令和8年度版、行政書士試験対策の個別指導はこちら
個別指導の値上げまで あと

令和7年・2025|問9|行政法

行政罰に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。 (注)* 私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律

ア.財団法人の理事の就任に関する登記が法定期間内に行われなかったことに対して科される過料は、非訟事件手続法に基づく手続によって科されるが、中立性のある裁判所によって、当事者の陳述の機会を設けた上で科されるものであり、かつ即時抗告も可能であることから、憲法上の適正手続の要請に反しているとはいえない。

イ.カルテル行為を行ったことによって独占禁止法* 違反被告事件において罰金刑が確定している者に対し、さらに独占禁止法の規定に基づき課徴金の納付を命ずることは、課徴金を課せられるべき違反者の行為を犯罪とし、それに対する刑罰として、これを課する趣旨でないことは明らかであるから、二重処罰の禁止には違反しない。

ウ.所得税の確定申告において虚偽記載を行い所得税を脱税したことにより、懲役刑と罰金刑を併科された者に対して、さらに重加算税を科すことは、重加算税が申告納税を怠った者に対し、その行為の反社会性ないし反道徳性に着目し、これに対する制裁として科せられるものでもあるから、二重処罰の禁止に抵触する。

エ.刑事裁判において正当な理由がなく証言を拒んだ場合に、刑事訴訟法に基づき裁判官により秩序罰として科される過料と、同法に基づき通常の刑事手続により科される罰金は、法廷秩序の維持という点で目的が共通しているから、両者を併科することは許されない。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

>解答と解説はこちら


【答え】:1

【解説】
ア.財団法人の理事の就任に関する登記が法定期間内に行われなかったことに対して科される過料は、非訟事件手続法に基づく手続によって科されるが、中立性のある裁判所によって、当事者の陳述の機会を設けた上で科されるものであり、かつ即時抗告も可能であることから、憲法上の適正手続の要請に反しているとはいえない。

ア.妥当である

財団法人の理事就任登記の懈怠に対する過料について、最大決昭和41年12月27日は、憲法31条に違反しないと判示しました。

その理由として、①非訟事件手続法上、原則として当事者の陳述を聴く機会が設けられていること、②例外的に陳述なしで裁判した場合でも異議申立てにより改めて陳述を聴く機会が保障されること、③即時抗告が認められており、抗告には執行停止の効力があること、を挙げています。

過料は刑事罰ではなく秩序罰であるため、刑事訴訟手続と同一の手続は要求されませんが、告知・弁解・防御の機会が十分に保障されていることから、憲法上の適正手続の要請に反しないとされています。

※「秩序罰」とは、行政上の軽微な義務違反に対して科される制裁で、刑罰とは性質が異なります。刑事手続によらず、裁判所の非訟事件手続または行政庁の処分によって科されます。

イ.カルテル行為を行ったことによって独占禁止法* 違反被告事件において罰金刑が確定している者に対し、さらに独占禁止法の規定に基づき課徴金の納付を命ずることは、課徴金を課せられるべき違反者の行為を犯罪とし、それに対する刑罰として、これを課する趣旨でないことは明らかであるから、二重処罰の禁止には違反しない。

イ.妥当である

罰金刑が確定した後に課徴金を重ねて課すことが憲法39条の二重処罰の禁止に違反するか否かについては、課徴金の法的性質が問題となります。

課徴金は、カルテル等の違反行為によって得た不当な利益を剥奪し、違反行為を抑止することを目的とする行政上の措置であり、犯罪に対する制裁として科す刑罰とは趣旨・性質が根本的に異なります

この考え方は、追徴税と罰金の併科について「追徴税は過少申告・不申告を防止し適正な納税を確保するための行政上の措置であり、刑罰たる罰金とは性質が異なる」として合憲とした最大判昭和33年4月30日の法理と同様です。課徴金も同様に、刑罰とは別個の目的・性質を持つことから、二重処罰の禁止には違反しません

ウ.所得税の確定申告において虚偽記載を行い所得税を脱税したことにより、懲役刑と罰金刑を併科された者に対して、さらに重加算税を科すことは、重加算税が申告納税を怠った者に対し、その行為の反社会性ないし反道徳性に着目し、これに対する制裁として科せられるものでもあるから、二重処罰の禁止に抵触する。

ウ.妥当でない

重加算税と刑事罰(懲役・罰金)の併科が憲法39条の二重処罰の禁止に反するかについて、判例は違反しないと判断しています(最大判昭和33年4月30日の法理)。

重加算税は、申告義務違反の発生を防止し、適正な申告納税を確保するための行政上の制裁です。本肢は「行為の反社会性・反道徳性に着目した制裁」であるから二重処罰に抵触すると述べていますが、判例の立場はこれとは異なります。

重加算税は、犯罪に対する刑罰とは目的・性質・手続のいずれも異なる行政上の措置であるため、刑事罰との併科は憲法39条に違反しません。

※「重加算税」とは、仮装・隠蔽による申告義務違反に対して課される附帯税の一種で、通常の過少申告加算税より重い割合(35%または40%)が課されます。

エ.刑事裁判において正当な理由がなく証言を拒んだ場合に、刑事訴訟法に基づき裁判官により秩序罰として科される過料と、同法に基づき通常の刑事手続により科される罰金は、法廷秩序の維持という点で目的が共通しているから、両者を併科することは許されない。

エ.妥当でない

刑事訴訟法上の秩序罰としての過料と、刑罰としての罰金は、法廷秩序維持という点で共通する面があるとしても、目的・要件・手続が異なります

過料(秩序罰)は、法廷秩序を直接乱した行為に対して裁判官が迅速に課す行政的制裁であるのに対し、罰金は刑事手続を経て科される刑罰です。両者はその法的性質を異にするため、憲法39条の二重処罰禁止の趣旨は及ばず、両者の併科は許されます

 


令和7年(2025年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法・多肢選択
問12 個人情報保護法 問42 行政法・多肢選択
問13 行政手続法 問43 行政法・多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 行政法 問52 基礎知識
問23 地方自治法 問53 行政書士法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 情報公開法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 基礎知識
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

【勉強の仕方等、お気軽にご相談ください!】
  • メールアドレス
  • お名前(姓・名)
  • 姓と名はスペースで区切ってください
  • 郵便番号
  • 例:123-4567
  • 住所(都道府県)
  • 住所(市町村以下)
  • ご相談はこちら

  
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。