判所は高等裁判所」となり、「上告裁判所は最高裁」となります(裁判所法16条1号、7条号)。
よって、妥当ではありません。民事訴訟では、「第一審裁判所が簡易裁判所」の場合、「控訴裁判所は地方裁判所」となり、「上告裁判所は高等裁判所」となります(裁判所法16条1号、24条3号、16条3号)。
この点は妥当です。
3.裁判官が合議制により裁判を行う場合には、最高裁判所の裁判を除いて、裁判官の意見が一致しないときであっても、少数意見を付すことはできない。
3・・・妥当
最高裁の場合、裁判書には、各裁判官の意見を表示しなければなりません(裁判所法11条)。
したがって、少数意見も付けなければなりません。一方、最高裁以外の下級裁判所の場合は、合議体の裁判における各裁判官の意見等について、秘密を保持することが要求されているため(裁判所法75条2項)、裁判官の意見が一致しないときであっても、少数意見を付けることはできません。
よって、本肢は妥当ではないです。
最高裁の場合、裁判書には、各裁判官の意見を表示しなければなりません(裁判所法11条)。
したがって、少数意見も付けなければなりません。一方、最高裁以外の下級裁判所の場合は、合議体の裁判における各裁判官の意見等について、秘密を保持することが要求されているため(裁判所法75条2項)、裁判官の意見が一致しないときであっても、少数意見を付けることはできません。
よって、本肢は妥当ではないです。
4.刑事訴訟においては、有罪判決が確定した場合であっても、あらたに証拠が発見されるなど重大な理由があるときには、有罪判決を受けた者の利益のために再審を行うことができるが、民事訴訟においては、再審の制度は認められていない。
4・・・妥当ではない
刑事訴訟も民事訴訟も再審の制度は認められています(刑事訴訟法435条以下、民事訴訟法338条以下)。
よって、本肢は「民事訴訟においては、再審の制度は認められていない」が妥当ではありません。
刑事訴訟も民事訴訟も再審の制度は認められています(刑事訴訟法435条以下、民事訴訟法338条以下)。
よって、本肢は「民事訴訟においては、再審の制度は認められていない」が妥当ではありません。
5.家庭裁判所は、家庭に関する事件の審判および調停ならびに少年保護事件の審判など、民事訴訟や刑事訴訟になじまない事件について権限を有するものとされ、訴訟事件は取り扱わない。
平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 新しい人権 | 問33 | 民法・債権 |
| 問4 | 参政権 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 精神的自由 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 国会 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 法の下の平等 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 法改正により削除 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
| 問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・経済 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
| 問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
| 問24 | 行政法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |


