商法第521条(商人間の留置権)
商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、この限りでない。
ここでのポイントは3つです。
- 被担保債権は、商行為の取引によって生じた債権である
- 商行為により留置した留置物は、債務者所有である
- 「1の被担保債権」と「2の留置物」は同じ取引のものでなくてもよい
例えば、中古車の販売店Aが、車の修理業者BにA所有の車の修理を依頼した。その後、Bは車の修理を完了させて、Aに修理した車を引き渡した。しかし、修理代金を受け取っていない。つまり、修理業者Bは、Aに対して修理代金債権を有している(1を満たす)。
その後、中古車販売店Aが、BにA所有の別の車の修理を依頼して、Bに車を引き渡した。この場合、AB間の修理に関する契約は、商行為であり、Bが留置している車は、債務者A所有です(2を満たす)。
上記「Bの修理代金債権」と「現在Bが留置している車」は同じ取引ではありません。
これを「被担保債権と留置物との間に牽連性はない」と言います。分かりやすく言えば、関連性がないということです。これは上記ポイント3より、牽連性がなくても1、2を満たしていれば、留置権は成立します。
したがって、上記の場合、修理業者Bは、Aの車を留置することが可能です。