始めに、まとめた表を示して、あとで細かく解説していきます。
株式会社に設立取消しの制度はないので、表には入れていないですが、下記で解説しています。
株式会社は、設立登記によって成立しますが、その設立の手続きに無効原因があった場合はどうなるか?
民法では、法律行為が無効の場合、誰でも、また、いつでも主張できるのが原則です。
しかし、会社法(会社の設立)では、設立無効の訴え(裁判上の手続き)によってのみ主張することができます。
そして、会社法では、下記内容を定めています。
- どういった場合に設立無効の訴えが提起できるか?(無効原因・無効事由)
- いつまで設立無効の訴えを提起できるか?(提訴期間)
- 誰が設立無効の訴えを提起できるか?(提訴権者)
無効原因・無効事由
設立が無効となる例として、行政書士の試験対策として、下記を覚えておけばよいでしょう。
- 定款の絶対的記載事項が欠けている
- 公証人による定款認証が無い
- 募集設立における創立総会が適法に開催されていない
- 定款で定める出資される財産の最低額を下回っている
提訴期間
株式会社の設立無効の訴えは、会社の成立の日から2年以内に提起しなければなりません(828条1項1号)。
提訴権者
設立無効の訴えは、株主、取締役、監査役、執行役、清算人に限られます。
※会社の債権者は、設立無効の訴えを提起できません。
清算人とは?
清算人とは、会社が解散した場合に、会社の債権債務の関係を整理し、残った財産を株主に分配する人です。簡単に言えば、解散後の後処理をする人です。
清算人は、下記の者がなります。(478条1項2項)
- 定款で定める者
- 株主総会の普通決議によって選任された者
- これらの者がないときは、清算開始時の取締役
- これらにより清算人となる者がいないときは、裁判所が選任した者
設立無効の被告は、会社となります(834条1号)。
判決の効力
設立無効の判決(請求認容判決)がなされて、設立無効が確定すると、第三者に対しても設立無効の判決の効力が及びます(838条)。
つまり、株主Aが設立無効の訴えを提起して、認容判決が確定した場合、A以外の株主や取締役等にも設立無効の効力が生じるわけです。そうしないと、訴えを提起していない株主にとっては会社が存続するというおかしなことになります。
判決の効力は遡及しない
設立無効の判決の効力は将来に向かってのみ効力を生じます(839条)。
つまり、会社が成立して、訴えの提起をして、設立無効判決が確定した場合、判決が確定したときから、会社の設立の効力を失い、会社の解散の場合と同じく精算が行われます。
設立取消し
株式会社に設立取消しの制度はありません。
設立取消の訴えは、持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)の場合に、持分会社の社員や債権者が提起できます(832条)。
持分会社の設立取消しの訴えは、持分会社の成立の日から2年以内に行えます(832条)。この点は「設立無効の訴え」と同じです。
また、判決の効力についても、「設立無効の訴え」と同じく、設立取消の判決の効力は将来に向かってのみ効力を生じます(839条)。
会社の不成立
会社の不成立とは、設立手続きが進められてきたが、結局、設立登記まで至らなかった場合です。例えば、創立総会で設立廃止の決議がなされた場合等です。
この場合、発起人が全責任を負うため、発起人は、設立に関して支出した費用を負担しないといけません(56条)。
例えば、発起人A・Bがおり、募集設立を行い、引受人から出資を受けた場合、A・Bは、無過失でも、連帯して返還義務を負います。
設立無効と不成立の違い
設立無効は、設立登記はされ、いったん会社は成立しているのに対して
会社の不成立は、そもそも設立登記まで至らず、会社は一度も成立していない。