行政行為(処分)に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 瑕疵なく成立した授益的処分について、事後の事情の変化を理由に講学上の撤回をすることは、かかる撤回ができる旨を定める明文の規定が法律または条例にあるときに限られる。
- 重大かつ明白な瑕疵を有する処分は当然に無効とされるが、処分の瑕疵が明白であるかどうかは、処分の外形上、客観的に誤認が一見看取し得るものであるかどうかにより決まる。
- 一定の争訟手続に従って当事者を手続に関与せしめ、紛争の終局的解決を図ることを目的とする処分であっても、当該処分をした行政庁は、特別の規定がない限り、当該処分を取り消すことができる。
- 既になされた授益的処分について、講学上の職権取消しができるのは、当該授益的処分の成立時に違法があるときに限られ、不当があるにすぎない場合は除外される。
- 処分の成立時点において瑕疵があった場合、事後の事情の変化により当該瑕疵が解消するに至ったとしても、その瑕疵は治癒されることはなく、当該処分はそれを理由として取り消されるか、または当然に無効であるとされる。
【答え】:2
【解説】
1.妥当でない
授益的処分の講学上の撤回には、必ずしも法律または条例の明文の根拠は必要ありません。
判例・通説によれば、相手方の被る不利益を考慮してもなおそれを撤回すべき公益上の必要性が高いと認められる場合には、明文の規定がなくても撤回が許容されます。
もっとも、授益的処分の撤回は相手方の信頼保護の観点から制限されるため、撤回の必要性と相手方の不利益を比較衡量する必要があります。法令の根拠なしに当然に撤回できるわけではなく、あくまで公益上の必要性が相手方の不利益を上回る場合に限られます。
※「撤回」とは、瑕疵なく有効に成立した行政行為について、事後の事情変更により効力を維持することが公益上不適当となった場合に、その効果を将来に向かって失わせることをいいます。過去に遡る「取消し」と区別されます。
2.妥当である
行政処分が当然無効とされるためには、処分に重大かつ明白な瑕疵が必要です。
最判昭和36年3月7日は、瑕疵が「明白」であるかどうかの判断基準について、「処分の外形上、客観的に、誤認が一見看取し得るものであるかどうかにより決すべき」と判示しました。主観的事情ではなく、外形上・客観的に判断される点が重要です。
この「重大明白説」は、行政処分の無効・取消しの区別に関する判例の基本的立場として、試験上最も重要な判例の一つです。
※「重大な瑕疵」とは、処分の根幹的要件を欠くことを意味し、「明白な瑕疵」とは、外形上客観的に誤認が一見して看取できることを意味します。両要件を満たす場合に初めて当然無効となります。
3.妥当でない
本肢は不可変更力に関する問題です。
審査請求に対する裁決など、争訟裁断行為(一定の争訟手続に従って当事者を関与させ、紛争の終局的解決を図る処分)には、例外的に不可変更力が認められます。これは、行政庁自身が職権でその処分を取り消し・変更することができないという効力です。
本肢は「特別の規定がない限り取り消すことができる」と述べていますが、これは一般の行政処分に関する記述であり、争訟裁断行為については逆に「特別の規定がない限り、行政庁自らは取り消すことができない」が正確な説明です。
※「不可変更力」は、裁決・審決など紛争解決を目的とした行政行為について、行政庁自身による自己拘束を意味します。司法上の確定判決に類似した効力として位置づけられます。
4.妥当でない
行政行為の職権取消しは、処分の成立時に違法があった場合に限られず、不当(法律的には問題がないが合目的性に欠ける場合)があると認められる場合にも行うことができます。
これは、行政庁は処分の適法性だけでなく合目的性(行政目的に適合しているか)についても責任を負うためです。なお、裁判所による司法審査は違法性のみを対象としますが、行政庁自身による職権取消しは違法・不当の双方を対象とします。
ただし、授益的処分を職権取消しする場合は、相手方の信頼保護の観点から、取消しの必要性と相手方の不利益を比較衡量する必要があります。
5.妥当でない
行政法上、瑕疵の治癒の法理が認められています。成立時点で瑕疵があった行政行為であっても、事後の事情変化によって当初欠けていた適法要件が実質的に充足された場合には、当該行政行為を適法と扱うことが判例上認められています。
本肢は「事後に瑕疵が解消しても治癒されることはない」と述べていますが、これは誤りです。瑕疵の治癒が認められる典型例として、理由の追完(処分後に理由が付加・補充される場合)や手続上の瑕疵が後に補われる場合が挙げられます。
※「瑕疵の治癒」が認められるかどうかは、行政の法律適合性の要請と法的安定性・相手方の信頼保護のバランスから個別に判断されます。重大な瑕疵がある場合には治癒が認められないこともあります。
令和7年(2025年)過去問
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
| 問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
| 問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
| 問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
| 問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法・多肢選択 |
| 問12 | 個人情報保護法 | 問42 | 行政法・多肢選択 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法・多肢選択 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
| 問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
| 問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
| 問22 | 行政法 | 問52 | 基礎知識 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 行政書士法 |
| 問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識 |
| 問26 | 情報公開法 | 問56 | 基礎知識 |
| 問27 | 民法 | 問57 | 基礎知識 |
| 問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |


