Xは、自己の所有地甲に建築物を建てるために、Y市の建築主事に建築確認を申請したが、建築基準法による建築制限に適合しないとして建築確認を拒否する処分(以下「本件処分」という)がなされた。Xは本件処分を不服として、Y市建築審査会に対して行政不服審査法に基づく審査請求を行ったが、審査庁は本件処分を適法であると判断し、請求を棄却する裁決を行った。ところが、建築審査会において議事に加わった委員の一人が、当該建築確認につき利害関係を有する者(建築基準法第82条)にあたるという手続上の瑕疵があることが判明した。そこで、Xは、この瑕疵を主張して、抗告訴訟を提起したいと考えている。 主張しようとする瑕疵がどのようなものであり、そのため、Xは、誰を被告としてどのような抗告訴訟を提起すべきか。40字程度で記述しなさい。 (参照条文) 建築基準法 (委員の除斥) 第82条 委員は、自己または三親等以内の親族の利害に関係のある事件については、・・・(中略)・・・審査請求に対する裁決に関する議事に加わることができない。
本問は、原処分主義(行政事件訴訟法10条2項)と裁決固有の瑕疵の理解を問う記述式問題です。
まず、瑕疵の性質を整理します。本件で問題となっているのは、建築確認を拒否した処分(本件処分)そのものの違法性ではなく、審査請求の審理に利害関係を持つ委員が議事に加わったという、裁決の手続上の違法です。これは本件処分には存在せず裁決の段階で新たに生じた瑕疵であるため、「裁決固有の瑕疵」に該当します。
次に、提起すべき訴訟について検討します。行政事件訴訟法10条2項は原処分主義を採用しており、処分と裁決の両方に違法がある場合は原則として処分の取消訴訟で争います。しかし、裁決固有の瑕疵がある場合は例外として裁決の取消訴訟を提起することができます。本問の瑕疵は裁決固有のものですから、Xは裁決の取消しの訴えを提起すべきです。
最後に被告についてです。行政事件訴訟法11条1項により、取消訴訟の被告は当該処分・裁決をした行政庁が所属する国または地方公共団体となります。建築審査会はY市に所属する機関ですから、被告はY市です。
| 論点 | 根拠条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 瑕疵の性質 | 建築基準法82条(除斥規定) | 裁決固有の瑕疵(手続違反) |
| 原処分主義の原則 | 行政事件訴訟法10条2項 | 原則として処分の取消訴訟で争う |
| 裁決固有の瑕疵の例外 | 行政事件訴訟法10条2項 | 裁決固有の瑕疵は裁決取消訴訟で争う |
| 被告 | 行政事件訴訟法11条1項 | 行政庁が所属する地方公共団体(Y市) |
記述式では、①瑕疵の性質(裁決固有の瑕疵)、②訴訟の種類(裁決の取消しの訴え)、③被告(Y市)の3点を漏らさず書くことが求められます。「裁決固有の瑕疵」という用語を正確に使えるかどうかが採点上の重要ポイントです。
※「原処分主義」とは、処分と裁決が両方存在する場合、原則として元の処分(原処分)の取消訴訟で争うべきとする考え方です(行政事件訴訟法10条2項)。裁決そのものを争うのは例外的な場合に限られます。
※「裁決固有の瑕疵」とは、原処分には存在せず、審査請求に対する裁決の段階で新たに生じた手続上・内容上の違法のことです。本問の除斥規定違反はこれにあたります。
※「除斥」とは、公正な審理を確保するため、自己や近親者の利害に関係する事件の審議に委員が加わることを禁止する制度です。
令和7年(2025年)過去問
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
| 問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
| 問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
| 問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
| 問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法・多肢選択 |
| 問12 | 個人情報保護法 | 問42 | 行政法・多肢選択 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法・多肢選択 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
| 問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
| 問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
| 問22 | 行政法 | 問52 | 基礎知識 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 行政書士法 |
| 問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識 |
| 問26 | 情報公開法 | 問56 | 基礎知識 |
| 問27 | 民法 | 問57 | 基礎知識 |
| 問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |


