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令和7年・2025|問21|国家賠償法

国家賠償法に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。 (注)* 失火ノ責任ニ関スル法律

  1. 国または公共団体の損害賠償の責任については、民法の規定が補充的に適用されるとされており、失火責任法* もここにいう民法に含まれるが、消防署職員の消火活動が不十分なため残り火が再燃して火災が発生した事案は、失火責任法にいう「失火」に該当せず、失火責任法の適用はない。
  2. 国または公共団体の公権力の行使にあたる複数の公務員が、その職務を行うについて、共同して故意によって違法に他人に加えた損害につき、国または公共団体がこれを賠償した場合において、当該加害公務員は、国または公共団体に対し、各自が負う責任の度合いや資力の有無に応じて分割された求償債務を負う。
  3. 市町村が設置する学校の教諭につき、当該教諭の給与を都道府県が負担する場合において、当該教諭がその職務を行うについて故意または過失によって違法に生徒に損害を与えたときは、当該教諭の給与を負担する都道府県が、国家賠償法に基づく損害賠償の義務を負い、学校の設置主体である当該市町村は、同法に基づく損害賠償責任を負わない。
  4. 公の営造物の設置または管理に瑕疵があることによる国家賠償責任につき、当該営造物の設置または管理にあたる者とその費用の負担者とが異なるときは、その双方が責任を負うことになるが、ここにいう設置費用の負担者には、当該営造物の設置費用につき法律上の負担義務を負う者のほか、この者と同等もしくはこれに近い設置費用を負担し、実質的には事業を共同して執行していると認められる一定範囲の者も含まれる。
  5. 国または公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程において他人(被害者)に被害を生ぜしめた事案においては、それらの一連の行為を組成する各行為のいずれもが国または同一の公共団体の公務員の職務上の行為にあたる場合であったとしても、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任が成立するためには、被害者において、当該事案における加害行為とそれを行った者を特定しなければならない。

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【答え】:4
【解説】
1.国または公共団体の損害賠償の責任については、民法の規定が補充的に適用されるとされており、失火責任法* もここにいう民法に含まれるが、消防署職員の消火活動が不十分なため残り火が再燃して火災が発生した事案は、失火責任法にいう「失火」に該当せず、失火責任法の適用はない。

1.妥当でない

判例(最判昭和53年7月17日)は、消防署職員の消火活動が不十分で残り火が再燃した場合も「失火」に該当し、失火責任法が適用されると判示しています。また、国家賠償法4条の「民法」には失火責任法が含まれるため、公務員の失火による国・公共団体の賠償責任にも失火責任法が適用されます。「失火責任法の適用はない」という記述が誤りです。

※「失火責任法」とは、失火による損害賠償責任について、失火者に重大な過失がある場合に限り責任を負うとする法律です。通常の過失(軽過失)では責任を負わない点が民法の一般原則(709条)と異なります。

2.国または公共団体の公権力の行使にあたる複数の公務員が、その職務を行うについて、共同して故意によって違法に他人に加えた損害につき、国または公共団体がこれを賠償した場合において、当該加害公務員は、国または公共団体に対し、各自が負う責任の度合いや資力の有無に応じて分割された求償債務を負う。

2.妥当でない

複数の公務員が共同して故意により損害を与えた場合、国・公共団体が賠償した後の求償関係については、各公務員は連帯して求償債務を負います。「各自の責任の度合いや資力に応じて分割された求償債務を負う」という記述は誤りで、故意による共同加害行為の場合は分割債務ではなく連帯債務として求償義務を負います。不法行為における連帯責任の原則(民法719条)が基礎となっています。

3.市町村が設置する学校の教諭につき、当該教諭の給与を都道府県が負担する場合において、当該教諭がその職務を行うについて故意または過失によって違法に生徒に損害を与えたときは、当該教諭の給与を負担する都道府県が、国家賠償法に基づく損害賠償の義務を負い、学校の設置主体である当該市町村は、同法に基づく損害賠償責任を負わない。

3.妥当でない

市町村立学校の教諭がその職務上で生徒に損害を与えた場合、設置主体である市町村と給与を負担する都道府県の双方が国家賠償責任を負います(国家賠償法1条1項・3条1項)。給与を負担する都道府県が賠償した場合は、設置主体である市町村に対して全額を求償できます(最判平成21年10月23日)。「市町村は損害賠償責任を負わない」という記述が誤りです。

4.公の営造物の設置または管理に瑕疵があることによる国家賠償責任につき、当該営造物の設置または管理にあたる者とその費用の負担者とが異なるときは、その双方が責任を負うことになるが、ここにいう設置費用の負担者には、当該営造物の設置費用につき法律上の負担義務を負う者のほか、この者と同等もしくはこれに近い設置費用を負担し、実質的には事業を共同して執行していると認められる一定範囲の者も含まれる。

4.妥当である

国家賠償法3条1項の「設置費用の負担者」には、法律上の負担義務者のみならず、これと同等またはこれに近い設置費用を負担し、実質的に事業を共同して執行していると認められる者も含まれます(最判昭和50年11月28日)。例えば、国が設置できる営造物を地方公共団体に設置させ、国が同等額の経済的補助をしつつ危険防止措置を請求できる立場にある場合、国も設置費用の負担者に含まれます。単なる贈与に過ぎない者は含まれません。

※「国家賠償法3条1項」とは、公の営造物の設置・管理者とその費用負担者が異なる場合に、費用負担者も損害賠償責任を負うとする規定です。複数の主体が関わる場合の責任分担を定めています。

5.国または公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程において他人(被害者)に被害を生ぜしめた事案においては、それらの一連の行為を組成する各行為のいずれもが国または同一の公共団体の公務員の職務上の行為にあたる場合であったとしても、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任が成立するためには、被害者において、当該事案における加害行為とそれを行った者を特定しなければならない。

5.妥当でない

一連の職務行為により損害が生じた場合、判例は被害者が特定の加害行為およびその行為者を特定しなくても、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求が認められるとしています。一連の行為を組成する各行為がいずれも同一の国または公共団体の公務員の職務行為である場合、全体として国または公共団体の責任を問えば足ります。被害者に過大な立証負担を課さないための法的扱いです。

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

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